「マニュアル人間」という言葉があるように、マニュアル化にはネガティブな印象を持つ人も少なくありません。しかし、マニュアル化は、組織の成長を促す施策のひとつであり、最終的には顧客に提供できる価値の向上につながります

→ダウンロード: 業務効率化無料チェックシートとツール選定のコツ

とはいえ、マニュアルがあったとしても、きちんと運用できなければ成果も感じられないでしょう。 今回は、マニュアル化の意味やメリットとともに、効果的に活用するためのポイントを解説します。

時短実現のためのヒント!業務効率化チェックシートとツール選定のコツ

「マニュアル化」とは?

マニュアル化とは


マニュアルとは、「手引き。便覧。機会の操作などを手動によって行うこと(方式)」(【書籍】新明解国語辞典(第八版)より)と定義されています。マニュアルは単なる操作方法の説明にとどまらず、「業務の手引き」として業務の目的や意味、方向性を示すものです

マニュアル化は、業務フローをわかりやすく伝える仕組みを作り、明文化されていない業務の手順をまとめることで、組織としてより効率よく業務を進めるために役立ちます。

また、組織全体が同じゴールに向かうための手段のひとつとしても活用されます。業務遂行に関わる一連の流れをマニュアルにすることで、共通認識を与え、組織全体の成長に貢献します。
 

マニュアル化を実施するメリット

マニュアル化のメリット


では、マニュアル化することによって、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な7つの項目を紹介します。
 

1. 属人化の解消


マニュアル化は属人化の予防、解消につながります。属人化した業務があると、担当者不在時にフローが滞ったり、ミス隠しが起こりやすかったりするなどのリスクがありますが、マニュアル化によって対応できる社員を増やせば、そうしたリスクを回避できます。また、複数の社員が業務フローを理解していれば、属人化によって起こりやすいミス隠しや不正などがあっても把握でき、リスク回避が可能です。
 

2. 業務品質の安定・向上


マニュアルに沿って業務を進めることで、社員によって異なる経験やスキルにとらわれず、安定した成果が期待できます。チェックリストなどの活用で、ミスや抜け漏れが減るのもメリットと言えるでしょう。業務に関する知識の統一は業務品質の安定につながり、結果的に顧客からの信頼獲得に役立ちます
 

3. 業務効率化と改善


マニュアルがあれば、わからないところを周囲に聞いて回るといったタイムロスを回避できます。最適化されたフローで効率よく仕事が進めば、コア業務に集中できるため、業務効率化が進むでしょう。業務の全体像が見えることで、改善点が明確になりやすいという利点もあります。
 

4. 教育コストの削減と、指導レベルの統一


マニュアル化は、教育コストの削減にも役立ちます。指導時間の短縮になるだけでなく、統一されたルールに沿って指導できるため、指導者のレベル差を補い、研修等においても一定の成果を出しやすいのがメリットです。指導者の質を担保することで、さらに人材教育のコスト削減という良い循環が生まれます。
 

5. 社内ナレッジの蓄積


属人化した業務のノウハウは、個人に帰属しがちです。一方、マニュアル化のプロセスでは、業務フローが可視化され、ノウハウが社内ナレッジとして蓄積されます。その結果、さらに再現性のあるフローを模索できるようになります。
 

6. 定量調査が行いやすい


マニュアル化によって指針が明確になれば、指標を打ち出しやすく、定量調査をおこないやすくなります。効果測定に有効なのはもちろん、人事評価においても公平性が高まるでしょう。業務改善を考えるうえで、注目したいメリットです。
 

7. 組織力の強化


上記のメリットから、組織全体の業務効率向上、生産性向上により、組織力の強化につながります。マニュアルによって業務の全体像を理解でき、業務の前提となる戦略や企業の指針に対する理解も深まります。
 

