チャットボットは近年企業で積極的に導入されていますが、情報収集をする過程で「失敗した」「役に立たない」という口コミを見たことがある方もいるでしょう。チャットボットは便利なツールである一方で、正しい導入や運用ができなければ期待したような成果を得られないのも事実です。そのため、事前に失敗例と対処法を把握しておくことが大切です。
本記事では、チャットボットの導入・運用に失敗する原因と、13の失敗事例を紹介します。対策方法もあわせて解説するため、これからチャットボットを導入したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
チャットボット活用の基礎ガイド
チャットボットの選び方から導入手順までわかりやすく解説!
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- チャットボットの導入メリットと導入事例
- チャットボットの導入手順
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チャットボットの導入で失敗する原因は?
チャットボットの導入に失敗する主な原因として、次のようなことが考えられます。
目的に適したチャットボットを選定していない
チャットボットには、さまざまな種類があり、社内向け、顧客向けなど用途が決まっているツールもあります。チャットボットを導入する目的をはっきりさせないまま選んでしまうと、効果的に活用できないなどの失敗につながるため注意が必要です。
必要なデータが反映されていない
チャットボットは、あらかじめ設定したFAQやシナリオをもとに回答を実施します。ユーザーが必要とするデータがチャットボットに反映されていないと、ユーザーの質問に対して適切な回答ができず、利用率が下がってしまいます。「チャットボットを導入してみたものの、あまり使われていない」という場合は、データが不足している可能性があります。
導入後のメンテナンスを怠っている
チャットボットの導入後に定期的な分析やメンテナンスが行われていないことも、失敗する原因のひとつです。分析やメンテナンスを怠ると、FAQの情報が古い、必要な情報が足りていないなどのトラブルにつながります。
チャットボットでの失敗例13選と対策方法
本章では、チャットボットのよくある失敗例と対策方法をあわせて紹介します。チャットボットの導入を成功させるためには、失敗と対策の事例を把握しておくことが大切です。
1. ユーザーの利用率が低い
チャットボットを導入したにも関わらず、ユーザーの利用率が低くチャットボットを有効活用できていないケースです。主に次の理由が考えられます。
- ユーザーがチャットボットの存在に気付いていない
- ユーザーがチャットボットの利用方法をわかっていない
原因によって対策方法が異なるため、まずは、なぜチャットボットが利用されていないのかを分析しておきましょう。
対策方法1:チャットボットの存在を周知させる
チャットボットの利用率を上げるためには、導入したことをユーザーに知らせる必要があります。顧客向けの場合は、リリース時にSNSなどで告知する、Web広告やメルマガなどでチャットボットの存在をアピールするなどの方法が有効です。社内向けの場合には、会議や一斉メールなど、周知の方法を決めておきましょう。
対策方法2:チャットボットへの導線を作る
ECサイトや社内ポータルサイトなど、ユーザーがすぐに利用できる場所にチャットボットを設置します。紙媒体の広告も利用している場合は、チラシやパンフレットにQRコードを添付してチャットボットに誘導するのも良いでしょう。
対策方法3:チャットボットのデザインを変更する
チャットボットが目立つようにデザインを変更します。バナーを大きくする、「お問い合わせはこちらから」と記載するなど、顧客がチャットボットに気付きやすいビジュアルを目指しましょう。
対策方法4:利用方法を知らせる
ユーザーが気軽に利用できるように、チャットボットのリリースを告知する際に利用方法もあわせて知らせると良いでしょう。ユーザーがチャットボットを起動させた直後のチャットで、画像やイラストを用いて利用方法を伝える方法もあります。利用方法をユーザーに理解してもらうための工夫が大切です。
