クレーム対応の基礎|例文でわかる上手い対応と意識すべき点

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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クレームを受けるのは、誰でも嫌なものです。クレームを突きつけてくる顧客の怒りや苛立ちに立ち向かうのですから、精神的にも辛いことです。

【クレーム対応完全マニュアル】クレームの種類と対応時のコツ

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反面、カスタマーサポートは商品を購入した顧客との重要なタッチポイントでもあり、顧客と長期的な関係を築くためにも重要な部署です。トランスコスモスAI研究所の調査によると「クレームに対して迅速で適切な対応に満足した顧客」の8割以上がリピーターになることがわかります。さらに「クレーム対応に感動した顧客」のリピート購入率は9割にも及びます。

カスタマーサポート担当者が気持ちをすり減らすことなく、クレームに対応するために必要なのは、カスタマーサポート担当者の「誠意」よりも、クレーム対応マニュアルと組織的なサポートです。

本記事では、対応手順から例文まで、カスタマーサポートの汎用的なクレーム対応マニュアルをご紹介します。

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    カスタマーサポートにおけるクレーム対応の重要性

    まず、クレームの定義を整理したうえで、カスタマーサポートがクレームに適切に対応することで企業全体にどのようなメリットがもたらされるのかを確認しましょう。

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    クレームとは?

    クレームとは、商品やサービスを利用して、不満を抱いた顧客が販売者や企業に適切な対応を求めることを指します。


    つまり、「クレーム」は改善を求める行為な

    のです。そのためクレーム対応では、不満を感じている顧客の気持ちをなだめることに重点を置くのではなく、原因となった問題を改善することに重点を置く必要があります。
     

    なぜ組織的にクレーム対応の体制を整備する必要があるのか

    個人ではなく、組織として適切なクレーム対応を取る必要がある理由は、大きくは3つあります。
     

    1. クレームの原因になった問題を改善する必要がある

    個人で対応していると、どうしても自分に不満をぶつけてくる顧客の気持ちをなだめ、一刻も早く事態を収束させることに意識が向きがちです。

    しかしクレーム対応では問題の改善が重要なため、カスタマーサポートはクレーム対応フローを作成し、問題改善へとつなげる仕組みを作っておく必要があります。そうすれば担当者は顧客の不満ではなく、問題点の特定に意識が集中できるようになります。
     

    2. 二次クレームの発生を防ぐ必要がある

    顧客がクレーム担当者の対応に不満を抱き、二次的なクレームが発生するケースがあります。カスタマーサポート全体でクレーム内容を把握することで、担当者による初動対応で満足してもらえなくても、組織として対応の改善が行えます。

    また、組織で対応していると示すことで、対応の遅れに苛立った顧客が、感情的になったり、担当者を人格否定したりするような事態の予防にもつながります。
     

    3. 担当者の精神的な疲弊が防げる

    顧客の不満に直接対応することは、担当者のメンタル面の消耗を招きます。産業別労働組合のUAゼンセンの統計によると、暴言などの悪質クレームに遭遇した担当者の半数以上が「強いストレスを感じた」と答えています。クレームを受けた担当者を孤立させず、組織的にバックアップすることが求められています。

    以上の3点の理由からクレーム対応にはカスタマーサポート全体で取り組む必要があります。

    →ダウンロード: 優れた顧客体験のヒントに!2020年版カスタマーサービス最新動向

    クレーム対応の目的

    ここで、クレーム対応の目的を整理しておきましょう。

    1. 顧客の問題を解決する
    2. 商品・サービスに対するフィードバックをもらう
       

    1.顧客の問題を解決する

    カスタマーサポートが絶対に忘れてはならないのが「クレームを出す顧客は困りごとがあって商品やサービスを購入したのに、困りごとが解決できていない」ということです。その困りごとを聞き出して問題解決の迅速な手助けをすることが、カスタマーサポートの第1の目的です。
     

    グッドマンの法則

    クレーム対応のフレームワークに「グッドマンの法則」があります。この法則によると「不満を感じて店にクレームを入れた後、店側の対応に満足した人」のリピート率は「クレームを出さずに立ち去った人のリピート率」よりも圧倒的に高かったとのことです。

    この傾向は高額商品において顕著に見られ、不満を感じてもクレームを出さなかった人が高額商品をリピートする可能性が9%だったのに対し、迅速な対応に満足した顧客のリピート率は85%でした。

