皆さんは、既にパイプライン管理を導入し、月次の収益予測などを正確に立てる運用をされていますか?
インサイドセールスなどの手法に近年注目があつまっている背景などから、従来の属人的な営業手法から、プロセスを重視したパイプライン管理を導入する企業が増加しています。
今回は、営業パイプラインとは何か?という基本的な概念から、自社独自の営業パイプラインを構築する手法を実例を加えながらご紹介します。実践的なパイプライン管理導入のためのノウハウとして是非お役立てください!
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営業パイプラインとは?
営業パイプラインとは、営業プロセスのすべての段階を定義し、見込み顧客の具体的な行動をキッカケに、その営業プロセスが順に移動していく様子をビジュアル化させたものです。
企業によって(あるいは製品によって)営業プロセスが異なるため、営業パイプラインはその企業(または製品)の代表的なバイヤージャーニーを反映した独自のものになることが多いです。
パイプライン管理を実施する2つのメリット
- 「営業担当者」は、見込み顧客が営業プロセスのどの段階にいるかを視覚的に把握可能であるため、業務効率化や目標達成に向けたアクションプランを立てられる
- 「営業マネージャー」は、一定の期間内に成約に至る商談の数を把握し、月次収益予測を立てながら、各メンバーに対して適切な指導や指示を出す事ができる
なお、HubSpotが2023年2月に発表した「日本の営業に関する意識・実態調査2023」では、回答者全体の加重平均で「働く時間のうち22.37%を無駄だと感じる」という結果になりました。また、営業組織のマネジメントにおける課題では、モチベーション維持やメンタルヘルスのケアが大きな課題として上がっています。
こうした営業組織の課題を解決するためにも、営業パイプラインによる管理が有効です。
営業パイプラインと売上の予測の違い
営業パイプラインは売上の予測と混同されがちです。
営業パイプラインには、新規案件から成約間近のものまで、営業担当者が扱っているすべての商談が含まれるのに対し、売上の予測は一定の期間内に成約に至る確率が高い商談の数を推定したものです。
さらに、営業パイプラインと売上の予測では、目的も異なります。
営業パイプラインは、見込み顧客が営業プロセスのどの段階にいるかを把握し、次に取るべき行動を判断するために営業担当者が使用するものです。これに対して、売上の予測は、目標にどれだけ近付いているかを確認し、必要な準備について検討するために、営業担当者や営業部門のマネージャーが使用します。
売上目標を達成する見込みがない場合は、営業活動の強化が必要になります。反対に、現状のままだと、売上目標の150%に到達すると予測される場合は、今月の営業活動を抑えて、来月も今月と同様の成果を達成できるような準備を始めるような動きを取るかと思います。
営業パイプラインを構築するには
営業パイプラインを構築するための基本的な手順は次のとおりです。
- セールスサイクルのステージを定義
- 商談のうち、次のステージに進む件数はどの程度であることが多いかを特定
- 収益目標を達成するには各ステージに何件の商談が必要になるかを逆算
- 次のステージに進む商談に共通して見られる特徴を、ステージごとに細かく特定する。営業担当者の行動(フォローアップEメールの送信など)と見込み顧客の反応(デモの実施への同意など)の両面から検討
- 以上の数値や行動を基に、営業プロセスを新しく構築するか、既存のプロセスを改良
パイプラインの構築
営業パイプラインの構築にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?その答えは、製品や見込み顧客の性質や、マーケティング活動に利用するリソースによって異なります。
低価格のソリューションを販売するのであれば、Facebookに有料広告を掲載して、リードの獲得を開始できるようになるまでに、1日もあれば十分です。
高額な商品を販売する場合は、重要なコンタクトや顧客のリストが完成するまでに、数か月から1年かかる可能性もあります。
パイプライン構築の概要をご理解いただいたところで、個々の手順について詳しく見ていきましょう。
営業パイプラインのステージ