2. チャットボット自体が使いづらい
チャットボットの失敗例として、次の2つの観点から使いづらいと思われてしまう点があげられます。
- 操作方法が難しい
- テキスト入力が面倒
誰でも簡単に扱えなければ、ユーザーの満足度や利用率が下がってしまいます。
対策方法:導入前に使いやすいUI・UXかを確認する
チャットボットが初めての人でも簡単に利用できるUI・UXかを、導入前に確認しておくことが大切です。例えば、ユーザーが求める情報をサジェストする機能は使いやすさにつながります。チャットボットによっては無料トライアルが利用できるため、導入前に利用してみるのも良いでしょう。
3. AIチャットボットの精度が低い
AIチャットボットの精度が低いことでユーザーが満足いく回答を得られず、利用率や顧客満足度の低下が引き起こされる失敗例です。AI型のチャットボットは導入後すぐに有効活用できるわけではなく、会話や回答の精度を上げるための学習期間が必要です。
対策方法:学習期間を設ける
AI型のチャットボットを導入するのであれば、精度を上げるために1週間に数時間以上学習期間を設けましょう。運用後も質問に正しく回答できているかを、定期的にチューニングする必要があります。
4. 解決率が低い
チャットボットを利用しても解決率が低いという失敗例です。主に次のような理由が考えられます。
- ユーザーに必要なFAQが蓄積されていない
- 回答が長文でわかりづらい
チャットボットでユーザーが知りたい情報を解決できなければ、満足度が低下してしまいます。
対策方法1:ユーザーに必要なFAQを反映する
対策として、次のような方法でチャットボット利用対象ユーザーのニーズを調査します。
- 過去の問い合わせ内容を収集・分析する
- ユーザー目線に立って考える
- アンケート調査を行う
調査結果を分析し、ユーザーに必要なFAQをチャットボットに反映しましょう。
対策方法2:FAQに検索キーワードを登録する
チャットボットのほとんどは、ユーザーの質問文に含まれる検索キーワードに沿って回答する仕組みです。FAQに検索キーワードを登録することで検索の精度が上がり、解決率の向上につながります。
例えば、ユーザーがチャットボットで「退会したい」と入力した場合、「退会」というキーワードが含まれるFAQが回答として表示されますが、「解約」というキーワードのFAQは抽出されません。検索されそうなキーワードを多く登録することが大切です。
対策方法3:簡潔な回答を用意する
FAQを見直し、長文やわかりにくい表現を簡潔な文章に編集します。文章とあわせて画像やイラストが挿入されているページへ誘導するのも効果的です。AI型の場合は、自然言語処理能力の高いサービスを選ぶ、学習期間を設けて精度を上げていくなどの対策をしましょう。
5. 情報を蓄積しすぎて実装の難易度が上がった
チャットボットに大量の情報を蓄積すると、実装の難易度が上がります。特に、社内向けのチャットボットを導入する際は、カスタマーサービス担当者と経営者層のように、盛り込みたい情報が異なると情報量が多くなる傾向があるため注意しましょう。
対策方法:徐々に情報量を増やす
初めから多くの情報を盛り込むのではなく、チャットボットに登録する内容を取捨選択しておきます。例えば、顧客向けの場合は「よくある質問」のみにすると情報量を絞れるでしょう。運用時に分析をしながら、徐々にFAQを増やしていく方法が有効です。社内で認識を統一することも大切です。
6. 難解な質問ばかりが寄せられる
チャットボットは難解な質問や長文への回答には向いていません。期待した回答が得られないことで、ユーザーの満足度が低下することがあります。
対策方法:チャットボットの業務範囲を決める
よくある質問はチャットボットに任せ、難しい質問はカスタマーサポートのスタッフが答えるなどの棲み分けをします。ユーザーの疑問が解消できない場合には、チャットボットから有人チャットにつなげる、カスタマーサポートの電話番号が表示されるようにするといった柔軟な対応も必要です。
7. 運用に時間をかけられない
チャットボットは導入して終わりではなく、定期的な分析とメンテナンスをして精度を上げていくことが重要です。運用時間が不十分だとユーザーニーズを掴めず、利用率が低下するでしょう。
