インターネットの普及によって消費者の購買行動は変化し、自ら情報を収集、発信することが可能になりました。このような変化に対して、迅速かつ柔軟な対応ができるマーケティング施策が企業には求められています。
マーケティングオートメーション基礎ガイド
マーケティングオートメーション(MA)の基礎と導入・運用・実践方法を解説
- マーケティングオートメーションの概要
- マーケティングオートメーションツールの主な機能
- 導入から運用までの流れ
- マーケティングオートメーション実践例
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全てのフィールドが必須です。
株式会社Nexalが実施した「2023 上期 国内63万社 MAツール実装調査」によると、上場企業の導入率は14.6%であり、2018年と比較して2倍に増えています。当社HubSpotもマーケティングオートメーション機能を実装したマーケティングツール「Marketing Hub」を提供しているなかで、年々需要が増えていると実感しています。
お問い合わせいただくお客様のお話を聞いていると、マーケティングオートメーションはどのような課題に対して有効なのかが不明瞭だったり、導入準備・導入後の運用では何をすれば良いのかイメージがついていなかったりといった理由で導入に踏み出せていないという声が少なくありません。
今回は、そのように導入前後の具体的なイメージを少しでも持てるようマーケティングオートメーションの導入事例12選をご紹介します。後半ではHubSpotの顧客に取材した事例も紹介しています。自社におけるマーケティングオートメーション導入のイメージ作りにお役立てください。
マーケティングオートメーションの成功事例5選
ここからは、マーケティングオートメーションの導入によって顧客体験の向上に成功した5社の事例をご紹介します。
- 株式会社kubell (ChatWork株式会社)
- 株式会社キトー
- ベネッセコーポレーション
- 日本経済新聞社
- 株式会社ジェイアール東日本企画
1. 株式会社kubell (ChatWork株式会社)
出典:kubell
株式会社kubell (ChatWork株式会社)は、ビジネスチャットを提供し、導入実績は40万社以上にのぼります。
同社では、良質な口コミにより新規ユーザーを創出していたもののセグメントができておらず、有料プランになる可能性が高い見込み客に対して適切なアプローチを行えていませんでした。
まず、同社はマーケティング部門と営業部門のメンバーを集めてサービスの良さを言語化し、顧客のステージを定めて共通認識を持たせました。さらに、すでに導入していたMAツールを用いてパイプラインやカスタマージャーニーマップの作成を行うことで有料プラン契約までの道のりを整理し、活用度に応じて有料プランへ転換を図れるよう新たなマーケティング手法を実施しました。
また、両部門の情報を一元化させてKPIを管理するため、顧客データやChatworkの活用情報などあらゆる情報を1つのデータベースに統合し、スプレッドシートを活用したダッシュボードを制作したのです。これにより、課題の発生源を特定して、改善できるようになりました。また、顧客情報の詳細を各部署で共有できるため、活動や認識のズレも解消されました。
マーケティングオートメーションの活用により、属性の異なる見込み客に適切にアプローチできるようになった結果、受注率は5倍に上昇しています。
2. 株式会社キトー
出典:キトー
株式会社キトーは、国内で60%以上のマーケットシェアと、世界50の国や地域におよぶ販売網を有するホイストメーカーです。
同社にはマーケティング専門の部署はあったものの、体系的にデジタルマーケティングを行うことは少なく、競合他社の分析などポジション調査が主な役割でした。ビジネスモデルの特性から、既存顧客は継続して利用するケースが多く、特別な施策を行わなくとも売上が確保できていました。しかし、同社では代理店販売形式を採用していたため、顧客ニーズを汲み取れていない点が課題でした。
そこで、まずは顧客情報の整理に着手します。顧客情報を社内で蓄積させるためにCMSに特化したMAツールを導入し、ホームページのリニューアルを行いました。ホームページ上に資料ダウンロードのフォームを設置したことで、閲覧数の多いページや需要などを数値として可視化し、顧客の具体的なニーズを把握できるようになりました。
ホームページリニューアル後は、訪問者数が13?15%上昇、資料ダウンロード数は500件/月、お問い合わせは200件/月と効果が表れています。
3. ベネッセコーポレーション
出典:ベネッセグループ