一般的な営業パイプライン(アポ獲得 → 訪問 → 提案 → 見積書送付 → 受注 | 失注など)を模倣すれば営業パイプラインのステージを手早く決めることができますが、自社に合わせたステージを定義することは、本質的な運用を実践する上では、必要不可欠です。
パイプラインのステージが見込み顧客のバイヤージャーニーと一致していなければ、営業プロセスの進捗管理と収益の予測を正確に行うことはできません。
多くの場合、顧客は次のようなプロセスを通過していきます。
- 認識:顧客が抱える課題点や解決の糸口があることを認知
- 検討:認識した課題点を定義し評価が必要な部分を明らかにして、想定される解決方法のメリット・デメリットを比較検討
- 決定:最終的な解決方法を決定し、導入に向けたプロセスを開始
以上のプロセスを図に表すと、バイヤージャーニーは次のように表現できます。
これを念頭に置きながら、営業パイプラインのステージを考えると、たとえば次のようになります。
- 接触:見込み顧客が自社と接触(経路は営業担当者から届いたEメールの開封、ウェビナーへの参加、コンテンツのダウンロードなど)
- 打ち合わせの約束:自社の製品・サービス説明のアポイントメント取得を了承
- 打ち合わせ終了:打ち合わせが終了し、次のステップに必要なことについて営業担当者へ共有
- ソリューションの提案:自社の製品・サービスを利用して、自社が抱える課題を解決することに興味も持つ
- 提案書の送付:見込み顧客が提案書や契約書を確認
上記のステージ設計のように、営業担当者のアクションに対してステージを設計するのではなく、あくまでも見込み顧客のアクションに対してステージを設計する事が重要です。
これは、パイプライン管理を導入した直後に起きがちな、営業担当者が各ステージを通過する事にフォーカスしてしまうため、最終的な売上実績と予測が大幅にズレてしまう現象を防ぐためです。そして、各ステージに必要な期間を、取引が成約に至った場合と至らなかった場合について、パイプライン全体を考慮しながら把握することも必要です。
たとえば、製品デモのステージにかかる時間は、平均的な見込み顧客の場合は2週間であるのに対し、最終的に購入に至る見込み顧客の場合は3週間であるといったことが考えられます。
このような指標を知っておくことで、営業担当者や営業部門のマネージャーは、成約の可能性が高い商談を予測しやすくなります。
また、ステージごとの通過率(またはコンバージョン率)を把握することも重要です。たとえば、見込み顧客が購入に至る確率は、デモステージでは75%、交渉ステージで90%になるというような場合が考えられます。
こうした比率をステージごとに掴んでおけば、月ごとや四半期ごとの収益を推定できるようになります。
営業パイプラインの理想的な大きさを算出する方法
ここまでの手順で、パイプラインの各ステージに必要な商談の数を逆算できるようになりました。まずは、月ごとや四半期ごとの収益目標を、取引の平均額で割ります。これが、1か月または1四半期に成約させなければならない取引の数に当たります。
次に、取引の目標件数をステージごとの通過率で割ります。たとえば、必要な成約件数が135で、交渉ステージで成約している取引の割合が90%であることが多い場合、1か月で交渉ステージに必要な商談は150件になります。
以上の計算をすべてのステージに対して行い、すべての目標値を算出したら、営業担当者の人数で割ります。
ここで、営業管理システムの開発と販売を手がけるLevelEleven社のCEO、Bob Marsh氏の事例をご紹介しましょう。たとえば、受注目標を達成するには、1年に2,000件の取引が必要だと仮定します。
- 取引2,000件÷12か月=毎月167件の取引
- 提案8,000件÷12か月=毎月667件の提案
- 打ち合わせ32,000回÷50週=毎週640回の打ち合わせ
- 電話64,000回÷250営業日=毎日256回の電話
チームの営業担当者が100人の場合、1人あたりの目標は次のようになります。
- 1か月の取引167件÷100人=毎月2件の取引
- 1か月の提案667件÷100人=毎月7件の提案
- 1週間の打ち合わせ640回÷100人=毎週7回の打ち合わせ
- 1日の電話256回÷100人=毎日3回の電話
