チャットボットには多くの種類があり、それぞれ強みとなる機能や特徴が異なります。チャットボットを効果的に活用するには、種類ごとの特徴を把握した上で自社の目的や課題にあったものを選ぶことが大切です。
今回は、チャットボットを「タイプ別」「目的別」「仕組み別」に分けた場合の特徴・メリットと、自社に適したチャットボットの選び方をそれぞれわかりやすく解説します。
チャットボットについて基本的なことを知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
【タイプ別】チャットボットの種類
チャットボットには、大きく分けて「シナリオ型(ルールベース型)」と「AI型」の2種類があります。それぞれの特徴とメリットを押さえておきましょう。
1. シナリオ型(ルールベース型)
シナリオ型(ルールベース型)は、あらかじめ用意されたシナリオに沿って回答を返すタイプのチャットボットです。ユーザーの質問内容に応じてキーワードに合う回答が表示されます。後述するAI搭載型よりも初期費用を抑えられるため、チャットボットを手軽に導入したい企業におすすめです。
ただし、シナリオ型の場合は質問を想定した回答のシナリオを作成する必要があります。想定される質問が多い場合には導入に時間がかかりやすいことに加え、複雑な質問や曖昧な質問には対応できないケースも多いことがデメリットです。
2. AI型
AI型は、ユーザーの質問内容をAIが分析して回答を返す仕組みのチャットボットです。言葉の揺れに柔軟に対応できるため、あらゆる質問のパターンを想定したシナリオを作成しなくても対応できるという特徴があります。また、質問内容と回答のパターンをAIが学習していくことから、使い込むほどに精度が高まっていく点がメリットの1つです。
AI型チャットボットは「機械学習型」と「独自AI型」に分けられます。
- 機械学習型:AIが大量のデータからルールやパターンを学習する。
- 独自A型:AIが自ら機械学習を行う。
機械学習の場合、正確な回答を提示するには管理者側で多くのデータを準備し、AIに学習させる必要があります。一方、独自AI型の場合はAIが自ら取得したデータをもとに回答を修正・改善してくれるため、管理の手間を軽減できることがメリットです。機械学習型よりも導入コストがかかるものの、運用の負担を減らしたい場合には独自AI型の導入をおすすめします。
【目的別】チャットボットの種類
チャットボットを活用する目的別に分けた場合、「FAQ型」「処理代行型」「配信型」「雑談型」の4種類に分類できます。それぞれの特徴とメリットは次のとおりです。
1. FAQ型
【特徴】
FAQ型とは、FAQシステムとチャットボットを組み合わせたツールのことです。たとえば、ECサイトなどの問い合わせ機能にチャットボットを搭載し、ユーザーの質問に自動で応答できます。シナリオ型・AI型のどちらも利用されていますが、問い合わせの種類が少ない場合はシナリオ型、多い場合はAI型が採用されるのが一般的です。
【メリット】
ユーザーの質問にチャットボットが自動応答するため、運営側が対応に要する工数やコストを低減できます。また、ユーザーにとっては疑問をその場で解消でき、問い合わせのハードルも下げられることから、企業・ユーザーの双方にとってメリットがあるチャットボットの活用方法です。
2. 処理代行型
【特徴】
処理代行型とは、ユーザーが入力した内容に沿って処理を代行するチャットボットのことです。たとえば、旅行会社のWebサイトにおいて、旅行をしたい日時や場所などを質問に沿って入力していくだけで、宿泊プランの提案とホテルの予約までしてくれる機能などが挙げられます。定型的な処理が中心となるため、シナリオ型が採用されるのが一般的です。
【メリット】
単純な繰り返し作業をチャットボットに代行してもらえるため、人的ミスを抑制できます。作業を簡略化できることに加え、直感的な操作が可能になる点が主なメリットです。
3. 配信型
【特徴】
配信型とは、あらかじめ設定した日時に自動で情報を発信するチャットボットのことです。SNSやチャットツールを通じて情報を配信し、ユーザーに商品情報を届けたり、サービスの案内をしたりできます。定型的な処理のため、シナリオ型を採用するのが一般的です。
【メリット】
有人オペレーターや営業担当者が商品説明をする必要がなくなるため、営業コストを抑制できます。また、24時間対応が可能になることから、朝の通勤時間帯や夜間など情報が閲覧されやすい時間帯に合わせて配信できる点もメリットの1つです。
4. 雑談型
【特徴】
雑談型とは、ユーザーと自然な会話ができるチャットボットのことです。まるで人間とチャットしているかのような自然な会話を実現する必要があることから、AI型が採用される傾向があります。
【メリット】
