属人化した業務があると、作業全体がストップしてしまったり、ノウハウが蓄積されなかったりするといったリスクを伴います。そうした属人化を解消するために役立つのが「業務マニュアル」です。特定の担当者以外でも業務に対応できる仕組みを作るには、一定のルールや決められた手順を提示する必要があります

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業務マニュアルは、業務効率が向上するだけでなく、最終的には顧客体験の向上も期待できます。ただし、作り方や運用方法によっては、かえって社員にストレスを与えるきっかけになりかねません。

今回は、業務マニュアルを活用するメリットともに、効果的な作成手順や運用時のポイントについて解説します。

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業務マニュアルとは

業務マニュアルとは


本来、マニュアル(manual)とは、ラテン語のmanus(手)を語源にし「手動で行うこと」を意味します。日本において、マニュアルは「手順書、手引書」と同義で使われることが多く、業務の流れやり方を具体的にまとめたもの指すケースがほとんどです。

業務マニュアルは、あらゆるビジネスシーンで活用されるものであり、システムの操作方法をまとめたオペレーションマニュアルや、カスタマーサポートでの対応マニュアル、品質チェックマニュアルなど、その種類はさまざまです。ただし、マニュアルは、単なる取扱説明書とは異なり、手順書にとどまらず、経営方針や業務上のルール、トラブル時の判断方法など、組織の指針を踏まえて作成します。企業姿勢が反映されたマニュアルを活用することで、社員が同じ目標を持ちながら、より最適化されたフローで業務を遂行できるようになります。
 

業務マニュアルを導入する目的

業務マニュアルは、操作手順や業務フローを覚えるためのツールではありません。一貫性のある指針にそって業務を遂行し、効率よく生産性を高めることが本来の目的です

また、組織全体が同じ目標に向かって業務を進めるうえで、明確なルールがあれば目的を見失うことがありません。そのほか、新たな指針や新システム導入を容易にするために、マニュアルを作成するケースもあります。
 

業務マニュアルのメリット

業務マニュアルのメリット


業務マニュアルの導入が与える具体的なメリットを7つ紹介しましょう。
 

1. 業務の共有による属人化の予防・解消


業務マニュアルがあれば、特定の社員に依存する必要がなく、業務内容が共有されている環境がつくれます。結果、属人化の解消につながり、誰もが取り組める業務として標準化が進むことでしょう。
 

2. 業務品質の安定・向上


業務マニュアルの活用により、どの社員が業務を担当しても、同じレベルの品質を保てます。スキルや経験の差が緩和されるだけでなく、暗黙知が減ることで、対応者の経験や判断力に依存せず業務遂行が可能です。また、複数の社員が担当することで、改善点を把握しやすく、業務品質の向上も期待できるでしょう。
 

3. 業務フローの最適化


業務マニュアルを作成するプロセスでは、フロー全体の可視化や効率化を検討することになります。練り上げられたフローは、より最適化され、工数削減にも役立ちます
 

4. 人材教育にかかるコストの削減


業務マニュアルは組織の指針を伝える役割があり、人材教育にも活用できます。新入社員や異動してきたばかりの社員でも、マニュアルを見ることで早くから業務に対応できるでしょう。わかりやすいマニュアルは、指導にかかるリソースを短縮し、人材教育にかかるコスト削減につながります
 

5. 業務ノウハウの蓄積


属人化した業務は、担当者の離職や異動時に細かいところまで引き継ぎされないケースもあり、社内にノウハウが蓄積されにくい傾向にあります。その点、フローが可視化された業務マニュアルがあれば、後継者への引継が容易になり、ノウハウとして社内に蓄積されます。積み重ねたノウハウは再現性のあるフローを確立させ、最適解に導く判断材料となりえます。
 

6. オンボーディング・プログラムに役立つ


オンボーディング・プログラムとは、新卒社員や中途採用社員といった新入社員が、早い段階で活躍できるように企業が支援する仕組みを指します。業務マニュアルを活用することで、業務全体を把握させ、早い段階で業務への理解を進めます。採用の費用対効果をあげ、人材の定着を促すことにもつながります
 