株式会社ベネッセコーポレーションは、主に「教育・生活・介護・語学」の4つの領域の事業を展開している企業です。同社では、顧客の購買行動の変化に伴い、顧客にアプローチする手段が電話やメールからWeb中心になったことを受け、Webサイトからの資料請求や入会申し込みを増加させることを目標としました。
その目標を達成すべく、アクセス解析ツールを導入して顧客行動を把握しようとしましたが、いくつかの課題が浮き彫りとなりMAツールの導入に至りました。例えば、200以上のサイトを個別に分析し、資料作成をするのに膨大な時間がかかっていた点や、元々使っていたツールの機能には限界があり顧客ごとにきめ細やかな分析を行えていなかった点が主な課題となっていたのです。
これらの課題を解決するために、複数のマーケティングチャネルにまたがって分析できるMAツールを導入しました。その結果、サイト単位でしか追えていなかった顧客行動が、グループのサイト間においてどこからでも追えるようになりました。顧客の動線を把握できるようになったことで顧客をセグメントに分け、適切なタイミングで最適なオファーを提案できるようになった他、担当者の作業負担の削減にも効果が表れています。
4. 日本経済新聞社
出典:日本経済新聞社
情報サービスやビジネスデータの活用支援サービスを展開している株式会社日本経済新聞社のデジタル事業では、営業とマーケティングの部門間の連携が上手くいかず、ナーチャリングの効率化やクロスセルが困難な状況が課題となっていました。
長年抱えていたその課題を解決すべく、組織体制の見直しと共に情報基盤の整備としてMAツールの導入に至ります。
MAツール導入後は、インバウンド対応、アウトバウンド、ナーチャリング、既存顧客とのコミュニケーションの主に4つの業務効率が改善し、案件創出数が従来の2倍に増加しました。導入後の商談化率はさほど変わっていないことから、MAツールの導入によって顧客や見込み客への迅速かつ適切なアプローチが可能になり、機会損失を減らせたことが要因です。
また、顧客とのコミュニケーションによる顧客体験の向上も大きな成果につながった理由だと考えられます。
クロスセルやリードナーチャリングについては、次の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
5. 株式会社ジェイアール東日本企画
出典:JR東日本企画
広告・マーケティング事業を展開する株式会社ジェイアール東日本企画は、社会情勢の変化から対面での営業機会が激減し、新規顧客を開拓する必要に迫られていました。
そこで、Web上での顧客接点を増やし、見込み客を創出するために「オンライン営業局編集部」を発足させます。マーケティングと営業活動を行う同部署ではMAツールを導入して、広告施策に関する課題をオンライン上で無料相談できるサービスを立ち上げました。お問い合わせフォームやポップアップ機能を活用することで匿名ユーザーにもアプローチできるようになり、見込み客創出へとつなげたのです。
資料請求やオンライン相談予約ができるお問い合わせフォームでは、ユーザーの入力内容に即して最適な提案を個別に行えるように設計されました。ポップアップ機能も、ユーザーごとに配信内容やタイミングを変えて、それぞれの課題に寄り添った情報を提供できるように検証と改善を繰り返しました。
MAツール導入の結果、約1年で100社以上とのオンライン相談と2.5倍の見込み客の創出を実現しています。
見込み客創出の詳細は次の記事で紹介しているので参考にしてください。
HubSpotのマーケティングオートメーション導入・成功事例7選
ここからは、当社HubSpotのマーケティングオートメーションの導入により成果を得られた7社の事例をご紹介します。
- パナソニック インダストリー株式会社
- 株式会社ハーモ
- 株式会社Kaizen Platform
- 株式会社NTTPCコミュニケーションズ
- 株式会社ランドネット
- 読売新聞グループ
- ピー・シー・エー株式会社
1. パナソニック インダストリー株式会社
パナソニック インダストリー株式会社は、パナソニックホールディングスのデバイス領域を担当する事業会社として2022年4月に発足しました。同社の営業部門では、「顧客の持つ悩みを迅速に解決するためには、スピーディーな意思決定が求められる」という考えのもと、大胆な改革に取り組んでいます。
同社の営業の強みは、顧客と頻繁に対面でコミュニケーションを取り、現状の課題やニーズに寄り添った丁寧な提案を心がけて信頼を得ることです。しかし、アナログなやり方では限界があります。また、顧客情報が部署間で共有されておらず、顧客と接点のあるスタッフに問い合わせる必要があったり、クロスセルの提案をスムーズにできなかったりするという課題もありました。
