顧客とコミュニケーションを行う際の代表的な手段には、対面での打ち合わせ、電話、メール、セミナーなど様々あります。最近はウェビナーを利用した顧客とのコミュニケーションも行われるようになりました。
ウェビナーとはインターネット上で開催されるセミナーの呼称であり、ウェブとセミナーが合わさった造語(Web+Seminar=Webinar)です。
ウェビナーを活用することにより、主催者側はカタログやWebサイトでは説明の難しい商品やサービスの特徴を伝えることができます。参加者にとっても、セミナーとは違って時間的・地理的な制約がなく参加できるメリットがあります。
昨今、マーケティングにおけるウェビナーの有用性が広まり、ウェビナーを開催できるツールが増えています。Zoomの場合、ウェビナー向けの機能が充実している点や参加のしやすさなどのメリットがあります。
ウェビナー自体は、TwitterやFacebookなどのツールでもライブ配信という形で行うことができるため、Zoomだけの専売特許というわけではありません。それなのにZoomがウェビナーを開催するツールとして選ばれるのはなぜでしょうか?
それは、決して一方通行にならず、視聴者の積極的な参加を促すことができる各種機能に理由があります。
「Zoomビデオウェビナー」には投票やQ&Aなどの機能があり、主催者側と双方向のコミュニケーションを取ることが可能です。その場で参加者の意見を拾い上げることで、最大限の情報を提供できるようになります。
今回は、Zoomビデオウェビナーのメリットや開催方法を説明します。
Zoomのミーティング機能との違いも合わせてご紹介するので、使い分けに迷われている方はぜひ参考にしてみてください。
ウェビナーとは?
「ウェビナー」は、オンラインセミナーやWebセミナーと同義です。
一方、ウェビナーと対比する形で、参加者を実際の会場に集めるセミナーは近年では「オフラインセミナー」と区別して呼ばれるようになりました。
商品・サービスの特徴や良さを伝える手段として、カタログやWebサイトなどさまざまな媒体が利用されてきました。一方、オフラインセミナーやウェビナーを利用した商品・サービスの紹介は商品やサービスの使い勝手など、文字や画像のみで表現しにくい特徴を伝えることができます。
オフラインセミナーを開催する場合は会場や紙資料の準備が必要となり、その分コストもかかります。参加者側も会場に訪れる必要があり、それなりのリソースを割かなければいけません。その点ウェビナーはインターネット上で完結するため、資料準備や移動コストなど、両者の負担が軽減されます。
参加者にとってのZoomビデオウェビナーのメリットは?
参加者にとってのメリットを以下にまとめます。
まず、オンライン環境さえあれば、パソコンからでもスマホからでも気軽に参加できる点が挙げられます。オフラインセミナーと比べて場所の制約がかなり少なく、自宅やシェアオフィスなど、好きな場所から参加できます。
また、オフラインセミナーと違い席の優劣がありません。遠くて資料が見えづらいということはなく、快適に参加できます。
移動時間が削減できるという点も、参加者にとっては大きなメリットです。
移動時間がかかるために参加を見送るような内容でも、ウェビナーであれば「とりあえず受けてみよう」と思ってもらえる可能性が高くなります。
Zoomビデオウェビナーを開催する際の4つの注意点
開催する際は、以下の注意点に気をつけましょう。
- インターネット環境に気をつける
インターネット環境がよくないと、Zoomビデオウェビナーの配信中に映像が細切れになるなどの不具合が生じる可能性があります。
ホスト側は、事前に必ずインターネット環境を確認しましょう。できれば有線LANを使用するのがベストで、Wi-Fiを使う場合でもツールを使って通信速度を確認します。
- 配信用の機材を揃える
パソコン内蔵のカメラやマイクでもZoomビデオウェビナーを行うことは可能ですが、映像や音声が粗いものだと、参加者のストレスになります。
カメラはもちろん、できればマイクも別で用意するのがおすすめです。
- 集中力の低下に気をつける
オフラインセミナーと違い、ウェビナーでは参加者は気軽に離席できます。そのため、集中力が切れて簡単に離席されないよう、ウェビナーの内容にメリハリをつけることが大切です。
- 参加者を置き去りにしない
オンラインだとどうしても一方向のコミュニケーションになりがちですが、それではすぐに飽きられてしまいます。
チャット機能を駆使して参加者の反応を見る、投票機能などを使って意見を求めるなど、「セミナーに参加している」と感じてもらえるような工夫が必要です。
Zoomビデオウェビナー機能の特徴
では、Zoomビデオウェビナー機能にはどのような特徴があるのでしょうか。特に便利な機能は以下の6つでしょう。
- パネリストは100名まで参加可能
Zoomビデオウェビナーのパネリスト(登壇者)は最大100名まで登録可能です。
ホストはパネリストの各権限を管理することができ、パネリストのマイクのミュート制御、共同ホストへの昇格、パネリストによる字幕の入力の許可などを行えます。