7. 成果測定が行いやすい


属人化した業務は、フローが見えないため、業務品質の評価がしづらいものです。業務マニュアルがあれば定量化しやすく、成果測定が行いやすくなることに加えて、公平な人材評価にも役立ちます。
 

業務マニュアルが活用されないのはなぜか

業務マニュアルが活用されないのはなぜか


ビジネスシーンにおいて、マニュアル化はすでに定着したものであり、活用している企業がほとんどでしょう。しかし、「マニュアルはあるのに活用されていない」、「うまく運用できずに意味をなしていない」といったケースも少なくありません。では、なぜそのような状況に陥るのでしょうか。業務マニュアル運用時に発生しやすい課題を見てみましょう。
 

1. マニュアルの内容がわかりにくい


業務マニュアルを作成しても、使用者が理解できなければ積極的に活用されません。フローの説明が難解になっていたり、専門用語に偏った解説になったりしていると、かえって非効率になり、マニュアルの役割を果たせません。まずは、ポイントを絞った業務マニュアルであることが重要です。
 

2. マニュアルがどこにあるのかわからない


マニュアルの保管場所が引き継がれていなかったり、周知が徹底していなかったりすれば、マニュアルが使用されることもないでしょう。また、マニュアルがバラバラに配置され、部署ごと、チームごとなどに散らばっているケースも見られます。業務全体のフローが可視化されていないときにありがちな傾向であり、そもそもマニュアルの価値が認識されていない状況にあります。まずは、マニュアルの重要性を周知し、管理体制を整える必要があります。
 

3. 取扱説明書代わりに扱っている


上述したように、本来、業務マニュアルは、単なる手順書ではなく、一貫性のある指針に従って業務を進めるために活用するものです。しかし、操作や手順に慣れ作業がルーティーン化していると、マニュアル不在のまま進行されます。そうした状況が続けば、マニュアルがあることさえ忘れられてしまうかもしれません。マニュアルの内容に問題がある可能性もありますが、マニュアルを使用する機会が少なくなれば、人為的なミスが発生しやすくなり、メリットが得られません。マニュアルの効果的な活用を検討する必要があります。
 

4. マニュアルが更新されていない


マニュアル作成には時間がかかるため、完成自体をゴールにしていると、その後の更新が滞ってしまいがちです。現場レベルではすでに業務フローが変化しているのに、マニュアルが古いままでは活用されないのも当然でしょう。最新でないマニュアルは、価値がありません。
 

5. マニュアル優先/信頼しない組織文化がある


業務マニュアルは適切に扱われるべきものですが、組織文化によってもその価値が大きく変化します。「マニュアル重視」の組織文化があると、たとえ非効率であっても、順守するように徹底されます。改善が期待できないマニュアルは、社員の不満を集め、モチベーション低下を招きます。その一方で、作業スピードを求められるような状況になれば、効率化を図るためにマニュアルが放棄され、属人化を招く可能性があるでしょう。

逆に、「マニュアルを信頼しない」組織文化がある場合は、現場の意見が最優先で、手順通りに実施さず、マニュアルの存在が意味をなさないこともあります。

いずれの場合でも、業務マニュアルによる標準化は滞ります。マニュアルの活用について、組織としての姿勢を示す必要があるでしょう
 

業務マニュアル作成のポイント

業務マニュアル作成のポイント


では、効果的に活用できる業務マニュアルを作成するには、どのような点に注意すべきでしょうか。業務マニュアル作成時に意識したい6つのポイントを解説します。
 

1. 目的を明確にする


業務マニュアルの活用に、どのような結果を期待しているのか、組織として目的を明確にすることが大切です。人材教育コストの削減を主な目的とするのか、業務効率の向上を目指すのかによっても、マニュアルの内容が異なります。目的と同時に、主なマニュアル使用者となる対象を明確にしておきましょう。
 

2. 業務の全体像を記載する


項目ごとに細分化した業務マニュアルのみでは、全体像が見えず、業務の価値や判断基準が伝わりづらくなります。何のためにその業務を実施するのか、また、どのようなゴールに向かって進めているのかが伝わるよう、全体像を記載しておく必要があります。また、どの業務を誰が担当しているのか、管理者や承認者などがわかる組織図を添え、連絡先まで記載しておくと、連携が取りやすくなります。
 