以上の指標を使って、営業担当者は目標に対する自分の達成率を客観的に測定することができます。
ただし、ステージごとの通過率が担当者によって異なる点には注意してください。たとえば、新規案件の獲得は得意でないものの、製品デモから成約に至る割合が非常に大きい営業担当者の場合、初回の打ち合わせのノルマが同僚に比べて少なくても、売上目標を達成することができます。
営業パイプラインに関してよくある間違い
パイプラインの健全性を維持するうえで、次のような失敗がよく見られます。
1. パイプラインが縮小する
営業担当者の多くは新規案件の獲得が好きではないため、ある共通の罠に陥りがちです。その罠を、営業戦略のエキスパートであるColleen Francis氏は「セールストラップ」と呼んでいます。
たとえば、すでに数多くの商談が進んでおり、この四半期の目標達成は確実であるものの、残念ながら新規案件の獲得を怠っていたと仮定します。この場合、次の四半期には、パイプラインが空っぽになっているという問題に直面します。
このような事態を回避するには、営業パイプラインが常に安定し、拡大していくようにすることが必要だとFrancis氏はアドバイスしています。
交渉ステージや契約締結待ちステージに多数の取引があったとしても、製品デモステージの取引は少なく、要件定義ステージの取引はさらに少ない場合、新規案件の獲得に今すぐ取りかかるべきです。
本来、営業パイプラインの前半には、後半よりも多くの商談が含まれている必要があります。というのも、見込み顧客の数はステージを進むにつれて次第に減少していく一方、成約の可能性は次第に上昇していくものだからです。
たとえば、「リード獲得」ステージの見込み顧客の数が100で、これまで商談が成約に至った割合は5%だったとします。
これに対して、「製品デモ」ステージでは、見込み顧客の10でも、購入に至る可能性は50%になります。
2. リードを失う
標準的なフォローアッププロセスが確立されていないと、リードがファネルから離脱してしまいます。テーブルの上にお金を置いたままにしておくようなものです。リードのフォローアップに関して、タイミングや頻度、連絡手段などの仕組みをチームで作っておきましょう。
たとえば、次のように決めておくことが考えられます。
- インバウンドリードから連絡があった場合は、6時間以内に対応
- どのリードにも、1か月に10~12回の連絡を取り、連絡のタイミングは分散
- どのリードにも、Eメール、電話、ソーシャルメディアなど、さまざまな手段で連絡
- リードへの連絡には、毎回新しい情報や資料を提供
また、一貫したフォローアップ戦略があると、見込み顧客に見込みがないと判断するタイミングがわかるので、パイプラインの健全性を維持できます。最後の連絡を行った後に見込み顧客から反応がない場合は、パイプラインから削除する方がよいでしょう。
リード1人ひとりにタスクを割り当てるのも、リードの離脱を防ぐ1つの方法です。営業担当者が既存のタスクを完了させたら、その都度新しいタスクを商談に割り当てるように決めておけば、次に行うべき行動も明らかになります。
たとえば、「打ち合わせの議題を送る」、「3日後にもう一度電話をかける」、「2件のブログ記事にコメントを書き込む」などのタスクが挙げられます。
このようなフォローアップタスクを営業チーム全体で標準化し、タスクの進捗を管理していく事が重要です。
3. パイプラインの取引を放置したままにする
売上を正確に予測するには、パイプラインを定期的にクリーニングすることが大切です。
多くの場合、成約の見込みの予測で考慮されるのは、商談のステージであり、商談が開始されてからの期間ではありません。
たとえば、ある見込み顧客に24万円の取引の提案書を送ってから1か月が経過したとします。その後、電話やEメールで連絡しても相手からは何の反応もなく、この案件は成約しそうにありません。それにもかかわらず、「交渉」ステージの商談は成約率が90%なので、翌月の売上予測には、この案件が21万6千円分として集計されてしまいます。
これにより、売上予測が21.6万円外れることになります。そして、見込みのない取引が放置されるほど、予測と実際の数値の差が広がってしまいます。
営業パイプラインの健全性を維持するには
- 営業パイプラインにいる期間がセールスサイクルの平均よりも長い見込み顧客を洗い出します。パイプラインから取り除くかどうかはご自身の裁量次第です。
