カスタマージャーニーを設計するにあたって、「どのようなステージや分析項目を設定するべきなのか分からない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
顧客の購買体験を旅として表したカスタマージャーニーを、マップとして可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」といいます。
カスタマージャーニーマップに設定すべきステージや分析項目は、ビジネスモデルやカスタマージャーニーマップを作成する目的によって異なります。
本記事では、カスタマージャーニーを設計するポイントや、設定すべき項目をご紹介します。まずは基本的なフレームワークを理解し、ビジネスや目的に沿ったカスタマージャーニーマップの作成にお役立てください。
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カスタマージャーニー設計のポイント
カスタマージャーニーを設計するポイントは、横軸と縦軸を自社のビジネスモデルや目的に合わせることです。
- 横軸:ペルソナの行動段階(時系列)
- 縦軸:ペルソナの行動に対する詳しい分析項目
横軸には、ペルソナが意思決定(購入や契約など)に至るまでの行動をいくつかのステージに分解し時系列に並べ、縦軸ではペルソナの思考や行動などを分析するための項目を設定します。
まずは、カスタマージャーニーにおける基本的なステージと分析項目を把握し、自社に適した項目を選択できるようになりましょう。
カスタマージャーニー設計で理解しておくべき顧客行動の段階
カスタマージャーニーを設計するにあたって、顧客行動の段階についての理解が必須です。ここでは、基本となる4つの行動段階と、BtoB向け、BtoC向けの行動段階の一例を紹介します。横軸の設計に入る前に確認しておきましょう。
顧客行動の段階の基本は認知・興味関心・比較検討・行動の4つ
基本的な顧客行動は4つのステージに分けられます。
認知
顧客はいきなり商品を購入するのではなく「認知」することから始まります。そのため、横軸のスタート地点には、商品やサービス、会社を知る段階を設定するのが一般的です。
興味関心
次に「興味関心」を設定します。このステージまで進んだ顧客は、認知した商品やサービスの情報収集を行う段階にいます。
比較検討
続いて設定するのが「比較検討」です。この段階では、顧客が情報収集の際に把握した類似商品の中から、自身の悩みや課題解決につながる商品を比較したり、検討したりします。
行動
横軸のゴール地点には「行動」を設定しましょう。顧客が自身の課題解決に適した商品を購入するなど、実際に行動を起こす段階です。
行動のフェーズは自社の商品や目的、対象とするペルソナによって異なりますが、基本的にはこの4つをカスタマージャーニーの横軸として設定すると良いでしょう。
横軸は、実際の顧客購買フローをモデルにすることで、現実と乖離することなく適切に設定できます。願望で設定しないように注意しましょう。
顧客が購入に至るまでのステージ
BtoCにおいて、顧客が購入に至るまでの行動を詳細に分析したい場合には、「バイヤージャーニー」のプロセスが適しています。
バイヤージャーニーとは、顧客が自身の課題を認知してから実際に購入するまでの行動段階のことです。横軸の最終地点に「購入」を設定するのがカスタマージャーニーとの大きな違いです。
ステージ1. 認識
最初のステージは、ペルソナが自身の課題や問題を「認識」する段階です。ここでは、 Web検索からのカスタマージャーニーを例に挙げて説明します。
フィットネスビジネスを例にした場合、このステージのペルソナは自身の課題や問題を認識するために、次のようなキーワードでWeb検索をするでしょう。
- 「なぜ太るのか?」
- 「おなかが出る原因」
認識段階のペルソナは、情報収集をしながら問題の原因を探っています。
ステージ2. 検討
「検討」ステージのペルソナは、自身が抱えている問題や課題の原因を定義し、解決方法を検討している段階です。
先ほど例に挙げたペルソナは、次のような検索をするでしょう。
- 「痩せる方法」
- 「ダイエットするには」
この時点でのペルソナは、問題の解決方法を比較・検討している状態です。
ステージ3. 決定
最終的な「決定」ステージのペルソナは、抱えている課題に対して最も適した解決方法を決定する段階です。
例えば、行きたいフィットネスジムをリストアップしたり、トレーニンググッズをオンラインショップで探したりするために、次のような情報を検索します。