3. 対象・利用環境に合わせたレベルで作成する


マニュアルが使用者に理解できない内容になっているようでは、意味がありません。対象者に合わせて、わかりやすさを重視したマニュアルを作成しましょう。フローチャートや動画など、直感的に理解を促すよう視覚的な要素を取り入れることで、伝わりやすくなります。また、マニュアル内で使用する用語やフォーマットの統一も欠かせません。専門用語には解説を添えるなど、対象者のレベルに合わせたフォローが必要です。

加えて、利用環境やツールを考慮し、紙ベースなのか、クラウドデータなのか、アプリなのかによって、形式を検討します。使用メディアがタブレットかPCかによっても、見やすさが異なるため注意が必要です。
 

4. 判断基準、到達目標の明示


業務マニュアルが単なる手順書になってしまわないように、業務遂行における判断基準まで明記することが大切です。また、到達目標や業務のゴールを記載し、明確なプロセスを提示しましょう。全体像を伝えることで、抜け漏れやミス防止にも役立ちます。重要なポイントにはチェックシートを活用し、成果が比較できるよう事例を入れておくのも有効です。
 

5. イレギュラー/トラブル時の対応法を記載


通常時の業務フローに加えて、イレギュラーやトラブルが発生したときの対応法も記載します。緊急時の判断基準などをまとめ、幹部の承認が必要な場合には、連絡先なども詳しく記載しておくと良いでしょう。業務上の問題だけでなく、災害時などの対応も記載しておくと、危機管理の面でも有効です。
 

6. 柔軟に更新できる仕組みを整えておく


業務マニュアルは常に最新の情報に更新しておく必要があります。定期的なヒアリングを行いながら、指標に基づいた定量評価を行い、適時更新を行いましょう。PDCAを回し、改善を図ることで最適化された状態が保てます。また、マニュアルの更新方法についても事前に検討しておくことが大切です。更新に時間やコストがかかる仕様では、更新が遅れしまう可能性があります。柔軟に対応できる仕組みを考えるとともに、マニュアル管理の重要性を認識する必要があります。
 

業務マニュアルの作り方

業務マニュアルの作り方


上記のポイントを踏まえて、業務マニュアルの具体的な作り方を解説します。5つのステップに従って、効率よく作業を進めましょう。
 

1. 現場からのヒアリング


まずは、実際にマニュアルを活用する現場の意見を集めます。一方的なマニュアルの押し付けにならないよう、ヒアリングした内容を取り入れることが大切です。また、同時にマニュアル作成の目的や必要性を理解してもらい、積極的に活用してもらえるよう協力を促しておくとよいでしょう。このとき、マニュアルの配布範囲を決めておくとスムーズです。
 

2. 業務内容やフローを整理・分析


マニュアルを作成する業務について棚卸しし、作業内容や手順、ポイントなどを細かく整理します。現行のフローから改善すべき点がないか分析し、ポイントをまとめます。同時に、どのプロセスまでマニュアル化するのか、明確な範囲を決めましょう。
 

3. 使用するツールを決める


Word、Excelといったソフトで作るのか、マニュアルアプリを活用するのか、Web上にサイトを立ち上げるのか、マニュアルに使用するツールを検討、決定します。共有方法によって異なるため、同時に、設置するプラットフォームについても検討します。特に秘匿性の高いものや重要度の高いものについては、セキュリティ面にも注意しながらツールを決定する必要があります。
 

4. マニュアルの構成、作成、チェック


業務マニュアルは大枠から作成し、徐々に細部を詰めながらまとめます。細部にばかり着目していると、マニュアルが膨大になってしまう恐れがあります。まずは、カテゴリごとに目次を作成するといった全体把握から進め、そのうえで細かいポイントを加えていきましょう。また、マニュアルには社内規則やコンプライアンスなどを加味したポリシーの記載も重要です。特に判断基準などは明確にし、重要な注意点については、簡易マニュアルとしてチェックリストを作成すると良いでしょう

チェックリストの処理(回収か、目視のみかなど)も事前に検討しておくと、実施時のフローが明確になります。マニュアルがある程度完成した段階で担当者以外の社員に実際に使用してもらい、修正や改善を加えながら整えます。
 

