📋 この記事の要点
- CTIは電話業務を効率化する技術、CRMは顧客との関係を構築・管理する仕組みであり、両者の役割は全く異なる
- 通話そのものが負担ならCTI、情報の属人化が課題ならCRMを優先して選ぶと良い
- 両者は代替関係ではなく補完関係にあり、連携させることで効果が最大化する
- CTIとCRMを連携させると、着信時の顧客情報表示や通話履歴の自動記録が 可能になり、部門を横断した一貫性のある顧客対応につながる
- 連携方式は標準連携(アプリ連携)・iPaaS連携・API開発の3つで、自社の開発リソースと 要件に合わせて選択する
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電話対応の負担を軽くしたいとき、選択肢に挙がるのがCTIとCRMです。両者は混同して語られることが多いものの、役割は全く異なります。CTIは電話業務の効率化のためのシステムで、CRMは顧客との関係を管理するシステムです。課題の所在に合ったシステムを選べば、投じたコストは着実に成果へと変わります。
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本記事では、比較表でCTIとCRMの違いを整理したうえで、自社に必要なシステムの選定基準、連携によって得られるメリット、実際の連携手順までを解説します。
CTIとCRMの違い

CTIとCRMの違いは、CTIが電話対応効率化のためのシステムであり、CRMが顧客情報や対応履歴の一元管理を行うシステムである点です。まずは両者の目的や機能、扱うデータを表で比較し、それぞれの役割を整理しましょう。
| 比較項目 | CTI | CRM |
|---|---|---|
|
役割 |
コンピューターと電話の統合 |
顧客関係管理 |
|
効率化の対象 |
電話業務(受電・架電) |
顧客との関係構築・情報管理 |
|
中心となるデータ |
着信履歴、通話ログ、録音・文字起こし |
顧客属性、商談・取引履歴、対応履歴、行動履歴 |
|
代表的な機能 |
着信ポップアップ表示、ACD、IVR、ワンクリック発信、通話録音 |
顧客情報管理、対応履歴管理、案件管理、メール配信、分析・レポート |
|
主な利用部門 |
コールセンター、インサイドセールス、サポート窓口 |
営業・マーケティング・カスタマーサービスなど全部門 |
|
効果が届く範囲 |
受電・架電を中心とする電話業務 |
顧客情報と複数チャネルの対応・活動履歴 |
表の通り、CTIは電話というチャネルの中で効果を発揮する一方で、CRMはメールやWebサイトを含む顧客接点全体を対象とします。同じ業務効率化という言葉でも、効果が届く範囲は大きく異なります。
CTI|電話業務の効率化

CTI(Computer Telephony Integration)は、電話やFAXとコンピューターを連携させ、電話業務を効率化する技術です。
CTIの代表的な機能は次の通りです。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
|
着信ポップアップ表示 |
着信番号から顧客情報を自動で検索し、応答前に画面へ表示する |
|
IVR(自動音声応答) |
音声ガイダンスで用件を切り分け、適切な窓口へ案内する |
|
ACD(着信呼自動分配) |
あらかじめ定めた条件に沿って、着信を担当者へ自動で振り分ける |
|
通話録音・文字起こし |
通話内容を自動で記録し、後から確認できるテキストとして残す |
CTIは、利用目的は、大きく「受電中心」と「架電中心」に分けて考えると分かりやすいでしょう。
| タイプ | 特徴 | 向いている業務 |
|---|---|---|
|
インバウンド型 |
受電が中心。着信の振り分けや待ち時間の短縮に強みがある |
問い合わせ窓口、カスタマーサポート |
|
アウトバウンド型 |
架電が中心。発信効率の向上と記録の自動化に強みがある |
インサイドセールス、テレアポ |
また、近年は通話録音や文字起こしに加え、AIが通話内容を要約する機能を備えたツールも増えています。
CRM|顧客関係の構築と管理

CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客と良好な関係を築き維持するための考え方や、それを実現するシステムです。日本語では顧客関係管理と呼ばれます。
CRMの代表的な機能は以下の通りです。
| 機能 | 概要 |
|---|---|
|
顧客情報の一元管理 |
企業・担当者・取引状況を顧客ごとに1つのレコードとしてまとめる |
|
商談・案件の進捗管理 |
商談を段階ごとに分け、進捗と着地見込みを可視化する |
|
問い合わせ・対応履歴の管理 |
複数の窓口でのやり取りを顧客ごとに時系列で記録する |
|
メール配信などの顧客接点づくり |
条件に合うセグメントへ、内容を変えたメールを届ける |
|
データ分析とレポート作成 |
商談数や成約率をダッシュボードで可視化する |
|
定型業務の自動化とAIによる支援 |
担当割り当てやタスク作成を自動化し、AIが下書きを担う |
CRMは、一元管理で部門間の情報共有を実現し、顧客の要望や相談を活かした質の高い提案を可能にします。ただし、CRM単体では発着信の制御はできません。通話にかかる時間や手間は、CTIほど直接的には減らない点に留意が必要です。
CTIとCRMは両方必要?導入の選定基準
CTIとCRMのどちらを導入すべきか、あるいは両方導入すべきかは、自社が現在抱える課題によって変わります。
通話そのものが負担なのか、情報の分断が課題なのか。判断の起点となる3つのパターンを確認しましょう。
| 自社が抱える課題 | 優先するシステム |
|---|---|
|
受電・架電の件数が多く、通話対応そのものが業務を圧迫している |
CTI |
|
顧客情報が担当者ごとに分散し、引き継ぎや共有に時間がかかっている |
CRM |
|
電話対応が他の接点と分断されており、通話内容が蓄積・活用されていない |
連携導入 |
電話業務の負担を減らすならCTI
通話の件数や処理速度がボトルネックになっているなら、まずCTIの導入が有効です。
CTIは、保留時間の長さ、取り次ぎのミス、電話番号の手入力といった、通話の中で起きている問題の解決に役立ちます。
例えば、着信と同時に顧客情報が画面へ表示されれば、相手を確認するための保留が不要になります。1日の通話件数が多い部門ほど削減できる工数は大きくなり、投資に対する効果も見えやすくなるでしょう。1件あたり30秒の短縮でも、1日に100件の受電がある部門なら約50分の余裕が生まれる計算です。
情報の属人化を防ぐならCRM
担当者ごとに応対の質が変わる状態が課題なら、優先したいのはCRMです。
顧客情報や過去のやり取りが個人のメモや個別ファイルに散在していると、担当が代わるたびに顧客に同じ説明を繰り返してもらうことになります。顧客から見れば、何度も同じ話をする体験は負担にしかなりません。
顧客とのやり取りをCRMに集約すれば、前提情報が各担当者に共有されるため、応対品質のばらつきも小さくなり、引き継ぎにかかる時間を短縮できます。
電話以外の接点もすべて同じ場所に記録されるのもメリットです。メールやWebサイトでの行動を含めて顧客を捉えられるため、チャネルを横断した理解につながります。
高度な顧客対応を目指すならCTI・CRMの連携
電話を顧客理解の入り口として活かしたいなら、CTIとCRMの連携がおすすめです。
CTIとCRMを連携させることで、CRMに蓄積されているあらゆる顧客情報をCTIでも簡単に閲覧できるようになります。例えば、過去の取引履歴や営業担当者、見積もり内容などに、通話中にアクセスすることも可能です。
反対に、CTIで収集した情報や通話ログなどを、CRMに関連情報として保存しておくこともできます。

とくに近年は、検索エンジンやAIチャットツールで一般的な情報を得たうえで電話をかけてくるケースも多いため、定型的な回答では納得を得にくくなりました。
実際にHubSpotが実施したカスタマーサービスに関する意識・実態調査でも、88.3%が『いつも』または『たいてい』自己解決を試みてから問い合わせると回答しています。

また、問い合わせ時に重視することとして『回答の正確さ』(64.6%)と『回答の速さ』(60.2%)が上位を占め、『自分の状況を理解した個別対応』(51.9%)も続いています。

