今後のSEOの鍵となる?HubSpotが取り組む「サラウンドサウンド戦略」 を解説(第1回)

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Alex Birkett
Alex Birkett

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今回は、「Made @ HubSpot」シリーズの記事をお届けします。Made @ HubSpotとは、HubSpot社員が実験的な取り組みを行い、そこで得た知見を発信するものです。

今後のSEOの鍵となる?HubSpotが取り組む「サラウンドサウンド戦略」 を解説(第1回)

現代の顧客は、どのようにして新しい製品を見つけているのでしょうか? 製品の存在自体はさまざまなチャネルで認識されますが、購入の検討に至るパターンは実にシンプルです。

何かしらの製品やサービスの購入を検討し始めたとき、私自身もそうであるように、友人に「〇〇を買うならおすすめはどの製品?」「◯◯のエリアで良いお店を知らない?」とたずねたり、Googleで検索したりする人は多いと思います。

たとえば、こんなキーワードを入力するはずです。

  • 「フォーム作成ツール おすすめ」
  • 「赤ワイン おすすめ 」
  • 「ビジネス スキャナー アプリ おすすめ」
  • 「東京 レストラン おすすめ」
  • 「横浜 バー おすすめ」

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot - 赤ワインおすすめの検索結果

または、「おすすめ」などの単語で限定せずに、次のような大まかなカテゴリーだけで検索するかもしれません。

  • 「フォーム作成」
  • 「大阪 ホテル」
  • 「語学 勉強 アプリ」

 

ときには、既に使用しているソリューション名をキーワードに、検索を実行することもあるでしょう。

  • 「Canva 代替」
  • 「HubSpot 競合」
  • 「Ahrefs Semrush 比較」

例に挙げたような検索語句は、マーケティングにおいて主に2つの理由で重要な意味を持ちます。

  1. 1つはカスタマージャーニーの側面です。カスタマージャーニーはHubSpotのブログにもよく登場する概念であり、その中に「検討ステージ」というものがあります。これは顧客が自分の抱える問題を解決するための手段として、どのような製品が市場で提供されているかを調査する段階です。この時点でそれぞれのメリットとデメリットを見極めることも多いでしょう。
  2. 各キーワードの検索ボリュームや、ファネルの下層部で検索されている単語のCPC(クリック単価)の推定値など、信頼性の高い定量データを活用できます。

ここで「form builder(フォーム作成ツール)」というキーワードの例を見てみましょう。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot - Ahrefsでのform builder分析結果

検索ボリュームが多く、CPCも高いことが分かります。つまり、集客力に優れ、かつ購入意欲の高さを示すキーワードであるということです。こうしたキーワードはあまり多くないものの、大きな効果が得られることは間違いありません。

続いて「best red wine(赤ワイン おすすめ)」と検索した場合を見てみましょう。このキーワードをGoogleで検索し、結果の最上位に表示されたブログ記事のURLをSEO分析ツールのAhrefsで分析してみたところ、次のような結果となりました。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot - Ahrefsでのbest red wine分析結果

このブログ記事のROIが、かなり安定していることが見て取れます。

しかし、キーワードの価値は、このようにSEOデータを確認しなければ測れないのでしょうか。

もちろん、自社ビジネスの根幹にかかわるような重要なキーワードを見つけることは大切です。顧客の意思決定を促すようなキーワードを含んだ製品ページを作成することも、HubSpotが提唱するトピッククラスター戦略で検索順位を上げるために努力することも欠かせません。

私がお伝えしておきたいのは、自社のページが対策キーワードの検索結果で上位に表示されるだけでは不十分だということです。それよりも、顧客が自社に関連する製品カテゴリーについて調べているときに、自社の名前をさまざまな方法で顧客に目にしてもらう必要があります。360°全方向から音が聞こえてくる「サラウンド」という音響システムをご存じの方も多いと思いますが、自社ブランドの情報もこの「サラウンドサウンド」で顧客に届けることが重要なのです。

