顧客の購買プロセスを旅になぞらえたカスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを購入するまでの行動や思考の変化を知るためのフレームワークです。
【7種のテンプレ付き】カスタマージャーニーを実務に活かすための入門ガイド
業務ですぐに使える実用的な7種類のカスタマージャーニーマップ・テンプレート付き入門ガイド
- カスタマージャーニーマップ作成の5つのメリット
- カスタマージャーニーマップ作成前の準備
- 7種類のカスタマージャーニーマップ・テンプレート
- カスタマージャーニーアナリティクス機能の活用事例
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カスタマージャーニーをマップで見える化したものを「カスタマージャーニーマップ」といい、定期的にマップの分析と検証を繰り返すことで、顧客の行動やその裏に隠れた心理をより深く理解できるようになります。
本記事では、カスタマージャーニー分析の方法から、分析に役立つツールまで解説します。お読みいただくことで、カスタマージャーニー分析の進め方を理解できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
カスタマージャーニー分析とは
カスタマージャーニー分析とは、カスタマージャーニーマップに基づき、商品・サービスの購入に至る各プロセスの行動や心理を明らかにすることです。ユーザーがどういったフローを辿って最終的にコンバージョン(購入・問い合わせなど)に至るのかを分析することで、顧客理解につながり、より効果的なマーケティング施策を実行できるようになります。
Webサイトのクリック数やコンバージョン率を分析する「アクセス解析」と混同されがちですが、カスタマージャーニー分析はWebサイトの数値分析だけでなく、顧客接点となりうる全媒体を対象とし、行動の裏側にある思考や感情を分析します。
また、カスタマージャーニー分析というと、運用前の競合分析やN1分析をイメージする方もいるかもしれません。しかし、こうした分析は本来運用前だけでなく運用中まで行うべきものです。カスタマージャーニーは、施策運用中の効果検証を行い、マーケティング戦略やアクションプランを改善してはじめて真価を発揮します。施策実行後に計画と実態のズレを把握し、軌道修正を行うことで、見込み客にとってより質の高い体験価値を提供できるでしょう。
カスタマージャーニー分析でわかること
カスタマージャーニー分析を行うことで、ユーザーの認知から購買に至るまでの一連の行動だけでなく、その裏側にある思考や感情を把握できるようになります。
例えば、ユーザーが店頭で新商品を手にとった際に感じた印象、興味を持った理由、購入の決め手などを、カスタマージャーニーを活用して分析します。
その結果を踏まえて、顧客の行動や心理にあわせたコンテンツを作成することで、顧客が必要な情報を必要なタイミングで受け取れるようになります。それを繰り返していくことにより、顧客との信頼関係を構築できます。
カスタマージャーニー分析の必要性
カスタマージャーニーを作成する際、自社にとっての理想の行動をイメージして作るだけでは意味がありません。分析をせずとも、顧客の購買行動を想像し、フェーズごとのチャネルや感情、コンバージョンポイントを設定することはできますが、それはあくまでも自社にとって都合の良い顧客でしかありません。
カスタマージャーニー分析が必要な理由は、顧客理解を深め、常に顧客にとっての最善を提供できるようにするためです。購買行動が複雑化する昨今、分析を怠り従来の思考や想像のみでカスタマージャーニーを作成すれば、ギャップは広がり続けるでしょう。
自社の思い込みによる作成にならないよう、カスタマージャーニー分析による思考や感情の把握は欠かせません。
カスタマージャーニー分析をもとにマップを常に最適化する
カスタマージャーニーマップは一度作成して終わりではありません。前述した通り、カスタマージャーニー分析によって導き出された仮説や課題をマーケティング施策に反映し、検証・改善を繰り返すことが求められます。
