売上目標は、事業年度が始まる前に設定するのが一般的です。しかし、目標を立ててみたものの、達成するのが難しいとお悩みの管理職の方も多いのではないでしょうか。
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売上目標を達成するには、各チームメンバーに目標を「自分ごと」として捉えてもらうことが不可欠です。そのためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
本記事では、適切な売上目標を設定する方法や誤った売上目標を設定してしまう要因などを詳しく解説します。営業担当者のモチベーションが高まるような目標を設定できれば、自ずと結果もついてくるでしょう。
売上目標とは
まずは、売上目標の定義や目標設定の効果といった基本的な内容を確認しましょう。
売上目標の概要
売上目標とは、一定期間内に企業が達成しようとする売上の具体的な数値目標です。企業の経営戦略に基づいて、具体的な金額や成約数など、明確かつ測定可能な形で設定しましょう。
売上目標の設定は、事業年度で行われ、そこから上半期や下半期、四半期のように細分化していくのが一般的です。
例えば、4月1日から翌年の3月31日までの1年間で売上目標を設定した場合、4月から9月が上半期、10月から翌年3月が下半期となります。四半期の場合は、4月から6月が第一四半期、7月から9月が第二四半期、10月から12月が第三四半期、翌年1月から3月が第四四半期となります。
適切な目標設定が生む2つの効果
売上目標を設定する効果は、主に次の2つがあります。
- 営業メンバーのモチベーション維持・向上
- 営業の質の改善
適切な売上目標の設定は、営業メンバーのモチベーションの維持・向上に寄与します。2022年のHubSpotの調査で、多くの企業がマネジメントの課題として従業員のモチベーション維持をあげていることがわかりました。
また、2023年2月発表の「日本の営業に関する意識・実態調査2023」でも、同様の課題が指摘されています。
営業メンバーが達成可能な目標を持つことで、努力すれば達成できるという自信が芽生え、意欲的に取り組めるでしょう。しかし、目標設定は、目標設定が高すぎると達成が困難だと感じ、モチベーションの低下を招きかねません。逆に、目標が低すぎても挑戦意欲が湧かず、成長を感じられなくなるのでバランスを取ることが重要です。
無理な目標達成のために強引な営業活動を行うと、顧客からの信頼を失うリスクもあります。顧客への価値提供と良好な関係構築を最優先して、目標達成と両立する方法を考えると良いでしょう。
さらに、適切な目標が設定できれば、売上目標から逆算して営業計画に落とし込めます。半期、四半期、月次と細分化していくと、目標達成までの道のりが明確になり、やるべき行動が具体的になります。目標を達成するために必要な行動を起こせるようになり、営業の質が高まるでしょう。
売上目標の設定を誤ってしまう原因
ここでは、適切な売上目標を設定できない主な原因を2つ紹介します。
- 実態からかけ離れたトップダウンの目標になっている
- 現状の営業実績の要因が把握できていない
それぞれ見ていきましょう。
実態からかけ離れたトップダウンの目標になっている
トップダウンとは、組織の上層部が意思決定を行い、それを現場に指示する方法です。役員や経営層の希望的な数値がそのまま反映されるため、現実の状況と乖離した目標になりがちです。
さらに、トップダウンでの意思決定は、現場の意見を聞かずに進められるため、現場の従業員は「やらされている」という意識が強くなります。その結果、モチベーションが低下するのです。
この問題を解決するには、現場の意見を聞く機会を設けることが重要です。現場ならではの視点や経営層が見落としているアイデアが出てくることもあります。現場の意見を取り入れることで、従業員が目標を「自分ごと」として捉えられるようになり、モチベーションも向上するでしょう。
トップダウンの目標をそのまま設定するのではなく、現場の意見も取り入れ、実現可能な現実に即した目標を設定することが大切です。
過去の営業実績の要因が把握できていない
営業目標は、一般的にこれまでの営業実績をもとにして設定します。しかし、「前年の売上が良かったから今年はさらに上を目指す」といった単純な話ではありません。
例えば、前年の売上が良かったのは、気候の変化などの例外的な需要の増加かもしれません。その年だけの市場の急激な需要の増加を考慮せずに今年度の目標を設定すると、まったく達成できる見込みのない目標になる可能性があります。
適切な目標設定をするためには、過去の実績の要因を詳細に分析し、恒常的に影響を与える要因と、一時的な要因を区別することが重要です。営業実績の要因が明確になれば、より現実的で達成可能な売上目標を設定できます。
適切な売上目標を設定するためのプロセス・ポイント
ここでは、売上目標の立て方のステップとポイントを紹介します。
- 事業計画上、求められている利益を確認する
- 売上予測を立てる
- 売上予測と売上目標の差を埋めるアクションプランを考える
- 妥当性を検証した売上目標を現場とすり合わせる
1. 事業計画上、求められている利益を確認する
新商品の開発や既存商品のリニューアルなど、事業計画で注力するポイントは毎年変化します。そのため、売上目標を立てる際は、経営層から出てくる事業計画を確認しましょう。来期の動きを踏まえたうえで求められる利益を確認し、そこから最低限の売上目標を逆算していきます。