顧客が新しい製品に出会って購入するまでの過程

まず、例として飲み会の席での会話を考えてみましょう。仲間がどんな本を読んでいるか知りたいと思い、次のような質問をします。「最近どんな本を読んだ? おすすめの本を教えてくれない?」

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot

数年前なら、勢いよくこう答えるメンバーが必ず1人はいたと思います。「『サピエンス全史』だよ。絶対に『サピエンス全史』を読むべき」

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot

このとき、グループの中で1人だけが『サピエンス全史』を読むように勧めた場合は、(その友人とどれほど親密かにもよりますが)周囲の雑音にまぎれて、その声はあまり耳に入らないでしょう。推薦された本に多少の関心は持ったとしても、その他の本と比べて特に強い印象は残らないはずです。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot

しかし、ここで他の友人たちが一斉に会話に加わり、口々に「そうだよ! 『サピエンス全史』は必読だ。これまで読んだ中で最高の一冊だよ」と同意したなら、その声はコーラスのように、はっきりと耳に届きます(「サラウンドサウンド」効果と呼んでもよいでしょう)。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot

このとき『サピエンス全史』を読むことにほんの少しの興味もわかないという人は、そう多くないでしょう。友人への敬意と、友人の推薦に対する信頼、そして本を買うだけのお金を持ち合わせていたなら、『サピエンス全史』を買って読んでみようとする可能性はきわめて濃厚です。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot

この例と同じ原理で、私たちは日々さまざまなものから影響を受けています。ポッドキャストや新聞記事、参考文献リストのほか、友人の口コミもその1つです。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot

この点を踏まえ、「サラウンドサウンド戦略」は次のような原理を活用する戦略だと定義できます。

「複数の情報源から製品について耳にする頻度が高くなるほど、その製品を購入する可能性が高まる」

注:これは、ベストセラーとなった『「週4時間」だけ働く。』の著者でもある起業家のティム・フェリス氏が自身のブログ記事に記した「特にリリース直後の数日間は、あらゆる場所でプロジェクトの存在を人目に触れさせる必要があります。ブログ、Facebook、Twitterなど、とにかくあらゆる場所です」という一言から着想を得たものです。

こうした考え方は、マーケティングの世界では目新しいものではありません。「好意的かつ肯定的な口コミを、多数の人から同時に発信してもらう」ことが重要なのです。次のセクションでは、広告と検索の観点から、なぜこの理論が有効なのか、そしてさまざまなチャネルと企業に役立つ仕組みについて、詳しく説明します。

ちなみに、私は最終的に『サピエンス全史』を購入しました。というのも、テキサス州オースティン在住のコンバージョン率最適化(CRO)のカリスマが、地元の仲間とバーのハッピーアワーに一杯やりながら、Facebook上で何度もこの本を絶賛していたからです。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot - サピエンス全史

あなたが最近読んだ本や視聴したテレビ番組、購入したコンシューマー向けのハイテク機器などを思い浮かべてみれば、同じようなパターンで視聴や購入に至っているのではないでしょうか(少なくとも私が『サピエンス全史』を読んだのも、テレビシリーズの『タイガーキング』や『ゲーム・オブ・スローンズ』を観たのも、スマートリングのOura Ringを購入したのもすべて、同じような経緯でした)。

購入前の価格比較と、接触頻度の重要性

さて、『サピエンス全史』を堪能することになった経緯から私の見解をご紹介しましたが、続いてはもっと広い観点から、このサラウンドサウンドの説得力を高めるデータを見ていきます。

まずは接触頻度と購入意欲の関係性について。ご存じのように、広告キャンペーンは繰り返すほどに効果を予測しやすくなります。

広告主は昔から次の2つの点を重視してきました。

  • リーチ(誰をターゲットにするか)
  • 頻度(どのくらいの頻度で広告を表示させるか)

結果として、頻繁にメッセージを伝えれば、認知度と購入意欲の向上につながります。広告に接する回数が多いほど、広告の効果が高くなるのです。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot - 広告露出と認知度と購入意欲の関連性