例えば、想定していたペルソナと実際の顧客に相違点がないか、あるいは実行している施策は設定したペルソナに対して最適かどうかなどを検証し、初期段階で作成したマップと実態に乖離があった場合は適切なペルソナや施策へと軌道修正します。
マーケティング活動を行ううえでは、外部環境の変化による顧客の心理や行動も考慮しなければなりません。カスタマージャーニー分析を行うことで、そうした変化も察知でき、最適な状態での運用を実現できるでしょう。
顧客が取る行動の背景には、思考や感情があります。カスタマージャーニー分析を通して顧客の内面に寄り添うことで、一人ひとりにあった施策を実行できるようになります。
カスタマージャーニー分析の主な手法
カスタマージャーニー分析にはいくつかの手法があり、目的・用途に応じて使い分けることで深いインサイト(洞察)を得ることが可能です。ここでは、カスタマージャーニー分析の主な手法を4つ紹介します。
ネットリサーチ
Web上で実施するリサーチには、Web調査・インターネットリサーチ・Webアンケート・オンラインサーベイなどがありますが、それらはすべてネットリサーチに分類されます。
ネットリサーチの主な調査方法は、アンケートなどの定量調査です。Web上でアンケートを作成し、対象者にパソコンやスマートフォンで回答してもらいます。
メリットとしては、従来の定量調査で主流だった郵送調査・会場調査・訪問調査に比べて手間やコストが少なく済むため、効率的に調査を進めることができる点です。回答結果の集計やグラフ化も自動で行えるため、検証や新たな施策立案に時間を割けるようになります。
顧客観察調査(ショップアロング)
顧客観察調査(ショップアロング)とは、調査対象者の買い物に同行しながら、店内の行動や商品選びの様子を観察することで、購買行動の実態を調査する手法です。
買い物の後にインタビューを行うことで、商品を選んでいる際に意識していることや隠れた心理など、リアルな購買プロセスの実態を探ります。
視線計測データやビデオ映像を収集することで、定量調査ではわからない視線の動きや購買行動の実態など、定性的な情報を深掘りできる点がメリットです。
N1分析
N1分析とは、ひとりの顧客を深く分析し行動を理解することで、課題の特定や施策の改善に反映させる手法です。
集団を分析しようとすると、特徴が平均化されてつかみにくくなります。その点、N1分析はひとりの顧客を対象とするため、ペルソナの解像度を上げることができます。
特に企業のマーケティング活動では、購買プロセスのフェーズによって関わる人が異なるため、N1分析によって顧客への共通理解を得ることは重要です。
データ分析
さまざまな方法で収集したデータを整理・加工・統合し、それをもとに仮説・検証を行う手法です。
データ分析で収集するデータは目的によって異なります。マーケティングに活用するデータであれば、Webページのアクセス履歴や顧客の購買履歴などが挙げられます。
データ分析のメリットは、それぞれの顧客にあわせてパーソナライズされたマーケティングが可能になることです。例えば、ユーザーごとの購買実績から好みをデータで分析し、関連商品を最適なタイミングで提示することによって購買を促すなど、顧客起点に立った施策を実行できます。
データ分析を詳しく知りたい方は、「実践的カスタマージャーニー分析のすすめ」が参考になりますので、あわせてご覧ください。
カスタマージャーニー分析に役立つツール7選
カスタマージャーニー分析にツールを活用することで、各施策のKPI進捗管理などに役立ちます。ここでは、カスタマージャーニー分析に役立つツールを7つ紹介します。
HubSpot
引用元:HubSpot
「HubSpot」は、マーケティング・コンテンツ管理・カスタマーサービス・セールス・オペレーションにいたるまで、あらゆる業務に役立つ機能を備えたCRM(顧客関係管理)プラットフォームです。
HubSpotの「ペルソナ機能」では、ダッシュボード上に管理者側でペルソナを設定でき、創出した見込み客で何人がペルソナに該当しているか数値で把握できます。さらに、「ライフサイクルステージ機能」では、マーケティングプロセスと営業プロセスのどの段階にあるかに応じて、見込み客の分類が可能です。