マニュアル化による弊害はあるのか

マニュアル化による弊害


上述したように、マニュアル化には多くのメリットがあります。その一方で、マニュアル化による弊害も考えられます。
 

1. 業務の価値が下がる可能性


誰でもできる業務は、特別感がなく、ルーティーン作業になりがちです。また、マニュアルを参照すれば、誰もが容易に業務が遂行できるため、「マニュアルに提示されたフローさえ完了すれば良い」という認識になりかねません。なぜその業務を行う必要があるのか、具体的な目的が見えないまま実行される恐れがあり、業務の価値を損ねてしまう可能性があります
 

2. 業務改善の機会を失う


マニュアルに記載されたルールに従うことが目的になってしまうと、業務の改善点に気づきにくくなります。「マニュアル重視」を掲げることにより、新たなアイデアを出して業務改善に取り組もうとする社員の意欲を損なう可能性もあるでしょう。さらに、改善策を提案しても取り上げてもらえない場合には、社員のモチベーションの低下を招きます。
 

3. マニュアルがかえって非効率になっている場合がある


マニュアルそのものが使いづらい、マニュアルに整合性がないといった場合には、かえって業務効率を下げてしまう可能性があります。また、そのままの状態で放置されると、業務の非効率さに社員の不満が募り、企業ロイヤルティの低下につながります。最悪の場合には離職に発展する可能性もあるでしょう。

このように、マニュアル化には弊害もありますが、いずれも取り組み方次第で解消できる課題がほとんどです。デメリットを回避するための対策を考えたうえで、マニュアル化を進めましょう。
 

成果を高めるためのポイント

マニュアル化の成果を高めるためのポイント


マニュアル化によるメリットと弊害の両面を加味しながら、できるだけ成果を出すための取り組みが求められます。マニュアル化の成果を高める4つのポイントを解説します。
 

1. マニュアル化の目的を設定、周知する


マニュアルは単なる操作手順書ではなく、組織の運営に関わるものです。なぜその業務をマニュアル化するのか、その目的を明示し、組織全体に周知することでマニュアル化への理解が深まります。また、マニュアル内に指針やポリシーを盛り込んでおくことも大切です。マニュアル作成の際には、「そもそも明確な目的を打ち立てているのか」、「目的を明文化しているか」などを振り返ることも大切です。
 

2. マニュアルを統括して管理する部署や担当者を決めておく


部門ごと、チームごとにマニュアルを作成していると、組織全体の業務フローにおいて整合性が取れなくなってしまう可能性があります。企業の指針にそったマニュアルになっているか、全体を俯瞰して管理する部署や担当者が必要です。また、マニュアルの作成、更新時には管理者によるチェックが欠かせません。管理体制を整備し、一貫性のあるマニュアル作りに取り組みましょう。
 

3. PDCAを回し、定期的に更新する


マニュアルは最新であってこそ価値があります。古いマニュアルが放置されたままでは、業務改善にはなりません。定期的に内容を見直し、改善する仕組みを整えましょう。使用者に向けて定性調査を行うと同時に、指標に基づいた定量評価を実施しながら状況を把握しましょう。

また、更新の必要性はわかっていても、作業コストが大きいと後回しになりがちです。最初から、更新しやすい仕様のフォーマットに統一しておくと良いでしょう。加えて、更新時には一斉周知できる仕組みがあると、連絡ミスや通知漏れを防げます。
 

4. フィードバックを得られる体制づくり


マニュアルの改善には、現場からのフィードバックが欠かせません。普段の調査だけでは見えてこない課題について、現場が提案しやすい環境づくりが求められます。定期的なアンケートやヒアリングなどを行い、改善案が提示された際には、柔軟な対応を検討しましょう。
 

マニュアル化の対象となる業務の種類は?