たとえば、取引に関する法的事項のチェックが思いがけず複雑で、そのチェックを通すために同僚と協力しているときに、その商談を諦める気にはならないでしょう。通常より時間がかかっているとしても、取引が成約に至る可能性は十分にあるからです。
- 見込み顧客との商談を完全に諦める前に、営業のアプローチを中止する旨のEメールを送ります。このようなEメールに対する反応は、まだ興味があるか、もう興味がないか、まったく返信がないかの3種類しかありません。
最後の2つの場合は、パイプラインから取引を削除しましょう。削除したコンタクトは、CRMで新しいリストを作り、「1年後に電話をかける」などの項目として登録しておくこともできます。
- データを正確かつ最新の状態に保ちます。場合によっては、営業パイプラインの中で商談を逆流させなければならないこともあります。
たとえば、ターゲットとなる顧客の中で、キーパーソンとなる人物を複数名特定したものの、後になってそのうち2人が退職してしまったような場合、新しい意思決定者を特定できるまでは、この取引を選別ステージに戻しておく必要があります。
また、成約予定日にも注意してください。自分の勘に照らして、予定日が適切かどうか確かめましょう。たとえば、見込み顧客が2週間以内に最終決定をすると言っていても、チームの合意形成にかかる時間をいつも短く見積もっているようなら、成約予定日にも余裕を持たせた方がよいかもしれません。
さらに、商談の金額をもう一度確認しましょう。金額が大きすぎれば売上予測が過度に甘くなり、小さすぎれば実際よりも目標金額まで遠く感じてしまいます。
- 営業パイプラインを定期的に見直して、返事を一切してこなくなった見込み顧客や、1つのステージに留まっている期間が通常より長い取引、先に進められなくなった商談などを探します。
つい「万一に備えて」と考えてパイプラインに残しておきたくなりがちですが、取り除いてしまいましょう。売上予測の精度が上がり、計画を立てやすくなって、営業部門のマネージャーが喜ぶだけでなく、本当に成約の可能性が高い取引に集中しやすくなります。この作業は、セールスサイクルの長さに応じて1週間おき、または1か月おきに実施してください。
また、これは営業マネージャーが収益予測を管理したいという理由で指示を出すのではなく、営業担当者個人が自身の予測管理のためにパイプラインを整理する必要がある、という意識付けと文化醸成が大事です。
営業パイプラインの健全性を評価するための指標
営業パイプラインの健全性を評価し、そこからチームや部署、ビジネス全体の健全性も判断するには、以下の指標を利用します。
- パイプライン内にある取引の数:現在見込み顧客に働きかけており、成約の見込みのある商談の数
- 取引毎の平均受注金額:契約金額の平均値
- パイプライン毎の売上予測:パイプライン内にある、成約の見込みのあるすべての商談の合計金額(取引毎の金額×各ステージにおける成約率の合計値)
- 受注までの平均期間:取引がパイプラインに入ってから成約に至るまでの平均時間
営業担当者が知識を増やし、マーケティングチームが自社にとって最適な見込み顧客を惹き付けるにはどのチャネルを利用すればよいかを知り、業界内で自社の名前が知られるようになっていくと、セールスサイクルは短くなっていくものです。
ビジネスの成長のためには、パイプラインの価値の増大が欠かせません。そのためには、取引の平均金額や取引の数が増えたり、コンバージョン率が上昇したりすることが必要です。
この点を踏まえてパイプラインのスピードを測定することで、パイプラインの健全性を判断できます。
営業パイプラインのスピード
営業パイプラインのスピードとは、リードが営業パイプラインを進んでいくスピードのこと。以下の公式で算出する。
パイプライン内の取引の数×全体の成約率×取引の平均金額÷セールスサイクルの長さ(日)
たとえば、営業パイプラインに50件の商談があり、平均成約率は40%、取引の平均金額は120万円で、初めての接触から契約の締結まで営業プロセスが通常70日間かかるとします。この場合、パイプラインのスピードは次のとおりです。
パイプラインのスピード=50×0.4×1,200,000÷70=342,857
