ユーザーからの質問に対して自動応答するチャットボットは、大きく分けてAI搭載型と非搭載型の2種類に分かれます。
そのうちAI搭載型にあたるAIチャットボットは、機械学習の仕組みにより、ユーザーの質問内容や意図を読み取り、自然な文章で回答を行えます。AI非搭載型のチャットボットのように、システム実装前にシナリオを用意する必要がなく、データが蓄積されていくと回答の精度が向上するのがメリットです。
2022年12月にOpenAIが発表した「Chat GPT」もAIチャットボットの一種です。あらゆる質問に対し、人間とほぼ変わらないレベルの精度の高い回答を得られることから世界各国で大きな話題となり、AIの急速な進化を印象づけました。対応できる範囲が急速に拡大しつつある今、ビジネスのあらゆる現場でAIチャットボットを活用できる余地があるでしょう。
例えば、膨大な問い合わせを処理する必要がある大規模なサイトや企業の場合、AI非搭載型よりもAIチャットボットのほうが向いているでしょう。ただし、初期費用が高くなる、回答内容をコントロールしきれないなどのデメリットがあるため、慎重に比較検討することが大切です。
本記事では、AIチャットボットの仕組みや代表的な機能、活用シーンをご紹介します。
チャットボット活用の基礎ガイド
チャットボットの選び方から導入手順までわかりやすく解説!
- チャットボットの基本概要
- チャットボットの導入メリットと導入事例
- チャットボットの導入手順
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AIチャットボットとは
チャットボットは、企業の公式サイトやアプリ上に設置されているチャットに質問すると、ロボットによって自動的に回答が得られるシステムです。そのシステムにAIの機械学習の仕組みを搭載させたものがAIチャットボットです。
ユーザーがチャットボットに質問を投げかけると、それに対する回答が自動で返ってきます。電話やメールでの問い合わせとは異なり、回答を得るまでの待機時間が発生しないため、顧客満足度の向上につながります。
企業はロボットでも回答できる簡単な質問に対して、顧客にAIチャットボットの利用を促すことで、電話やメールでの顧客応対にかける時間を削減できます。
AIチャットボットの仕組み
AIチャットボットには、「機械学習」と「自然言語処理」の2つの仕組みが備わっています。
機械学習とは、機械が過去の質問内容や会話ログを自動的に学習する技術です。自然前後処理は、人間が扱う言葉を機械に処理させる技術を指します。
ユーザーがチャットボットに質問すると、抽出した重要度の高いキーワードやフレーズから質問意図を読み解きます。その後、質問に応じて適切な回答を探したり組み合わせたりして、機械が自動的に適切な回答文を用意する仕組みです。
AIチャットボットの精度を高めるためには膨大な情報をインプットしなければなりません。企業が提供しているAIチャットボットツールによっては、サービス提供時点ですでにある程度の機械学習が済んでいるか、回答精度を高められるテンプレートが用意されているケースもあります。
AI型とルールベース型の違い
チャットボットは、「AI型」と「ルールベース型」の2種類に大別できます。両者にはシステムの構築方法に大きな違いがあります。
ルールベース型チャットボットは、設計したシナリオに沿って回答を表示するシステムです。例えば、「導入までに必要な期間は」という質問に対して、「契約後、すぐに導入できる」という回答を表示させるといったように、あらかじめ適切な回答を手動で設定します。
実際にチャットで質問をすると、「Yes / No」の回答や選択肢が表示されます。少しずつユーザーの質問意図を絞り込んだ後、最終的な解決策を提示する仕組みです。ユーザーが自ら、自分の求める答えに近付いていくようなイメージです。
AIチャットボットの場合は、企業がシナリオを用意するのではなく、機械学習によって質問内容と適切な回答をAIに記憶させます。何度も学習を繰り返すことで徐々に回答精度が高まり、ユーザーが最小限の質問回数で回答にたどり着けるようになります。
AIチャットボットのメリット・デメリット
ここでは、AIチャットボットのメリットとデメリットをご紹介します。
AIチャットボットのメリット
AIチャットボットのメリットは次の通りです。
- 複雑な質問にも回答できる
- 人同士のような会話ができるので親しみやすい
- ルールベース型と違って精密なシナリオを用意する必要がない
AIチャットボットには機械学習の技術が搭載されており、設定した単語以外の言葉も覚えられます。設定済みの単語をもとに、新しい言葉を自動的に予測できるからです。その結果、人間が使う複雑な質問にも対応できます。
