カスタマージャーニーマップの基本的な作り方を6ステップに分けて解説

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亀山 將(かめやま まさし)
亀山 將(かめやま まさし)

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カスタマージャーニーとは、購買プロセスにおける見込み客の行動や思考、感情などを可視化し、その情報を基に適切なアプローチ方法を考え出すためのフレームワークです。カスタマージャーニーを図式化(マッピング)することで、いままで見えなかった見込み客・顧客の課題を発見・共有しやすくなります。また、施策の実行や成果の振り返りなどを通して、顧客体験の向上に役立てられます。

カスタマージャーニーマップの作り方を6ステップに分けて解説

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本ガイドではカスタマージャーニーマップ作成の基礎から、作成後の運用まで紹介しています。顧客に焦点を当てた、成果につながる施策を展開しましょう。

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カスタマージャーニーマップを作成するためには、作成手順や必要な項目、制作時のコツなどを理解しておくことが大切です。本記事では、カスタマージャーニーマップを作る際に必要な考え方や、ステップごとの具体的な作成方法について解説します。

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カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップ

見込み客が顧客になるまでには、主に「認知・興味関心・比較検討・行動」という4つのプロセスを経由します。その各段階における見込み客の行動や思考、感情などを踏まえ、適切なアプローチ方法を考え出すためのフレームワークを「カスタマージャーニー」と呼びます。

カスタマージャーニーマップとは

当社HubSpotがマーケティング従事者を対象に行った独自調査では、「マーケティング施策のROI(費用対効果)を高めるために必要なことは何だと思いますか」と質問したところ、「自社の見込み客像を正しく理解すること」と回答した人が93.8%にのぼりました。マーケティング担当者の経験や勘で見込み客の課題やニーズを把握するのではなく、客観的なデータをもとに理解を進めるには、見込み客の行動や思考などを図式化したカスタマージャーニーマップが必要です。

カスタマージャーニーマップによって全体を俯瞰的に捉えることで、購買プロセスの各フェーズにおける課題や対策を考え、その内容をチーム全体で共有できるようになります。また、施策の実行や成果の振り返りのなかで活用し、顧客体験の向上につなげられます。

 

カスタマージャーニーマップを作る目的・メリット

カスタマージャーニーマップを作る目的は、主に次の3点です。

  • 顧客体験を向上させるため
  • 解決すべき課題を洗い出すため
  • 社内で統一した情報を共有するため
  • 施策の効果検証を適切に実施するため

 

顧客体験を向上させるため

カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客体験(CX)の向上が期待できます。

顧客体験とは、見込み客が顧客になるまでの間に経験するすべての体験のことです。商品やサービスに興味を持ってから実際に商品を購入し、アフターサポートを受ける段階までに見込み客や顧客が得られる体験を指します。

この顧客体験の一連の流れをできる限り可視化するための手段がカスタマージャーニーマップです。単にペルソナを設定するだけでは、顧客体験のプロセスの中で移り変わっていく見込み客の興味・関心を正しく捉えるのが難しくなります。認知から購入までの各プロセスで行動や感情、思考を可視化することで、変化するニーズに適したマーケティング施策の考案が可能です。
 

解決すべき課題を洗い出すため

カスタマージャーニーマップには、購買プロセスの各フェーズにおける課題の優先順位を明確にできるメリットがあります。これにより緊急度の高い施策から優先的に実行が可能となります。

例えば、「認知」のフェーズで集客のためのリスティング広告を出稿しており、「行動(購入)」フェーズではクーポンDMやアプリプッシュ通知を用いて、販売促進を行っていたとしましょう。

リスティング広告の集客効果に比べ、クーポンDMやアプリプッシュ通知の販促効果が低い場合、購入フェーズへより優先的に資金や人員を投入すべきだと判断できます。

解決すべき課題の優先順位を明確にすることで、施策を実施するスケジュールを改めて見直せます。
 

社内で統一した情報を共有するため

カスタマージャーニーマップを作成することで、その情報を部署間やチームメンバー同士で共有できます。

マップがあれば、購入プロセスの各フェーズにおいて実行すべき施策がすぐに分かります。部署の違いによる認識のズレや属人的なアプローチを未然に防ぎ、スムーズな連携に基づいて施策を実行できます。
 

施策の効果検証を適切に実施するため

カスタマージャーニーマップは、マーケティング施策を考案する段階だけでなく、施策の実行や振り返りの段階においても役立ちます。

HubSpotの独自調査では「現状のマーケティング活動において正確な効果測定が行えていない」と考えるマーケティング従事者が、全体の72.6%を占めることがわかりました。一方、ROIを高めるために効果測定が必要だと感じている人は9割を超えています。どのような施策を行うにせよ、カスタマージャーニーマップのような道標になるツールを活用し、いままでの効果を振り返ることは重要です。

カスタマージャーニーマップを活用すれば、各フェーズ、タッチポイントごとの施策効果を定期的にチェックしながら、取り組みに対する現状の成否や、ゴールへの進捗を可視化できます。当初考えていたカスタマージャーニーマップと実体との乖離がないか照らし合わせつつ、再度問題点を抽出、改善していくことで施策のブラッシュアップが可能です。