つまり、営業パイプラインを毎日342,857円分の価値が通過しているということです。言うまでもありませんが、この金額が大きいほど望ましい状態にあります。
パイプラインのスピードを向上させるための手段は、主に以下の4つがあります。当然ながら、上の公式の4つの因数にそれぞれ対応しています。
- 商談数の合計:この数を大きくするには、新規案件の獲得に集中的に取り組みます。この数値が減少している場合、リード獲得戦略に何らかの問題がある恐れがあります。
- 取引の成約率:この指標を改善するには、成約の見込みの判断基準を厳しくし、営業チームのトレーニングや支援を強化します。
- 取引の金額:アップセルやクロスセルを達成するための方法や、規模の大きい顧客をターゲットにする方法を営業担当者に指導して、成約する取引の金額が大きくなるようにします。
- セールスサイクル:見込み顧客が次のステージに進むうえで鍵となる手順を明らかにし、チームのメンバー全員がその手順を守るようにします。すぐには信じられないかもしれませんが、商談を急いで進めてしまうと、多くの場合セールスサイクルの遅れにつながります。選別や要件定義、プレゼンテーションのカスタマイズなど、おろそかにした手順をやり直すためにパイプラインを逆流せざるを得なくなります。あるいは、そのチャンス自体が与えられないかもしれません。
パイプラインのスピードに加えて、各ステージのコンバージョン率にも注目しましょう。これにより、見込み顧客がセールスファネルから離脱しているタイミングがわかります。
たとえば、見込み顧客の60%が、セールス プレゼンテーション ステージから提案ステージへ進んでいる場合、残りの40%が離脱した原因は何でしょうか?ステージが進めば見込み顧客の数が減っていくのは自然なこととはいえ、他に大きな問題がないか調査するとよいでしょう。営業担当者が製品の価値を伝えきれていなかったり、ニーズの分析が不足していて見込み顧客の抱える課題につながるプレゼンテーションができていなかったりするかもしれません。
これらの指標について定期的なチェックも調査もしていなければ、急を要する問題が発生してもすぐに発見できなくなる恐れがあります。
営業パイプラインの管理
営業パイプラインの管理とは、現在パイプラインにある商談から収益を推定すること。これにより、営業担当者は見込み顧客の整理と追跡を行い、毎月の目標、四半期ごとの目標、および年間の目標に対する取引の進捗を確認することができる。
収益の見込みを計算するには、次のデータが必要です。
- 営業担当者が積極的に働きかけている商談の件数
- 各商談のステージ
- あるステージから次のステージに進む商談の平均的な件数
- 取引の平均金額
- セールスサイクルの平均的の長さ
以上のデータを把握していない場合、または市場投入戦略が確定しておらず、数値が常に変動している場合は、入手できる範囲の情報を基に推測しましょう。たとえば、高価格市場への参入直後の場合、予備調査や初期の売上を踏まえつつ、類似製品を販売している他社から情報を集めることで、新しいセールスサイクルが5か月になると予測できる場合があります。
もちろん、過去のデータが多いほど、予測の精度も向上します。
CRMを活用すれば、これらの指標を自動で計算し、パイプライン内の状態をさらに可視化できるので便利です。
パイプラインの可視化
パイプラインを可視化することで、営業担当者はある時点におけるパイプラインの成果を把握することができ、そのための機能は多くの場合CRMに含まれています。営業担当者は、この機能を使用して、全体的な目標に対するパイプラインの状況を判断し、その判断を基にパイプライン内の商談の数や推定予算を調整し、売上予測の精度を向上させることができます。
チーム全体の現在の成績を前月、前四半期、前年と比較するだけでなく、各担当者の営業成績を分析することもできます。
たとえば、最初の接触から選別への転換率は優れていても、成約率が悪い担当者に対しては、交渉テクニックについての指導が必要でしょう。一方、新規案件の獲得を効果的に進められず苦戦している担当者には、潜在顧客を特定し、連絡を取るためのサポートを行いましょう。
営業パイプラインの見直しを実施するには
高い成果を生み出しているチームでは、営業パイプラインの見直しを通じて、組織全体の連携を維持しています。
営業パイプラインの見直しと売上予測の見直しの違い