- 参加側の発言はホストが制御可能
参加者には基本的に発言権限がありません。
挙手の機能を使って発言したい意思を提示し、ホスト(主催者)が許可した場合のみZoomビデオウェビナー上で発言できます。
パネリストの消音もホストが制御できます。
実際のZoomビデオウェビナーでは、開始前にこの機能を紹介し、積極的に参加してもらうよう促すこともおすすめです。
- 用途に応じて使い分け可能なチャット機能や、Q&A機能
チャット機能はプライベート型とグループ型が用意されており、状況に応じて設定できます。
Q&A、投票機能も実装されており、参加者とパネリストでのコミュニケーションが取りやすい環境が構築されています。
チャット機能は、ホストやパネリストが下部のメニューから「チャット」をクリックすることでチャットウィンドウが立ち上がり、参加者が入力できるようになります。
Q&A機能は参加者が下部メニュー「Q&A」から入力画面を立ち上げ、ホストやパネリストに送信します。ホストやパネリストは、テキストで質問者にのみ回答できる他、ウェビナー中に口頭で回答することも可能です。
投票機能はホストのみが新規作成できる機能で、下部メニューから「投票」を選択し、単一選択もしくは複数選択の質問を作成します。ウェビナー開始前にあらかじめ設定しておくことも可能です。
- 同時に多数のユーザーが参加可能
Zoomビデオウェビナーの場合、最大10,000名まで同時参加できます。Facebook LiveやYouTubeのインテグレーション機能を活用すれば、他チャンネルへの配信も可能です。
FacebookへZoomのライブ配信をする方法については、以下の記事を参照してください。
【2020年最新版】Facebookライブの配信手順や成功するためのコツを解説
- Zoomビデオウェビナーの結果をデータ化しレポートにまとめる機能
Zoomビデオウェビナー中の質疑応答の内容や、参加者のエンゲージメントなどがまとまったレポートを作成できるので、Zoomビデオウェビナーの改善や参加者へのフォローアップに繋げられます。
- 個人情報の保護が可能
不特定多数の参加者が集まるZoomビデオウェビナーでは、個人情報をどう保護するかも重要な観点です。
その点、Zoomビデオウェビナーでは参加者の名前を確認できるのは主催者であるホストとパネリストのみで、参加者同士で情報が見られることはありません。
ミーティング機能との違いは?
Zoomと言えば、ミーティング機能もよく知られています。
ZoomのミーティングとZoomビデオウェビナーは使い勝手が似ていますが、その目的と機能性には大きな違いがあります。
Zoomミーティングは、複数の参加者が会議室に集まり、それぞれが自由に発言しミーティングを行うイメージです。
一方、Zoomビデオウェビナーはセミナー会場のようなもので、登壇者と参加者が向き合っており、基本的には登壇者が発信を行います。
Zoomミーティングでは、「ブレイクアウトルーム機能」を使って会議参加者を複数のグループに分け、ディスカッションを行ってもらうことも可能です。
機能面では、ミーティングでは誰でも自由に会話やチャットに参加できますが、Zoomビデオウェビナーでは参加者は基本的に視聴限定であるなどの違いがあります。
代表的な機能面の比較については、以下の表も参考にしてください。
このようなZoomビデオウェビナー機能を使うためには、Zoomのどのプランに登録すればいいのでしょうか。
次の章で解説していきます。
Zoomビデオウェビナーを開催するには有料プランへの申し込みが必要
Zoomビデオウェビナーを開催するためにはZoomの有料プランに登録し、その上でアドオンの「ビデオウェビナー」(有料サービス)に申し込む必要があります。
ちなみに無料プランではZoomビデオウェビナーへの参加は可能ですが、開催することはできません。
Zoom有料プランは3種類
有料プランは以下の3つに分類されます。
- プロ
- ビジネス
- 企業(エンタープライズ、エンタープライズプラス)
それぞれのプランで利用できるウェブミーティングの機能の違いは以下の通りです。
全てのプランにデフォルトで実装されているのはミーティング機能のみで、Zoomビデオウェビナー機能を利用するには先述した通りアドオンの追加が必要です。
プロ、ビジネス、企業のいずれのプランに契約した場合でもZoomビデオウェビナー機能を申し込むことができます。料金は5,400円/月(2020年5月時点)からです。
Zoomの無料プランと有料プランの違いについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
Zoom無料プランと有料プランの違いは?それぞれ特徴や契約・解約方法を解説
Zoomビデオウェビナーを開催するには?準備〜開催後までの流れを解説
ここからは実際にZoomビデオウェビナーを開催する際の手順を事前準備・当日の動き・アフターフォローに分けて確認していきましょう。
