近年、業種問わずさまざまな企業で、問い合わせ対応を効率化するためにチャットボットシステムが導入されています。
自社に適したチャットボットを作成する手段は、自社開発と、ツール使用の2つがあります。それぞれのメリット・デメリットや作成手順を比較検討し、自社に合った方法の選定が必要です。また、あらかじめ基本的な作り方や必要なプログラミングを把握しておくことで、スムーズな導入につながります。
本記事では、チャットボットの作り方や、自作する際のポイントを紹介します。ぜひ参考にしてください。
チャットボット活用の基礎ガイド
チャットボットの作り方は2つ
チャットボットの作り方には次の2つの方法があります。
- 自社開発
- ツールを使用する
それぞれのメリット・デメリットは次の通りです。
【自社開発】
- メリット
- 自社に必要な機能を搭載できる
- 開発の自由度が高い
- 自社のシステムと連携しやすい
- デメリット
- 専門知識を持った人材が必要
- メンテナンスを自社で行う必要がある
- 導入までの期間が長い
【ツールを使用する】
- メリット
- 専門知識がなくでも簡単に作成できる
- 導入までの期間が短い
- デメリット
- ツールの選定が必要
- システムの連携やカスタマイズの自由度が低い
自社開発では、自社に合ったチャットボットを自由に作成できます。ただし、プログラミングなどの専門知識を持った人材が必要なことや、すぐには導入できない点に注意しておきましょう。
チャットボットを簡単に自作するポイント
チャットボットを簡単に自作するためには、次の2つのポイントを意識して、導入までの工数を減らす工夫が必要です。
対応範囲と必要機能の明確化
チャットボットと有人、それぞれの業務範囲を決めておきます。例えば、ECサイトの場合は、よくある質問をチャットボットに任せ、それ以外の問い合わせはカスタマーサポートの番号を表示するといった分け方です。
対応範囲を定めることで必要な機能が明確になり、開発にかかる工数を少なくできます。チャットボットの精度の向上や、開発期間の短縮にもつながります。
オープンソースの活用
オープンソースとは、無償で一般公開されているプログラムの設計図(ソースコード)のことです。オープンソースを活用することで、担当者がゼロから開発する手間が省けるため、導入期間を大幅に短縮できます。チャットボットの作成に活用できるオープンソースには次のようなものがあり、自社の目的に合わせて改良も可能です。
- Meta for Developer(Facebook)
- Botpress
- Hubot
チャットボットを自作する方法5ステップ
チャットボットを自作する場合は、次の5ステップで行います。
- 事前準備
- 実装
- テスト
- 公開
- 改善
スムーズにチャットボットを作成するために、詳しい手順を把握しておきましょう。
1. 事前準備
チャットボットの作成には4つの事前準備が必要です。チャットボットの方向性を定める重要な部分になるため、丁寧に行いましょう。
明確な目的設定
チャットボットの導入前には、目的を明確化することが重要です。「便利そう」「とりあえず使ってみたい」などのあいまいな動機ではじめてしまうと、設計の方向性がブレるため注意しましょう。
目的の例は次の通りです。
- カスタマーサポートに寄せられる「よくあるお問い合わせ」の件数を削減したい
- ECサイト上で「商品の質問」をできるようにして顧客満足度を高めたい
目的を明確化することで、自社に必要なチャットボットを具体的にイメージすることが可能です。具体的な数値目標も設定しておけば、チャットボットの運用状況や改善点を分析しやすくなります。
顧客のニーズ調査
解決率の高いチャットボットを作成するために、対象顧客のニーズ調査を行います。具体的には、次のような調査方法が有効です。
- 過去の問い合わせ内容を収集・分析する
- 顧客目線に立って考える
- 顧客にアンケート調査をする
- カスタマーサポートの担当者の意見を聞く
顧客が求める情報を知ることで、チャットボットに登録する内容が見えてきます。ニーズ調査を怠るとチャットボットの利用率や顧客満足度の低下を引き起こすため、必ず行いましょう。