カスタマージャーニーマップを作ることが目的にならないよう、成果に向かって進んでいくためのツールとして、常に念頭に置いて運用する意識を持ちましょう。
 

カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーマップは、次の手順で作成します。

  1. ペルソナの設定
  2. マップの横軸(フェーズ)の設定
  3. 行動とタッチポイントの洗い出し
  4. 思考・感情の設定
  5. 施策や課題の検討
  6. KPIの設定と改善

それぞれの手順ごとに具体的な作成方法を解説します。
 

1.ペルソナの設定

ペルソナの設定

カスタマージャーニーマップには、具体的な顧客像である「ペルソナ」が欠かせません。ペルソナを設定することで、後に設定する顧客の行動や思考、感情を深掘りできます。

ペルソナとは、「江戸川区在住のIT企業に勤める29歳の男性、趣味はテニス」といった、ターゲットの情報をより具体化させた顧客像のことで、ニーズを正確に読み取るために活用されます。

カスタマージャーニーマップを作る際は、想定したペルソナに基づいて見込み客の行動や感情の動きをイメージします。ペルソナの正確さがカスタマージャーニーマップの質に大きく影響します。

 

2.マップの横軸(フェーズ)の設定

マップの横軸(フェーズ)の設定

次に商品やサービスの認知から購買までのフェーズを表す横軸を設定しましょう。

購買プロセスは「認知・興味関心・比較検討・行動」の4つのフェーズが基本となりますが、事業の内容にあわせて自由に設定が可能です。このフェーズを設定する場合は、「購買行動プロセス」というフレームワークが役立ちます。

購買行動プロセスとは、消費者がサービスや商品を購入するまでの心理的・行動的変化をモデル化したフレームワークです。次のような複数のモデルを参考に適切なフェーズを設定しましょう。

  • AIDMA
  1. Attention(注目):商品やサービスの存在を知る
  2. Interest(興味):商品やサービスに興味や関心を抱く
  3. Desire(欲求):商品やサービスを欲しいと感じ始める
  4. Memory(記憶):商品やサービスを強く意識する
  5. Action(行動):実際に商品やサービスを購入する
  • AISAS
  1. Attention(認知):商品やサービスの存在を認知する
  2. Interest(関心):商品やサービスに関心を抱く
  3. Search(検索):より詳しい情報をインターネットで検索する
  4. Action(行動):気になる商品やサービスを購入する
  5. Share(共有):購入や使用に関する意見をWeb上で共有する
  • AISCEAS
  1. Attention(認知):商品やサービスの存在を認知する
  2. Interest(関心):商品やサービスに関心を抱く
  3. Search(検索):より詳しい情報をインターネットで検索する
  4. Comparison(比較):複数の商品やサービスの機能や価格などを比べる
  5. Examination(検討):口コミや評判を基に購入意思を固める
  6. Action(行動):気になる商品やサービスを購入する
  7. Share(共有):購入や使用に関する意見をWeb上で共有する

 

3.行動とタッチポイントの洗い出し

行動とタッチポイントの洗い出し

カスタマージャーニーマップの縦軸を設定する際は、行動とタッチポイントを同時に考えることが重要です。SNSやWebサイトなどユーザーとの接点となるタッチポイントは、ユーザーの行動によって決まることが多いためです。

例えば、ペルソナに「1日に2時間ほどYouTubeを視聴する人」を設定した場合、「認知」フェーズの行動に「YouTubeを視聴中に自社ブランドの広告を見た」という内容を設定し、タッチポイントの選択肢のひとつとして動画広告を挙げることができます。

そのペルソナが商品を認知した後、「興味・関心」フェーズで「SNSで商品の口コミを探す」という行動をとるとすると、このフェーズにはSNSがタッチポイントとして適切だと言えるでしょう。

行動やタッチポイントはひとつに限定する必要はありません。「ペルソナがどのような行動をするか」「その行動にあわせてどのような接点が必要か」という点を踏まえ、思いつく限りのアイデアを挙げ、取捨選択すると良いでしょう。
 

4.思考・感情の設定

思考・感情の設定

見込み客の行動と共に思考や感情を設定するのは、適切な施策や課題を検討するためです。

例えば、ペルソナが「この洋服は素敵だけれど、ほかのアイテムと合わせるのが難しそう」と感じるのであれば、WebサイトやSNSでコーディネートの提案を行うという施策が浮かび上がります。

ほかにも、ペルソナが商品の価格に対してネガティブな感情を持っているとすると、競合他社に対する値段の高さが課題として想定できるでしょう。課題が明らかになると、「高級路線に切り替えてプロモーションを行う」「他社との比較表を用いて価格以外のメリットを伝える」といった対策を考えられます。