つまり、問い合わせ時に求められているのは、一般的な説明ではなく、契約内容や利用状況を踏まえた具体的な提案です。CTIとCRMを連携させておけば、着信と同時に過去の問い合わせ履歴や契約状況が画面に表示されるため、担当者はゼロから状況を聞き出す必要がなくなり、これまでの文脈を踏まえたスムーズなコミュニケーションを実現できます。
CTIとCRMを連携させるメリット
CTIとCRMを連携させることで、現場の負担軽減から応対品質の向上まで、さまざまなメリットがあります。
顧客情報の即時表示で確認と取り次ぎの工数を減らせる
CRM上の顧客レコードが画面へ表示されるようになるため、氏名や取引状況、過去の問い合わせ内容を確認したうえで応答できます。そのため、相手を特定するための確認業務が短縮され、本題からすぐに会話へ入れる点が大きな変化です。
その先にあるのが、取り次ぎと折り返しの工数削減です。担当者が誰かを社内で調べたり、確認のうえ折り返したりする回数が減るため、1件あたりの対応時間も短くなります。顧客側から見ても、待たされる時間が短縮されるのはメリットです。
通話の自動記録で入力工数と属人化を減らせる
通話ログや録音、文字起こしがCRMへ自動で紐づくようになるため、通話直後の入力工数を削減できるのはもちろん、記録漏れや記載のばらつきも防げます。とくに近年では、AIが通話内容を要約し、要点と次のアクションだけを効率的に残す運用も広がりました。
また、記録が組織の資産へと変わる点も特長です。個人が持っていた対応ノウハウを誰でも参照できるデータとして蓄積されるため、応対品質の均一化や新任担当者の育成、さらには製品・サービスの改善にも役立てられます。
部門間の情報共有で一貫した顧客体験を届けられる
電話で受けた内容が他部門に共有されることで、顧客から見た体験に一貫性が生まれる点もメリットです。
通話内容はCRM上に集約され、営業・マーケティング・カスタマーサービスの全員が同じ場所で参照できます。そのため、営業が受けた仕様の相談をカスタマーサービスが事前に把握するなど、部門をまたいでも前提の共有が済んだところから会話を始められます。
顧客は「何度も同じ状況を説明する」ストレスから解放され、企業への信頼感が高まるでしょう。また、企業側にとっても、用件のヒアリング時間を大幅に短縮できるため、複雑な課題解決や個別の提案など、より価値の高い業務へリソースを集中できるようになります。
CTIとCRMの連携方法
CTIとCRMの連携には、標準連携・iPaaS連携・API開発の3つの方式があります。それぞれの特徴を押さえたうえで、目的の整理から運用定着までを4つのステップで解説します。
| 連携方式 | 概要 | 向いているケース |
|---|---|---|
|
標準連携(アプリ連携) |
提供元が用意した連携機能を設定するだけでつながる |
開発リソースをかけず、すぐに始めたい |
|
iPaaS連携 |
中継ツールを介し、ノーコードで柔軟な同期フローを組む |
複数のシステムを統合し、独自の同期ルールを設定したい |
|
API開発 |
APIを直接利用し、自社の業務要件に合わせ独自に構築する |
既存の基幹システムを含め、特殊な連携フローが必要 |
1. 連携の目的と対象データを決める
まずは、何のために連携させたいのかを決めたうえで、CTIとCRMの間で同期するデータを洗い出しましょう。
【洗い出すデータの例】
- 顧客情報
- 通話ログ
- 録音データ
- 担当者情報
目的が曖昧なまま全項目を同期すると、参照されないデータが増え、運用が煩雑になります。現在の電話業務の流れを工程ごとに書き出し、どこを自動化するかを先に特定しておくと判断がぶれません。
2. 連携方式を選び、対応可否を確認する
次に、社内の開発リソースと要件に照らして連携方式を選びます。
短期間で始めるならツール側で提供される「標準連携」が基本です。業務が複雑で独自要件が多い場合は、中継ツールを用いる「iPaaS連携」や、システムを直接つなぐ「API開発」が選択肢です。