- 「24時間開いているフィットネスジム」
- 「フィットネスバイク 安い」
問題解決のための候補を絞り、メリットやデメリットを整理して、最終的に購入する商品やサービスを決定します。
顧客の日常行動分析向けのステージ例
BtoCの場合には、顧客の日常生活や行動をフレームとして設定することも有効です。
例えば、当社HubSpotが配布しているカスタマージャーニーの無料テンプレートの中に「デイ・イン・ザ・ライフテンプレート」があります。このテンプレートに設定されているステージは次の5つです。
- 朝
- 午前中
- 昼
- 夕方
- 夜
1日の流れを横軸のステージに落とし込んでいるため、顧客の日常生活を俯瞰して分析できます。それにより、顧客が無意識に抱いている不満やニーズに気づけることがメリットです。
BtoBビジネス分析向けのステージ例
BtoBの場合、一例として次のように5つのステージに分けられたフレームを使用します。
ステージ1.検索
BtoBの場合、横軸のスタート地点には「検索」を設定します。このステージは、企業が自社の課題の解決方法を検索している段階です。情報収集を通じて問題の原因などを探ります。
ステージ2.認識
次に「認識」ステージを設定します。認識の段階では、企業が自社の課題解決に向けた商品やサービスを認知します。実際に、セミナーや展示会、雑誌や商品説明などで情報収集を行うでしょう。
ステージ3.検討
続いて「検討」を設定します。このステージは、商品やサービスを検討する段階です。見積もりを依頼したり、社内で会議を行ったりして慎重に検討します。
ステージ4.購入決定
検討の次に設定するのは「購入決定」です。この段階では、社内会議などを通じて、実際に購入の意思決定をします。
ステージ5.サポート
横軸のゴール地点には「サポート」を設定します。BtoBビジネスでは、取引単価が高額になることに加え、商品やサービスの継続利用も多いため、購入後も継続的なアフターサポートが求められます。
BtoBでのサポート部分は、「継続利用」や「クロスセル(関連する商品をあわせて購入してもらう営業活動)・アップセル(商品やサービスをハイグレードにしてもらう営業活動)」に入れ替えてもかまいません。
カスタマージャーニー設計で必要な分析項目
横軸を設定したあとは、縦軸を設計します。分析項目は商品によって異なるため、自社に合うものを検討しましょう。
今回は、分析項目の基本となる、タッチポイント、行動、思考・感情、施策の4つに対してペルソナ、フェーズを加えた6つの項目について、設計方法を詳しく解説します。
1.ペルソナ
ペルソナとは、サービスや商品を購入する典型となる顧客像のことです。
マーケティングを行う際は、「20代前半・女性」といったようにターゲットを設定します。年齢や性別以外にも、居住地や職業、趣味、価値観など、ユーザー情報をさらに絞り込んで設計した顧客像をペルソナといいます。
カスタマージャーニーマップを作成する際は、見込み客の行動や思考、感情を設定しますが、あらかじめ詳細なペルソナを設定しておくことで、見込み客のニーズをより正確に理解し、マッピングの精度を高めることができます。
カスタマージャーニーにおけるペルソナの設計方法については、こちらの記事をご覧ください。
2.フェーズ
フェーズ先に紹介した「横軸」のことで、商品やサービスの認知から購入までのプロセスを順番に並べた項目です。次のようにビジネスの内容に合わせて自由に設定できます。
【A.オンライン宿泊予約サイトのケース】
- 宿泊先を探す(情報収集)
- 宿泊先を決める(購入)
- 宿泊地に行く(体験)
- 宿泊地を評価(評価)
【B.オウンドメディア設立サービスのケース】
- 社内会議(課題認識)
- 運営プランの想定(情報収集)
- 問い合わせ(疑問解消)
- サービスの発注(購入)
- サイト構築(導入支援)
- サイト運営開始(体験)
3.チャネル・タッチポイント
チャネルとは、見込み客が企業と接するための媒体です。その媒体を活用し、実際に見込み客との接点を生み出す場所をタッチポイントと呼びます。
例えば、チャネルに「テレビ」を設定した場合、「テレビCM」がタッチポイントのひとつになります。「スマートフォン」がチャネルの場合は、そのタッチポイントには「SNS」や「アプリ広告」などが設定できるでしょう。
チャネルとタッチポイントは、カスタマージャーニーで設定した見込み客の行動によって決まります。「認知」のフェーズを「インスタグラマーのコーディネートを閲覧」とした場合、チャネルに「スマートフォン」、タッチポイントに「Instagram」を設定するようなイメージです。