ユーザーが楽しみながら会話を続けられる仕組みを提供することにより、自社のブランディングや顧客ロイヤルティの向上に寄与します。また、雑談の流れで効果的に自社商品を紹介することにより、自然な形で自社商品をユーザーに知ってもらえる点もメリットの1つです。
【仕組み別】チャットボットの種類
チャットボットを動かす仕組みによって分類した場合、「選択肢型」「辞書型」「ログ型」に分けられます。仕組み別に見た場合のチャットボットの特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。
1. 選択肢型
【特徴】
選択肢型は、ユーザーに選択肢を提示し、ユーザーが選んだ項目に沿って回答を提示する仕組みのチャットボットです。質問・回答の流れが定型的であることから、シナリオ型が採用されるケースが多く見られます。
【メリット・デメリット】
複雑な処理を必要としないため、比較的低コストで導入できる点がメリットです。一方で、あらかじめ用意した選択肢に即した回答しか提示できないことから、想定外の質問には対応できないというデメリットがあります。
2. 辞書型
【特徴】
辞書型とは、想定されるキーワードに対応する回答を登録しておくことにより、ユーザーが入力した質問に含まれるキーワードをもとに回答を提示するチャットボットのことです。キーワードを抽出する必要があることから、主にAI型が採用されています。
【メリット・デメリット】
キーワードの揺れや関連キーワードにも対応できるため、問い合わせ内容が多岐にわたる場合にも活用しやすい点がメリットです。ただし、予想されるキーワードを事前に用意しなければならないため、導入に時間がかかりやすい点がデメリットといえます。
3. ログ型
【特徴】
ログ型は、蓄積された質疑のやり取りをAIが解析して回答を提示する仕組みのチャットボットです。過去のやり取りを解析する必要があることから、AI型が採用されています。
【メリット・デメリット】
AIがユーザーの質問内容を解析するため、運用を続けるほどデータが蓄積されていき、回答の精度も高まっていく点がメリットです。一方で、導入コストが比較的高いことや、導入時点でAIが学習に利用する「教師データ」の精度によって回答の正確性が大きく左右されかねない点がデメリットといえます。
自社に適したチャットボットの選び方
ここまでに見てきたとおり、チャットボットの種類にはさまざまな切り口があります。自社に適したチャットボットを選ぶには、どのような観点で選定すればよいのでしょうか。チャットボットを選ぶ際の主なポイントを紹介します。
なお、チャットボットの製品ごとの違いは別記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてください。
導入目的に合った機能のチャットボットを選ぶ
まずは、自社がチャットボットを導入する目的を明確にした上で、目的に合ったチャットボットの種類を選びましょう。下記は目的に応じてチャットボットの種類を選定した一例です。
- 問い合わせを効率化したい→FAQ型
- 複雑な処理の人為的なミスを減らしたい→処理代行型
- 商品を広く、いろいろな人に知ってほしい→配信型
- 顧客と親密な接点をもちたい→配信型
問い合わせ数や内容の複雑さによってAIの有無を選ぶ
次に、AI搭載の有無を決めます。AIが必要かどうかは、想定される問い合わせのパターンを基準に判断するとよいでしょう。問い合わせのパターンが一定水準に達すると、シナリオの作成が複雑になることが想定されるからです。目安となる基準の一例を紹介します。
- 問い合わせパターンが50種類以上→AI型
- 問い合わせパターンが50種類未満→シナリオ型
初期コストやランニングコストを基準に選ぶ
チャットボットは機能によって導入・運用コストが変動することから、想定しているコストを考慮して選定することも大切なポイントです。とくにAI型の場合は製品自体が高額になりやすいだけでなく、定期的に学習データのメンテナンスが必要になるため、運用コストがかかる点にも注意する必要があります。コストの目安に関しては下記を参考にしてください。
【シナリオ型】
- 初期導入コスト:5万円~50万円
- 運用コスト:1,500円~3万円
【AI型】
- 初期導入コスト:20万円~100万円
- 運用コスト:30万円~100万円
予算の面でAI型の導入が難しい場合には、よくある質問のみシナリオ型で対応し、複雑な質問については有人オペレーターに切り替える方法もあります。
チャットボットの特徴を押さえて自社に合うものを選ぼう
チャットボットはタイプ別・目的別・仕組み別に多くの種類があることから、導入する際には目的に合ったものを選ぶことが大切です。目的に即したチャットボットを選定することで、業務効率化に寄与したり、売上伸長に貢献できたりするメリットを実感しやすくなるでしょう。今回紹介したチャットボットのタイプ別の特徴やメリットを参考に、ぜひ自社に合ったチャットボットを選定してください。