最低限の売上目標が把握できたら、そこに前年比から何%増加させるか、あるいはこれくらいは達成したいという期待値を上乗せし、売上目標を立てます。
2. 売上予測を立てる
次に、過去の売上データや既存顧客から予測される売上見込みについて、可能な限り詳細に予測を立てます。このとき、現場の担当者に担当エリアの現状や売上見込みなどをヒアリングすると、より現実的な予測が可能になります。
売上予測を立てたら、先に立てた売上目標と比較して差分を可視化しましょう。売上目標は期待値を上乗せした目標なのに対して、売上予測は達成が見込める数値です。そのため、通常は売上予測よりも売上目標の方が大きくなります。
仮に売上予測の方が大きかったり、差分がほとんどなかったりするときは、目標が低すぎる可能性があります。その場合は、売上目標を見直してみましょう。逆に、売上予測と売上目標に差がありすぎる場合は、経営層とのすり合わせが必要です。
HubSpotのSales Hubには、AIを活用した売上予測の精度向上を図る機能があります。過去データをもとに予測の正確性を検証できるため、営業担当者の立てた目標の適切さを検証するためのサポート機能として役立ちます。
3. 売上予測と売上目標の差を埋めるアクションプランを考える
売上予測と売上目標の差が明確になったら、それを埋める方法を考えます。例えば、売上予測が1億円で売上目標が1.5億円だった場合、5,000万円の差を埋めるための施策が必要になります。
営業活動の一般的な流れは、コンタクト→商談→受注です。どのステップに課題があるのかを明確にすると目標達成に近づきやすくなるでしょう。
営業分析をして、現状のアプローチ件数や転換率を把握できれば、売上予測と売上目標の差を埋めるためにどれくらいアプローチ件数を増やす必要があるのか、どれくらい転換率を上げれば良いのかなどを把握できます。
4. 妥当性を検証した売上目標を現場とすり合わせる
最後に、売上予測と売上目標の差を埋めるためのアクションプランが実現可能か、見通しは甘くないかなどについて、現場の声を聞きましょう。実際に目標達成に向けて行動する営業メンバーが達成のイメージを持てないとモチベーションが低下し、最初から目標達成を諦めてしまうことにもなりかねません。
売上目標を現場での個人のタスクに落とし込み、達成できる可能性はどれくらいなのか、目標達成までのプロセスをイメージできるかなどをすり合わせましょう。
上から一方的に目標を押し付けるのではなく、営業メンバーの意見も取り入れ、一緒に売上目標やアクションプランを見直していくことが大切です。営業メンバーが納得できる売上目標であればモチベーションも高まり、目標達成により近づけるでしょう。
売上目標を達成するためのポイント
ここでは、設定した売上目標を達成するためのポイントを4つ解説します。
- タスクを明確にする
- ノウハウや成功事例を共有する
- 他部署と連携をとる
- PDCAを回す
タスクを明確にする
売上目標だけでは、具体的に個人がどのように行動すべきかわかりづらいため、売上目標を達成するためには、営業メンバー個人のタスクを明確にすることが必要です。
売上目標を、1日の訪問件数やアポイントの数といった、個人のタスクレベルに落とし込むことで、すべきことが明確になります。各メンバーが自分の役割を理解しやすく、目標達成につながるでしょう。
ノウハウや成功事例を共有する
成果が出ている営業ノウハウや事例をチーム内で共有すると、ほかのメンバーもその戦略やアプローチを取り入れることが可能です。
また、部門間のリアルタイムでの情報共有も目標達成に役立つでしょう。営業メンバー同士の横のつながりを強化することでノウハウを共有し合う文化が生まれます。
他部署と連携をとる
売上目標を達成するためには、他部署との連携も重要です。特に新規顧客の創出においては、マーケティング部門との協力が欠かせません。マーケティング部門が持っている顧客データや市場分析の情報を活用することで、見込み客へのアプローチが効率的に行えるためです。
また、売上目標を共通の目標として、マーケティングキャンペーンやプロモーションを営業活動と一気通貫で行えば、営業部門とマーケティング部門の活動成果を最大化できるでしょう。
CRM(顧客関係管理)ツールを活用すると、部門を越えてリアルタイムの顧客情報を共有できます。HubSpotのCRMは無料で使用できるプランもあるので、興味のある方はぜひお試しください。
PDCAを回す
PDCAサイクルを回すことも、売上目標を達成するポイントとなります。目標達成に向けた計画を実行したら、必ず振り返りを行いましょう。
実行結果を評価し、必要に応じて改善策を講じます。評価の際に問題や課題が見つかったら、改めて実行方法を考えましょう。
このサイクルを継続的に回すことで、営業活動の効果を最大化し、目標達成に向けた取り組みを改善できます。期の途中であっても、市場や主要な顧客に大きな変化があった場合は柔軟に戦略を修正することが重要です。
売上目標を適切に設定して、営業の効果を最大化しよう
適切な売上目標の設定は、営業担当者のモチベーション維持・向上につながります。営業担当者のパフォーマンスが部門の結果に直結するため、トップダウンの目標ではなく、現場ともすり合わせて現実的な目標を設定しましょう。
また、目標設定後は、個人のタスクを具体的にすることも大切です。PDCAサイクルを回して継続的に改善を図ることで、営業活動の効果を最大化しましょう。