画像出典

もちろん結果は一様ではなく、必ずしも接触頻度に比例してキャンペーンの有効性が高まるわけではありません(実際、そうした例はほぼ皆無だと言えます)。ただし、経験則としては信頼に足るものであり、ターゲットオーディエンスを惹きつけるための簡単なヒントとして参考にしてみてください。

もう1つ取り上げておきたいのは、「比較検討」です。皆さんにも、購入前に複数のウェブサイトで製品を比較した経験があるかと思います。これは決して珍しいことではなく一般的な消費行動として定着してきています。

Forrester Consultingの調査によれば、消費者は購入に踏み切る前に平均3件のウェブサイトを訪問しており、訪問するウェブサイトの数が多くなるほど、使う金額も増える傾向があることが分かっています。

また、Googleからも近年のカスタマージャーニーに関する興味深い調査結果が公開されています。こちらの調査でもやはり、顧客は検索を繰り返していくつもの製品ページを訪問し、購入先の比較を行っていました。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot - 自動車の購入プロセス

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ここまでで、3つのことが分かりました。

  1. 製品やサービスに関連したキーワードには、集客力に優れ、かつ購入意欲の高さを示すものが(少なくともほとんどのカテゴリーにおいて)存在する
  2. 製品を購入する前に、消費者はいくつものウェブサイトを参照している
  3. 複数の情報源から製品について耳にする頻度が高くなるほど、その製品を購入する可能性が高まる

3つのポイントを総合すれば、導き出される結論は明らかです。これらに当てはまるキーワードを選び、そのキーワードの検索結果に必ず表示されるようにすればよいのです。

SEOを前提にしたサラウンドサウンド戦略

書籍などを販売している企業なら、ターゲットとなる潜在顧客が雑誌を購読したりポッドキャストを視聴したりしている可能性が高いでしょう。ターゲット層がどのようなコンテンツを利用しているかは、Google サーベイを使用してデータを集める(あるいは私がこちらの記事で説明しているように、自社のペルソナの好みを分析する)ことで、簡単に予測できます。

ターゲット層に好まれている雑誌やポッドキャストを突き止めたら、自社製品の発売前後に対象の媒体すべてに露出する戦略を立て、実施しましょう。そうすることで、サラウンドサウンドの効果が実現できます。

HubSpot製品に対応する検索キーワードは、総じてかなり検索ボリュームが大きく、しかも当社のコンテンツ マーケティング チャネルは広範囲に及びます。

そのため、当社のサラウンドサウンド戦略では、製品に関するキーワード(「ヘルプデスク ソフトウェア おすすめ」、「ウェブチャット ソフトウェア おすすめ」など)の検索結果が次のようになることを目標としています。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot

理由は次の2つです。

  1. 同じ量の検索トラフィックに対するクリックスルー率やコンバージョン数を向上できる
  2. 検索結果に複数回に掲載されていると、製品比較中の顧客が優れたソリューションとして信頼してくれるようになり、副次的効果としてコンバージョン率も高まる(これこそサラウンドサウンド効果の真骨頂です)

1つ目については、各検索エンジンの結果ページ(SERP)上で、表示順位の1~3位を中心に、上位のURLをクリックする検索者が非常に多いことが関係しています。検索結果での露出が増えるほど、自社の製品ページに多くのトラフィックを誘導し、多くの検索者を製品のユーザーに転換できるようになります。

SERP上に複数の項目が表示されることにこうした累積的な効果が期待できると気づいたのは、もちろん私だけではありません。Nick Eubanksは「SERPモノポリー」戦略の記事の中で、各検索結果の1ページ目での表示回数を増やすほど、クリック数が向上し、多くのトラフィックを獲得して、収益を拡大できると説明しています。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot - 露出回数に応じたCTRとトラフィック