オフラインセミナー同様、Zoomビデオウェビナーでも開催の目的を事前に決めることが大切です。
Zoomビデオウェビナーの準備
Zoomビデオウェビナー開催前の準備段階では「目的設定」「参加者属性の決定」「日時設定」「企画」「集客」の5つに取り組む必要があります。それぞれ説明します。
目的設定
まずは開催の目的を明確にしましょう。例えばB2B企業の場合だと以下のような目的で開催されるケースが多いでしょう。
- 新規顧客への販売促進
- 会員獲得(リード獲得)
- 既存顧客への特別オファー(顧客満足度向上)
目的をチームで共有した上で、参加者、日時、企画(セミナーの内容)を決めていきます。
HubSpotが提供するツール群とZoomを連携することで、顧客情報を用いたさまざまな機能が利用できます。
例えば、HubSpotに登録されている見込み客へ向けてピンポイントにウェビナーの案内を送付し、開催したい場合は、HubSpotとZoomの連携機能を活用するとスムーズに進められます。
ZoomとHubSpotの連携機能については、以下のページにて詳しく解説しています。
HubSpotとZoomの連携機能を使用する
参加者属性の決定
開催の目的を達成するため、Zoomビデオウェビナーに参加して欲しい参加者の属性を決めます。
職業や年齢層などの属性、新規顧客や既存顧客、前回のセミナー結果による選別など、さまざまな切り口で検討してみましょう。
なお、ウェビナーのメリットの1つに「参加側は時間・場所の制約を受けにくい」ことが挙げられます。オフラインセミナーと比較して、申し込みのハードルが低いと言えます。それは言い換えると、ライトな申し込みが増えるということです。
「参加できるかどうかわからないけど、とりあえず申し込んでおく」ケースが増える傾向にあるので、ウェビナー当日の参加率を下げない工夫が必要です。
例えば開催前のフォローメール、参加した場合の特典を用意するなどしてみるといいでしょう。
ZoomとHubSpotを連携させていれば、HubSpotからフォローメールを送信することが可能です。メール自体はZoomからも送れますが、HubSpotからメールを送ることで参加者1人ひとりに合わせたコミュニケーションが可能となったり、Webサイト訪問歴やZoomビデオウェビナーの参加情報などを取得できたりと様々なメリットがあります。
日時設定
Zoomビデオウェビナーの参加者や企画(内容)によって、平日と休日、勤務時間帯と勤務終了後などの選択肢があります。参加者の都合(例:連休前後はさける)も想定して、参加してもらいやすい日時を設定しましょう。
過去にもHubSpotとZoomを連携させてZoomビデオウェビナーを開催したことがあれば、平均出席時間などの項目から、最適な開催日時を予測することができます。
企画
オフラインミーティングと同様、参加者に関心を持ってもらえる企画を検討し、多くの場合はスライドや資料を作成します。
その際Zoomビデオウェビナーの機能(チャット機能、Q&A機能、アンケート機能、ホワイトボード機能など)のどれを活用するかも決めておくと良いでしょう。また、必要に応じてパネリストの選定も行います。
集客
企画が決まりスライドや資料が完成したら、参加者を募りましょう。
集客には、先に決めておいた参加者の属性を活かします。対象となる既存顧客(または既存会員)をリスト化し、そのリストにメルマガで告知する、Web広告でのターゲティング設定に反映するなどしてみましょう。既存顧客や見込み客に対しては、担当営業者から直接ご案内するのも1つの手です。
HubSpotには集客のためのさまざまな機能があり、その1つとして申込みフォームの作成機能があります。
項目をカスタマイズしたり、申込み後のアクションを選択したりなどの機能があり、Zoomビデオウェビナーの内容やターゲットに合わせた申込みフォームを作ることが可能です。
HubSpotとZoomの連携機能を使用する
Zoomビデオウェビナーの開催
Zoomビデオウェビナー当日、開始時間が近づいたら、コンテンツ配信に必要な機器(カメラ、マイク、パソコン、ネットワーク接続機器など)を立ち上げて参加者の参加を待ちます。セミナー開始時に動画や音声が途切れるなどのトラブルがないように、事前の動作チェックを必ず行うようにしましょう。
オフラインセミナーとは違って、ウェビナーではホストやパネリストが「会場の空気」を読みにくいため、チャット機能などの反応をみながら参加者の様子を把握しなければいけません。
またウェビナーでのプレゼンテーションは、ホストの話が無機質に聞こえてしまうことがあります。目の前に多くの参加者がいるイメージで、できるだけ感情を込めた話し方を心掛けましょう。
Zoomビデオウェビナーでは、画面共有機能を効果的に使うことも大切です。Zoomの画面共有機能については、以下の記事にて詳しく解説しています。
Zoomで画面共有する方法は?会議やプレゼンで便利機能を使いこなそう