また、機械学習によって質問の意図をある程度判別できるのも特徴です。そのため、ルールベース型のように、「挨拶のパターンをすべて登録する」などの精密なシナリオを作成する必要がなくなります。
AIチャットボットのデメリット
AIチャットボットのデメリットは次の通りです。
- 学習期間が短いと質問に回答できない場合がある
- 不適切な回答を記憶してしまう可能性がある
- 精度の高いAIチャットボットほど導入費用が高額になりがち
AIは必ずしも正しい判断をするとは限りません。機械学習中に誤った認識をしてしまうと、不適切な回答でクレームに発展する可能性も考えられます。そのため、AIチャットボットの運用中は定期的にモニタリングし、問題があれば検証する必要があります。
AIチャットボットの代表的な機能
AIチャットボットに搭載されている代表的な機能は次の通りです。
- 自然文に対する回答
- 表現のゆらぎを理解
- FAQ連携
- サジェスト機能
- 有人対応機能
- 外部システム連携
それぞれの機能について詳しく解説します。
1. 自然文に対する回答
自然文とは、話し言葉のような人間的に自然な文章を指します。
AIチャットボットは、文章中に含まれる単語の意味合いや語順から質問の意図を読み取れます。そのため、質問の形にとらわれることなく、自然文であっても意図を汲み取って適切な応答が可能です。
2. 表現のゆらぎを理解
AIチャットボットは、チャットでのやりとりを繰り返すことにより、質問内容を吸収して精度が向上します。表現の揺らぎや誤字なども吸収して学習するのが特徴です。
例えば、「スマートフォン≒スマホ」「引っ越し≒引越し≒引越」などの言葉は、人によって表現方法が異なります。AIチャットボットなら、このような違いを的確に判断できます。特に、表現の揺らぎをしっかりと認識できるかどうかは、AIエンジンの性能が最もよく現れる部分です。
3. FAQ連携
FAQ連携とは、システムのデータベースにFAQを登録しておくことで、チャット中に回答一覧を表示できる機能です。例えば、「料金はいくらですか」という質問に対して、「料金表のページをご覧ください」という形で適切なページへ案内できます。
データベースに登録できるFAQの数はAIチャットボットツールによって異なります。基本的に登録できる数が多いほど、適切な回答を提示できる可能性が高まります。
4. サジェスト機能
サジェスト機能は、チャット中に1文字打ち込むたびにサジェスト(関連語)が表示される機能です。
例えば、「メールを」まで打ち込むだけで、「メールを送信できない」「メールを受信できない」などのサジェストが表示されます。サジェスト機能があれば、ユーザーはより効率的に自分が欲しい情報へとたどり着けます。
5. 有人対応機能
有人対応機能は、チャット中の画面に「オペレーターが対応します」といった表示を出す機能です。
自然言語処理ができるAIといっても、すべての質問に回答できるわけではありません。回答が得られなければユーザーは電話やメールで再度問い合わせる必要があり、二度手間です。最悪の場合、ユーザーが他社サービスに流れてしまう可能性も考えられます。
そのため、定型文で返信できないような複雑な質問に対しては、有人対応が必要です。有人対応機能を備えたAIチャットボットツールなら、AIが回答できなかった時点でオペレーターに切り替えられます。
6. 外部システム連携
AIチャットボットツールのなかには、外部システムと連携できるタイプもあります。連携できるシステムは、メール配信システムやショッピングカート、CRM(顧客管理システム)、SFA(営業支援システム)などが代表的です。
例えば、CRMと連携すると、チャットでの会話内容を顧客データベースに蓄積し、ユーザー属性や行動履歴をもとに最適な提案やアプローチを行えます。
ほかにも、社内の在庫管理システムや人事管理システムと連携し、バックオフィス専用のAIチャットボットを構築するのも方法のひとつです。在庫確認や休暇申請など、組織内でバックオフィスに寄せられる質問に自動で回答できるようになります。
AIチャットボットの活用シーン
AIチャットボットは顧客応対だけではなく、ビジネスのさまざまなシーンで活用が進んでいます。複数の現場でAIチャットボットを活用すれば、費用対効果をさらに高められるでしょう。具体的な活用シーンは次の通りです。
カスタマーサポート
WebサイトやECサイトにAIチャットボットを設置することで、カスタマーサポートとして活用できます。