画像出典

これは、自社の製品について言及されるごとに、それと比例して自社サイトへのクリックスルー率が平均して向上する(さらには、ポータルへのサインアップと収益に直結する)ことを意味しています。なお、この数値はあくまで平均値です。ブランドの認知度が高い場合や、ページのタイトルまたはメタディスクリプションが優れている場合は、SERPからのクリックスルー率はさらに向上する可能性があります。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot - SERP表示回数

自社に関するページだけでSERPを独占することが目標として現実的でない、または魅力を感じないと思う場合は、逆を想像してみてください。検索結果に、自社関連のページが1つもなかったらどうなるでしょうか? 世間の話題にのぼらなくなります。

検索結果に1回登場することは、仲間におすすめの本をたずね、そのうちの1人が『サピエンス全史』を読むべきだと声を上げるのと同じことです。もしSERPを自社に関するページで埋め尽くせたとしたら、それはグループ内の全員が、これまでで最高の一冊として『サピエンス全史』を読むように勧めるのと同じになります。

質の高い見込み客の獲得につながるという点からも、SERP上の露出機会を増やすことは、意義のある目標だと言えるでしょう。

 

独自のサラウンドサウンド戦略を構築する方法

自社独自のサラウンドサウンド戦略を立てるには、次のアプローチで進めます。

  1. 自社のカスタマージャーニーを調査する
  2. 影響力の大きい接点を洗い出す
  3. 2で挙がったすべての接点での露出方法を考える

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot - 戦略の構築

こうして書き出してみると、いかにもありふれた手順であり、抽象的でよく分からないと感じるかもしれません。カスタマージャーニーの調査とは、具体的に何をすればよいのでしょうか?

まず、自社のターゲットはどのような顧客なのか、どのように購入を決断しているかを理解します。その後、意思決定に影響を及ぼすメディアやチャネルを特定し、そこでの露出戦略を練りましょう(広告やSEO対策、PR活動のほか、ブログへの寄稿、アフィリエイト、インフルエンサーマーケティングなどを状況に応じて使い分けます)。

HubSpotの実例をご紹介すると、製品への高い購入意欲を示すキーワード(前述の「form builder」など)について、検索結果上位のURLのすべてが当社に関連したものとなることを目指しています。実現した場合にはSERPが次の3タイプのページだけで構成されることになります。

  • 製品ページ
  • まとめ記事
  • レビューサイトやレビューフォーラム

そのためには、製品ページの表示順位を上げるべく試行錯誤し、検索結果上位のまとめ記事のすべてで自社の名前を挙げてもらえるよう、また、すべてのレビューサイトで特に目立って取り上げられるように取り組む必要があります。

また、こうした取り組みの成果を長期的に追跡することも重要です。HubSpotでは常に、SERP上での自社の露出度をチェックしています(そのために画期的なツールを構築し、Shinyを通じてホスティングしています)。任意のキーワードについて、SERP上で自社関連のURLが占める割合を確認できるようにすると共に、検索結果上位のURLを一覧表にして、各ページでHubSpotが取り上げられているかどうかがすぐに判別できるようにしています。

サラウンドサウンド戦略 - HubSpot

ご覧のようにシンプルな戦略ではありますが、実際にやってみると、なかなか大変なことが分かるでしょう。

まとめ

当社と同じように次の条件を満たすことで、サラウンドサウンド戦略による確実な成果が期待できます。

  • 自社の顧客について理解し、製品の購入決定を下すときに誰のアドバイスを参考にし、何に影響を受けるかを把握している
  • こうした顧客のカスタマージャーニーを洗い出し、特に影響力の大きい、有効な接点を見つけている
  • 前述のすべての接点で露出機会を作り、肯定的な印象を与えられるように努めている

一部のマーケティング活動が実験的な要素を持つ一方で、サラウンドサウンド戦略とは、投資の一環として価格変動リスクの低い資産を運用するようなアプローチです。迷わず実行することで、実施期間の全体にわたって予測可能かつ安定したROIの達成が見込めます。

この記事では、サラウンドサウンド戦略の理論を詳しく説明しました。この戦略の実践方法の詳細については、ぜひ本連載の次回の記事をご覧ください。

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