対策方法1:運用体制を整える
運用前にチャットボットの分析やメンテナンスの担当者を決めておきます。必要に応じて複数人のチームで分業しましょう。
対策方法2:コンサルティングを依頼する
運用担当者が時間を確保できない場合は、コンサルタントに依頼するのも良いでしょう。導入から運用までサポートをしているサービスもあります。運用費用はかかりますが、メンテナンス不備による品質低下のリスクを防ぐ手段として役立ちます。
8. チャットボットの種類が自社に適していない
自社のサービスや目的に適していないチャットボットを選んでしまい、失敗するケースです。チャットボットは数多く存在しており、種類によって機能や特徴が異なります。チャットボットに何を求めるかが明確になっていないと適切な選択ができません。
対策方法:目的に合うチャットボットを選定する
自社サービスや目的に合わせて、導入前にさまざまなチャットボットを比較・検討しましょう。チャットボットには大きく分けて次の2種類があります。
- ルールベース型
- AI型
ルールベース型は、あらかじめ用意された質問から回答を導き出すため、定型的な質問に向いています。一方のAI型は、人工知能が搭載されており、大量の情報やデータで学習を重ねることで回答の精度が向上していく特徴があります。そのため、会話を要する質問に向いています。自社サービスとの相性や目的に沿って、どちらの種類にするかを決めましょう。
チャットボットの種類を決めた後は、チャットボットの作成ツールを利用するのか自社で開発するのか、作成方法も考えておきましょう。
9. 問い合わせ件数の減少につながらなかった
チャットボットをメンテナンスしていないことが原因で、適切な回答ができていない、あるいはチャットボットへの導線が悪いなどの理由から、問い合わせ件数の減少につながらないのも、よくある失敗例です。
対策方法1:過去の質問・回答内容を見直す
導入してその後ほとんどメンテナンスを行えていない場合には、見直しを行います。過去にあった質問のうち、回答できなかった質問に対して適切な回答ができるようにするなどの改善をしましょう。
対策方法2:チャットボットの存在をわかりやすくする
そもそもチャットボットの利用率が低い場合には、先に紹介したように、チャットボットへの導線を作る、目立つデザインにするなど、利用率アップのための対策が必要です。
10. そもそもチャットボットが必要なかった
チャットボットを導入しても自社の目的を達成できないこともあります。例えば、次のようなケースです。
- 想定されるFAQが数百件ある
- 対象とするユーザーの世代がインターネットに馴染みがない
FAQが大量にある場合は、チャットボットではなくFAQシステムの方が適している可能性があります。また、自社の商材が高齢者などインターネットに馴染みがない世代をターゲットとしている場合には、そもそもチャットボットを利用してもらえないこともあります。
対策方法:目的の明確化・ユーザーのニーズ調査
チャットボットの導入前に、自社の目的を明確化しておきます。「便利そうだから導入する」といったあいまいな動機の場合、利用機能や運用設計にブレが生じ、チャットボットを有効活用できない可能性があります。
チャットボットがユーザーにとって本当に必要かどうかを見極めるため、利用者アンケートなどを通してニーズの調査を行うことも有効です。
11. 費用対効果が合わない
初期費用やランニングコストが高額で、費用対効果が合わなかったケースです。チャットボットの利用率が低ければ費用対効果は高まりません。特に、AI型は高額になる傾向があるため慎重に検討しましょう。
対策方法:予算に見合うチャットボットを導入する
あらかじめ自社でチャットボットにかけられる予算を決めておきます。費用対効果を発揮できるかどうか、現在の問い合わせ数などから料金との適合性を判断すると良いでしょう。
12. 導入に時間をかけられなかった
チャットボットの導入までの準備期間を十分に確保できず、失敗につながることがあります。例えば、チャットボットの選定を誤る、回答精度が低いままリリースするなどのケースです。
対策方法:十分な準備期間の確保