思考や感情はあくまで見込み客が感じるものなので、売り手の理想や願望で設定せず、ポジティブな内容とネガティブな内容のどちらも含めることが大切です。
 

5.施策や課題の検討

施策や課題の検討

最後に具体的な施策や課題を設定することでカスタマージャーニーマップが完成します。

先に設定した思考や感情がネガティブな場合、「商品選びに困るようなら比較表を用意する」といったように課題とその解決策を検証すると良いでしょう。思考や感情がポジティブな場合は、「欲しい商品が購入できて満足している顧客に導入サポートを実施する」といったように、感情に沿った追加施策を考えます。

このようにユーザーの思考や感情にあわせて「理想的な体験」をイメージすることで、適切な施策を設定しやすくなります。

カスタマージャーニーマップを初めて作成する場合はテンプレートが便利です。テンプレートを活用したい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

6.KPIの設定と改善

カスタマージャーニーマップを作成した後は、効果検証を行って内容を改善しましょう。作成したばかりのカスタマージャーニーマップは、あくまで頭のなかのイメージを図式化したものに過ぎないため、見込み客や顧客の行動や反応にあわせて内容を最適化することが重要です。

効果検証を行うためには、施策を実施する前にKPI(計測可能な目標値)を設定します。例えば、「認知」フェーズに広告のインプレッション数やブランド想起率といったKPIを設定しておくと、目標値と実数値の差からカスタマージャーニーマップの精度を検証できます。

効果検証とマップの精度改善を繰り返すことで、より適切な施策の考案と実行が可能になります。
 

カスタマージャーニーマップの制作事例

カスタマージャーニーマップの制作事例

最後にカスタマージャーニーマップの制作事例をご紹介します。
 

インサイトで潜在ニーズを明確化

インサイトで潜在ニーズを明確化

出典:Customer Experience×コンテンツ vol.1|CMS構築 導入実績トップクラスのNOREN|株式会社アシスト

初めてマッピングする方でも使いやすい、シンプルな構造のカスタマージャーニーマップです。認知から購入までのプロセスは4項目のみのシンプルなフェーズで構成されており、縦軸も行動や思考といった最低限の項目しか含まれていません。

慣れない方でも作成しやすいカスタマージャーニーマップですが、インサイトに着目している点が特徴です。インサイトとは消費者本人でさえ気付いていない購買動機や本音のことです。

このカスタマージャーニーマップでは、インサイトで見込み客の潜在ニーズを明らかにしたうえで、「見込み客が本当に求めていることに対してどのようなアプローチができるか」という点を浮き彫りにしています。潜在的な意識に対して適切なアプローチを行うことで、購買意欲の向上やブランドポジションの確立につなげられます。
 

データを基に消費者のリアルな行動を可視化

データを基に消費者のリアルな行動を可視化

出典:【2022年版】中国人女性消費者のカスタマージャーニーまとめ - 株式会社ENJOY JAPAN _ 中国プロモーション・中国マーケティング支援

中国マーケティングシステム「ミーエル」を提供する株式会社ENJOY JAPANは、システムから取得したECデータやSNSデータに基づいたカスタマージャーニーマップを公開しています。

このカスタマージャーニーマップによって、中国の都市部に在住する10~30代の女性消費者の購買行動が一目で確認できます。例えば「認知」フェーズでは、商品やサービスの存在を知るきっかけとして、「小紅書(RED)」「抖音(Douyin)」といったメディアの影響が強いことがうかがえるでしょう。

こうした消費者のリアルな行動を可視化することで、適切な施策を立てやすくなります。

こちらの記事では、他の制作事例も紹介しています。ぜひご覧ください。

 

カスタマージャーニーマップを活用する際のポイント

実際に施策を実行してみると、当初組み立てたカスタマージャーニーマップにズレがあり、想定通りの効果が出ないケースもあります。定期的な効果検証を行わないと、そのカスタマージャーニーマップを正として、費用対効果の低い施策を続けてしまうことになるでしょう。

どのタッチポイント・施策から最もリード創出をできているか、離脱しやすいポイントはどこかなどを検証したうえで、再度カスタマージャーニーマップを組み直すことで、実態に沿ったものへとブラッシュアップしていくことが可能です。カスタマージャーニーマップは「最初に作って終わり」ではなく、マーケティング施策を進めるなかで常に立ち返り、改善していくものと捉えてください。

HubSpotでは、カスタマージャーニーの効果検証や改善をサポートする、高度なレポーティング機能を付帯したマーケティングツールを提供しています。ぜひこちらからご覧ください。

 

カスタマージャーニーマップで真に期待する体験を生み出そう

購買プロセスの各フェーズにおける見込み客の行動や感情を可視化できるカスタマージャーニーマップ。カスタマージャーニーマップを作成することで、いままで見えなかった見込み客の課題や悩みが明らかになり、施策の考案・実行・効果検証に活用できます。

マッピングを行う際は単なるイメージで各項目を埋めるのではなく、取得した顧客データやヒアリングなどを参考に、より具体的な「見込み客が期待する体験」を想定することが大切です。適切なカスタマージャーニーマップを作ることができれば、ユーザーにとってブランド体験の価値向上につながります。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

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