また、一部プランに搭載されている高度なレポーティング機能は、カスタマージャーニーを俯瞰的に把握する場合に役立ちます。WebサイトやLPといったチャネル別の成果を可視化できるため、効果検証やデータ分析に効果的です。
リードの創出、セールスの加速、コンタクトの管理、顧客満足の向上などカスタマージャーニー分析に役立つツールがオールインワンで利用可能です。
- 特徴
- 無料で始められ、導入マニュアルや各種サポートも充実
- ペルソナ機能・ライフサイクルステージ機能などカスタマージャーニー分析に役立つ機能が豊富
- カスタマージャーニー分析以外の各種機能と組み合わせることで、さらなる業務効率化を実現
- 特徴
- 定量分析だけでなく、「思考・感情」といった定性分析により、深い消費者インサイトを得ることが可能
- 独自のスコアリング技術により、顧客の評価ポイントや不満を感じている点を定量で把握することが可能
- 無制限で使えるWebアンケート機能や、顧客の声を蓄積するVOC管理機能で詳細な分析が可能
- 料金
- Free:無料
- Starter:5,400円/月額
- Professional:96,000円/月額
- Enterprise:384,000円/月額
Adobe Analytics
「Adobe Analytics」は、PDFの開発元として世界的に有名なアドビ社が提供する、アクセス解析ツールです。同ツールには高度なカスタマージャーニー分析ツールが導入されており、なかでもAI(人工知能)の「Adobe Sensei」の活用によって、深いインサイト(深層心理)を得ることが可能です。
さらに、Adobe Analyticsの「異常値検出機能」では、売上を促進したり阻害したりしているWebサイトの領域を見つけ、リアルタイムのキャンペーン展開や修正に活用できます。
これらの機能によって、タッチポイントと施策効果の因果関係が理解できるようになると共に、AIが問題点を分析し改善点を特定してくれます。
- 特徴
- あらゆるシステムからデータを収集し、柔軟なデータスキーマを利用可能
- Adobe Experience Platform上に保存されたあらゆるデータにSQLから直接アクセス可能
- 顧客セグメントを構築したアクティベーションやパーソナライズ機能の活用が可能
- 料金
- 要問合せ
Contentsquare
「Contentsquare」は、サイト訪問から離脱まで、訪問ユーザーがWebサイト内を移動する方法をページ別に確認できる、カスタマージャーニー分析ツールです。
大きな特徴は、独自のドーナツ状の円グラフによって、すべてのカスタマージャーニーから集計されたアクセスデータを見える化できることです。ユーザーが訪問したWebページや訪問順、思いがけない離脱など、ユーザーの異変まで瞬時に確認できます。
特定のWebページへの訪問や、コンバージョンなどのイベント発生前に閲覧していたWebページも確認できます。結果の良し悪しにかかわらず、ユーザーの行動を理解し、深いインサイト(洞察)が得られます。
- 特徴
- ドーナツ状の円グラフで、ユーザーの訪問から離脱までのサイト内行動を一目で把握可能
- セグメント化とデータ細分化によって、注目対象を絞り込むことでより詳細なインサイトを得ることが可能
- 繰り返し発生する問題点の検出や最も価値のあるコンテンツと流入経路の特定が可能
- 料金
- 要問合せ
よくきくよ
引用:よくきくよ
「よくきくよ」は、国内導入実績300社以上を持つ、国産カスタマージャーニー分析ツールです。定量・定性の両面で顧客データを分析でき、最も効果的なカスタマージャーニーマップの作成をサポートしてくれます。
大きな特徴としては、アクセス数などの定量データだけではなく、顧客の声の分析機能による「思考・感情」の定性分析が可能である点が挙げられます。顧客の声として蓄積されたテキストデータを自然言語処理を用いて解析することで、消費者インサイトを可視化し、ユーザーの購買行動の動機・本音を知ることが可能です。
- 特徴
- 定量分析だけでなく、「思考・感情」といった定性分析により、深い消費者インサイトを得ることが可能
- 独自のスコアリング技術により、顧客の評価ポイントや不満を感じている点を定量で把握することが可能
- 無制限で使えるWebアンケート機能や、顧客の声を蓄積するVOC管理機能で詳細な分析が可能
