パイプライン管理とは、営業活動の一連の流れを可視化し、受注に向けて全体がスムーズに進行するよう管理する手法のことです。
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活動の流れをプロセスごとに区切ることで、改善すべきプロセスが明確になります。
本記事では、パイプライン管理の概要や目的、具体的なメリット、実施するための手順とポイントを詳しく解説します。
パイプライン管理とは?
「パイプライン」とは、一般的には水道水や石油などを通す管のことです。
営業におけるパイプライン管理とは、水道水などがパイプの中を通って目的地に到着するように、案件が「受注」という目的に向かってスムーズに進むよう管理する手法のことです。
営業の業務フローをパイプに見立てて可視化する管理手法
パイプライン管理では、問い合わせから受注までの各ステップを明確に定義したうえで管理するのが特徴です。
典型的なパイプラインは、「資料請求」「商談設定」「商談(ヒアリング)」「提案・見積り」「トライアル」「受注」などのフェーズで構成されます。
各案件が、パイプラインのどの位置にあるかを可視化することで、営業プロセス全体を適切に管理できます。
パイプライン管理の目的
パイプライン管理の目的は、営業プロセスの問題やボトルネックを明らかにし、それらの改善によって営業目標を達成することです。
営業活動の1つの「流れ」として捉えることで、各フェーズで問題が生じた際に発見しやすくなります。例えば、ある案件が商談フェーズで長期間停滞している場合、何らかの理由によって商談がうまく進んでいないことが考えられます。
パイプライン管理は、案件の進捗状況を把握し、適切な対策を講じるための重要な手段です。問題をいち早く発見し、解消することで、確実に目標達成へと近づくことが可能です。
パイプライン管理を行うメリット
パイプライン管理を行うメリットを、営業担当者と営業マネージャーの視点から、それぞれ解説します。
営業担当者のメリット
営業担当者の主なメリットは、次の3つです。
- 自分の営業活動の課題がわかる
- 次に何をすべきかが明確になる
- 営業スキルが向上する
自分の営業活動の課題がわかる
パイプライン管理では、営業担当者の個人の営業状況も可視化されます。
営業担当者が自分の案件全体をパイプラインで見ることで、ボトルネックになっているプロセスや対応が必要な案件を客観的に判断することが可能です。
営業チーム全体の平均値やトップセールスとパイプラインの構成を比較することも可能になり、相対的な課題もわかるでしょう。課題が明確になれば、具体的な改善策も立てやすくなります。
次に何をすべきかが明確になる
案件をパイプラインで管理すると、各案件がどのフェーズに位置しているのかが明確になります。それにより、それぞれの案件で次に取るべきアクションや課題が明らかになることもパイプライン管理のメリットです。
パイプライン上の位置に応じてプロセスをひとつずつ着実に進めることで、結果的に受注へと到達しやすくなります。
営業スキルが早く向上する
パイプライン管理は、営業担当者が全体の平均値や優秀なメンバーとの差がどこにあるのかを判断するうえでも役立ちます。営業としてスキルアップを考える際に、何を向上させれば良いのかわからない営業パーソンにとって、大きなヒントとなるでしょう。
例えば、商談のフェーズで案件が停滞することが多い場合、そのプロセスをスムーズに進めるためのスキルが不足していると考えられます。
自分がつまづきやすいポイントがわかれば、商談を得意とするチームメンバーにアドバイスをもらうなど、具体的な対応を考えられるようになるでしょう。
営業マネージャーのメリット
続いて、営業マネージャーの視点からパイプライン管理のメリットを見ていきましょう。
- 営業プロセスの課題を特定できる
- 売上予測の精度が上がる
- 営業担当者の活動を可視化できる
- 営業担当者の育成に役立つ
営業プロセスの課題を特定できる
営業マネージャーは、営業目標の進捗を管理し、目標を達成できるようにチームを導く必要があります。
パイプライン管理を行っていると、チーム全体の営業状況が明らかになるため、目標達成を目指すにあたって課題になりそうなプロセスやポイントが特定しやすくなります。
例えば、商談後に「提案」のプロセスに進むまでの時間が全体として長ければ、営業担当者が提案の作成に手間取っている可能性があります。その場合は、提案資料のテンプレートをあらかじめ用意しておくなどの対策が可能です。
パイプライン管理は、チーム全体の方針や体制面での課題を発見し、解決に導くうえで役に立ちます。
売上予測の精度が上がる
各案件が営業プロセス上のどの位置にあるのかがわかると、売上予測の精度が向上します。
一例として、商談後に提案まで完了した案件から受注になる可能性が、過去の実績から40%であると仮定します。さらに、当月内に成約する割合が50%であれば、「40%のうち半分の20%は当月の売上として計上できそうだ」と予測できます。
同様に、各プロセスから受注に至る確率とリードタイムを考慮して、パイプライン上にある全ての案件を合計すれば、チーム全体の売上が予測できます。
目標との間に差分があれば、目標達成のための対策を組むことも可能です。
営業担当者の活動を可視化できる
パイプライン管理では、営業担当者ごとの営業状況も可視化できます。それにより、どの営業担当者を優先的にフォローすべきかを明らかにできます。
また、パイプラインの状況を担当者ごとに比較すれば、それぞれの特徴や強み、弱みが明らかになるため、マネジメントや評価の参考にもできます。
