自社での 業務の進め方や設計が課題となっているものの、業務効率化に着手できず時間だけが過ぎていませんか?業務プロセスにおける量的・質的な課題、時間の無駄や人的問題など、改善しないと分かっていながら着手が先送りになっている企業は少なくないでしょう。
本記事では、業務効率化の進め方や、進捗状況を明確にするために持っておきたい指標に加え、具体的な8つの手法を解説します。業務効率化に着手したいけど、何から手をつければいいのかわからないと悩まれている方はぜひ参考にしてみてください。
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業務効率化とは?
業務効率化とは、既存の業務にある無駄を排除して、同じ資源の活用下でより効率的な業務遂行環境を作ることです。
例えば、同じ業務を行うにしても、紙、Excel、クラウドベースのスプレッドシートで管理するのとでは効率に大きな違いが出ます。社員間での共有までを考えた際に、圧倒的な工数の差が出てくることは容易に想像がつくでしょう。
業務効率化の目的は、当然 効率的なオペレーションを構築し、より顧客に向き合える時間を創出することです。顧客と向き合い、理解することで、顧客体験をより良くできる余地が生まれます。
業務改善によって効率性を高め、顧客体験を良くしていくというサイクルを継続しれば、最終的には収益改善にも貢献できます。
顧客・社員・企業全てが恩恵を受けられる状態を見据えて業務効率化に取り組みましょう。
業務改善については、以下の記事もご参照ください。
業務改善・効率化ツール36選|導入メリットや選定ポイントも解説
業務効率化を実施するメリットとは?
業務効率化がステークホルダー全てに良い影響をもたらすものだとお伝えしましたが、実際、現場にはどのようなメリットがあるのかもう少し深堀りしてみましょう。
ここでは、「QCD」をベースに考えてみます。
QCDとは、 Q:品質(Quality)、C:コスト(Cost)、 D:納期(Delivery)の頭文字を取ったもので、各要素をバランス良く保ちつつ改善していくことが理想的な業務効率化と言えます。
コスト削減
業務効率化の推進によって、企業にとって課題を抱えやすいコスト面でも効果が期待できます。
例えば、従来にありがちな契約業務として、担当者が契約書をプリントアウトして、承認者が押印し、郵送するという煩雑な作業手順が課題となっていました。
しかし、電子化システムを導入すれば、紙に依存しないオペレーションが実現するため、印刷費、送料、人的コストの削減が可能になります。
生産性向上
業務効率化を図れば、QCDの「Delivery」の部分となる生産性の向上、およびそれに伴う納期の短縮化も見込めます。
例えば、機械に置き換えられる単純作業であれば、ツールの導入により業務の自動化が図れます。これにより、課題となっていた人為的なミスが減り、業務パフォーマンスが向上します。
さらに、職場全体の生産性が向上し、納期など対クライアント向けパフォーマンスの良化も期待できます。
品質向上
業務効率化の促進はQCDの「Quality」の部分となる品質の向上にも寄与します。
コストを削減し、生産性を向上させても、その分品質が低下してしまっては意味がありません。品質が低いと、顧客満足度やNPSは低下し、中長期的なLTVの低下に伴う売り上げの減少につながっていくからこそ、品質の担保は非常に大切な考え方だと言えます。
適切な業務効率化が実現すると、これまでプロジェクト管理に割いていた工数等が浮くので、その分を品質向上へと充当できるようになります。
QCDの改善=労働環境の改善に
バランスの良いQCDによる業務の効率化が進むと副次的効果として労働環境の改善も期待できます。
従業員がこれまで業務にかけていた時間が短縮化し、人為的なミスも減ると仕事を早く終えたり、新しいことにチャレンジできる風土が醸成されたりと、労働環境が改善します。その結果、業務に対するモチベーションが向上し、企業全体としても業績アップが見込めるでしょう。
業務効率化できているかを計測するために指標を設けよう
業務効率化を行う際に定量的および定性的な目標となる指標を取り入れれば、数値として可視化できるため、プロジェクト評価や改善ポイントの明確化が図れます。設定するべき具体的な指標は、企業や部署によって異なるでしょう。ここでは基本となるKGIとKPIの定義を解説します。
KGI
KGI(Key Goal Indicator)とは、最終的な目標達成に対する指標です。日本語では「重要目標達成指標」とも言われます。
