営業担当者であれば、新規顧客の開拓と既存顧客との関係構築、どちらに注力するべきか悩むタイミングが一度はあると思います。新規獲得はもちろんですが、既存顧客との関係構築はより重視するべきです。今回は、なぜ既存顧客の維持が重要なのか。既存顧客の維持に欠かせない「顧客ロイヤリティ」を向上させる手法について解説します。

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既存顧客の定義を確認しよう

既存顧客の定義を確認しよう

既存顧客とは、文字通り「既に取引がある顧客」を意味します。

既存顧客の対義語は新規顧客で、企業の顧客は基本的にこの2つに分類できます。

売上を伸ばしていくためには、新規顧客を開拓するか、既存顧客に継続して契約してもらう、もしくは、さらに高単価な商品やサービスを契約してもらう必要があります。
 

既存顧客と関係性を構築する意義

既存顧客と関係性を構築する意義

一般的に、企業の売上を構成する要素は

  • 新規顧客からの売上
  • 既存顧客からの売上

の2種類に分類されます。 売上拡大を進めるにあたり、新規顧客の獲得に注力する必要がありますが、一方で安定した成長をするためには既存顧客の維持も不可欠です。
 

既存顧客維持が将来的な収益に大きな影響を与える

サブスクリプション型のビジネスは、新規開拓にかかった顧客獲得コストを長期間かけて回収していくビジネスモデルです。

つまり、一人の顧客が生涯にわたってもたらす売上(顧客LTV)が顧客獲得コストを下回ってしまうと、新規顧客を獲得すればするほど赤字が増えていってしまうことを意味します。

サブスクリプションビジネスにおいては、この顧客LTVを顧客一人あたりの月次平均収益と解約率から算出できます。式にすると以下のようになります。

顧客LTV=(月次平均収益(ARPU))/解約率

解約率が分母であるため、仮に解約率が1%から2%に上がるだけで、顧客LTVは半減してしまうことがわかります。

このことからも、特にサブスクリプションビジネスにおいては「いかに既存顧客を維持し、解約率を下げることが重要であるか」がわかるでしょう。

比較的安定した収益が魅力的なサブスクリプションビジネスですが、既存顧客の維持ができなくては、そもそものビジネスモデルが成り立たなくなってしまうのです。
 

新規顧客獲得コスト>既存顧客維持コストである

既存顧客維持が極めて重要である理由の1つに、新規顧客を開拓するよりも、既存顧客に継続して購買してもらうほうがコストが低いことが挙げられます。

「顧客獲得費用1:5の法則」という法則があるように、広告費や販促費といった新規顧客の獲得に必要なコストは、既存顧客の維持に比べると5倍かかるといわれています。

新規顧客開拓のためには、見込み顧客を獲得し、テレアポ等で商談にこぎつけ、そして営業担当者が商品やサービスを説明する、といった一連の工程が必要です。

一方で既存顧客であれば、既に自社との関係が構築されていますし、商品やサービスの理解度も高いでしょう。再度購入を促すようなメールを送信したり、既存顧客向けのお得なキャンペーンを実施したりすることで、再び購買してくれる可能性があります。

既存顧客との関係を維持するためには?

既存顧客との関係を維持するためには?

スイッチングコストが低く、市場に代替可能な競合が存在する商品やサービスは、常に既存顧客の流出のおそれがあります。

そのような環境下で既存顧客との関係維持を図るには、「顧客ロイヤリティを向上させる」「スイッチングコストを高くする」といったアプローチが有効です。
 

1. 顧客ロイヤリティを向上させる

既存顧客との関係を維持していく際に最も意識すべきことは、顧客ロイヤリティを向上させることです。

顧客ロイヤリティとは、顧客が企業やブランド・商品に対して感じている信頼や愛着のことを表しています。

⇒顧客ロイヤリティとは?5分でわかる総論と具体的な改善手順まとめ

顧客ロイヤリティを高めるためには、まず顧客体験を損ない減点されないようにすることが不可欠です。

例えば、丁寧なオンボーディングや、インシデントに対しての適切かつ真摯な対応などで、顧客に商品やサービスの価値を実感してもらう必要があります。

目先の売上に誘惑されて、しつこいアップセルやクロスセルの勧誘をしたり、「一度売ったら後は放置」というような状態では、顧客ロイヤリティは下がってしまうでしょう。

顧客が、想定していた価値を体感できるようになったら、次はさらなる付加価値を提供します。

例えば、「ユーザーコミュニティを作る」などです。ユーザーコミュニティを作ることで、顧客同士の新たな人脈形成に繋がるでしょう。コミュニティの参加者である顧客同士の結びつきができることで、企業や商品に対しての会話が生まれるようになり、結果として企業や商品そのものに愛着を持ってもらえるようになります。

