近年、サブスクリプションビジネスが注目を集め、さまざまな業界で活用されています。市場規模は年々拡大し、多くの企業が参入しているものの、失敗に終わる例も少なくありません。
今回はサブスクリプションビジネスを成功させるために効果的なマーケティング戦略のポイントと課題について解説します。
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サブスクリプションビジネスの基本と指標を理解して成功へと導きましょう。
- サブスクビジネスのメリットとデメリット
- ビジネスを成功に導く実践方法
- 指標を使った分析方法
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サブスクリプションビジネスとは
サブスクリプション(Subscription)は、定額料金内で、契約期間中に該当する製品やサービスを利用できる料金形態です。新聞購読もサブスクリプションの一種であり、以前より、サブスクリプションビジネスは取り入れられていました。その後、SaaSの利用拡大に伴い、注目度が高まっています。
B2Bだけでなく、B2Cにおいてもサブスクという略称で、消費者の認知度も高まっており、利用者は増加傾向にあります。
主なビジネスケースとしては、動画配信サービスのNetflixやHulu、音楽配信サービスのSpotifyのほか、AdobeのCreative Cloud(Photoshopやillustratorなどのソフト使用)やMicrosoft Office 365などが代表的です。
所有ではなく、利用したいというユーザーのニーズを満たしながら、製品やサービスの利用を定着させる仕組みを考えてみましょう。
サブスクリプションビジネスを成功させるには?
サブスクリプションビジネスは、ユーザーに継続して利用してもらうことで収益につながるものです。サブスクリプションはユーザーのニーズに応じて柔軟に利用範囲、料金を変更できる点がメリットなので、単なる定額制サービスではなく、ユーザーとのつながりを強化しながら、使い続けたいと思ってもらえる必要があります。
つまり、成果を出すには、顧客ニーズを満たし、カスタマーサクセスを成功させる考え方が欠かせません。新規顧客の獲得だけでなく、いかに満足して継続して利用してもらうかがカギとなります。解約率を下げる施策においても、顧客視点を意識して取り組む必要があるでしょう。
サブスクリプションビジネスにおけるマーケティング4つのポイント
上述したように、サブスクリプションビジネスは、継続性のある顧客とのつながりを維持するためのカスタマーサクセスが要となります。当然、マーケティングもカスタマーサクセスとの連動性が求められます。顧客満足度を高めるのはもちろん、潜在的なニーズに応え続ける仕組みづくりを意識する必要があるでしょう。
では、サブスクリプションビジネスのマーケティングを考えるうえで、何を押さえておくべきなのでしょうか。ここでは4つのポイントを紹介します。
1.ユーザーと密にコミュニケーションする
サブスクリプションビジネスは、ユーザーが「使い続けたい」と思える設計が大前提となります。良質なサービスの提供はもちろん、ユーザーを飽きさせないブラッシュアップの継続が求められます。ユーザーと直接対話する、カスタマーサクセス担当者からユーザーの状況をヒアリングするなど、とにかくユーザーの状況を把握するよう努めましょう。
CRMで顧客情報を管理し、行動データをもとにニーズ理解を進めるのも有効な手段です。
2.顧客体験の改善
サブスクリプションのビジネスモデルは、常に顧客と接点を持ち、良好な関係性を継続することで成立します。有料ユーザーはもちろん、無料ユーザーに対しても、常に顧客視点での価値を提供し続けましょう。
3.カスタマーサクセスを重視する
サブスクリプションビジネスでは、受動的なカスタマーサポートだけではなく、顧客の課題を先回りして解決しに行く能動的なカスタマーサクセスが求められます。常にユーザーの状況や心境は変化しているので、その変化を察知し、こちらから先に解決策を提案できるようなカスタマーサクセス体制を構築しましょう。
4.チームで共通認識を持てる、明確な指標を設定する
これまでに施策を実行しても実際に成果が出ているとは限らないため、常に状況を把握しなければいけません。明確な指標を打ち出し、PDCAを回しながら成果を高める必要があるでしょう。しかし、サブスクリプション事業単体の指標があっても、企業の経営方針とマッチしていなければ求める結果にはつながりにくいものです。
適切なKPIを設定し、それに沿った指標を打ち出すことが大切です。
サブスクリプションにおけるKPI設定については、以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
サブスクリプションビジネスにおける代表的なマーケティング戦略
サブスクリプションビジネスの成功事例を見ると、さまざまな施策を行っていることがわかります。実際に活用されている戦略事例として、代表的なものを紹介しましょう。
1.フリーミアム、もしくは無料トライアルの提供
サブスクリプションビジネスでは、最初の登録にハードルがあります。そのため、多くの企業では無料で使用できるプランや期間を設定し、窓口を広げるフリーミアム戦略を取り入れています。
無料で一部のサービスを利用できる権利は、ユーザーに安心感を与えるとともに、使用感を確かめる良い機会として利用ハードルを下げてくれます。同時に、企業側にとってはトライアルのタイミングでユーザーの不満やニーズを得るチャンスです。ユーザーの潜在的なニーズを把握すれば、無料利用もしくはトライアルからのアップセルもアプローチしやすいでしょう。
また、フリーミアム戦略は、すでにユーザー側にも定着しつつあります。無料トライアルの機会がないと、かえってファーストタッチが遠のく可能性もあるでしょう。
2.アップセル・クロスセルによる収益の拡大