    迅速で顧客が満足できる対応が、優良な顧客を維持することにつながるのです。
     

    2.商品・サービスに対するフィードバックをもらう

    クレームが出るのは「顧客が商品・サービスに期待して購入したのに、その期待が満たされなかったから」にほかなりません。カスタマーサポートは、クレームが問題やサービスの本質に関わるものかどうかを見極める必要があります。

    クレーム対応を通じて問題の箇所を特定して、問題の特定ができるスタッフにつなぐことは、カスタマーサポートの重要な役割です。ソフトウェアなど自社で開発した製品を販売したり、サービスとして提供したりするビジネスであれば、フィードバックはより顧客に満足してもらえる製品を開発するための命綱ともいえます。

    特にスタートアップは製品開発のスピードが重要なため、必要最小限の機能でローンチするケースが多いでしょう。そのため「〇〇の機能がない」「〇〇のとき、誤作動を起こす」という顧客からのクレームは、追加機能や機能修正を行う上での大きな指針になります。
     

    ハインリッヒの法則

    事故を未然に防ぐことが重要な医療現場や工事現場では「ハインリッヒの法則」が重視されています。ハインリッヒの法則とは、1件の重大事故の背景には軽微な事故が29件、事故とはいえない些細なトラブルや不具合が300件起こっているという法則です。

    ハインリッヒの法則

    ハインリッヒの法則をクレーム対応に当てはめると、クレームは些細なトラブル・不具合に相当します。クレームの段階で問題を突き止めて商品やサービスの改善を行うことで、表面化していない軽微な不具合の改善にもつながります。クレームに適切に対応することは、同時に放置していれば重大事故になるかもしれないリスクを未然に解消できるのです。

    寄せられたクレームから問題点を抽出し、制作部門や営業部門と共有するために、カスタマーサポートは顧客との重要な接点となるのです。
     

    クレーム対応に強い組織を作るには?

    よりよい商品やサービスを提供するためには、顧客からのクレームに迅速に対応する必要があります。

    • カスタマーサポートだけで対応できない問題が持ち込まれた時は、どのような対応を取るのか?
    • 補償を求められた場合には、カスタマーサポートの権限でどこまで返答できるか?
    • 顧客が提示した打開案に納得してもらえずに「責任者を出せ」などと言われた時は、組織全体としてどのような対応を取るのか?

    このような場面に備えるためカスタマーサポートが中心となって、開発部門や営業部門と迅速にクレーム内容を共有できる仕組みを作っておきます。

    さらにカスタマーサポートの対応が属人化しないように、クレーム対応のマニュアルが必要です。くわしくは後述する「クレームの種類」で説明しますが、顧客からのクレームのほとんどは、以下の4種類に分けられます。

    1. 商品発送・到着の遅延
    2. 商品の欠陥・故障
    3. 顧客対応が低品質
    4. 商品の機能や利用方法を顧客が誤解

    そのためクレーム対応のマニュアルはこの4点を中心に作成します。その際に、組織としてどこまで対応するか(できるか)を明確にしておくことが重要です。

    起こりやすいクレームに対しては「組織全体の指針」「カスタマーサポート独自の判断で提案できる範囲」を決めておくことで、カスタマーサポート担当者も安心して対応ができます。
     

    チャネル別のクレームの特徴

    チャネル別のクレームの特徴

    顧客がクレームを入れる主なチャネルとして以下の5つがあります。

    1. 電話
    2. メール
    3. チャット
    4. SNS
    5. 対面

    チャネルごとに、一定の傾向があります。ここでは各チャネルごとに「クレームの特徴」「クレームを入れる人の状況」「クレーム対応する際に気をつけるべきこと」の3点をご紹介します。各チャネルで出されるクレームの特徴を知り、適切な対応策を練りましょう。
     

    1. 電話

    アメリカのソフトウェア企業であるZendeskの統計によると、カスタマーサービスへの連絡手段として、クレームなどの複雑な用件の場合は、顧客の76%が電話を利用すると答えています。

    電話

    クレームに利用されるチャネルとして最も多いのが電話であることがわかります。
     

    電話クレームの特徴

    電話クレームの特徴として、以下の4点を挙げることができます。

    • 電話は緊急性が高く「すぐ」「確実に」伝えたいときにとられる手段である。
    • 双方向的なコミュニケーションであるため、話に食い違いが起こればすぐに解消できる。
    • 比較的年齢の高い顧客が利用する傾向がある。
    • 複雑な用件が集まりやすい。
       