4.行動
フェーズの時間軸ごとに、見込み客が行うと思われる行動を記載する項目です。あらかじめ見込み客の行動を想定しておくことで、各フェーズにおける必要なタッチポイントや施策が想像しやすくなります。
ここでは、先にお伝えした2つのケースで見込み客の行動を想定してみました。
【A.オンライン宿泊予約サイトのケース】
- 宿泊先を探す(情報収集):サイト内で候補を検索、知り合いに相談
- 宿泊先を決める(購入):目的による候補の絞り込み、宿泊候補のオーナーと連絡
- 宿泊地に行く(体験):宿泊先までのルート検索、現地に到着し宿泊先を利用
- 宿泊地を評価(評価):レビューの投稿、オーナーへのお礼メール送信
【B.オウンドメディア設立サービスのケース】
- 社内会議(課題認識):オウンドメディアの必要性を確認
- 運営プランの想定(情報収集):導入・運用コストの検証、サービスの比較
- 問い合わせ(疑問解消):複数サービスの相見積もり、サービスの詳細確認
- サービスの発注(購入):社内稟議、サービスプランの決定
- サイト構築(導入支援):ドメイン取得、サーバー構築
- サイト運営開始(体験):コンテンツ展開、運営体制の構築
既存の見込み客の行動履歴を参考にするほか、アンケートやヒアリングも活用し、具体的なアクションを洗い出しましょう。
5.思考・感情
フェーズの各時間軸における見込み客の思考や感情を可視化する項目です。想定した見込み客の行動に基づき、各ステージで見込み客がどのように考えるのかを記入します。
例えば、「認知」フェーズで見込み客が「インスタグラマーのコーディネートを閲覧」という行動をとった場合、「このジャケットはどこで販売しているのか」「価格は安いのか」「自分に似合うだろうか」といった思考が想定できます。
見込み客の行動と思考をある程度イメージしておくことで、「見込み客が現在どのようなことに悩み、課題に対してどのような解決策を求めているのか」という点を探れます。
また、インスタグラマーのコーディネートを閲覧することで「可愛い」「欲しい」と思うように、行動や思考によって新たな感情が生まれるもの。その感情の変化に対し、「ポジティブな感情=〇」「ネガティブな感情=×」と記入したり、感情の上がり下がりを折れ線グラフで表現したりするケースもあります。
感情がネガティブな場合は解決策となるような施策の提案が必要です。一方で感情がポジティブであれば、興味・関心を刺激するプロモーションやキャンペーンなどの施策立案が可能になります。
6.施策
ここまでに設定した見込み客の行動や思考、タッチポイントなどを踏まえ、具体的な施策や課題を洗い出す項目です。
実現性が低い施策であったとしても、ひとまず想定できるアイデアをすべて書き出しましょう。ひと通りアイデアが出た後は、社内ミーティングを開き、実現性の検討や優先度の設定を行います。
段階ごとに一通り設計すると、以下のようなカスタマージャーニーマップが完成します。
ここで重要となるのは、カスタマージャーニーマップは作成して終わりではないということです。カスタマージャーニーマップは、マーケティング戦略を考える指針として活用するだけではなく、施策実行中に効果検証と改善を繰り返してブラッシュアップするためのツールです。
そのため、ときにはスタート地点に立ち返り、マーケティング戦略やアクションプランの課題を見つめ直すことが重要となります。事前に立てた計画と実態との差を明らかにすると、より効果的な施策の策定につながるでしょう。
カスタマージャーニーマップの具体的な作り方については、こちらの記事で解説しています。
目的にあわせて適切なカスタマージャーニー設計を
カスタマージャーニーの設計には、ビジネスモデルや目的に合わせたステージ設定が大切です。正しいカスタマージャーニー設計と、徹底した顧客目線での分析を行うことで、顧客が抱えている課題に対して効果的なマーケティング施策を立てられます。
また、カスタマージャーニーマップを設計しただけで満足せず、何度も効果検証を行って施策を見直しましょう。目標と実績の差異をもとに、より最適化されたカスタマージャーニーマップを設計し直すことで、マーケティング戦略やアクションプランの質が向上します。
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設計したカスタマージャーニーを、施策実行段階でさらに効果的に運用するためにも、ぜひご活用ください。