チャットボットのシナリオとは?具体的な設計方法を図解で紹介

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長島 茜(ながしま あかね)
長島 茜(ながしま あかね)

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チャットボットに用いられるシナリオとは、ユーザーが必要な情報にたどり着くまでの会話の流れです。

チャットボットのシナリオとは?具体的な設計方法を図解で紹介

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ユーザーが最短で回答にたどり着ける良質なシナリオを設計できれば、ユーザーは早期に悩みを解決でき、顧客満足度の向上にもつながります。

本記事では、チャットボットのシナリオについての基本知識や具体的な設計方法、シナリオ例を解説します。シナリオアップデートのコツについても説明しているので、ぜひ参考にしてください。

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チャットボットのシナリオとは何か

チャットボットのシナリオとは何か

チャットボットのシナリオとは、ユーザーが必要とする情報をチャットボット内で案内する会話の流れのことです。シナリオは質問と回答で構成され、ユーザーの疑問や困りごとを解決する役割を持ちます。

また、チャットボットのシナリオ設計とは、シナリオの進行内容を決める作業です。「質問Aの回答には、選択肢XYZを表示する」「Xを選択したら、回答Bを表示する」というように、チャットボットとユーザーによる対話や選択肢を用いた分岐の作成を指します。

チャットボットの導入効果を高めるには、良質なシナリオ設計が重要です。良いシナリオとは、ユーザーが欲しい情報までスムーズにたどり着けて、悩みを解決できるシナリオです。例えば、次のようなシナリオではユーザーがストレスなく会話を進められるため、満足度の向上にも寄与します。

  • ユーザーニーズに沿った質問と回答が用意されている
  • 欲しい情報に最短でたどり着ける
  • 選択肢の数が適切でストレスなく回答できる
  • 会話の流れが自然である

良質なシナリオ設計のためには、ユーザーの立場や悩みに寄り添うことが大切です。また、チャットボットを利用するユーザーは、「質問を受けたいのではなく必要とする情報を早く知りたいだけ」という点にも留意しましょう。

チャットボットには種類があり、AIを搭載したAI型チャットボットと、「シナリオ型(ルールベース型)チャットボット」とに大きく分けられます。本記事で解説しているシナリオは、主にシナリオ型チャットボットに用いられています。

チャットボットの種類について詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。

 

チャットボットのシナリオ設計の方法 7ステップ【図解】

チャットボットのシナリオ設計は次の7ステップで進めます。

  1. シナリオ作成の目的を明確にする
  2. チャットボットを利用するターゲットの設定
  3. ユーザーの悩みを想定し、質問と回答を用意する
  4. チャットボットが対応する範囲を決める
  5. 分岐を設計し、シナリオの骨組みを作る
  6. シナリオを作成する
  7. テストを複数のデバイスで行う

シナリオ設計をスムーズに行うために、本章で流れの全体像を把握しておきましょう。
 

1. シナリオ作成の目的を明確にする

企業の抱える課題によって、どのようなシナリオを作成すべきか、その目的は異なります。さらに、シナリオの内容や効果測定の指標(KPI)も変わるため、最初にシナリオ作成の目的を明確にしておきましょう。

企業が抱えている課題とシナリオ作成の目的の一例です。

  • ECサイトで営業時間外の顧客対応ができていない:顧客満足度の向上
  • 問い合わせ対応の稼働工数が多く、スタッフの業務が圧迫傾向にある:カスタマーサポートの業務負担の軽減
  • 新製品リリースにより問い合わせの電話が増え、残業時間が長くなっている:人件費の削減
  • 商品をカートに入れたまま購入に至らないユーザーが多い:離脱率の改善
  • サービスサイトの離脱率が高く、資料請求まで至らない:コンバージョン率の向上

続いて、目的に応じたKPIを設定します。多角的な側面から効果測定をしたい場合は、複数のKPIを設定しておくと良いでしょう。代表的なKPIは次の通りです。

  • 回答率
  • 解決率
  • 起動回数
  • 対応件数
  • 対応時間/対応件数
  • 有人対応比率
  • 対応満足度
  • チャットボットからのCV数
  • Webサイトへの遷移数
     

2. チャットボットを利用するターゲットの設定

チャットボットの導入効果を高めるためには、ターゲットとなる顧客群を設定して、ユーザーの疑問や困りごとを把握することが重要です。

ユーザーニーズを的確に把握できると、シナリオ設計に必要な質問と回答を導き出すことができ、自然な会話の流れを作り出せます。

精度の高いシナリオを設計するには、ターゲットをより具体化させたペルソナを設定しましょう。

ペルソナとは、自社の商品やサービスを使用する人物像のことです。ペルソナを設定して行動特性のパターンや抱えている悩み、価値観を洗い出すことで、より良質なシナリオ設計が可能になります。

