「してはいけない」と禁じられると、その事柄に対しての興味や関心がかえって強くなる心理を、カリギュラ効果といいます。マーケティングにも活用されている、心理効果のひとつです。
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カリギュラ効果を正しく理解して活用すれば、マーケティングの成果向上の効果が期待できます。本記事では、カリギュラ効果とは何か、マーケティングにおける具体的な活用例、活用のポイントを解説します。
マーケティング担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
カリギュラ効果とは
カリギュラ効果とは、ある事柄について禁止や制限をされると、逆にそれをしたくなる心理です。人間は、行動を禁止または制限されることで、その事柄に対して関心を持つ性質があります。
例えば、「〇〇な人は絶対に見ないでください」といった広告は、カリギュラ効果で欲求が高まる、心理的な効果を利用しています。
なぜ、この現象をカリギュラ効果と呼ぶのでしょうか。名前の由来は、『カリギュラ』という映画です。この映画はショッキングなシーンなどが多く、アメリカの一部地域で放映禁止にしたところ、逆に見たがる人が増えて話題を呼びました。
この映画にちなんで、他者から禁止されるとやりたくなる心理効果を「カリギュラ効果」と呼ぶようになったのです。
カリギュラ効果と似ている言葉との比較
カリギュラ効果に似た心理学用語に、次の2つがあります。
- シロクマ効果
- 心理的リアクタンス
順番に解説します。
シロクマ効果
シロクマ効果とは、やりたくないのに逆にそれを行ってしまう心理現象です。
例えば、禁煙したいと考えている人がいるとしましょう。しかし、タバコのことを忘れようと思えば思うほど、タバコのことを考えてしまいます。これがシロクマ効果です。
なお、シロクマ効果と呼ばれる理由は、「シロクマのことを考えないようにする」実験が行われたためです。心理学者によるこの実験では、考えないようにすればするほど、かえってシロクマを思い出してしまうという結果になりました。
カリギュラ効果との違いは、自分が望んでいるかどうかにあります。カリギュラ効果は、禁止や制限をされることでしたくなり、シロクマ効果は、やりたくないのにやってしまう点が異なります。
心理的リアクタンス
心理的リアクタンスとは、言動に制限をかけられると、自由を奪われたことに対する反発を覚える心理のことです。
例えば、今から勉強をしようと思っていたところに、親から「勉強しなさい」と言われてやる気がなくなる、といったケースが心理的リアクタンスに該当します。
カリギュラ効果との違いは、禁止や制限をかけられた際の感情です。カリギュラ効果では、禁止されることで興味や関心が生まれますが、心理的リアクタンスでは反発が生じる点に違いがあります。
カリギュラ効果のマーケティングでの活用例
カリギュラ効果のマーケティング活用例を4つ紹介します。
- 限定販売
- 会員登録
- キャッチコピー
- 話題作り
具体的な詳細を、一つずつ見ていきましょう。
限定販売
商品やサービスの数量や期間を限定する方法です。制限することで、消費者の関心を高める効果があります。
消費者は「今しか買えない」と感じ、興味や関心が生まれやすくなります。「季節限定の菓子」や「限定10足のスニーカー」などが、その一例です。
会員登録
会員登録は、小さなハードルを設けて、それを乗り越えると欲求を満たせるようにする集客手法です。
例えば、記事を読んでいる途中で「続きは会員限定」と表示されることがあります。これも、カリギュラ効果を狙ったものです。比較的簡単な課題を設けて「読みたい」という欲求を刺激することで、ユーザーの興味を引く効果が期待できます。
あまりに大きなハードルを設定しすぎると逆効果になりますが、一般的に軽微なことであれば、興味が高まりやすく効果的です。
キャッチコピー
禁止や制限を伴うようなキャッチコピーを用いると、カリギュラ効果が発生します。本の帯やPOPなどで「絶対に読まないでください」と書かれていると、無性に内容が気になるように、禁止されると読みたくなる、まさにカリギュラ効果を狙った手法です。
また、バーナム効果をかけ合わせると、より大きな効果が期待できます。バーナム効果とは、誰にでも当てはまる事柄を自分のことだと思ってしまう現象です。
例えば、「現在の成果に満足している方は見ないでください。今よりさらに営業成績を上げたいと考えている方に向けたセミナーとなります」と広告に記載するとします。最初に禁止をしていますが、実際に営業成績を全く伸ばしたくないと考える人は少ないため、多くの人に「自分のことだ」と捉えてもらいやすくなります。
バーナム効果については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
話題作り
カリギュラ効果は、話題作りにも活かされています。例えば、テレビ番組などで放送禁止用語を表す「ピーッ」という音を意図的・効果的に使用することにより、「一体何が話されていたのか」と、SNSなどで話題に上ることがあります。
一部を隠すことで、隠された内容に視聴者が強く興味を引かれるため、話題作りになるのです。
カリギュラ効果を活用するときのポイント
ここでは、カリギュラ効果をビジネスで活用する際のポイントを3つ紹介します。
- ブランドイメージに注意する
- 禁止理由を明確にする
- 制限の度合いを見極める
いずれも留意が必要なため、正しく理解しましょう。
ブランドイメージに注意する
広告や宣伝で注意が必要なのは、その文言です。「閲覧禁止」など、過剰な表現を安易に用いると、ブランドイメージが損なわれてしまう場合があるので、表現方法には細心の注意を払わなければなりません。
数量限定の訴求なども、過度の煽りがブランドイメージの棄損につながる恐れがあります。許容ラインは、商材や企業が目指すイメージによって異なるため、慎重に取り扱いましょう。
カリギュラ効果を有効に活用するためには、ユーザーとの信頼関係が大切です。事前にマーケティングリサーチを行うなどして、市場や顧客のニーズ、信頼関係の構築度合いも確認したうえで、活用を検討することが求められます。
禁止理由を明確にする
「読まないでください」といった禁止の表現を用いるときは、なぜ禁止するのか、理由を明確にしましょう。理由がわからなければ、特に好奇心がそそられることなく、読まれずに終わってしまいます。
本来の目的は読んでもらうことなので、ただ単に禁止するだけでなく、ユーザーの興味を引くような書き方を心がけてください。
例えば、ダイエット商品の場合「ストイックな方は見ないでください」と表現したうえで、「心身に負担をかけずに痩せたい人のための方法です」などの理由も添えて、説明すると良いでしょう。
制限の度合いを見極める
会員登録の項目でも述べたとおり、乗り越えるべきハードルは、適切な高さにする必要があります。例えば、会員登録すれば記事の続きを読める場合、無料であればハードルは低いので、乗り越えてくれる人が多くなります。
しかし、有料の会員登録で月額1,000円かかるとしたら、ハードルが高すぎて二の足を踏み、登録しない人が増えるでしょう。自社の商品やサービスの内容に見合った、適度なハードルを設定することが重要です。
カリギュラ効果をマーケティングに活かそう
カリギュラ効果を正しく理解することで、マーケティングにも応用できます。どのようなハードルを設ければ、ユーザーの興味・関心を引けるのか、限定や禁止の内容などを考えてみてください。
自社のブランドイメージを損なわないよう十分に注意しながら、効果的に活用し、マーケティングの成果向上や売上アップを目指しましょう。