    電話クレームを入れる人の状況

    顧客がなぜ電話クレームという手段を取ったのかを考えることで、対策のヒントにできます。

    • 電話をかけてくる顧客は「今すぐ伝えなければ」という強い気持ちを持っている。
    • 感情的になっていることも多い。
       

    対応する際に気をつけるべきこと

    問題が起こって不機嫌になっている顧客に対して、電話を通じて直接やり取りを行うカスタマーサポートは以下の点に留意します。

    • 事前に自動音声などで記録に残すことを伝えておく。
    • 「お待たせいたしました」の声かけから始めることで、相手の感情にワンクッションを置くようにする。
    • 声のトーンや抑揚の付け方が機械的にならないように気をつける。
    • 新人でも不安なく対応できるように、ロールプレイングで日頃から顧客対応を練習しておく。
       

    2. メール

    電話の項で紹介したアメリカの統計では、電話の次にメールを利用したクレームが多いと報告されています。状況を把握し、顧客のニーズに応えることを心掛けます。
     

    メールクレームの特徴

    メールクレームには、他のチャネルにはない3点の特徴があります。

    • 営業時間中に電話をかけられない顧客や直接的な対話を好まない顧客が、電話の代替手段としてメールを利用する場合がある。
    • 口頭ではうまく伝えられないトラブルの詳細を、書面で伝えたいと考える顧客がメールを利用する場合がある。
    • クレームを伝えたことを書面で残したいと考える顧客が利用する場合がある。
       

    メールクレームを出す人の状況

    クレームの手段として電話ではなくメールを選ぶ顧客は、次の2点の状況にあることが推測されます。

    • 顧客は緊急性よりも、問題点をメールで正確に伝えたい、という気持ちが強い。
    • 状況改善に役立つ返信を期待している。
       

    対応する際に気をつけるべきこと

    状況を把握した上で、顧客のニーズに焦点を当て、以下の4点を心掛けましょう。

    • わざわざメールを書く手間をかけるほど、顧客にとっては深刻な問題であると考えられる。誠実さが伝わる対応が重要になる。
    • テキストのみのやり取りだと誤解が生じやすい。メールに寄せられた情報が不十分な場合は、追加の情報を求める際に情報不足を直接指摘しないように配慮する。
    • 第三者に転送されたり、SNSなどで拡散されたり、予想外の使い方をされる場合がある。コピー禁止にする、転送禁止をフッターに補足するなどの対応策を取っておく。
    • 顧客からのメールの文面がわかりにくかったり、話が進展しなかったりする場合には、下記のようなメールを送信して対応を電話に切り替える。

    Re:Re:Re:Re:Re 〇〇の不具合について

    〇〇様

    この度は重ねてご連絡いただき、誠にありがとうございます。このたびは弊社商品の不具合が原因でご不便をおかけし、誠に申し訳ございません。もう少しくわしく状況をおうかがいできればと考えております。

    つきましては、弊社技術部門の担当者より、お電話を差し上げたく存じます。大変お手数をおかけしますが、お客様のお電話番号とご都合の良い時間をお知らせいただければ、弊社よりご連絡させていただきます。

    お忙しいところ、まことにご不便をおかけします。お客様からのご連絡を心よりお待ち申し上げております。

    株式会社△△
    カスタマーサポート部
     △△ △△

    -------------------- ( 会社ロゴ)--------

    本メールの無断転載および無断使用は禁止させていただいております。
    何卒ご理解いただきますよう宜しくお願い申し上げます。

     

    3. チャット

    LINEやショートメッセージ、自社Webサイトのチャットヘルプデスクなどを通じてクレームが寄せられる場合もあります。メールに比べて手間がかからない傾向があり、メールよりも気軽に送信できます。チャットは新しいツールですが、今後利用数が増えていくことが予想されています。
     

    チャットクレームの特徴

    チャットには、電話やメールにはない「手軽さ」という特徴があります。

    • 20代にとってはチャットが最もなじみのある手段である。
    • 電話に比べ、通話料がかからない。
    • メールよりもやり取りが早く、手軽に送れる。
    • メールよりも少ないタイムラグで、連絡を取り合える。
       