経営課題の解決に向けたKGIとして「売上の向上」を例にとると、「会社の経常利益を3億円増やす」などの最終的な目標値を設定する場合に、3億円増の達成度を可視化する数値がKGIとなります。業務効率化の場合でも、最終的には「経常利益を3億円増やす」という経営課題を見据えておくのが良いでしょう。「3億円増やすために、どの部署の、どの業務から効率化を進めればいいのか」と逆算していくことで、業務効率化推進の道筋が見えてきます。
KPI
KGIが最終的な目標であるのに対し、KPI(Key Performance Indicators)は、KGI達成に向けた細かいプロセス目標です。
先ほどの「会社の経常利益を3億円増やす」というKGIに対して、業務効率化を進めるためのKPIを設定する場合、営業部門の一人当たりの売り上げを伸ばすために資料作成などの作業時間を月○時間削減する、などが考えられます。
KGIを達成するためには、基本的にはKPIは複数必要になります。1つ1つのKPIをどのタイミングで達成していくべきなのかマイルストーンを設定し、計画通りに進捗しているか定量的に計測できる状態にしておきましょう。
KPIは、目的に応じて複数のKPIが定められます。
業務効率化の手法8選
ここからは、具体的な業務効率化の8手法をご紹介します。
1. システムの導入
システム導入による業務改善は、業務フローの一部ないしは全体をシステム化して、人の手による作業を電子化するというアプローチです。
業務のシステム化は、一定ルールのもとでデジタル化するためオペレーションを標準化しやすくなります。また、帳票やcsvなどのアウトプットを、あらかじめデータとして蓄積できるようになる点も、メリットとして挙げられます。
一方で、システム費用や人件費など導入にかかるコストが懸念されます。また、業務にフィットしたシステムを導入するための事前準備に、相応の時間がかかることも想定されます。
2. 業務マニュアルの整備
業務の可視化を進めていくと、人の記憶や慣習で進められているものが少なからず見つかります。そのような業務内容を、紙や電子によるマニュアルで可視化し、運用するアプローチもあります。
マニュアルを整備すると、これまで人的作業上で発生していたオペレーションミスの防止につながり、また新任担当者のオンボーディングもスムーズになります。
一方で、マニュアル作成時にはパソコン作業であれば画面キャプチャを取得してドキュメントに貼り付けるなど膨大な工数が想定されます。同様に、ソフトウェアなどのバージョンアップがなされた際に、マニュアルの更新工数が都度かかってしまうこともデメリットとなります。
3. アウトソース
自社で全ての業務を行うのではなく、業務の一部ないしは全体を、外部の専門業者に委託・アウトソースするアプローチもあり得ます。
自分たちで手を動かさずに効率化できるので、業務効率化プロジェクトの時間軸としては、比較的短期の実現が見込めます。
一方で、外部業者への委託はアウトソース費用が継続的にかかるため、潤沢な予算がないと、選択肢に乗せにくい傾向があります。アウトソース先担当者と自社とのコミュニケーションコストがかさむ可能性もあり、社内にノウハウが蓄積されないといった中長期的な課題が残ることにもなります。
4. 作業工程の整備
業務における意思決定の流れに課題がある場合、まずは作業がどのように進められているのか工程を把握し、整備する必要があります。
工程を把握すれば、誰がどのような意思決定をすれば良いのかが明確になるので、タスクの分担ミスの防止にも繋がります。
一方で、作業工程を機械的に組み、固めすぎてしまうと、柔軟性が失われ、担当者不在の場合にタスクが遅延する可能性があります。様々なケースを想定した分岐の多いワークフローを設計するという対策もありますが、複雑化しすぎると運用にのらないリスクもあります。現場と密にコミュニケーションをとり、最適解を模索していきましょう。
5. 組織体制の変更
業務の遂行が組織的な問題でうまく進んでいない場合、タスクの機能性に応じて組織を変更するアプローチが考えられます。例えば、事業部制への移行は代表的な例となります。
事業部制組織のように、組織体制をドラスティックに変更すれば意思決定を含めた業務の流れの改善が期待できます。
一方で、組織構成の変更には全社的な調整が必要になるので、時間と予算、および人的配置の最適化に向けた検討が求められます。準備におけるリソースの確保が難しい場合は、部門横断型のタスクチームとして、組織図とは違うレイヤーでチームを組成するという手もあります。
6. 業務の分割・集約
特定の業務に時間がかかっている場合、例えば、業務の属性に応じてタスクを複数に分割し、必要な部分を再度集約した後に担当を再度割り振るといった手法もあります。