設置場所の決定
チャットボットの設置場所を明確にします。主な設置場所は次の通りです。
- コーポレートサイト
- Webサイト
- SNS
自社の目的が達成できる場所にチャットボットを設置することが大切です。社内で利用したい場合には、SlackやGoogle Chatに設置するという選択肢もあります。
チャットボットの種類の選定
チャットボットは大きく分けて次の2種類があります。
- ルールベース型
- AI型
ルールベース型は、シナリオを設定し、顧客に選択肢を与えながら質問形式などで回答にたどりつくものです。一方のAI型には人工知能(AI)が搭載されており、関連する質問や周辺情報をまとめたデータを読み込ませて学習させることで、AIが回答を提示します。
自社に必要な機能や設置場所を考慮し、どちらのチャットボットを作るか決めましょう。
2. 実装
チャットボットの作り方はルールベース型とAI型で異なります。それぞれの手順を見ていきましょう。
ルールベース型チャットボットの作り方
ルールベース型のチャットボットの作り方は次の通りです。
①プログラミング言語の選定
Python、PHP、JavaScriptなどの中から、チャットボットの設置場所に合わせて適切な言語を選定します。
②チャットボットの会話の作成
ルールベース型では、会話のやりとりの作成が必要です。対象顧客のニーズに合わせて、問いかけと回答のパターンを洗い出します。例えば、宅食サービスのチャットボットの場合、会話の作り方は次のようになるでしょう。
回答:賞味期限はお届けから〇日以内です。商品ラベルをご確認のうえ、期限内にお召し上がりください。
回答:60種類以上ご用意しております。
登録されていない問いかけには対応できないため、事前に次のような定型文を決めておきます。
回答:申し訳ありませんが、該当する回答が見つかりません。言葉や質問方法を変更してもう一度ご質問ください。
③プログラミング
必要な会話の作成後、チャットボットのプログラムを構築していきます。チャットボットのロジックをフロント部分に入力するなどの方法があります。
AI型チャットボットの作り方
AI型チャットボットの作り方は次の通りです。
①プログラミング言語の選定
チャットボットの設置場所に合わせて適切な言語を選定します。AI型チャットボットで幅広く採用されている言語は「Python」です。ライブラリ(プログラミングでよく使用されるコードのテンプレート)が豊富にあり、他の言語と比べて難易度が低いといった特徴があります。
②チャットボットの回答の作成
AI型チャットボットで回答を作成する方法は次の2種類です。
- AIが回答を作成
- 人間が回答を作成
AIが回答を作成する場合、専用の学習データを読み込ませる必要があります。人間が回答を作成する場合は、AIが読み取る文章に対して適切な回答を設定し、出力させる設定を行います。
③実装
AIについて学び、プログラムを実装します。難しい場合には、AI技術者に外部委託するのも良いでしょう。
3. テスト
チャットボットの実装後はテストをします。問題があった際に修正しやすいよう、次の順序で行うのがおすすめです。
- 単体テスト:単位(画面や機能など)ごとのテスト
- 結合テスト:複数の単位を組み合わせたテスト
- 運用テスト:稼働状況のテスト
テストの際には次の点に着目します。
- 問いかけに対して正しい回答があるか
- 求める情報にたどりつけるか
- 使いづらい箇所はないか
必要に応じて設定や回答などを修正してください。
4. 公開
チャットボットを公開します。顧客向けの場合には、チャットボットを公開したことをSNSやWebサイトなどで告知し、利用者を増やす工夫をしましょう。
5. 改善
チャットボットは作成して終わりではなく、運用後も定期的な改善や修正が必要です。次のKPIをもとに運用・分析をすることで、改善点が見えてきます。
- チャット数
- チャットの返答率
- 解決した数
運用中、新たに必要な機能を発見した場合には追加する、解決した数が低いのであれば回答を修正するなどの改善を行いましょう。