    チャットクレームを利用する人の状況

    チャットクレームを利用する人の状況は、以下の傾向があります。

    • 電話するほど差し迫ってはいないができればタイムラグなしにやり取りしたい。
    • チャットでのコミュニケーションに慣れている。
       

    対応する際に気をつけるべきこと

    チャットというツールの特徴や、チャットを利用する顧客の状況をふまえ、チャットクレーム対応には以下の3点を心掛けましょう。

    • 早いペースでメッセージのやり取りを行うので、誤解が生じないように、担当者は端的で明確な指示・提案を出す必要がある。
    • テキストベースによる情報伝達では伝えられる情報が限定されるため、行き詰ったら電話に切り替える。
    • 通常からチャット主体の情報の出し方に慣れておく。
       

    4. SNS

    SNSで直接企業に対してクレームを申し立てるのではなく、ユーザーがSNSに投稿することを通じて、問題点や不具合を拡散させるケースが近年問題になっています。

    この種のSNS投稿をクレームのカテゴリーで対処すべきかどうかは、ケースバイケースになります。ここでは「自社が望まない形で拡散されている自社商品やサービスへの批判」や「ネガティブなコメント」をクレームとして扱っています。

    なお、ユーザーが企業アカウントに対して、DM(ダイレクトメッセージ)やコメント欄を通じてクレームを申し出た場合には、メールやチャットと同様の形で事態の収拾を図ります。
     

    SNSクレームの特徴

    SNSに投稿されるクレームには、以下の2点の特徴があることを押さえておきましょう。

    • 顧客側には、商品やサービス、企業の問題点を広く知らせることで、誤りを改めさせたいという気持ちがある。
    • 問題の解決が第1の目標ではないことが最大の特徴で、場合によっては解決しないまま長期化することもあり得る。
       

    SNSでクレームを公表する人の状況

    SNSでクレームを投稿する人の状況は、「問題解決」が主な目的ではないという点で、他のチャネルでクレームを寄せる人とは異なっています。一概には言えませんが、行動の要員としては、主に以下の2点が挙げられるでしょう。

    • 自分の投稿が多くの人の目にふれ、共感されることを求めている。
    • 企業に反省してもらい、過ちが正されることを求めている。
       

    対応する際に気をつけるべきこと

    SNSを通じての炎上が増加している現在、SNSクレームについては日頃からの準備が必要です。以下の6点に留意しておきます。

    • SNS担当者と日頃から連携を取り、SNSクレームを発見した際の対応策を協議しておく。
    • 事実関係を確認する。
    • 対応する必要があるのか、静観すべきかの切り分けを行う。
    • 該当するSNSアカウントにコンタクトを取り、謝罪する。
    • 今後の対応策を提案するとともに、投稿を取り下げてもらうよう依頼する。
    • 事実関係が確認できない場合や虚偽の投稿である場合は、その旨を伝えて改めて投稿の取り下げを求める。
       

    5. 対面

    販売店や企業・病院・役所を始めとした窓口などでは、対人クレームが中心となります。不満を抱えている顧客を対面で接遇しなければならないため、担当者にとっては最も精神的な負担が大きいチャネルです。
     

    対面クレームの特徴

    対面クレームには以下3点の大きな特徴があります。

    • 高い期待度と現実の商品やサービス内容のギャップに不満を抱いたことが原因となっている。
    • 不満感や失望感、怒りなど、ネガティブな感情を直接ぶつける傾向がある。
    • 顧客によっては問題点がどこか、顧客が本当は何を求めているかがわかりにくい場合がある。
       

    対面クレームを行う人の状況

    多くの人にとって、見ず知らずの人に怒りをぶつけるのは、心理的に抵抗がある行為です。対面クレームを行う人にはそれだけの差し迫った状況があることを押さえておく必要があります。中心になるのは以下の2点でしょう。

    • 今、この場での解決を求めている。
    • 今、抱いている不安や不満を解消したい。
       

    対応する際に気をつけるべきこと

    相手の怒りに真正面から向き合うという、負担も難易度も高い対面クレームですが、以下の点に気を付けることで、事態を改善することができます。

    • 窓口での担当者は顧客と同じ目線に保つ。
    • 顧客が「この人なら話して大丈夫」と思えるような信頼感が与えられるような態度を心がける。
    • 顧客に「話を聞いてもらえた」と満足してもらえるように、相手の眼を見ながらうなずく。
    • クレームの内容を受け止めて、今からできる最善は何かを考えてわかりやすく説明する。
    • ロールプレイングで日頃から練習しておくと、新人でも不安なく対応に臨める。
       