マニュアル化の対象となる業務の種類


マニュアル化にはメリットが多いものの、全ての業務においてマニュアル化できるとは限りません。マニュアル化ができるのは、再現性の高い業務が中心となります。具体的には、以下のような業務が該当します。
 

1. システム、ツール、機器類の操作


一般的にマニュアルが用いられることが多いのが、システムやツール、機器類の操作が主となる業務です。取扱説明書としての役割が大きいものの、業務の指針やポリシーを記載しておくことは重要です。システム等が使用される理由や目的を明確にすることで、業務全体の効率化につながります
 

2. 在庫管理、品質管理


在庫管理や品質管理業務においては、ミス防止を重視したマニュアルが活用されます。チェックリストが簡易マニュアルとしての役割を果たし、管理上の判断基準としても用いられます。
 

3. 労務管理、人事管理


労務管理や人事管理も、マニュアル化しやすい業務です。システムやツールを使用することが多いため、操作手順書を含んだマニュアルが作成されます。処理の方法や手順、判断基準などが明記され、作業効率を高めます。特に、間接部門は属人化しやすい傾向にありますが、その一方で、ある程度の基準が決まっているためマニュアル化が可能であり、属人化解消に向けたマニュアル化の成果が出やすいと言えるでしょう
 

4. 営業フロー


営業フローをマニュアル化することで、一定の業務品質を保てます。セールスマニュアルとして顧客管理や販売計画、受注応対、納品、販促などのフローが可視化できます。ただし、用途ごとにマニュアルが細分化されやすいため、一貫したポリシーを提示する必要があります
 

5. カスタマーサポート、クレーム対応


接客やクレーム対応といった対面型の業務もマニュアル化しやすい傾向があります。教育コストの削減や教育期間の短縮にも役立つでしょう。ただし、柔軟な対応が求められやすく、マニュアル化できない部分もあるため、マニュアル化する際には範囲を特定しておくことが大切です
 

6. 危機管理


災害時をはじめ、緊急時の対応手順を明確にする危機管理のフローにおいて、マニュアル化は非常に有効です。管理体制と責任者を明確にして、万が一に備えられます。実際に使用する機会が少ないものの、重要度が高いといえるでしょう。
 

マニュアル化の成功事例

マニュアル化の成功事例


マニュアル化といっても、企業規模や業種によって期待する成果が異なります。実際に、マニュアル化によって成果を上げた事例を紹介しましょう。
 

ボトムアップのマニュアルでノウハウを蓄積(無印良品)


生活雑貨などを中心に扱う無印良品では、店舗の業務マニュアル「MUJIGRAM(ムジグラム)」と、本社業務のマニュアル「業務基準書」の作成により、組織力強化、売上向上を実現しました。創業当時は経験主義の組織としてスタートしたものの、事業拡大に伴い一貫性のあるマニュアルが必要になりました。組織の質を安定させることを目的とし、業務の徹底した見える化、標準化を行っています。現在使用されている店舗業務マニュアルは、全13冊2,000ページ、業務基準書は6,600ページに及びます。現場の意見を重視したボトムアップ方式により、年4回にわたり更新され、常に改善を続けています。

参照:無印良品は2000+6600ページの「マニュアル」で生き返った|DIAMONDon-line
 

マニュアル化による早期人材育成を実現(デイジイ)


埼玉県に本社を持ち、関東を中心にパン製造・販売を展開するデイジイは、管理業務においてマニュアルを活用しています。販売マニュアルの導入により、新人の早期育成を実現しただけでなく、外国人の育成においても成果を出しています。言語の違いを超えてスキルの習得が容易になり、ルールの明文化で社員の迷いを払拭することに成功しました。

参照:新卒と海外人材の早期育成を目的に、育成担当者に依存しない体制を構築。スムーズかつ正確にスキルを習得。|TeachmeBiz
 

マニュアル化は顧客への価値提供に直結する


マニュアル化は、生産性を高めると同時に、組織の質を高めるものです。結果として、顧客に提供できる価値が高まり、自社の利益にも還元されるでしょう。ただし、マニュアルがあっても活用されなければ意味がありません。マニュアル化の目的を明確にし、組織内に周知しながら、効率よく取り入れる必要があります。PDCAを回しながら、定期的に見直し、更新を行いながら成果につながる仕組みを作ることが大切です。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

時短実現のためのヒント!業務効率化チェックシートとツール選定のコツ

 時短実現のためのヒント!業務効率化チェックシートとツール選定のコツ

元記事発行日: 2021年6月02日、最終更新日: 2021年6月03日