この場合、時間がかかっている要素のシステム化やアウトソースなど対応策を講じやすくなり、業務そのものを組み立てやすくなるメリットが得られます。
一方で、タスクの分散化は管理が煩雑になるため注意して取り掛かりましょう。
7. 業務の削減
煩雑な業務が発生している場合、そもそも不要な業務部分を特定して、それそのものを削減する方法もあります。
削減した業務の工数分を別の業務に人員を充当できるようになります。
業務を削減する際は、影響範囲を、あらかじめ入念に調査しておきましょう。業務をなくすことで思わぬ部分で影響がある場合もあるので、自部門のみならず、他部門も含めてヒアリング調査を実施してプロジェクトに反映させましょう。
8. 業務の自動化
先ほどご紹介した業務のシステム化の応用として、一部業務をRPAやスケジューラーなどで自動化する方法もあります。
人的コストの削減と生産性向上につながるので、費用対効果を算出した上で見合うようであれば自動化を検討するべきでしょう。
ただし、自動化にあたってはスクリプト作成に時間と労力がかかったり、想定外のプロセス停止に対するコストがかかる可能性もあります。さらに、業務内容そのものが変わった際に、ルールを再設定するための工数が継続的に発生することも、留意しておきましょう。
以上の8手法のメリットとデメリットを一表化したものが以下となります。
メリット |
デメリット |
|
システム |
・オペレーションミスの防止につながる ・新任担当者のオンボーディングがスムーズになる |
・費用や人件費など導入コストがかかる ・システム化までの事前準備に時間がかかる |
業務 |
・オペレーションミスの防止につながる ・新任担当者のオンボーディングがスムーズになる |
・マニュアル作成工数がかさむ ・マニュアルの更新工数がかかる |
アウトソース |
・自分たちで手を動かさずに効率化を実現できる ・短期に効率化が図れる |
・アウトソース費用が継続的にかかる ・アウトソース先担当者とのコミュニケーションコストがかさむ可能性がある ・社内にノウハウが蓄積されない |
作業工程 |
・業務ごとの作業工程を整備し、タスクの分担ミスを防止できる |
・柔軟性に欠ける場合が多い ・担当者不在の場合にタスクが遅延しやすい |
組織構成 |
・意思決定含めた業務の流れがスムーズになる |
・組織変更を実施するには全社的な調整が必要になる |
業務の |
・課題をシステム化やアウトソースなど対応策が講じやすい ・他業務を含めて組み立てやすくなる |
・タスクの分散により管理が煩雑になりやすくなる |
業務の |
・業務削減分の工数が減り、別業務へ割り振れる |
・予期せぬ業務の発生が起こるため、影響範囲をあらかじめ入念に調査しなければならない |
業務の |
・人的コストの削減と生産性向上につながる |
・自動化スクリプト作成に時間と労力がかかる ・想定外の停止への対応コストがかかる ・業務内容変更時に再設定工数がかかる |
業務効率化を進める上でのポイントと注意点
業務効率化を進める際は以下のポイントと注意点を押さえておきましょう。
事前に業務分析を行う
業務効率化を進めるにあたっては、事前に業務プロセスの可視化など業務分析を行いましょう。どのような業務がどのタイミングで、誰によって行われているのか、可能な限り定量的に把握してください。
業務分析については、以下の記事を参考にしてください。
業務分析の成功プロセス&おさえておきたいフレームワークを解説
現場目線でプロジェクトを進める
現場にて業務効率化を進める場合、現場目線を持たなければ机上の空論になる可能性があります。トップダウン式の改善では現場で働くメンバーからの反発も想定されます。現場とのコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めるようにしましょう。
優先順位が高い部位から着手する
業務効率化を図る場合、全社的に業務の最適化を求めるケースが散見されます。課題レベルによっては基盤レベルで進めなくてはならないケースもあるでしょうが、効率化のためのリソースを確保できない場合は、優先順位の高いものから順次実施しましょう。
各手法を適切に理解した上でプロジェクトを進めよう
業務効率化とひと言でいっても、そのための手法はたくさんあります。
より実効的な業務効率化のためには、設定したKGI、KPIを達成できる各手法のメリット・デメリットを理解してください。さらに、各手法導入後の検証と改善プロセスまで設計した上で、プロジェクトを進めましょう。