    クレームの種類

    クレームの種類

    クレーム対応のマニュアル作りには、起こりうるクレームのパターンを洗い出しておくことが重要です。

    クレームの原因は主に以下の4種類があります。

    1. 商品発送・到着の遅延
    2. 商品の欠陥・故障
    3. 顧客対応が低品質
    4. 商品の機能や利用方法を顧客が誤解

    この4種類以外にも自社に多く寄せられるクレームがあれば、合わせてマニュアル化しておく必要があります。
     

    商品発送・到着の遅延

    最も多いクレームですが、ほとんどのケースで原因がはっきりしており、対処しやすいクレームです。
     

    事前準備

    商品発送・到着の遅延に対しては、事前に準備をしておくことで、迅速に対応することができます。準備の内容は以下の3点です。

    • 商品発送・到着の遅延が起こりやすい商品を把握しておく。
    • 遅延が起こる原因と対応策を調査しておく。
    • 顧客が納得できるような説明シナリオを作成しておく。
       

    クレーム対応

    実際にクレームが来た場合の対応策は以下の2点を中心に行います。

    • 商品発送・到着の遅延をお詫びし、到着の予定時期を伝える。
    • 事故や災害で商品発送・到着の予定が不明の場合はわかり次第連絡し、追ってメールでお詫びをする。
       

    商品の欠陥・故障

    商品の欠陥や故障も多いクレームです。商品の不具合の状態を、いかに正確に把握するかがカギになります。
     

    事前準備

    商品の欠陥・故障のクレームに備えて、以下の4点を準備しておきます。

    • 商品の欠陥・故障が起こりやすい原因と、原因の特定方法をマニュアル化しておく。
    • 修理担当部署と相談しながら、的確に問題点を特定するためのシナリオを作成する。
    • 修理受付や返品受付、費用、送料のマニュアルを作成する。
    • 金品補償を求められた場合のために、補償範囲を決定しておく。
       

    クレーム対応

    商品の欠陥・故障に対するクレームが出た場合は、以下の2点を中心に対応します。

    • 欠陥・故障のお詫びと共に、相手の被った被害に共感する姿勢を見せる。
    • 事前に作成したシナリオに沿って対応策を提案する。
       

    顧客対応が低品質

    顧客が「自分が顧客として尊重されない」という不満から起こるクレームです。顧客側に問題を拡大させたいという意図がなくても、初期対応を間違えると長期化し、問題が大きくなってしまう場合があります。

    問題の根幹には顧客の不安や不満があるため、顧客から「この人なら任せて大丈夫」と思わせ、不安・不満を取り除くことに焦点を当てた対応が必要です。
     

    事前準備

    顧客対応への不満を事前に把握することは、サービスの改善にもつながります。以下の6点を日頃からチェックしておきます。

    • 「受付窓口が混雑しており、〇時~〇時の間は顧客が30分以上待たされる場合がある。」のように、顧客対応で問題になりやすいポイントを洗い出す。
    • 顧客を「〇〇様」と名前で呼ぶ。
    • 事実関係を把握する際のシナリオを作成する。
    • シナリオの中で顧客を個人として尊重している言葉を挟む。
    • クレームの中で金品補償を求められた場合のために、補償範囲を決定しておく。
    • クレームの長期化・悪質化を見極める基準を設け、基準を超えた場合の対応策を決めておく。
       

    クレーム対応

    顧客対応へのクレームが実際に出た場合は、以下の2点を中心に対応します。

    • まずはお詫びして、事実関係を把握した上で、従業員教育を徹底することを約束する。
    • 補償を求められた場合は、決められた範囲で対応する。担当者個人の判断では対応しない。
       

    商品の機能や利用方法を顧客が誤解

    顧客側の誤解がもとでクレームを受けるケースがあります。顧客は自分が困っている問題を解決してもらいたいのであって、正しい説明を求めているのではありません。無理に誤解を解こうとするより「困りごと」の解決策を探ります。
     

    事前準備

    顧客側の誤解が生じやすいポイントを見極めておくことも、サービス改善に役立ちます。知識やスキルを持たない顧客視点で改めてサービス全般を見直し、以下の2点の準備をします。