 

3. ユーザーの悩みを想定し、質問と回答を用意する

チャットボットでユーザーの悩みを解決するためには、起こりうる質問を漏れなく洗い出し、まとめていく必要があります。

次の内容を参考に、質問と回答を用意しましょう

  • 既存のFAQも参考にする
    FAQはよくある質問と回答をまとめたコンテンツです。定型化できる内容は、チャットボットにも活用できます。既存のFAQの文章をそのままシナリオに流用すると、長文になり読みにくくなるため、簡潔な短文に書き換えましょう。
  • 過去の問い合わせ内容を確認する
    カスタマーサポートに集まった過去の問い合わせ内容も、質問と回答に利用できます。例えば、電話やメールでの問い合わせ、SNSでの書き込みなどを参考にすると良いでしょう。細かなニーズまで網羅できると、ユーザーは電話やメールをしなくても問題を解決できるため、満足度向上にもつながります。
  • 「よくある質問」をカスタマーサポート担当にヒアリングする
    企業によっては主要な問い合わせ内容がデータ化されていないケースがあります。担当者へのヒアリングを実施してニーズを漏れなく把握し、シナリオに反映させましょう。

質問項目が多くなる場合は、次のようにカテゴリを設定して階層を分けると、管理が容易になります。

カテゴリ

 

4. チャットボットが対応する範囲を決める

シナリオ型チャットボットは、事前に設定したシナリオに従って稼働します。単純な質問に対する回答は可能ですが、シナリオを設定していない複雑な質問には対応できない点に留意が必要です。

質問と回答をある程度洗い出すと、チャットボットに任せられる項目や、担当者が対応すべき項目が明らかになってきます。これらの内容を踏まえて、チャットボットが対応する範囲を決めてください。

ただし、問い合わせ頻度が多いトピックだからといって、チャットボットで対応できるとは限らない点には留意しましょう。

例えば、IDやパスワードの問い合わせのように、ユーザーごとに回答内容が異なる質問は、最初から問い合わせフォームや電話番号を案内した方が、早期解決につながります。

ユーザーの負担を軽減させるためにも、事前にチャットボットの対応範囲を明確にしておきましょう。
 

5. 分岐を設計し、シナリオの骨組みを作る

チャットボットの利点は、「選択していくだけで、知りたい回答に簡単にたどり着ける」ことです。シンプルさとわかりやすさを意識して、シナリオの分岐を設計しましょう。

フローチャートで全体像を可視化すると、シナリオの骨組みを設計しやすくなります

フローチャートは、エクセルでも作成できます。

〈フローチャート|ECサイトのシナリオ例:商品のご注文について〉

フローチャート

 

6. シナリオを作成する

前項で作成したフローチャートを参考にして、運用するチャットボットツールにシナリオを設定します。

この工程では、シナリオとはチャットボットとユーザーとの対話であることを意識し、自然なコミュニケーションとなるように作成します。

親しみやすく柔らかい口調で、簡潔な文章を心がけると良いでしょう。
 

7. テストを複数のデバイスで行う

実装前に、チャットボットに設定したシナリオの動作を社内でテストします。想定通りに稼働するかを確認しましょう。

チャットボットツールによっては、端末(PC・モバイル・タブレット)によって表示が異なるケースがあるため、複数の端末で確認してください

また、複数人でテストを実施することも重要です。シナリオ設計に関わっていない別部署の人にも参加してもらうと、会話の流れが不自然な箇所や、理解しにくい表現などが明らかになります。具体的には、次の点を確認しましょう。

  • 想定していた流れで会話が進むか
  • シナリオの流れは適切か
  • ユーザーにとって理解しやすい表現が使われているか
  • ユーザーが求める情報にスムーズに到達できるか
  • 各会話のステップ数は最小限か
  • 分岐や選択肢は正しく動作しているか
     