そこで、顧客データを一元管理したデータ基盤を構築しました。しかし、これだけではデータを分析し、営業活動に活用するのは難しいため、DX化推進も兼ねて営業部門にMarketing Hubの導入に至ります。また、ウェビナーやオンライン展示会、ビデオ会議での商談など、Webデジタル上での接点も増やして顧客情報の集約を実施しました。
その結果、営業担当者は見込み客の行動を把握できるようになり、スピーディーかつ柔軟な提案によって顧客体験の向上に成功しました。
参考:HubSpot導入事例 | パナソニック インダストリー株式会社
2. 株式会社ハーモ
出典:株式会社ハーモ
株式会社ハーモは、プラスチックの成形に欠かせない「成形品取出ロボット」や「周辺自動化機器」を生産している老舗の総合メーカーです。従来の営業活動では、紹介に依存していましたが、リーマンショックにより市場が縮小し、新規案件獲得が難しくなりました。そこで同社では、「モノではなくコトを売る」という考え方で営業を強化し、提案型の営業活動に切り替えました。
当初は顧客目線で商品を売る手法を取ったものの、紙媒体では効果測定ができないという課題を抱えていました。また、社会情勢の変化によりWebマーケティングの必要性を実感し、MAツールの導入を検討します。さまざまなMAツールを検討した結果、UIが優れており、MA・CRM・CMSが一体化して使い勝手が良い点を考慮してHubSpotを導入しました。
HubSpot導入後は、Marketing Hubの機能を活用して営業活動に特化したマーケティングサイトを作成し、ユーザーの抱える悩みを解決できるコンテンツを提供しています。また、CRMに蓄積された見込み客に対して、毎月開催されるWebセミナーをメールで周知するなど、積極的な営業活動を行いました。その結果、Webを接点に創出された見込み客は従来の問い合わせ数の約3倍になり、想定の3倍以上の受注額を達成しています。
3. 株式会社Kaizen Platform
株式会社Kaizen Platformは、セールスとマーケティング領域のDX支援事業を手掛けています。動画制作・Webサイト改善・DXコンサルティングの3つの柱を軸にクライアントの先にいる顧客体験を向上させることで、クライアントのビジネスの成果を支援しています。
同社は高い営業力が強みである一方、組織的なマーケティング活動ができていなかったことから、事業の今後に危機感を感じてMarketing Hubを導入しました。数多くあるMAツールからMarketing Hubを導入した理由について、使いやすさやコンテンツマーケティングとシナリオの相性の良さ、コストパフォーマンスに優れている点をあげています。
Marketing Hubの導入後は、コンテンツマーケティングとメルマガ配信を組み合わせ、見込み客へのアプローチを定常化させることに成功しました。その結果、動画事業における質の高いインバウンドマーケティングの実現につながり、1年間でアポイントメントの獲得数が1.4倍、商談数は約2倍、受注率も2.6倍以上に大きく増加しました。
参考:HubSpot導入事例 | 株式会社Kaizen Platform
4. 株式会社NTTPCコミュニケーションズ
株式会社NTTPCコミュニケーションズは、IoTやクラウド基盤、ネットワーク、セキュリティを中心に、法人顧客ごとに最適化されたソリューションを提供しています。同社は、DX推進やデジタル部門に強みがあるものの、社内の販促活動ではデジタル化が進んでいませんでした。また、顧客情報がプロジェクトや部門ごとに管理されており、営業効率と営業プロセスに課題がありました。
そこで発足したのが、「DX推進PJ」です。マーケティングと営業活動の抜本的なデジタル化に踏み切り、初めの施策としてHubSpotを導入しました。同社がHubSpotの導入を決めたのは、各部門でバラバラに運用されていたCRMのシステムを簡単に統一でき、細かな施策を内製して実行できるからです。また、コストパフォーマンスも優れており、総合的にベストなツールと判断したのも導入理由となりました。
HubSpotの導入後は顧客管理のデジタル化によって購買意欲の高い見込み客へ効率的にアプローチできるようになり、施策コストを年間2億円削減することに成功しました。さらに、1年で約2倍の売上増も達成できました。
参考:HubSpot導入事例 | 株式会社NTTPCコミュニケーションズ
5. 株式会社ランドネット
出典:株式会社ランドネット
不動産投資事業を手掛ける株式会社ランドネットでは、不動産投資を考えている方向けに定期的にセミナーを開催しています。さまざまな媒体で集客し、申し込み情報をスプレッドシートで管理していましたが、流入経路など顧客の動線を把握できない課題を抱えていました。