余裕をもって準備期間のスケジュールを組むことで、自社の目的達成に効果的なチャットボットをリリースできます。チャットボットは、導入目的の明確化、比較検討、選定、実装、テストなど、導入までに多くの工数がかかります。作成方法にもよりますが、基本的には数か月の準備期間が必要です。
13. 完成に至らずリリースできなかった
チャットボットの導入を決定したものの、完成に至らずリリースできなかったという失敗例です。主に次のような理由が考えられます。
- 準備に時間と労力がかかり挫折した
- チャットボットの設定が難しかった
- 自社でチャットボットを開発できなかった
対策方法:チャットボット作成ツールを使用する
チャットボット作成ツールを使用すれば、初心者でも簡単にチャットボットの作成が可能です。ルールベース型・AI型に分かれており、それぞれ機能や特徴、連携できるサービスが異なるため、自社の目的に合ったツールを見つけましょう。
当社HubSpotが提供する「チャットボットの作成ツール」は、導入から継続まで完全無料です。ノーコード仕様で作成やカスタマイズができるため専門知識も必要ありません。チャットボットを簡単に作成したい場合は、ぜひご検討ください。
チャットボットで失敗しないためのポイント
チャットボットで失敗しないためには、失敗事例を参考に、目的の設定や分析を行うことが大切です。本章ではチャットボットで失敗しないためのポイントを紹介します。導入前にぜひご一読ください。
自社の目的を明確化する
チャットボット導入前に自社の課題や目的を明確化しておきます。目的を明確にすることでチャットボットに必要な機能やかけられる予算が見えてきます。目的によってはFAQシステムの方が良いなど、チャットボットが適さない場合もあるため慎重に検討しましょう。
目的に沿ったチャットボットを選定する
チャットボットの選定基準には次のような項目があります。
- 種類
- 機能
- UI・UX
- 費用
- 保守性の高さ
- 分析ツールの有無
- サポートの有無
- 無料トライアルの有無
実際に無料トライアルなどで使用してみて、便利だと感じたサービスのチャットボットを参考にするのも良いでしょう。
チャットボットの業務範囲を決める
チャットボットは長文や難解な質問には不向きです。そのため、すべてのFAQを任せられないことを前提に業務範囲を決めます。
例えば、「よくある質問」はチャットボット、それ以外はカスタマーサポートの有人対応にするなどの分け方です。チャットボットの業務範囲は社内で共有しておくことで、チャットボットに対する社内認識のズレを防げます。
リリース前にテスト運用をする
チャットボット運用開始後のトラブルを防止するために、リリース前に必ずテストをしましょう。ツールの操作性や回答の精度を確認し、必要に応じて改善していきます。実際にユーザーに利用してもらいアンケート調査を行う方法も、改善点の発見に有効です。
運用体制を整える
チャットボット導入後は、品質低下を防ぐために定期的な分析とメンテナンスが必要になります。担当者を複数人決めておくなど、チャットボットの運用体制を整えることが大切です。
KPIを設定する
チャットボットの目的が達成されているかどうかを分析するために、KPI(目的の達成度合いを測るための指標)を設定します。例えば、問い合わせ業務の効率化を目的とするケースでは、次のような項目がKPIになります。
- 起動回数・起動率
- 回答数・回答率
- 解決率
数値を分析することで、必要なメンテナンスの把握につながります。
定期的なメンテナンスをする
古い情報の改善、ユーザーに必要なFAQの追加など、FAQを定期的にメンテナンスします。チャットボットから必要な情報を得られないと利用率の低下にもつながるため、品質の低下を防ぐためにもメンテナンスは重要です。
チャットボットの導入に失敗する原因を把握して上手に活用しよう
チャットボットの導入に失敗する主な原因は、チャットボットの選定や運用後の改善ができていない点にあります。自社の目的を達成させるためにも、導入前にしっかりと比較検討を行い、自社に適したチャットボットを導入することが大切です。
また、チャットボットは導入して終わりではありません。運用や改善が重要なポイントとなるため、運用体制も整えておきましょう。本記事を参考に、自社や顧客の課題解決につながるチャットボットを見つけてみてください。