プライミング効果とは、先行して受けた刺激や情報によって、その後の行動が影響を受ける現象のことです。私たちは意識的に行動していると思っていても、実は無意識にプライミング効果の影響を受けています。
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本記事では、プライミング効果をマーケティングやビジネスに活用するために、プライミング効果とは何かや、その種類、具体的な活用シーンをわかりやすく紹介します。
プライミング効果とは
ライミング効果とは、先行して受けた刺激によって、その後の刺激に対する処理が影響を受ける現象のことです。心理学用語であり、先行する刺激を「プライマー」、後続する刺激を「ターゲット」といいます。
プライミング効果の利用例としては、子どもの遊びの「10回クイズ」などがあります。例えば、「シャンデリア」と10回言ってもらった後に、「毒りんごを食べたのはだれ?」と質問すると、多くの人が思わず「シンデレラ」と答えてしまいます。(正解は「白雪姫」)
10回クイズは効果がわかりやすい例ですが、プライミング効果を活用すると、人に無意識な行動を誘発させられるため、マーケティングやビジネスに広く有効活用されています。
プライミング効果の種類
プライミング効果には「直接プライミング」と「間接プライミング」があります。違いは、先行する刺激(プライマー)と、後続する刺激(ターゲット)が同一かどうかです。
それぞれの効果は次の通りです。
直接プライミング効果
直接プライミング効果では、先行する刺激(プライマー)と、後続する刺激(ターゲット)が同一です。
例えば、スーパーでは陳列棚の目の高さにある商品が最初に目に入るため、それがプライマーとして作用します。その結果、商品を選ぶときに、つい陳列棚に置かれた商品を手に取ってしまう人が多くなります。
また、テレビでカレーのCMを見たあとで買い物に行き、「夕飯にカレーが食べたい」と思ってカレールウを購入するなども同様の現象です。
直接プライミング効果により、先行した刺激が後続する刺激に影響した例です。
間接プライミング効果
間接プライミング効果では、先行する刺激=プライマーによって、後続する刺激=ターゲットが間接的な影響を受けます。
例えば、「夏といえば海だよね」という人の発言を受けて、「夏といえば何?」と聞かれた際に、自然と、日焼け・海水浴・ビーチバレーなど、海に関連する用語を連想するのが間接プライミング効果です。
事前に与えられた刺激によって、直接ではないものの、間接的に関連性の高いイメージが浮かんだり行動が喚起されたりします。
マーケティング・ビジネスにおけるプライミング効果の活用例
プライミング効果を理解したうえで適切に活用すると、マーケティングやビジネスを効果的に展開できます。ここでは、具体的な活用例を7つ取り上げて解説します。
1. CM・動画
テレビCMやYouTube動画には、プライミング効果を活用したものが多くあります。
例えば、自動車メーカーのCMで、ある車が自然の中を走行している様子が描かれていて、「自由」や「冒険」などのキーワードが強調されているとします。すると、消費者がこのCMを見た後でその車やブランドの名前を聞くと、「自由」や「冒険」という印象が自然と想起されます。
これは直接プライミング効果の一例で、消費者のブランドに対する認識や感情に影響を与えています。
2. SNS・メルマガ
SNSやメルマガで情報を発信する際に、プライミング効果を狙うこともできます。
文章に、最終的に読者に起こしてほしい行動や抱いてほしい印象に作用するような情報を盛り込む方法です。
例えば、沖縄旅行ツアーの情報を流す場合に、冒頭に「美しい海で感動の体験!」というコピーの入った青い海の写真を入れておきます。そのあとで沖縄のツアー情報を提示すると、青い海が思い浮かび、そこで感動体験ができる感覚が想起され、ツアーの提案に反応しやすくなります。
3. アンケート
顧客向けのアンケートの冒頭に、顧客が過去に経験したポジティブなサポートケースを思い出させる質問を配置するなどの活用も可能です。
例えば、「過去に当社のカスタマーサポートが期待を上回る対応を提供した経験について教えてください」という質問を最初に行います。これによって、回答者がサポートサービスに関してポジティブな経験を思い出し、その後の質問に対する回答がより協力的になったり、建設的な回答を得られたりします。
4. キャンペーン
例えば、環境保護に関連する顧客参加型のワークショップやクリーンアップイベントを企画し、積極的な参加を促したいとします。イベント参加者には、エコフレンドリーな製品のサンプルや割引クーポンを提供します。これによって参加者は環境保護により関心を持つようになり、環境に関連した商品を購入する可能性が高くなります。
店頭での試食やドリンク剤の配布キャンペーンなどにも活用できます。仮にすぐその場では購入に至らなくても、試食や配布されたものがプライマーとして無意識に刷り込まれるため、後で似たような商品を購入する可能性が高まります。
5. 口コミ・レビュー
口コミやレビューにもプライミング効果が発生します。
例えば、オンラインショッピングサイトで高評価のレビューを読むと、その商品に対する信頼感が高まり、その後、購入する可能性が増します。
具体的には、ある商品が多数の5つ星レビューを受けていると、消費者はその商品が高品質であるとの印象を持ちやすくなり、他の商品と具体的な比較をせずとも購入に至りやすくなるでしょう。
他にも、あるレストランについて多くの人が「雰囲気が良い」というコメントをしているレビューを読むと、初めて訪れる客もそのレストランを雰囲気の良い場所だと感じやすくなるなどの影響を与えられます。
6. 目標達成
職場での生産性向上を目指している場合の活用例として、ポジティブな言葉や成功に関連するイメージをオフィス環境に取り入れる方法があります。
例えば、壁に「達成」「協力」「成功」などの言葉を掲示したり、成功したプロジェクトの事例を紹介したりすると、従業員の意識が仕事に対する前向きな姿勢に変わります。その結果、生産性が向上する可能性があります。
7. 集中力アップ
個人が特定のタスクや活動により良く取り組むことを助けるために、プライミング効果を活用する方法もあります。
例えば、集中力を高めるためのアファメーション(肯定的な自己暗示)は、有効なプライミング手法です。作業を始める前に、「私は集中している」「私はタスクに没頭できる」などのフレーズを自分自身に言い聞かせることで、これがプライマーとなり、実際の作業時に集中力を高めることができます。
ほかには、作業を始める前に、その活動の目的やゴールを明確にするのも良い方法です。目的やゴールがプライマーとなり、その後の意識や行動が目的やゴールに向かいやすくなります。
プライミング効果をマーケティングやビジネスに役立てよう
プライミング効果は、先行した刺激が、直接的または間接的に後続の刺激に影響を与える現象です。
購買や契約に向けて顧客からより良い行動や印象を引き出したり、自分自身に対してモチベーションや集中力を向上させたりするために活用できます。
相手は無意識に影響を受けるため、プライミング効果はマーケティングやビジネスのさまざまな場面に有効です。ぜひ、意識的に活用してみてください。