チャットボットのシナリオ設計のポイント

チャットボットのシナリオ設計のポイント

チャットボットのシナリオ設計時に、おさえておきたいポイントは次の3つです。

  • 分岐はできるだけ絞り、離脱を防ぐ
  • 会話のステップ数を増やしすぎない
  • 会話の流れが不自然にならないように意識する
     

分岐の選択肢はできるだけ絞り、離脱を防ぐ

選択肢が多すぎると、ユーザーは判断に疲れて離脱してしまいます。

分岐地点で表示する選択肢は最小限にとどめましょう。
 

会話のステップ数を増やしすぎない

会話のステップ数が多く、回答に到るまでの時間が長くなるとユーザーはストレスを感じるため、離脱率が上がります。

ステップ数は極力減らし、ユーザーが快適にチャットボットを利用できる環境を構築しましょう。
 

会話の流れが不自然にならないように意識する

シナリオ設計は、最初の質問から最後の回答に至るまで会話の流れに一貫性を持たせることが重要です

ユーザーが必要な情報にたどり着くまでのプロセスを意識して、会話の流れが自然となるように作成しましょう。
 

チャットボットのシナリオの例

本章では、チャットボットのシナリオのサンプルとして、ECサイトにおけるシナリオの具体例をご紹介します。

チャットボットのシナリオの例

シナリオを作成する際は、質問回答の抜け漏れを防ぐことが重要です。ユーザーニーズに沿った選択肢が過不足なく用意されているかを確認しながら進めましょう。

例えば、上の図の場合、「商品のご注文について」という最初の選択肢は、3つに分岐しています。シナリオの内容によっては、ユーザーの悩みをカバーするために、選択肢の分岐を増減させる必要があります。状況に応じて調整してください。
 

シナリオのアップデートのコツ

シナリオのアップデートのコツ

チャットボットでユーザーに快適な利用環境を提供するためには、最新の情報を盛り込んだ定期的なシナリオアップデートが必要です

シナリオのアップデートのコツは、次の3つです。

  • 運用しながら、質問項目と回答を網羅する
  • サイト内の商品ページやコンテンツに遷移させる
  • 問い合わせ数が低下したら、シナリオに問題がないか確認

チャットボットを運用しながら効果検証を行い、結果をシナリオに反映させて改善を繰り返しましょう。
 

運用しながら、質問項目と回答を網羅する

チャットボットの稼働後もカスタマーサポートにはさまざまな問い合わせが集まります。初期のシナリオ設計時には想定していなかった質問や回答が増えることもあるでしょう。

チャットボットが対応できる内容を厳選してシナリオに追加していけば、ユーザーがチャットボットで解決できる事項が増えます。ユーザはメールや電話で問い合わせをする手間を省くことができ、早期に問題を解決できるため、満足度の向上につながります。回答の網羅を目指してアップデートを繰り返していきましょう。
 

サイト内の商品ページやコンテンツに遷移させる

ユーザーにとって有益と判断できる場合には、商品ページやコンテンツ、FAQなどへの遷移も考慮しましょう。

サイトや商品ページへの遷移によってユーザーにより良い体験を提供できれば、回遊率やCVRの向上が見込めます

例えば、チャットボットの回答で案内した情報の詳細がFAQに記載されている場合は、該当するFAQのページを追加で案内すると良いでしょう。ユーザーは提示されたFAQページに遷移して情報を得ることができるので、自己解決につながります。

また、アップデート時には遷移先ページの内容も確認しておきましょう。ユーザーにとってわかりやすい説明文になっているか、有益な情報が掲載されているか確認し、不備があれば修正を加えてください。このような配慮の積み重ねが、顧客体験をより良いものにします。

ただし、サイト回遊率を上げることをねらってむやみに遷移させることは満足度の低下につながるため、控えましょう。
 

問い合わせ数が低下したら、シナリオに問題がないか確認する

良質なシナリオが設計できれば、ユーザーは多くの問題をチャットボットで解決できるため、電話やメールでの問い合わせ数は減少します。

一方で、運用中に問い合わせ数が低下した場合は、シナリオ設計に問題がないかを確認しましょう。特に、チャットボット運用のKPIを「電話・メールでの問い合わせ数」にしている場合には、成果を数字だけで判断しないことが重要です。

ユーザーの行動データを分析し、シナリオに問題があるようなら修正を加えて、最適化していきます。

また、KPIは一つに絞らずに複数設定しておくと良いでしょう。判断材料が増えるため、多角的な側面から効果測定が行えるようになります。
 

良質なシナリオを作成し、顧客満足度の向上を目指す

シナリオ設計では、ユーザーが求める情報にスムーズにたどり着けて、悩みを早期に解決できることが重要です。

ターゲットやペルソナを設定したうえでユーザーが置かれている状況や悩みを想定して、質問や回答、会話の流れを設計します。運用開始後もアップデートを繰り返して、快適な利用環境を整えてください。

良質なシナリオ設計を通じて顧客満足度の向上を目指しましょう。

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