そこで、マーケティング体制を強化し、見込み客の管理からナーチャリングを効果的に行うために費用対効果が高いと感じたHubSpotを導入しました。CRM・MA・SFAが統合されて、マーケティングから営業までを一連の流れとして顧客と適切なコミュニケーションを取れるイメージが湧いたのも理由の一つです。
HubSpot導入後は、年収や自己資金などのステータスごとに顧客情報を一元管理できる状態にし、それぞれに適したコンテンツを用意することで、属性ごとに異なるニーズに効果的にアプローチできるようになりました。また、リード自動割り振り機能を活用して、セミナー申し込みから面談アポイントまでのタイムラグを削減しました。
顧客行動を時系列に追って最適化されたタイミングでコミュニケーションを取れるようになった結果、顧客体験の向上に成功し、セミナー申し込み後の面談数が増加しました。
6. 読売新聞グループ
出典:読売新聞社
読売新聞グループは、140年以上の歴史を持ち、報道を軸にスポーツや文化などさまざまな分野に強みがある総合メディア集団です。同グループでは、各分野に散在する顧客データの活用に課題を抱えていました。
そこで、顧客データを集約させて顧客を理解しグループ全体のサービス体験を高めることを目的に「イノベーション本部マーケティングDXグループ」を発足させました。
ツール選定では実際に担当者がデモを操作し、UIの良さからHubSpotが選ばれました。導入後は、メルマガの開封率が可視化され、またメールを容易に作成できるようになったことから反応率の向上に成功しています。
さらに、社内やグループにHubSpotの導入を提案し、29部署400名以上に利用されるようになりました。ビッグデータを可視化してマーケティングに活用する仕組み「yomiuri ONE」も構築されました。その結果、グループ共通の会員IDである「読売ID」が前年比2倍以上になる実績が示されました。また、紙媒体からメールに置き換えることでコスト削減にも成功しています。
参考:HubSpot導入事例 | 株式会社読売新聞東京本社様
7. ピー・シー・エー株式会社
出典:ピー・シー・エー株式会社
ピー・シー・エー株式会社は、企業経理業務に関わるPC用基幹業務系パッケージソフトウェアを開発・販売・サポートしています。
同社では2018年にインサイドセールスの担当者を含めたマーケティンググループを発足させ、新規見込み客創出のためのマーケティング活動を始めました。2019年には自社のWebサイト「P-Tips」を開設し、見込み客の創出に成功します。
ところが、見込み客との間に販売代理店が入るケースも多く、見込み客の反応を把握しづらい課題が生まれました。一方で、2020年には組織改編が行われ、インサイドセールスチームが独立した部署「カスタマーエクスペリエンスセンター(以下、CXセンター)」としての活動を始めます。同部署では、他社のMAを既に導入していましたが、体制強化のためにCRM機能が充実しており費用対効果に優れたHubSpotに乗り換えました。
HubSpot導入後、マーケティンググループではWebサイトのコンバージョンポイントを再考し、ユーザーの行動を可視化する取り組みを行います。従来は販売代理店を通して間接的に顧客データを把握していたのに対し、情報だけを取得したいのか、製品に興味を持っているのかなどユーザー情報を詳細に把握できるようになりました。
さらに、マーケティンググループ内にパイプラインを構築して優先度の高いユーザーを限定してCXセンターに引き渡す運用を行いました。
また、CXセンターからのフィードバックを得て見極めの精度を向上させ、ユーザー理解を深めることでマーケティング施策の質の向上が実現しました。その結果、MRR(月次経常収益)が5倍以上になる高い効果を得ています。
マーケティングオートメーションの導入・成功事例を基に、自社にも導入しよう
本記事では、マーケティングオートメーションに取り組み、ビジネス上の課題を解決した事例12選をご紹介しました。業種や企業規模によらず、多くの企業での導入・成功事例があります。
マーケティングオートメーションを導入すると、顧客の属性や状況をより詳細に把握できるため、顧客ごとに最適な提案が可能になります。細かい分析をもとに対策を練れば顧客体験を高められ、売上向上にもつながるでしょう。
マーケティングオートメーションを成功に導くうえで欠かせないのが、MAツールの活用です。数多くのMAツールがありますが、HubSpotの Marketing Hub は無料で利用できる機能が多数あり、有償版もコストパフォーマンスにも優れています。まずは無料で試してみることをおすすめします。