このように、付加価値を提供し顧客の期待値を上回るような仕組み作りをすることで、顧客の商品やサービスに対するロイヤリティは次第に高まっていきます。
 

2. 顧客企業のオペレーションに入り込む

こちらは、スイッチングコストを上げることで、顧客が解約するハードルを上げる方法です。

例えば、会計ソフトを販売している会社の場合、「顧客企業の会計オペレーションをソフトに適した方法にシフトさせる」というような例が挙げられます。

顧客企業のオペレーションに入り込んでしまえば、顧客がソフトを解約しようとした際にはオペレーションを丸ごと変更させなくてはなりません。その結果、別のサービスに切り替えようにも1からオペレーションを設計し、浸透させる必要があるため、なかなか解約に踏み切れないということになります。

ただし、この方法は顧客ビジネスに精通した営業担当者の存在、また、そもそもオペレーションに入り込むことを前提としたプロダクト設計無くしては成り立ちません。

さらに、この方法で顧客を維持できたとしても、本質的に顧客と良好な関係を築けているとは限りません。

ですので、まずは顧客ロイヤリティを向上させる施策に注力するのが先決といえます。
 

既存顧客のロイヤリティを向上させるポイント

既存顧客のロイヤリティを向上させるポイント

先述の通り、既存顧客との関係を維持するためには、ロイヤリティを向上させることが必要です。

そして、顧客ロイヤリティ向上には、顧客が商品やサービスの価値を感じている状態に、いかにスムーズに摩擦を生じることなく導けるかが重要です。

この章では、顧客ロイヤリティを向上させ、顧客と良好な関係を築くためのポイントを解説します。
 

1. 顧客データベースの構築

顧客ロイヤリティを向上させるためには、大前提として顧客がどのようなビジネスをしていて、どんな課題を感じているのかを知っておく必要があります。そして、その情報を関連部署のメンバーが共有できる状態にしておきましょう。

共有ができていないと、担当者が変わるたびに顧客は毎度同じ質問を受けることになり、顧客体験が損なわれてしまいます。

顧客情報を全社的に共有するために、CRMなどで顧客データベースを構築しましょう。
 

2. 自発的・定期的なコンタクト

企業から顧客に対して、自発的かつ定期的にコンタクトを取っていくことも、顧客ロイヤリティを向上させるためには重要です。

顧客から不満の声が上がってこないからといって、商品やサービスに満足しているとは限りません。顧客のサービスの使用頻度、商品の購入頻度が低下している場合、何らかの不満を抱えているサインです。

顧客が無言で解約してしまう前に企業側からコンタクトを取ることで、潜在的な不満解決の糸口になり、顧客ロイヤリティの向上にもつながるでしょう。
 

3. 双方向のコミュニケーション

潜在的な不満を解消するために企業からアプローチすることも重要ですが、理想としてはやはり双方向でのコミュニケーションがとれるようにしたいものです。

顧客からの質問や意見を汲み取るコミュニティを導入するのも1つのポイントです。

例えば、HubSpotではソフトに関する質問だけでなく、インバウンドマーケティング全般に関する質問や改善の提案ができるコミュニティを設置しています。

このコミュニティにより、顧客は疑問や不安点を解消できるだけでなく、自分の要望に沿った機能改善の提案をできるようになっています。
 

4. 一人ひとりに最適化されたマーケティング

企業側からのアプローチは顧客維持のために重要な役割を担います。一方で、自分とは関係のないメッセージを度々送られてきては、顧客は煩わしさを感じるでしょう。

大勢に一斉送信されたメッセージよりも、自分に向けてパーソナライズされたメッセージのほうが心象を良くするのも事実です。

テンプレートメッセージの一斉送信は、たしかに手間がかからず手軽です。しかし、顧客ロイヤリティの向上という観点では、少し時間をかけて顧客一人ひとりの状態に合わせてパーソナライズしたメッセージを送るほうが、長期的にみると効果的なのです。
 

