松竹梅の法則とは?マーケティングへの活用方法を紹介

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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松竹梅の法則とは、人は3つの選択肢から中間のものを選ぶ傾向が高いという心理学の理論です。この法則を活用して、高中低(松竹梅)の3つの価格を設定することで、利用者側は自社に合った料金プランを選びやすくなります。ニーズに合った選択ができると満足度が高まり、結果的に企業の売上や利益率向上につなげることも可能です。

松竹梅の法則とは?マーケティングへの活用方法を紹介

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    本記事では、松竹梅の法則の概要やマーケティングへの活用方法を紹介します。松竹梅の法則をうまく活用して、効果的な価格設定を行いましょう。

    松竹梅の法則とは

    松竹梅の法則とは、3つの選択肢があると、人は中間のものを選びやすいという心理効果のことです。極端な選択を避け、リスクを最小限に抑えるという人間の心理に基づいています。

    例えば、松 = 11,000円、竹 = 5,000円、梅 = 3,500円の3つの価格から選ぶとき、多くの人は中間の価格である5,000円を選ぶ傾向にあります。3つの価格の選択率は「松2:竹5:梅3」の割合になるという研究結果もあります。松竹梅の法則を上手に活用することは、商品やサービスの価格設定における重要な戦略といえるでしょう。

    ちなみに、海外では「ゴルディロックス効果」とも呼ばれ、英国の童話「ゴルディロックスと3匹のくま」が語源です。
     

    松竹梅の法則が働く仕組み

    人は安心・安定を好む傾向があり、真ん中である「竹」に安定を感じて選択することが松竹梅の法則の仕組みです。「竹」を選択することで安心感も得られます。

    また、松竹梅の法則では、「損失回避の心理」も働きます。損失回避とは、人間の損失を避けたいという心理のことで、得る喜びよりも失う痛みの方が2倍程度強いとされているものです。

    3つの選択肢があると、中間の選択肢と比較して、両極の選択肢に利用者がリスクを感じるようになります。そのため、両極の選択肢による損失を避け、中間の選択肢である「竹」が選ばれやすくなるのが松竹梅の法則です。

     

    選択肢が3つである必要性

    選択肢が1つの場合、「買う」か「買わない」かの判断しかされません。その際に比べられるのも、必然的に競合商品になります。

    一方で、選択肢が3つであれば、「どの価格やプランにするか」という選択をすることになるでしょう。自社の商品やサービスを購入することが前提になるため、前向きに検討してもらえるのがメリットです。

    選択肢が2つだった場合は、高額商品が敬遠され、消費者は価格の安い方を選びがちです。選択肢を3つにすることで、中間の価格を選んでもらいやすくなります。

    4つ以上の選択肢では迷いが生じやすくなり、「買わない」という選択をする可能性も出てきます。

    人間の短期記憶で一度に記憶できるのは、3~5個までの情報だといわれています。そのため、商品の比較検討も、一度に3~5つが限界だといえるでしょう。そして、選択肢が多すぎると、選択肢が多すぎて消費者は決断を避ける、「決定回避の法則」と呼ばれる人間の心理が働きます

    適度な数の選択肢を用意することで、購入時のストレスの軽減にもつながるでしょう。

     

    ビジネスへの活用例

    月額5,000円のWebツールを例にあげて、松竹梅の法則をビジネスへ活用する方法を考えてみましょう。

    まず、現在の価格である「月額5,000円」を「竹」に設定します。次に、「竹」の機能のうち半分程度を使える制限版を「梅」としましたが、「竹」にもあるサポートは残すことになりました。

    これは、顧客とより密接な関係性を持つことで、より高価格帯のものを購入してもらう意味があります。そして、「松」は「竹」よりも多機能にしただけでなく、ツールを使った先の提案まで行うコンサルサービスを付けて、プレミア感を演出します。価格は、「松:11,000円」、「竹:5,000円」、「梅:3,500円」と設定しました。

    このように、「竹」を基準に、引き算と足し算を行うことで、松竹梅の法則を価格設定に活用できます
     

    松竹梅の法則を活用するメリット

    松竹梅の法則を活用する主なメリットは、次の3つです。

    • 購入単価の増加
    • 購入数の増加
    • 効果的に値上げできる

    購入単価と購入数が増加すれば、結果的に売上と利益率も向上します。
     

    購入単価の増加

    顧客のなかには、高価な商品を求める人が一定数存在します。そのため、高価格帯の商品を用意することで、購入単価が増える効果が期待できます。それまで存在しなかった高価格帯の売上によって、全体の売上が増加します。

    購入者にとっても、選択肢が増えることがメリットになります。比較検討したうえで、よりニーズにあったサービスを選ぶことができるでしょう。

    3つの価格帯を設定した場合と、4つ以上の価格帯を設定した場合を比べても、やはり3つの価格帯を設定したほうが購入単価が増える可能性が高いといえます。選択肢が増えると、最も安い商品が選ばれやすくなるためです。