検討中のCTIとCRMが相互に連携に対応しているかは、各社の公式サイトやアプリ連携ページで確認しましょう。既存の電話番号や回線をそのまま使えるかも、この段階で提供事業者へ確認しておくと安心です。
3. 設定とテスト運用を行う
設定作業では、アカウントの接続とデータ項目のマッピングを行います。マッピングとは、どの項目をどこへ同期するかを対応づける作業です。
設定後は、一部の担当者や番号に限定してテスト運用を行いましょう。着信時のポップアップ表示や履歴の記録が意図どおりかを、実際の通話で確認します。
あわせて、重複データや表記のばらつきが生じていないかも検証します。必要に応じてCRM側のデータを整えておくと、本格運用後の混乱を避けられます。
4. 運用ルールを定めて定着させる
運用に移る段階では、記録の粒度や入力のタイミングなど、誰が見ても同じ情報が残る状態を目指します。
通話の要約や記録の作成は、自動化する範囲を広げていきましょう。担当者の業務工数が減り、判断と対話に集中できる設計にすると、現場に受け入れられやすくなります。
運用開始後は、利用状況の定期的な振り返りも欠かせません。同期する項目やルールを見直しながら育てていくことで、長期的な定着につながります。
CTIとCRMは役割を分けて選び、連携で効果を最大化する
CTIとCRMは、どちらが優れているかを比べる関係にはありません。CTIは電話業務を効率化する技術であり、CRMは顧客との関係を構築し管理する仕組みです。解決できる課題の対象が、そもそも異なります。
だからこそ、選定の起点は機能の比較ではなく、自社の課題がどこにあるのかという問いになります。通話そのものが業務を圧迫しているのか、情報の分断が応対品質を左右しているのか、という見極めを慎重に行い、ツール導入を進めましょう。
また、両者は補完関係にあります。連携によって、通話は単なる記録ではなく顧客理解のためのデータとして蓄積されていきます。顧客がAIチャットツールで一般的な答えを得たうえで電話をかけてくる今、有人対応に求められるのは情報の提供ではなく、文脈に沿った提案です。
HubSpotのCRMは、顧客レコードからの発信と通話履歴の記録に対応しており、すでに利用中のCTIとのアプリ連携も可能です。主な連携対応ツールには、AIで通話内容を要約するpickupon、自動録音・文字起こしに対応するMiitel、callconnectなどがあります。無料プランから始められ、組織の規模や成熟度に合わせて段階的に機能を広げられる設計になっています。
CTIとCRMに関するよくある質問
既存の電話番号はそのまま使えますか?
クラウド型CTIでは、番号ポータビリティなどの利用により既存番号を継続できるものもあります。ただし、条件は回線の種別や契約中の事業者によって異なります。固定回線、IP電話、フリーダイヤルのいずれかによっても扱いが変わるため、選定段階で確認しておきましょう。
システム連携にかかる期間の目安は?
標準連携であれば、設定作業そのものは短期間で完了します。ただし、API開発やデータ整備などを伴う場合は、準備期間が長くなります。期間を左右するのは、設定作業よりも既存データの整理と運用ルールの策定にかかる時間です。顧客データに重複や表記のばらつきなどがあると、整理に想定以上の日数がかかります。
通話の録音や記録における注意点は?
通話の録音や文字起こしで取得する内容には、個人情報が含まれます。そのため、取得目的の明示と、社内での取り扱いルールの整備が欠かせません。通話の冒頭で録音している旨を伝える運用が一般的です。顧客に安心して話してもらううえでも、事前の明示は有効にはたらきます。CRMへ蓄積する場合は、アクセス権限の設計もあわせて検討しましょう。閲覧できる範囲を役割に応じて設定すると、情報の活用と保護を両立できます。
CTIやCRMの導入・連携にかかる費用の目安は?
CTI単体はクラウド型であれば月額数千円〜数万円程度(ユーザー数・機能によって変動)、CRMは無料プランから利用できるものもあります。連携にかかる費用は方式によって異なり、標準連携であれば追加費用なしで始められるケースがほとんどです。API開発を伴う場合は開発費が別途発生します。導入前にベンダーへ総額ベースでの見積もりを確認しておくことを推奨します。
