チャットを活用した自動応答システムであるチャットボットは、業務効率の改善に効果的です。しかし、同じチャットボットでも、種類によってできることが大きく異なります。

チャットボットを効果的に活用するには、種類ごとの特徴を理解し、自社の目的や課題に合ったものを導入することが重要です。
この記事では、チャットボットの種類ごとに特徴を解説しています。目的別におすすめの種類も紹介します。
チャットボットについて基本的なことを知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
チャットボットのタイプは大きく分けて2種類

チャットボットの種類は、シナリオ型(ルールベース型)とAI型に大きく分けることができます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
シナリオ型(ルールベース型)チャットボット
AIを搭載していないチャットボットは、シナリオ型またはルールベース型と呼ばれます。シナリオ型は、ユーザーが選んだ選択肢に応じて、あらかじめ用意されたシナリオをたどり、回答を返す方法です。
ユーザーは、画面上に表示される質問に答えるだけで、簡単に回答を得られる点がメリットです。また、後ほど紹介するAI搭載型よりも初期費用や月額費用を安く抑えられるため、チャットボットを導入した企業側にとってもメリットがあります。
ただし、質問から回答までのシナリオを作らなければならないので、想定される質問や回答が多い場合は導入に時間がかかることがあります。
AI型
AI型は、ユーザーがチャットに書き込んだ内容をAIが分析して回答を返す仕組みです。既存のサイトなどにAIを組み込めば良いので、シナリオ型とは異なり、導入に時間がかからない点がメリットです。
さまざまな質問にも柔軟に対応できるので、幅広い問い合わせ内容が想定されるケースで役立ちます。ただし、シナリオ型よりもコストが高く、初期の導入コストも高額な点がデメリットです。
また、AI型は大きく「機械学習型」と「独自AI型」に分けられます。
- 機械学習型:AIが大量のデータからルールやパターンを学習。登録するデータやユーザーとの会話の試行回数を増やすと精度が高まる。
- 独自AI型:AIが自ら機械学習を行う。AIへのデータ提供やFAQの修正などを行う必要がないため管理が楽。
機械学習型は、正確な運用を行うために管理者側で多くのデータを準備し、AIに学習させる必要があります。
一方、独自AI型の場合は、自ら取得したデータをもとにAI自身が修正・改善を行ってくれるので管理しやすいといえます。機械学習型よりも導入コストがかかりますが、運用の負担を減らしたい場合は、独自AI型の導入がおすすめです。
導入コストを下げたい場合は、チャットボットを自社開発するのも1つの手です。こちらの記事でチャットボットの作り方を詳しく紹介しているので、参考にしてください。
【目的別】チャットボットの種類