    松竹梅の法則に則って3つの価格帯を設定すると中価格帯の商品を選ぶ顧客が増え、平均客単価を上げることが可能です。購入者にとっても、選択肢を適切な数にすることで選ぶ際の負担を軽減させることができるメリットがあります。
     

    購入数の増加

    松竹梅の法則は、「買うか買わないか」から「どれを選ぶか」へと焦点を移す効果的な手法です。

    価格が1つしかない場合、顧客は「購入するか否か」を考えることになりますが、松竹梅の法則を適用して選択肢を増やすことで、「どの商品やプランを選ぶか」という選択に変えることできます。購入することが前提になり、結果的に購入者が増えるでしょう。

    また、松竹梅の法則によって商品のバリエーションが増えると、見込み客のニーズに応えることにつながるため成約率の向上が期待できます。特に、価格が最も低い「梅」の商品があることで、これまで成約しなかった顧客の購入を後押しすることが可能です。

    購入者にとっても、「梅」の価格帯の商品は気軽に試せるのでメリットになります。トライアルからリピートする際に、「松」や「竹」への成約につながる可能性もあるでしょう。価格が4つ以上ある場合は、3つに減らすことで、先述の「決定回避の法則」によって購入数の増加が期待できます。
     

    効果的に値上げできる

    高価格の「松」の価格を設定することは、中価格帯である「竹」の価格を見直す機会にもなります。「竹」の商品やサービスの価格を上げたとしても、それより高額な「松」の存在により、「竹」が比較的安価に感じられます。その結果、値上げに納得感が生まれやすくなるでしょう。

    また、「竹」よりも安価な「梅」の商品やサービスが存在するため、価格を重視する顧客には「梅」を選んでもらうことも可能です。価格を重視して「梅」にするか、品質を重視して「松」にするか、それともバランスを取って「竹」にするかという選択ができるようになることは、顧客のニーズに応えることにつながります。
     

    松竹梅の法則をマーケティングに活用する際のポイント

    松竹梅の法則をマーケティングに活用する際は、次の3つのポイントを押さえておきましょう。

    • 一番売りたい価格を竹(中価格)に設定する
    • 松(高価格)から提案する
    • 竹(中価格)と松(高価格)の価格差を大きくする
       

    一番売りたい価格を竹(中価格)に設定する

    松竹梅の法則を活用する際の重要なポイントは、主に売りたい商品を中価格の「竹」に設定することです。一般的には「松=2:竹=5:梅=3」の比率で売れるといわれており、一番需要の多い「竹」の値段設定が重要です。

    松竹梅の法則は、主に売りたい商品を中価格の「竹」に設定するために、高価格と低価格の商品を用意するマーケティング施策でもあります。

    最も売れやすいと考えられる「竹」の利益率を高く設定することで、全体の利益の底上げが期待できます。また、「竹」の商品やサービスは、自社の主力商品になることから、クオリティを高める必要があります。松竹梅の法則に則って値付けをすることは、顧客がより質の高いサービスを受けることにもつながるでしょう。
     

    松(高価格)から提案する

    商品の提案順序は価格の高い「松」から始めて、次に低価格の「梅」、最後に中価格の「竹」を示すと効果的です。顧客が最初に見た「松」を基準に、ほかの商品を評価する「アンカリング効果」を利用します。

    アンカリング効果によって、顧客は費用を抑えつつも質を落としたくないと感じ、低価格の「梅」を選ばずに「竹」を選ぶ可能性が高まります。

    この手法は不動産販売などでも用いられ、商品提示の順序を意識することで、「竹」の販売率を向上させることが可能です。Webページの場合は、価格を縦に順番に見せるレイアウトにして、上から松竹梅の順番に配置すると良いでしょう。

     

    竹と松は価格差を大きく、竹と梅は価格差を小さくする

    例えば、「竹」の価格が5,000円であれば、「松」の価格は11,000円と大きく離し、「梅」の価格は3,500円と「竹」に近づけます。「梅」から「竹」への価格差を小さくすることで、「梅」の価格を少し上乗せすれば「竹」が購入できると感じてもらうことが可能です。

    「松」の価格は「竹」から大きく離すことで、高価格商品を求める顧客に対して魅力を持たせることを意識しましょう。また、「松は高いが竹なら購入できる」と考える顧客には、「竹」を選んでもらえます。
     

    松竹梅の法則を活用して売り手・買い手双方の利益最大化をめざそう

    松竹梅の法則をマーケティングに活用すると、最も売りたい真ん中の価格帯の商品やサービスを効果的に訴求できます。適切な数や価格帯の選択肢を用意することは顧客にとってもメリットとなり、売上の増加につながるでしょう。値上げをする際も、3つの価格帯を用意することで機能やサービス内容を比較検討することが可能になり、納得感が生まれます。

    まずは、中価格の「竹」で利益を最大化できるよう価格設定を行ってみましょう。そのうえで、「松」と「梅」の価格を検討します。松竹梅の法則をうまく機能させるため、いずれの価格帯も、価格に見合った価値をしっかりと提供することを忘れないことが大切です。

    顧客のニーズに応えることを最優先に考えながら、売上や利益とのバランスが取れた価格設定を目指しましょう。

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