    • 事前の説明不足や情報不足、取扱説明書でわかりにくいところなどを洗い出しておく。
    • カスタマーサポート内で「知識の不足がある顧客」役と「カスタマーサポート担当者」役でロールプレイングを行いながら、顧客と同一の目線に立てるシナリオを作成する。
       

    クレーム対応

    顧客側の誤解が元でクレームを寄せられた場合には、以下の2点に注意して対応します。

    • 相手に知識がない場合は、知識を提供するのではなく「どうしたら解決できるか」に焦点をしぼって対応する。
    • 誤った認識で主張を繰り返す顧客に対しては「そうなんですか、そのような考え方(見方)もあるんですね。勉強になりました。」とひとまずは相手の話を受け入れてから、問題が起こった原因を説明して対応策を伝える。
       

    クレーム対応の手順

    クレーム対応は、通常は以下の5つのステップです。クレーム対応の流れにしたがって、マニュアル化しておきましょう。各ステップについてくわしく見ていきます。

    クレーム対応の手順
     

    お詫び

    お詫びは企業側の非の有無に関わらず、クレーム対応を先へ進めるためのお詫びであることに留意してください。

    謝罪は非を認めたことになるため、損害賠償責任が発生すると考える企業もあります。しかし、クレームを告げられた段階で謝罪をしないまま事実確認に進んだ場合には、気持ちを重視する日本型のコミュニケーションでは「自分の気持ちをないがしろにされた」と気分を害する人が少なくありません。

    そのため、商品やサービスの過失を認めないでお詫びする必要があります。過失を認めずお詫びする場合は「何についてのお詫びか」を限定します。大きく分けて以下の3つのパターンがあります。

    1. 相手に与えてしまった「不快感」に対してお詫びする
      「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」
    2.  相手が感じている「不満」に対してお詫びする
      「ご不便をおかけして大変失礼いたしました」
    3. こちらの「手際の悪さ」に対してお詫びする
      「お手間をとらせてしまい、不行き届きだったこと、心よりお詫びいたします」

    そのとき、お詫びの前にひとこと、相手への気遣いの姿勢を示すだけで、顧客の不機嫌さも和らぎます。
     

    相手が感情的な場合

    顧客が感情的になっている場面で担当者が冷静に聞いている姿は、逆効果になる場合があります。冷静に耳を傾ける担当者の姿を見て「自分はこんなに困っているのに」と、さらに怒りをかきたてられるからです。

    カウンセリングやビジネスの現場で活用されているNLP心理学では「ペーシング」という手法がよく使われます。ペーシングでは、声の調子や大きさを相手に合わせます。感情的になって大声で怒鳴る相手には、同じように大きな声で「本当に申し訳ございませんでした!」とエモーショナルに伝えます。そうすることで、感情的になっている相手が「自分の感情を受けとめてくれた」と信頼感を抱くようになります。
     

    状況把握・事実確認

    顧客の話に耳を傾け「いつ、どこで、誰が、どのように、どうなったか」を整理しながらメモを作成し、状況把握と事実確認に努めます。
     

    状況把握

    状況把握は以下の点に重点をおきます。

    • クレームの目的や動機
    • 事態の深刻度、顧客の困り具合
    • 顧客の求めること
       

    事実確認

    事実確認とは、クレームの内容が事実に沿ったものかを確認するものです。要所をまとめ、相手に一つひとつ確認を取りながら進めていきます。
     

    解決策・代替案の提示

    状況把握と事実確認をふまえ、解決策・代替案を提示します。

    専門的な対処が必要で、カスタマーサポート担当者が即座に対処できない場合は、一旦通話を終了して、専門部署から再度電話をしてもらった方がよい結果を生みやすくなります。

    別の部署に直接対応を引き継ぐと、顧客は同じことを2度説明することになり、不満が募ります。クレーム対応の不満でも、上位にくるのがこの「たらい回し」です。

    顧客に同じ手間を2度取らせないよう、カスタマーサポートが最初に聞いた情報を、社内チャットなどを通じて担当部署に伝えます。
     

    クレームに対するお詫びと感謝

    クレームは顧客の最も切実なフィードバックです。そのため、クレームを寄せてくれた顧客に対しては、商品やサービスの不具合を洗い出し、問題を改善する機会を与えてもらったことに感謝の気持ちを表明することが大切です。

    クレームが寄せられたその場で感謝の意を表すだけでなく、どのように改善されたかをフォローアップメールで知らせます。メールを受け取った顧客は「自分が役に立った」という満足感を味わえます。
     

