この記事をお読みの方も、有料無料を問わず毎日さまざまなSaaS(Software as a Service)製品を利用されていることでしょう。

この背景には、SaaS市場の急速な成長と拡大があります。一方SaaS企業のビジネスリーダーやカスタマー サクセス マネージャー(CSM)は、新規顧客を獲得するためのさまざまな取り組みと戦略を理解する必要があります。この努力を怠れば、成長競争から脱落した数多くのSaaS企業と同じ轍を踏むことになります。

HubSpot自身がLTVを3倍以上も改善させた秘訣、SaaSビジネスでKPI化すべき10の指標

SaaS製品の顧客ライフサイクルは、顧客の獲得、信頼関係の構築、定着という3つの段階に分けることができます。SaaS製品は他の製品と異なり、1回の購入で終わらせてはいけません。製品を継続的に利用して価値を理解してもらい、翌月、翌年にも購入してもらうことが必要です。

製品の価値を証明するハードルと何度も向き合い続けることは苦しいものです。しかし、SaaS業界の収益性が非常に高いのは、この苦しさを各社が乗り越え続けているからでもあります。現在、業務の多くでSaaSを利用しているという企業は51%にのぼり、SaaSだけで業務を遂行している企業も38%に達しています。つまり成功するための課題は多くても、それに見合うだけのビジネスチャンスがあるのです。この記事では、SaaS製品における顧客ライフサイクルの各ステージと、それぞれのステージで成果を最大化する方法を説明します。

顧客ライフサイクル

顧客ライフサイクルとは、顧客が企業の情報を入手し、企業への信頼を深め、企業の製品を購入するまでのプロセスのことです。これを企業側から見ると、顧客を惹きつけ(Attract)、信頼関係を築き(Engage)、満足させる(Delight)というプロセスになります。具体的には、認識、コンバージョン、購入、利用促進、更新、紹介という流れです。

saas-customer-lifecycle-graphic-1

1. 認識

最初のステージでは、解決すべき課題を抱えていることを認識しインターネットによる調査を開始した顧客が、ブログ記事のような無料リソース、YouTube動画、ソーシャルメディアなどでその企業のソリューションやブランドに出会います。

2. コンバージョン

次のステージでは、企業のソリューションについてある程度把握した顧客が詳しい情報を得るための登録へと進み、無料リソース(eBook、ウェビナー、製品の無料試用版や無料版など)を入手します。顧客のニーズを的確に満たすオファーを提示してリードを育成し(リードナーチャリング)、購入の可能性を高めましょう。

このステージで大切なのは、製品の価値を即座に伝え、顧客の重要なマイルストーンの達成に製品がいかに役立つかを理解してもらうことです。導入支援と学習のための資料を用意して、製品のスムーズな導入を促します。

3. 購入

この段階で、営業チームは取引を成立させ、有料版の新規顧客を獲得しました。ここからは、製品の価値を継続的に提供、証明することが重要です。そのためには、専用の導入支援サービスを提供し、積極的なカスタマーサクセス管理を実施して、顧客のフィードバックを収集し、それらに対応します。

4. 利用促進

購入してもらったら終わりではありません。その製品を毎日、毎週利用し続けるアクティブユーザーへと顧客を育成する必要があるのです。ほとんどのSaaS製品は月単位のサブスクリプションとして販売されているため、不満を抱いたり有用性を実感できなかったりしすれば、すぐに解約して競合製品に乗り換えてしまいます。解約の多くは、顧客とのコミュニケーション不足や、有益な情報あるいはリソースの提供を怠ることが原因で発生します。注意するようにしましょう。

5. 更新

製品を利用して数カ月あるいは1年が経過した顧客は、製品を利用し続けるための更新が必要になります。更新期間を迎えるまでの間、顧客と密接なコミュニケーションを重ね、更新を拒む要因を確実に取り除いておくことが大切です。また、ロイヤルティープログラムのメンバー向け特典の内容をしっかりと伝え、顧客であり続けることのメリットを理解してもらいます。

6. 紹介

このステージでは、顧客がサブスクリプションを更新し、顧客ロイヤルティープログラムにも入会しています。顧客満足度も良好で、友人や同僚に製品を勧める「パワーユーザー」に成長しています。満足度の高い顧客は、口コミマーケティング、カスタマーレビューでの高評価、製品紹介へのコメント提供、導入事例への協力、アフィリエイトなどを通じて、SaaS製品の販売に大きく貢献してくれます。

顧客ライフサイクルは「ファネル」から「フライホイール」へ

HubSpotでは、顧客ライフサイクルの各ステージを視覚化、説明する手段として、これまで使ってきた「ファネル」から「フライホイール」への移行を決定し、推進しています。このモデルは、各ステージで構成される顧客ライフサイクル全体をはずみ車(フライホイール)の形で表したもので、各ステージへの投資を増やすにつれてフライホイールが加速するメカニズムが表現されています。フライホイール手法では、サイト訪問者、プロスペクト(潜在見込み客)、顧客すべてを「燃料」として活用することで、集客率、顧客満足度、顧客定着率、顧客ロイヤルティーの向上を達成していきます。

inbound-methodology-title-1

フライホイールを構成する顧客ライフサイクルのステージは以下のとおりです。

1. Attract(惹きつける)

このステージは、インバウンド手法に相当します。つまり、それぞれのバイヤーペルソナに合った学習用コンテンツを作成し、ブログやソーシャルメディアでシェアすることによってブランドを認識してもらい、自社サイトを訪れて製品やサービスの情報に触れてもらう流れを作ります。コンテンツを読んだ訪問者は、さらに有用なコンテンツを求めます。こうした訪問者の興味を満たすコンテンツやツールを用意し、閲覧の条件としてフォームに記入してもらうことでリードジェネレーションが完了します。

2. Engage(信頼関係を築く)

リードとのつながりがスタートしたら、各種コンテンツ、無料ツール、ウェビナー、トレーニングなどによるリードナーチャリングを行い、営業チームが動く価値のある見込み客に育て上げます。無料ツールの利用やデモへの申し込みといった行動は、購入準備完了のサインである可能性が大です。このような行動を示したリードが営業チームから連絡を受ければ、製品を購入し顧客が誕生する可能性はぐっと高くなります。

3. Delight(満足させる)

フライホイールは本格的に回転し始めるステージです。このステージでは、既存の顧客を絶え間なく魅了することによって満足度の向上、ロイヤルティーの向上、口コミの活性化を促し、「Attract」ステージを加速させ、新規顧客を呼び込みます。

カスタマーサポートは受動的に、カスタマーサクセスは積極的にという切り分けで、顧客が製品やサービスから最大の価値を引き出すことに重点を置きます。そうすれば、サブスクリプションの継続や再購入、新たな顧客の紹介や高評価レビューの投稿、友人や同僚への口コミが期待できます。口コミは、見込み客の製品選択に最も影響を及ぼす要素の1つです。

SaaS業界についてさらにご興味のある方は、ARPUの計算方法に関する記事もぜひお読みください。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。


 

New call-to-action

元記事発行日: 2020年4月21日、最終更新日: 2020年4月21日