なお、Zoomビデオウェビナーではライブだけでなく録画配信も可能です。例えば録画配信の前後にアナウンスを行い、Q&Aだけライブで行うとトラブルが発生するリスクを下げられます。
Zoomビデオウェビナー開催後のフォローアップ
Zoomビデオウェビナー開催後は、しっかりフォローアップを行いましょう。
できれば、1営業日以内にフォローアップメールを送信するのがベターです。アンケートに回答してもらう場合は、なおさらZoomビデオウェビナーの記憶が鮮明なうちに送る必要があります。
Zoomビデオウェビナー開催後のフォローアップのため、参加者情報を取得して分析するMA(マーケティングオートメーション)ツールの活用は欠かせません。
HubSpotが提供するMAツール「Marketing Hub」にはZoomとの連携機能があり、Zoomビデオウェビナーの開催準備から開催後のフォローアップまでの一連の作業を効率化します。
マーケティングだけでなく、営業、カスタマーサービスに対応したツールとスムーズに連携できるため、Zoomビデオウェビナーで獲得した顧客情報を全チーム共通の基盤で一元管理することも可能です。
Zoomビデオウェビナーをライブストリーミングで配信しよう
ZoomビデオウェビナーはZoom上で開催することはもちろん、YouTubeやFacebook、Twitter、Workspaceでライブストリーミング配信をすることも可能です。
YouTubeやFacebookなどのプラットフォームを利用することで、Zoomのみを利用したウェビナーを企画するよりも多くの参加者を集めやすくなります。
不特定多数のユーザーにZoomビデオウェビナーへ参加してもらいたい場合は、ライブストリーミング配信は有効な手段となります。
なお、前述のとおり、Zoomビデオウェビナーを開催するにはZoomの有料プランおよび有料アドオン「ビデオウェビナー」に申し込んでおく必要があります。
Zoomビデオウェビナーをすぐさまライブストリーミング配信する際の手順
自身のYouTubeチャンネルやFacebookページにすぐさまライブストリーミング配信をする際には、まずZoomビデオウェビナーを開始し、メニューの詳細をクリックします。「Facebookにてライブ中」「YouTubeにてライブ中」などの項目があるので、クリックします。
例えばFacebookの場合は、自身の個人アカウントで配信するのか、あるいはFacebookページで配信するのかを選択し、タイトルなどの項目を埋めた上で配信を開始できます。
事前にURLを設定してからライブストリーミング配信する際の手順
上記の方法だと手軽にライブストリーミング配信を開始できますが、ゲリラ的な配信になります。
事前にURLを設定し、SNSなどで共有して多くの参加者へ告知するには、「カスタムライブストリーム配信サービス」を利用します。
カスタムライブストリーム配信サービスは、YouTubeやFacebook上でURL等を払い出し、Zoom側に設定しておくことでライブストリーミング配信を可能にする機能です。あらかじめ設定したページへ配信を行うため、事前の告知が可能となります。
例えばFacebookの場合は、ライブストリーミング配信を行いたいアカウントから「ライブ動画」、「接続する」と進みます。その画面に表示されるサーバーURLとストリームキー、そしてそのページのURLを控えます。
次にZoomのアカウントページにサインインし、「settings」から「ミーティングにて(詳細)」へ進み、「ライブストリーミング配信を許可」をONにしてチェックマークを入れます。
Zoomビデオウェビナーを開始したら、メニューの「詳細」から「カスタムライブストリーム配信サービスにてライブ中」を選択します。ストリーム配信のURL、ストリーミングキー、ライブストリーム配信ページのURLの入力を求められるので、Facebookで取得したそれぞれの情報を入力します。最後に「Go Live!」をクリックしたら、FacebookライブにてZoomビデオウェビナーを配信できます。
カスタムライブストリーム配信サービスの設定は、Zoomビデオウェビナーを開始する前にアカウントページで設定しておくことも可能です。
参加者に寄り添ったウェビナー運営を
今や、ウェビナーは顧客とコミュニケーションを取れる有力な手段の1つとなってきています。
様々あるウェビナーツールの中でもZoomビデオウェビナーは利用者の多さ、多様な対応デバイス、参加手順が簡単という特徴があります。これらの機能を活用しつつ、いかに参加者に寄り添った企画、運営、アフターフォローが行えるかが重要です。
繰り返しになりますが、開催後のフォローアップは非常に重要です。準備段階から、フォロー体制の整備まで考えておくと良いでしょう。
せっかくの接点を無駄にしないよう、まずは参加者のリストをしっかり管理します。そのリストをマーケティング、セールス、カスタマーサービスで共有し、各チームで連携しながら継続的なコミュニケーションを取り、自社とのエンゲージメントを高めていきましょう。