カスタマーサポートに寄せられる問い合わせのなかには、FAQページを確認すれば解決できるような簡単な質問も少なくありません。電話やメールのほかにAIチャットボットの問い合わせ窓口があれば、チャットにユーザーを誘導することで、窓口での混雑を避けられます。
チャット上で多くの問い合わせに対応できるようになれば、結果として省人化や人件費の削減につながります。
サービスの予約受付
予約管理システムとAIチャットボットを連携させることで、24時間365日体制で自動的に予約受付が可能です。
予約受付にチャットボットを活用する際は、予約したい日時やコースの選択肢をシナリオとして設計します。それにより、ユーザーは項目を選択するだけで予約手続きができます。
また、AIの機械学習や自然言語処理の仕組みを活用すれば、ユーザーが入力した任意の文章から質問意図を読み取り、適切に回答することも可能です。
販売促進
AIチャットボットは、商品やサービスの販売促進にも活用されています。例えば、チャット上でのユーザーとの会話を通じて、AIが個別に商品案内を行うような方法です。
AIチャットボットを使って販売促進を行っている代表例には、ユニクロが提供している買い物アシスタント「UNIQLO IQ」があります。
UNIQLO IQでは、ユーザーが欲しい商品が見つからなかった場合、専用アプリから「着用シーン」「商品の特徴」といったカテゴリーを選び、AIの質問に合わせて選択肢をタップします。最終的に「あなたへのおすすめ」という形で商品が提案される仕組みです。
実際に店舗スタッフが受けた問い合わせや、顧客から聞き取った情報をAIに学習させることで、適切な商品を提案する精度を高めています。
このようなチャットボットを活用した事例を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
社内ヘルプデスク
AIチャットボットは、社外だけでなく、社内向けのシステムとしても活用できます。一例として、総務・人事労務といった管理部門や情報システム部門への社内問い合わせ向けに、AIチャットボットを導入するケースがあげられます。
システムの操作方法に関する質問への対応や、システムエラーの原因調査など、社内からの問い合わせに対応する窓口を社内ヘルプデスクと呼びます。社内ヘルプデスクでは、担当者によって知識レベルが異なるため、業務が属人化しやすく、対応品質にムラが生じがちです。
そこで、従業員の質問に自動で回答できるAIチャットボットが効果を発揮します。業務マニュアルやナレッジといった学習データをもとに回答精度を高めることで、従業員が自己解決できる課題が増えます。
AIチャットボットを導入するには
AIチャットボットを導入する一般的な流れは次の通りです。
- 運用・管理を行う担当者を選任する
- 自社が抱えている課題をもとにAIチャットボットの導入目的を明確にする
- Webサイトやアプリなど、導入するプラットフォームを選ぶ
- FAQや業界用語集など、AIに学習させる資料を用意する
- 導入時期や予算を決定する
- 目的や予算に合うAIチャットボットツールを比較・検討する
時間をかけずにAIチャットボットを導入したい方や、最初からある程度精度の高いシステムを導入したい方は、専用ツールの活用をおすすめします。AIチャットボットツールなら、システムを実装するだけですぐに運用を開始できます。
ツールを導入する場合は、無料トライアルで操作性や機能性を確認すると良いでしょう。事前にツールの仕様を理解しておくと、導入後のミスマッチを防げます。
おすすめのツールを知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
また、システムを内製化してAIチャットボットを構築するのも方法のひとつです。具体的な方法としては、社内の人的リソースの活用やオープンソースの利用、外部AI技術者への委託などがあります。
AIチャットボットの作り方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
用途をイメージしてAIチャットボットを活用しよう
テクノロジーや機械技術の発展により、ビジネスシーンの幅広い分野でAIが活用されています。そのひとつの手段としてAIチャットボットを活用すれば、業務効率化や生産性向上が見込めます。
AIチャットボットは、AI非搭載型と違ってシナリオを設計する必要がなく、導入時の手間を最小限に抑えられます。ただし、回答精度が向上するまでに時間がかかるため、中長期的な運用スケジュールを想定することが大切です。
AIチャットボットはカスタマーサポート以外にも、ヘルプデスクや予約受付などの多様なシーンで活用されています。用途や目的を具体的にイメージしてAIチャットボットを効果的に活用しましょう。