    クレームにもとづく商品改善

    ユーザーから指摘のあった不具合だけでなく、関連する部分を含め、全体を見直すことで、よりユーザーニーズに合致した商品やサービスへと改善できます。

    また、クレームの対応を振り返り、マニュアルやシナリオをより整備することも重要です。
     

    各チャネルのクレーム対応例

    各チャネルのクレーム対応例

    クレームに対応する際の対応例を、電話、メール、チャットのチャネルに分けて紹介します。自社により即した形にして作成してご活用ください。
     

    電話

    電話でのクレーム対応の例をシナリオの形で紹介します。ここでは「パソコンのカスタマーサポート」に、購入したソフトウェアが動かないというクレーム電話がかかってきた場面を想定しています。

    顧客 「この間、入れたソフトが動かないんだけど」
    CS(カスタマーサポート) 「せっかくお買い上げいただいて、これからというときに大変ご不便をおかけいたしました。お仕事に支障はございませんでしたでしょうか?」
     
    顧客 「今、困っているからすぐに対応してほしい」
    CS 「お忙しい時に、ご不便をおかけして誠に申し訳ございません。もう少しお話をうかがわせていただいてもよろしいでしょうか?」
     
    (ここから状況把握に入ります)
     
    以下の3点を確認し、技術部門につなぎます。
     
    ・いつ、どこで、どのような状態で
    ・何があったのか
    ・現在の状態はどのようなものか

     

    メール

    メールでの対応例を紹介します。ここでは顧客から送られてきた「商品破損のクレームメール」に対して謝罪し、代替品を送付した場面を想定しています。

    件名:「(商品名)」破損のお詫び

    株式会社 ABCD商事
    営業部  〇〇〇〇様

    急啓

    平素より格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
    株式会社EF カスタマーサポート担当△△ △△と申します。

    この度は、弊社の商品が破損していたこと、誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げます。弊社で確認したところ、検品の一部に不備があったことが判明いたしました。

    本日、至急お取り替えの商品を発送致しましたので、明日(〇日)の午後には御社でお受け取りいただけると存じます。

    今後、同様のミスが起こらぬよう、徹底した商品管理を心掛ける所存です。
    なにとぞ今後もお引き立て賜りますようお願い申し上げます。

    まずは書中をもちまして、商品発送のお知らせとお詫びを申し上げます。

      署名

     

    チャット

    チャットでの対応例を紹介します。「商品の在庫切れに対するクレームがチャットで寄せられた」という場面を想定しています。

    顧客 「今日、在庫切れというメールをもらったんですけど」
     
    CS 「せっかく私どもの商品を楽しみにしていただいていたのに在庫切れのお知らせで、さぞがっかりなさったことと存じます。誠に申し訳ございません。お手数ですが商品番号、または商品名をお知らせいただけますか?」
     
    顧客 「〇〇です」
     
    CS 「商品番号123456番 〇〇でお間違いありませんでしょうか?」
     
    顧客 「はい」
     
    CS 「該当の商品は現在注文が殺到しておりまして、一時的に欠品となっております。誠にご不便をおかけして申し訳ないのですが、次回の入荷予定は〇月〇日となっております…」
     
    顧客 「そんなに待たないといけないんですか?」
     
    CS 「商品発送まで大変お待たせすることになり、心苦しい限りでございます。同様の商品が何点かございます。そちらの商品URLをお伝えいたしますので、ご検討いただけますでしょうか?」
     
    顧客 「ちょっと考えさせてください」
     
    CS 「どうぞ十分にご検討ください。また、キャンセルをご希望であれば、その旨をお伝えください。」
     
    顧客 「わかりました」
     
    CS 「この度は、ご注文いただいた商品でご期待に沿えず申し訳ございませんでした。今後ご希望がございましたら、いつでも対応いたしますので、なにとぞお知らせくださいますようお願い申し上げます。」

     

    クレーム対応の4つのポイント

    クレーム対応の際に気をつけるポイントを4点紹介します。

    1. 顧客に共感することから開始する
    2. 短時間でクレーム対応できる準備を行う
    3. 声のトーンや話すスピードを工夫する
    4. 顧客目線で説明を行う
       