チームの成果向上のためには、売上予測と営業パイプラインのどちらについても見直しが欠かせません。ただし、1回の打ち合わせで両方同時に実施することはないようにしましょう。
売上予測の見直しでは、一定の期間内に成約する見込みのある取引に対象を絞り込んで実施します。その目的は、チームが売上目標を達成できるかどうかをマネージャーが予測することにあります。
これに対して、営業パイプラインの見直しは、営業プロセスを通過していく取引の流れをできるだけスムーズにすることを目的としており、新しい商談に注目すると効果的です。
営業チームのマネージャーは営業プロセスの後半になってから商談に割り込もうとしがちですが、取引の結果に影響を与えるには、その段階ですでに手遅れであることが少なくありません。取引を成約させたいと本当に考えているのであれば、商談がスタートしたばかりの段階で担当者の戦略策定を支援する方が望ましいでしょう。
営業パイプラインの見直しの手順
見直しを実施するペースは、営業チームの規模や営業プロセスの長さ、新しい商談が担当者のパイプラインに加わるスピードに応じて1週間おき、1か月おき、2か月おきなどのように決めてください。
1回の見直しは30~60分程度で実施します。特に重要な取引に注目したり、営業プロセスの初期段階にある商談をすべて確認したりするなど、ご自身のチームやその構造に合う方法を探しましょう。
- 営業パイプラインの見直しを行う前に、CRMを使って営業担当者の活動状況を分析します。ミーティング自体が止まってしまって貴重な時間を無駄にすることがないように、事前に準備をしておくことが重要です。
- 取引ごとの概要を担当者から簡単に説明してもらいます。肯定的なフィードバックを行い(特に以前のアドバイスを活用している場合)、その後から詳しい見直しに入ります。後ほど紹介する質問項目を適宜参照してください。
- 取引ごとのアクションプランを作成し、次に取り組むべきことを確認します。これをCRMに追加しておけば、責任の所在が明確になり、やり残しを防ぐことができます。
営業パイプラインの見直しで役に立つ質問項目
営業パイプラインの見直しでは、営業チームのマネージャーから担当者に次のような質問をすると効果的です。
- 各取引で見込み顧客の意思決定スピードを上げるにはどうすればよいですか?
- 今直面しているリスクとその解消策はどのようなものですか?
- 競合相手はどこですか? その相手よりも優位に立つにはどうすればよいですか?
- これまでにどのような懸念事項が出てきましたたか? また、取引を成約に持ち込むには、その懸念事項を戦略にどう組み込めばよいですか?
- 商談が行き詰まっている原因は何ですか? 進捗を促すにはどうすればよいですか?
このように、営業パイプラインの見直しは、営業マネージャーが独断で実施するのではなく、メンバー全員含め、チーム一丸となって取り組む事が、全体の最適化につながるでしょう。
パイプライン管理で営業活動の見える化を実施しよう
パイプライン管理を実践する上での手法や注意すべき点などは、少しイメージしていただけましたでしょうか?
営業全体の管理の話となると、どうしても営業部門の管理者が一人で考えてしまいがちです。しかし、ご覧頂いたように、自社の製品/サービスによって、独自の営業パイプライン構築が必要となります。また、最初に作成した営業パイプラインが売上実績と予測の精度が最も高いという結果にはつながりません。
その改善を繰り返すためには、営業部門の管理者と担当者が共に共通の定量的なゴールを持った上で、クラウドサービス型のCRMやSFAにデータを蓄積し、定期的な見直しを話合っていく事が必要不可欠です。
HubSpotが2023年2月に発表した営業活動に関する調査結果においては、CRMのシステムを導入している営業組織は全体の36.1%に留まっています。
CRMやSFAはパイプライン管理を行う上で非常に重要なツールであり、顧客管理や営業支援の観点でも多くのメリットがあります。こうしたシステムを積極的に取り入れることで、競合に勝てる営業組織の構築に一歩つながるでしょう。
その他の調査結果については、日本の営業に関する意識・実態調査2023をご覧ください。
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