5. マニュアルの導入と評価


マニュアル導入がスタートした後は、現場にヒアリングし状況を確認します。定量評価も用いながら、定期的に見直して改善、更新する必要があります。ただし、スタート直後は細かな修正や改善が発生しやすいものです。どの程度のサイクル、頻度で更新するのか、事前にスケジュールを立てておくと良いでしょう
 

業務マニュアルにフローチャートを活用するコツ

業務マニュアルにフローチャートを活用するコツ


業務マニュアルは、使用者にとって使いやすく、わかりやすい構成になっている必要があります。そこで取り入れたいのが、フローチャートです。ただし、フローチャートもスタイルによっては、かえって混乱を招く可能性があります。フローチャートを使用する際には、以下のポイントを踏まえて作成しましょう。
 

作業レベルを均一にする


フローチャートを作成する際、細かい条件によって分岐が設定されているものと、大まかな工程だけしか書かれていないものが混在すると、業務の全体像が見えにくくなります。作業レベルを一定にし、全体が俯瞰できる図解となるように意識的して作成しましょう
 

チャートの形式を統一する


フローチャートは、図形に一定のルールを設けて、簡潔に次の工程を伝えるものです。どのフローでどのような行動を行うのか、形式や定義を統一しておくことが重要です。マニュアルごとにルールが異なると、混乱を招きます。配置転換があっても、すぐに理解できるフローチャートとなるよう組織全体で統一化しておく必要があります。
 

分岐の条件を明確に


開始と終了を明示することで全体像を表し、分岐の条件を明確にすることで判断基準を提示します。細かい条件がわからなければ、どのような判断をすればよいのか、どのプロセスを選択すべきなのかも判断できません。複雑な分岐を作りすぎないように注意しましょう
 

無料で使える業務マニュアルテンプレート

無料で使える業務マニュアルテンプレート


業務マニュアルを作成するといっても、どのようなデザインやフォーマットにすればよいか悩むかもしれません。インターネット上には簡単に業務マニュアルを作れる無料テンプレートが多数配布されています。代表的なものを一部紹介します。
 

日本マイクロソフト


日本マイクロソフトでは、マニュアル作成に役立つテンプレートを複数提供しています。マニュアル作成ツールとして取り入れやすいWord、Excel、PowerPoint、Accessなど、ソフトごとにテンプレートがあるため、連携させやすく、統一感のあるデザインにまとめられるのが特徴です。

参考:Office テンプレート|日本マイクロソフト
 

SILAND.JP


Officeソフトを使用したさまざまなテンプレートを提供するSILANDには、業務マニュアルのテンプレートもあります。操作マニュアル、運用マニュアルなど、すでにデザイン化されたものに必要な項目を入れ込むだけなので、作成も簡単です。

参考:ワードで作成する業務マニュアル・運用マニュアル用テンプレートの紹介 SILAND.JP
 

bizocean


ビジネステンプレートを多数提供するbizoceanにも、Officeソフトで編集できる業務マニュアルテンプレートがあります。操作マニュアルや棚卸実施マニュアルなど、活用シーンに合わせて選べます。

参考:企画書・ビジネス書式テンプレートを探すならbizocean(ビズオーシャン)|bizocean
 

業務マニュアルを活用し、企業として提供できる価値を高めよう


業務マニュアルは、属人化の解消に役立つツールとして有効です。マニュアルの活用は業務効率化を進めるだけでなく、最終的には顧客体験にも貢献し、提供できる価値を高められるというメリットがあります

ただし、マニュアルの質によっては、活用されない可能性があります。業務マニュアルの目的を共有したうえで、利用者、利用シーンに合わせて最適化されたマニュアル作成に取り組むことが大切です。加えて、常に更新も欠かせないため、業務マニュアル作成後の運用についても、しっかり検討しておく必要があります。目的達成を意識しながら、効果的な業務マニュアル作成を進めましょう。

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時短実現のためのヒント!業務効率化チェックシートとツール選定のコツ

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元記事発行日: 2021年6月04日、最終更新日: 2021年6月04日