営業担当者の育成に役立つ
営業担当者ごとのパイプラインの状況を分析すると、担当者ごとの強みや弱み、課題などを定量的に評価できます。ボトルネックが特定できると、成果を大きく改善できる可能性があり、効果的な育成につながるでしょう。
さらに、成績の良い営業担当者のパイプラインや案件の内容に注目をして、成果の上がるポイントを全員に共有するなどの方法によって、チーム全体力の底上げにもつなげることが可能です。
パイプライン管理を実施する手順
パイプライン管理の実施は次の手順で進めます。
- 営業プロセスを設計・定義する
- 現状を分析し改善策を立てる
- 分析・改善を繰り返す
具体的な進め方を見ていきましょう。
1. 営業プロセスを設計・定義する
パイプラインの設計は、営業プロセスの細分化から始めます。その際にポイントとなるのが、顧客の行動を基準にすることです。具体的には、顧客がどのような行動を取ったら、次のプロセスに進んだといえるのかを定義します。
例えば、次のようなプロセスになるでしょう。
- 資料請求:Webサイトなどで資料の請求が発生
- 商談設定:担当者が商談の日時を決定
- 商談(ヒアリング):商談を実施
- 提案・見積り:顧客の要望に基づき提案や見積書を送付
- トライアル:顧客がトライアルを申し込む
- 受注:顧客から発注書を受領
2. 現状を分析し改善策を立てる
パイプラインが設計できたら、実際の案件をパイプラインの定義に沿って当てはめていきます。
各プロセスごとに、どのくらいの案件があるのかを可視化したうえで、案件が特定のフェーズから次のフェーズへと進んだ転換率(CVR)を算出すると良いでしょう。
転換率の悪いフェーズがあれば、そこを重点的に改善します。さらに、営業担当者ごとに案件を分析し、改善点や育成のポイントを明らかにするのも良い方法です。
3. 分析・改善を繰り返す
営業活動の課題が明らかになり、改善するステップまで進んだら、定期的に成果を分析します。
分析の際のポイントは、次の通りです。
- 各プロセスのCVRはどうか
- 各プロセスの案件数はどうか
- 担当者ごとのCVRはどうか
- 担当者ごとの案件数はどうか
目標を達成するためには各プロセスにそれぞれどのくらいの案件が必要かもし実行中の施策の効果が低いという判断になったら、仮説を立て直し、次の改善策を検討します。このサイクルを繰り返すことで、徐々に施策の効果が高まっていきます。
パイプライン管理を実施する際の課題と解決策
パイプライン管理を実施する際の主な課題は、次の3つです。
- データ入力作業の負担が大きい
- 集計・報告に時間がかかる
- ネガティブなポイントに焦点が当たりやすい
解決策もあわせて紹介しますので、参考にしてください。
データ入力作業の負担が大きい
パイプライン管理をするためには、各案件の進捗状況を営業担当者がデータとして入力する必要があります。
入力量が多かったり、入力方法がわかりにくかったりすると作業の負担が大きくなり、入力の漏れが発生する可能性があります。また、データを収集することで、かえって営業効率が下がってしまうかもしれません。
パイプライン管理を実施する際は、入力フォームを可能な限りシンプルにしましょう。入力の手間が少なくなるよう、項目を絞るのもポイントです。
集計・報告に時間がかかる
パイプライン管理は、営業活動の進捗を正確に把握し、問題が見つかったら速やかに改善することが重要です。そのためには、リアルタイムのデータ集計が欠かせません。データの集計や報告に時間がかかり、状況を把握するのが遅れると効果が薄れてしまうので注意しましょう。
データを素早く集計し、報告できる体制づくりのためには、ツールの導入がおすすめです。
SFAやCRMツールを活用すると、日々の変化をリアルタイムで管理でき、遅滞なく処理が可能となります。エクセルやスプレッドシートでも不可能ではありませんが、データの連携や高度な分析の実施などを考えると、ツールの導入を検討すると良いでしょう。
HubSpotのSalse Hubでも、営業パイプライン管理が可能です。無料プランからお試しいただけるので、ぜひご活用ください。
営業パイプライン管理ツール | HubSpot(ハブスポット)
ネガティブなポイントに焦点が当たりやすい
パイプライン管理は問題点を浮き彫りにするため、ネガティブな要素に焦点が当たりやすいです。
例えば、課題を指摘されることが多くなると、営業担当者はモチベーションが下がってしまうかもしれません。例えば、提案プロセスの遅延がチーム全体に共有されると、迅速な改善が求められますが、過度に意識すると士気の低下を招く可能性もあります。
そのため、パイプライン管理を開始する前には、営業組織全体の認識をそろえることが大事です。営業プロセスの設計と定義を組織全体に浸透させます。
設計と定義が決まったら、開始前に必ず全員に説明と研修を行い、共通認識を持ってもらうようにします。
足元の細かな数字ばかり気にしないように注意し、あくまでも改善のための方法であることを忘れないようにしましょう。
パイプライン管理で営業プロセスの課題を可視化しよう
パイプライン管理は、営業プロセスをパイプに見立て、営業案件が受注まで順調に進むよう状況を可視化し、管理する手法です。
営業組織や営業担当者ごとの営業プロセス上の課題を明らかにし、営業活動全体の改善に役立てられます。
パイプライン管理で営業プロセスの課題を可視化し、組織や営業担当者の力を向上させましょう。導入の際は、本記事の手順やポイントを参考にしてください。