    1. 顧客に共感することから開始する

    クレーム対応を行う場合には「メラビアンの法則」を頭に入れておきます。

    顧客に共感することから開始する

    メラビアンの法則とは、例えば「嫌そうな顔をしながら、わかりましたと答える」「怒った顔をして、楽しんでいます、と答える」など矛盾したメッセージが発せられた場合、人はその中でどの要素を中心に受け取るか、という実験から得られたデータです。

    メラビアンの法則からわかるのは、人は話の内容よりも、謝罪が伝わる表情や声のトーンを意識するということです。クレームに対応するには、相手の困りごとに焦点を当て、共感とお詫びの表情やトーンを伝える必要があります。顔の見えない電話クレームであれば、いっそう共感の気持ちを声にこめるようにしてください。
     

    2. 短時間でクレーム対応できる準備を行う

    時間がかかるほど顧客の怒りは増していきます。顧客の多くは対応の早さを誠意のバロメーターと評価するため、迅速な対応がカギとなります。

    迅速な対応ができるように、マニュアルとシナリオを用意してください。また、対応が担当者によってばらつきが出ないよう、シナリオをもとにロールプレイングによって慣れておきましょう。
     

    3. 声のトーンや話すスピードを工夫する

    基本的には顧客を安心させるような落ち着いた声とスピードで対応することが大切です。特に電話では、自信のなさそうな声や、相手を警戒しているような声は、表情の助けがない分、思っている以上に顧客に伝わってしまいます。

    逆に感情的な顧客に対する担当者の冷静な対応が「自分がこんなに困っているのに」と顧客の怒りの火に油を注ぐ結果にもなりかねません。相手のペースに合わせるペーシングの練習も、ロールプレイングに取り入れてください。
     

    4. 顧客目線で説明を行う

    クレーム対応中の顧客が不満を感じやすいのが、「上から目線」です。カスタマーサポートや窓口の担当者は顧客よりも知識・情報があるため、学校の先生のように教える調子になりがちです。教え諭す調子を「上から目線」と感じて、気分を害する顧客もいます。

    顧客が求めているのは「教えてもらうこと」ではなく、困りごとを理解してくれ、責任を持って問題を解決してもらうことです。教えるのではなく、理解していることと解決策を伝えることに意識を向けてください。顧客と目線の高さを合わせるように気をつけましょう。

    ここまでご紹介した4点はいずれも、一歩間違えると顧客を怒らせたり、悪質クレーマー化させる原因となります。悪質なクレーマーには組織全体での毅然とした対応が大切ですが、その前段階でまずは悪質化させない対応を工夫してください。
     

    クレーム対応の注意点

    クレーム対応を通じて問題が解決した顧客に満足度を尋ねて、クレーム対応の評価を行ってもらうことが重要です。

    通常、クレームの評価にはNPS(ネットプロモータースコア)という指標が使われます。NPSは「自社の商品を同僚や家族、友人などの親しい人に薦める可能性はどのくらいありますか?0~10の点数で評価してください。」という質問によって得られる指標です。

    クレーム対応の注意点

    毎回計測して、推奨者、中立者、批判者の割合を出します。以下の式によって、NPSのスコアが算出できます。

    NPS = 推奨者(%)  - 批判者(%)

    「大切な家族や友人に薦めることができるか?」と質問されると、ほとんどの人は立ち止まって真剣に考えるでしょう。自由記載欄も設け、NPSの評価を出してもらいます。

    NPSについて詳細を確認したい方は、本ブログの別記事の「世界的な企業が活用するNPSとは?持続的な成長力の原動力を徹底解剖」を参考にしてください。
     

    不満を持っていた顧客をクレーム対応でファンに変えよう

    「カスタマーハラスメント」という言葉が生まれるほど、顧客からのクレームは社会問題化しています。この問題は複雑な背景があるため、一朝一夕には解決できません。

    しかし、企業視点で考えるならば、クレームは商品やサービスの改善のきっかけになる、ありがたいものです。顧客からクレームを寄せられた段階で、機械的な受け答えをしたり「上から目線」という印象を与えたりすれば、事態は悪化してしまいます。

    適切なクレーム対応を行えば、顧客がクレーマー化する前に顧客の不満を取り除き、問題を解決できます。さらに企業の対応が顧客の感動を生むものであれば、顧客はクレームを出した企業のファンになってもらえる可能性まであります。

    クレームを糧に成長できる組織作りのために、カスタマーサポートを中心としたクレーム対応マニュアルを整備して、クレーム対応に活用していきましょう。

    HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

     

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