チャットボットの種類はAI搭載の有無だけでなく、目的別に分けることも可能です。ここでは、チャットボットの種類を目的別に4種類ご紹介します。
1. FAQ型チャットボット
FAQチャットボットは、FAQシステムとチャットボットを組み合わせたツールです。ECサイトなどの問い合わせ機能にチャットボットを組み合わせて、ユーザーの質問に自動で回答させることが可能です。
ユーザーからの質問にチャットボットが代わりに答えてくれるため、運用側の問い合わせ対応のコストを下げられます。また、ユーザー側から見れば商品やサービスの疑問を簡単に調べられるため、ユーザーと運用側の両方にメリットがあります。
FAQ型チャットボットには、シナリオ型とAI型の両方が利用されます。問い合わせの種類が少ない場合はシナリオ型、多い場合はAI型と使い分けられるのが一般的です。
2. 処理代行型チャットボット
処理代行型チャットボットは、ユーザーが入力した内容に沿って、その後の処理を代行してくれるツールです。業務が複雑なものや人的ミスが起こりやすい作業をチャットボットが代行してくれます。
例えば、旅行会社のサイトで、ユーザーがチャットボットの指示に従って行きたい日時や場所などを入力するだけで、宿泊プランの予約まで代行してくれる機能などがあげられます。
ほかにも、レストランの予約や郵便の再配達など、さまざまなユーザーから問い合わせがあり、多くの処理が必要なシーンで活躍できるチャットボットです。自動化できる処理をチャットボットが代行する形なので、シナリオ型のチャットボットが利用されます。
3. 配信型チャットボット
配信型のチャットボットは、ユーザーとのやりとりを行うのではなく、設定した時間に自動で情報を発信するシナリオ型のチャットボットです。SNSやチャットツールを利用して配信し、ユーザーに商品情報を届けたり、サービスの案内ができたりします。
営業に多く活用でき、人が直接商品説明などを行う必要がないので、導入すれば営業にかかるコストを下げられるでしょう。
4. 雑談型チャットボット
雑談チャットボットは、ユーザーの目的達成のためではなく、雑談を続けるためのチャットボットです。他愛のない会話をユーザーと続けることで、自社のブランディングや顧客ロイヤルティの向上に役立てることができます。
雑談から上手に自社商品が紹介できれば、ユーザーに自然な形で商品を知ってもらえるきっかけも作れるでしょう。
雑談型チャットボットはユーザーが会話を楽しむためのツールなので、AI型を採用する必要があります。
仕組み別で見るチャットボットの種類
チャットボットは、どのような仕組みで動かすのかによっても分けることができます。ここでは、チャットボットの種類を仕組み別に3つご紹介します。
1. 選択肢型
選択肢型は、チャットボットがユーザーに何を知りたいのかを質問し、その答えに合わせて返答を返す仕組みです。画面上に表示された選択肢をユーザーが選択して、それに合う答えを返します。主にシナリオ型のチャットボットに組み込まれることが多く、複雑な処理が必要ないため導入コストが低いのが特徴です。
ただし、選択に対する回答のパターンを作成しなければならないため、さまざまな種類の問い合わせを解消するのには向かないでしょう。選択肢型は想定される問い合わせごとに回答を用意する必要があるので、質問が多い場合は導入するまでの時間もかかってしまいます。
2. 辞書型
辞書型はあらかじめ[キーワード]とそれに対応する[回答]を登録しておき、ユーザーが入力したキーワードに合わせて返答を返す仕組みです。例えばユーザーが[ログイン]というキーワードを入力した場合は、[ログイン方法]や[ログイン情報の変更方法]などを解答します。
主にAI型に組み込まれることが多く、入力された言葉をAIが理解して、そのなかにあるキーワードに合致した回答を返します。問い合わせ内容が多岐に渡るサイトでのシステムに利用されることが多いです。ただし、あらかじめ予想されるキーワードや解答を用意しておかなければいけないため、導入に時間がかかります。
また、最初は選択肢を提示して、答えが見つからない場合に質問もできる[選択肢&辞書型]も存在します。[選択肢&辞書型]はさまざまな質問に柔軟に対応できる反面、選択肢と質問のキーワードと解答の両方を作成しなければいけません。
3. ログ型
ログ型はユーザーがチャットボットに質問した際に、蓄積された他のユーザーとのやり取りをAIが解析して回答を返す仕組みです。AIがそれまでに行ったユーザーとのやり取りから質問の意図を学習し、人と会話するように解答を生成してくれる機能です。
主に独自AI型に採用されている仕組みで、運用すればするほどデータが蓄積されるので、解答の精度も高まっていきます。
ただし、導入コストが高いうえに、導入時に入れられる教師データによって品質が大きく左右される点がデメリットです。教師データとは、AIが稼働される際に入れられる判断の基準となるデータです。
この教師データの品質が低いと、返答の正確性が下がってしまいます。詳しいチャットボットの仕組みは、こちらの記事でも解説しています。
チャットボットはどの種類を選ぶべき?

チャットボットの導入にあたって、どの種類を選ぶべきか悩むこともあるでしょう。導入するチャットボットの種類は、導入目的と問い合わせの数に応じて選ぶのがおすすめです。
ここでは、導入するチャットボットの種類の選び方を詳しく解説します。また、チャットボットの製品ごとの違いは、別記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてください。
導入の目的に合わせて機能を選ぶ
チャットボットの種類を選ぶ際は、まず導入の目的にあった機能を選ぶことが大切です。例えば、次のように選んでみましょう。
- 問い合わせを効率化したい→FAQ型
- 複雑な処理の人為的なミスを減らしたい→処理代行型
- 商品を広く、いろいろな人に知ってほしい→配信型
- 顧客と親密な接点を持ちたい→配信型
チャットボットの導入目的を明確にすることで、採用すべき機能が判断できます。
問い合わせの数に合わせてAIの有無を選ぶ
機能を選んだあとは、AI搭載の有無を決めます。AIが必要かは、問い合わせの数を基準に判断すると良いでしょう。具体的には、以下の基準で選ぶのがおすすめです。
- 問い合わせ数が50件以上:AI型
- 問い合わせ数が50件以下:シナリオ型
問い合わせ数が50件以上になるとシナリオの作成が複雑になるので、AI型の導入を検討しましょう。
初期コストやランニングコストに合わせて選ぶ
チャットボットは機能ごとに導入や運用にコストがかかるため、どれくらい費用をかけられるのかで選ぶことも大切です。特にAI型の場合は、製品自体が高いだけでなく、定期的に学習させることも必要になるので運用コストも増加します。
シナリオ型とAI型のコストは、次を参考にしてください。
【シナリオ型】
- 初期導入コスト:5万円~50万円
- 運用コスト:1,500円~3万円
【AI型】
- 初期導入コスト:20万円~100万円
- 運用コスト:30万円~100万円
もし質問の種類が多いにも関わらず、予算的にAI型の導入が難しい場合は、よくある質問だけをシナリオ型で対応する方法もあります。費用や予算に合わせてチャットボットを上手に活用しましょう。
自社に合うチャットボットの種類を選んで効率化を図ろう
チャットボットは種類によって得手不得手があるため、導入する際は目的にあったものを選ぶことが大切です。目的に合致したチャットボットを選択できれば、業務を効率化したり、顧客との接点を多く作れたりといったメリットを実感できるでしょう。
本記事を参考にして導入や運用のコストなども考慮しながら、最適なチャットボットを選びましょう。