ツールを使ったチャットボットの作り方
企業が開発したツールを使用することで、自作するよりも簡単にチャットボットを作成できます。カスタマイズ性が低くても短期間かつイニシャルコストを抑えてチャットボットを導入したい場合にはツールの活用がおすすめです。本章ではツールを使用したチャットボットの作り方を紹介します。
1. ツールの選定・導入
チャットボットツールには、大きく分けて「ルールベース型」と「AI型」の2種類があります。チャットボットを導入する目的やターゲットなどをもとに、適切なツールを選定します。完全無料のツールや、無料トライアル期間のあるツールも多いため、まずは試してみるのも良いでしょう。
チャットボットのツールを比較する際には、こちらの記事もご参照ください。
2. FAQ情報の収集
これまで自社に寄せられた質問内容や回答内容の情報をまとめます。サイト内に「よくある質問」などの項目がある場合は、参考にすると効率的です。
3. シナリオを設計する
収集したFAQ情報をもとに、シナリオを設計します。まずは骨組みの構築からです。エクセルやスプレッドシートなどを使い、フローチャート形式で作るとわかりやすいでしょう。全体像を作成後、会話形式になるように組み立てます。
シナリオ設計の詳細はこちらの記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
4. チャットボットの設置
チャットボットを設置する場所を決めて配置します。設置方法はツールによっても異なりますが、タグを発行して挿入するタイプが一般的です。
5. 動作テスト・公開
組み立てたチャットボットをもとに、シナリオの動作テストを行います。不自然な動作や回答の表記ゆれがないかなどを確認しましょう。テストは作った本人だけでなく複数名で行うことが重要です。別部署のスタッフなどの協力も仰ぐとより精度が高まります。
テストで問題がなければ公開します。ただし、チャットボットは公開して終わりではありません。利用率や顧客満足度を低下させないためにも、定期的に分析をし、必要に応じてアップデートすることが大切です。
HubSpotでチャットボットを作ってみる
HubSpotでは、導入から継続まで完全無料のチャットボット作成ツールをご用意しています。コーディングが不要なため、プログラミングなどの専門知識は必要ありません。テンプレートを活用することで、自社に合ったチャットボットを簡単に作成できます。
HubSpotでチャットボットを作成・実装する手順を紹介します。
手順1:チャットボットを設置する場所を決める
チャットボットを設置する場所を決めます。HubSpotで作成したチャットボットは、次の2つの場所に設置が可能です。
- Webサイト
設置場所によって設定や仕様が異なるため、あらかじめ自社で決めた要件に従って選びましょう。
手順2:チャットの対応設定をする
チャットの対応をするアバターや最初のメッセージなどを設定します。顧客がチャットを利用する際に必ず見る項目のため、ブランドのトーンに沿った口調やビジュアル、目的に沿った内容を選択しましょう。
手順3:対応可能時間帯を選択する
次のケースに応じて、チャットボットの対応可能時間を設定します。
- チャットボットを自動返答する
- スタッフにつなぐ
シンプルな問い合わせを想定した利用であれば、チャットボットを休みなく設定しましょう。チャットボットに込み入った内容を含める場合は、スタッフが対応できる時間に合わせて設定します。
自社に適した作り方でチャットボットを有効活用しよう
チャットボットを自作すれば、自社に必要な機能を自由に備えられます。しかし、導入までの期間が長期化することや、専門知識を持った人材が必要な点に注意しましょう。
人員コストの削減や導入期間を短縮したいのであれば、ツールを使用した作り方が適しています。さまざまなツールの中から、自社に合うものを比較検討します。完全無料のツールや、無料トライアル期間が定められたツールもあるため、まずは試してみることもおすすめです。
自社の目的に合う方法でチャットボットを作成し、顧客との接点を増やしていきましょう。