- 料金
- フリー:無料
- エコノミー:5万円/月額
- ビジネス:10万円/月額
KARTE
引用:KARTE
「KARTE」は、あらゆるWebサイトやアプリ訪問者の行動や感情をリアルタイムに解析し、パーソナライズされたCX(顧客体験)の向上に役立つCXプラットフォームです。
KARTEでは「N1リアルタイム解析機能」や「LIVE解析機能」などの顧客理解に役立つ機能が豊富に備わっています。クリック数やコンバージョン数などの定量データ以外の思考・感情といった定性データを通じて、深いインサイトを得ることができます。
- 特徴
- ポップアップ配信やアンケート機能などタッチポイントごとに最適な施策実行が可能
- N1リアルタイム解析やLIVE行動確認によりユーザー行動の深い理解が可能
- 複数のプロダクトを組み合わせることで、自社の目的・課題に合った顧客体験の実現が可能
- 料金
- 要問合せ
USERGRAM
引用:USERGRAM
「USERGRAM」は、ユーザーの状況を捉える分析手法である、シーケンス分析に特化したクラウドサービスです。訪問ユーザーのサイト内行動の順序・流れを直感的に把握できる独自インターフェースによって、誰が・いつ・どこから流入したかが一目で把握できます。
USERGRAMの大きな特徴は、ユーザー分析を自動化するAI機能が備わっていることです。AIサジェストでWebサイト内におけるユーザー行動の順序・流れを可視化することで、コンバージョンに貢献しているページの把握や、注目すべきユーザー行動を把握できます。
さらに行動データの機械学習による行動パターンの自動振り分けや、発見した特徴的な行動の定量的な把握によって勝ちパターンを見つけ出すことが可能です。
- 特徴
- AIサジェストにより、ユーザー行動の順序や流れの発見をサポートし成果向上につながる改善が可能
- 分析専門メンバー以外もUSERGRAMでデータ分析を行えるよう、実践的な支援プログラムを無償で提供
- 顧客ID・会員IDを取得することで、チャネル・デバイスを問わずユーザー行動の計測が可能
- 料金
- 初期導入費用:無料
- 月額費用(年間一括払いのみ):25万円~/月額
AD EBiS
引用:AD EBiS
「AD EBiS(アドエビス)」は、動画広告やバナー広告など、あらゆる広告媒体の効果測定を実現するマーケティング効果測定プラットフォームです。
Web広告単体の効果分析機能のほかに、認知から購入にいたるまでの購買プロセスを「人軸」で評価できるカスタマージャーニー分析機能を搭載しています。最適なユーザーフローの検証によるコンバージョン率の可視化が可能で、ユーザー属性別に媒体を検証することで、ターゲット層にコンテンツが閲覧されているかどうかが一目で把握できます。
- 特徴
- 広告媒体ごとの表示回数や消費額を自動取得し、広告効果をリアルタイムで把握可能
- すべての流入チャネルの測定データとコンバージョンをはじめとするあらゆる分析指標の一元管理が可能
- 各マーケティング施策に応じた評価指標を搭載。認知からコンバージョンにいたるまで一気通貫で分析可能
- 料金
- 初期費用:無料
- 料金体系
基本料金(定額)+従量課金
※基本料金は契約プランによる
カスタマージャーニー分析でユーザー理解を深めよう
インターネットやスマートフォンの普及、AI技術の進化など、テクノロジーの発展により顧客の購買行動が多様化している現代。企業都合の一方的なアプローチでは見込み客の心をつかめません。過去1年で「マーケティング部門の目標達成が難しくなった」と感じるマーケティング従事者が7割を超える(HubSpotの独自調査)環境下においては、見込み客の行動の裏側にある思考や感情に寄り添い、いかにして課題解決をサポートできるかが重要です。
カスタマージャーニー分析は、顧客を理解する上で欠かせないフレームワークです。カスタマージャーニーという指針をもとに、実行した施策の課題やペルソナの問題点などを特定すれば、よりパフォーマンスの優れた施策立案へとつながるでしょう。顧客の行動や思考をひとつずつ丁寧に分析し、必要な時に必要な情報を提供することが、顧客との関係性構築につながっていきます。