上述したフリーミアム戦略においても、最終的にはアップセルによるクロージングを行うことになります。段階的な価格設定で、ユーザーにとって最適なプランを提案できれば、成果も高まります。価格設定や対象によって異なりますが、月額プランや、年間一括プランなどの選択肢を増やすのもよいでしょう。また、関連商品を開発し、クロスセルによる収益拡大を見込むのも一案です。
サブスクリプションビジネスでは、常に解約リスクが付きまといます。継続的な収益とともに、プラスαの収益確保を考えることも大切です。
3.UGCの活用
サブスクリプションビジネスに限らず、多くの市場においてユーザーによる口コミやレビューが重視されるようになりました。
ユーザーが多様化したことから、企業の情報よりもリアルな体験談を求める傾向にあります。このような、ユーザー自らが発信した企業に関する言及を「UGC(User Generated Content)」と呼びます。重要なリソースとして活用を検討してみましょう。
4.ユーザーとのコミュニケーションをパーソナライズ化する
メーリングリストを活用して、アップセル、クロスセルを提案するほか、SNSやカスタマーサポートを通じてコミュニケーションの強化を図る施策を取り入れてみましょう。
その際、重要なのが、リストのセグメント化です。よりパーソナライズを意識した提案で、アプローチがしやすくなります。また、フリーミアム戦略と並行して、リーチを拡大させるのにも役立ちます。
継続性が求められるビジネスモデルだからこそ、最新情報を提供しながら、細やかなアプローチを行う必要があります。
5.LTV向上と解約率低下を目指す
継続的な収益を考えるうえで、重要な指標となるのがLTV(顧客生涯価値)です。先にもお伝えしたとおり、継続率アップがカギとなるビジネスモデルにおいて、解約率を低下させるための施策は欠かせません。買い切り型とは異なり、1回利用いただいて満足してもらえず離脱されてしまうようなサービスでは、ビジネスモデルとして成り立たないことを理解しておきましょう。
マイナスを補填する形でアップセルやクロスセルの収益を見込むことも大切ですが、そもそもの解約率を下げるための、満足度を高める取り組みを優先しましょう。
LTVについては、以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
サブスクリプションで起こりがちな課題と対策
サブスクリプションビジネスのマーケティング手法はさまざまです。ただし、どのような施策を取り入れても、課題は残ります。施策企画段階で考えておきたい課題について解説します。
無料トライアルからの離脱
ユーザーの多くは、無料でトライアルしたいと考えているでしょう。他社サービスとの比較のためだけでなく、UIや機能性を確認したうえで、最終の契約を検討したいからです。特にB2Bの場合には、顧客の利用環境とマッチするかなどは慎重にチェックしたいポイントです。
もちろんすべてのトライアルユーザーが成約することはありませんが、トライアル中に満足度を高め、信頼を得られれば、そのまま成約に至る可能性があります。
トライアル期間中のフォローや契約の導線をわかりやすくするなど、離脱されないような仕組みを構築しておきましょう。
関係性を深めるフリーミアム戦略は、新規利用者の獲得に有効ですが、トライアル後の体制構築こそが重要なのです。
価格設定とコストのバランス
サブスクリプションビジネスでは、長期利用を見込んで料金を設定するケースがほとんどです。しかし、実際のところ、短期利用者が主となったり、解約率が高かったりすると、料金設定に狂いが生じます。
初回割引など、キャンペーンとして割引価格を提供する場合においても、通常価格に戻った途端に解約されるようでは、継続的な収益が見込めません。お得感だけで新規顧客を集めても、かえってコストばかりがかかってしまいます。
サービス提供当初から顧客ニーズを把握し、市場規模を想定したうえで、コストを加味した価格設定を考える必要があるでしょう。
具体的な事例として、AOKIホールディングス(紳士服の製造販売)によるスーツレンタルサービス「suitsbox」があります。半年で終了してしまった同サービスは、事業撤退となった理由の1つに、「システム構築費並びに、サービス運用コストがかさんでしまった」ことを挙げています。
物理的な商品を提供するケースだけでなく、クラウド利用となるSaaSにおいてもコスト計算はとても大切です。莫大な初期の開発費用を回収するために、明確な期間を設けて対応しなければ、いつまでたっても純利益は上がらないかもしれません。
決済方法への配慮
サブスクリプションサービスの多くは、クレジット決済が主な支払方法となっています。しかし、一部のユーザーはクレジットカードを持っていなかったり、使用に抵抗があったりして、サービスを利用したくてもできない状況にあります。
こうしたユーザーを対象としないのも一案ですが、支払方法の選択肢を広げることで、ユーザーストレスを減らし、利用率を高められる可能性があります。具体的には、B2Bの場合には、請求書発行ののちに銀行振込ができる、B2Cであればコンビニ決済ができるといった仕組みを取り入れるのもよいでしょう。
新規顧客の取りこぼしを減らすと同時に、顧客体験を高めることにもつながります。
サブスクリプションビジネスのマーケティングは「ユーザーファースト」を重視する
サブスクリプションビジネスでは、ユーザーとの継続的な関係を築きながら、解約率を下げるマーケティングによって成果が上がります。買い切りモデルを前提とした従来のマーケティング手法においても、顧客満足度を重視する傾向にありますが、サブスクリプションビジネスでは、さらに上を行くユーザーファーストを意識しなければいけません。
サブスクリプションビジネスの優れたデータ収集性を生かし、ユーザーの潜在的なニーズに応え続けることが肝心です。ただし、データ活用においては指標の設定が不可欠です。適切なKPIを設定し、PDCAを回しながら、常に最適な情報を提供し続ける仕組みを整えましょう。