既存顧客からの売上拡大

既存顧客からの売上拡大

既存顧客を維持できれば定期的な売上を見込めるようになります。しかし、さらなる売上の拡大を目指すためには、既存顧客あたりの単価を上げる施策が欠かせません。

既存顧客からの売上拡大を目指す「アップセル」「クロスセル」が、ビジネスの成長の鍵を握ります。
 

1. アップセル

アップセルとは、既に契約してもらっているプランよりも高単価のプランを契約してもらうことです。

この、アップセルが重要視される背景には、新規顧客開拓するより効率的に売上をあげやすいからです。実際に、Pacific Crest社の調査によると、「アップセルで1ドルの収益を上げるためにかかるコストは、新規顧客から1ドルの収益を得るためのコストのわずか24%しかかからない」という調査結果が報告されています。

2016 Pacific Crest Private SaaS Company Survey Results | Pacific Crest)

もちろん、ただ高いプランを売りつけるだけでは顧客体験を損ねてしまいます。

より高価なプランを契約してもらうことが、顧客の利益に繋がるのかきちんと確認する必要があります。

ですので、顧客が既にサービスや商品の価値を理解しており、さらに上位の機能やプランに興味を持っているタイミングでアプローチをしましょう。

2. クロスセル

クロスセルとは、既存顧客に対して別の商品やサービスを契約してもらうことです。

わかりやすい例を挙げると、Amazonの「よく一緒に購入されている商品」もクロスセルに該当します。

自社で複数の商品やサービスを提供している場合、顧客のニーズに合わせてクロスセルを狙っていきます。クロスセルであっても、既に顧客との間に信頼関係が構築ができている場合、新規顧客を開拓するより容易に他のサービスも契約してもらえるでしょう。
 

既存顧客と関係構築するうえで注意したいポイント

既存顧客と関係構築するうえで注意したいポイント

ここまで、既存顧客の維持やそこからのアップセル、クロスセルが重要だということをお伝えしました。しかし、既存顧客との関係構築の際には、いくつかの注意点があるのも事実です。
 

1.既存顧客の維持のコストとのバランスに注意する

既存顧客の維持の方が一般的にコストが低い傾向がありますが、例外的に維持コストの高い顧客も存在します。

その顧客の維持のためにコストをかけ過ぎると、会社として利益を上げられないケースもあるため、注意が必要です。

そのようなケースでは、営業担当者がノルマ達成のために、顧客の理解度や適性にかかわらずクロージングをかけてしまっている可能性があります。そして、カスタマーサクセスがフォローアップのために疲弊してしまっているのです。

既存顧客維持は重要ですが、そのコストと利益のバランスを鑑みなくてはなりません。もし、顧客維持のためにコストがかかり過ぎてしまっている場合、時には「その顧客セグメントをクロージングしない」という選択も求められます。
 

2. クロスセルやアップセルが押し売りにならないように注意する

既存顧客だからといって、クロスセルやアップセルを無理に進めようとしても、成功しないばかりか顧客体験を損ね、顧客ロイヤリティの低下に繋がってしまいます。

クロスセルやアップセルを狙う際には、「顧客にとって必要なものであるか」、そして「適切なタイミングであるか」に注意しましょう。

それを見極めるためにも、顧客データをしっかりと管理し部門間で共有する必要があります。
 

《結論》顧客との関係構築は、部門横断で行おう

《結論》顧客との関係構築は、部門横断で行おう

既存顧客を維持し、既存顧客からの収益を拡大させることは、一般的に新規顧客獲得以上に効率がよく、ビジネスの成長にはか欠かせません。

既存顧客を維持するためには、まず既存顧客のロイヤリティを高めることが重要です。

なぜなら、ロイヤリティの高い顧客は長期的にサービスを愛用してくれるだけでなく、そこからのアップセルやクロスセルが見込めるからです。

一方で、顧客セグメントによってはどうしても「解約率が下がらない」、「カスタマーサクセスのコストが高くなってしまう」といった場合があります。

その場合は、本来顧客にするべきではなかった不適切な顧客セグメントに対して営業をかけてしまっている可能性があります。

営業とカスタマーサクセス、そしてマーケティングの全ての部署が協調して、全体最適になるよう営業戦略を修正していくことが重要です。

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元記事発行日: 2020年11月02日、最終更新日: 2021年2月19日

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