【作例あり】一貫したクレーム対応のための「フローチャート」作成のポイント

HubSpotカスタマーサポート部門から学ぶ企業におけるAI活用3つの鍵
水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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クレーム対応では、相手が感情的になっているケースも少なくないため、対応するオペレーターの感情負担の多い業務だといえます。一方で、対応を間違えると大きな問題に発展する可能性がある他、適切な対応ができれば顧客体験の向上につながる面もあるという、非常に重要な業務です。
クレーム対応の品質をコールセンター全体で上げていくには、「フローチャート」の作成が効果的です。

【作例あり】一貫したクレーム対応のための「フローチャート」作成のポイント

HubSpotカスタマーサポート部門のAI導入事例から学ぶ企業におけるAI活用3つの鍵

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    本記事では、クレーム対応のフローチャートの具体例と作成のポイントを解説します。適切なクレーム対応で顧客満足度を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。

    クレーム対応におけるフローチャートの役割

    クレーム対応、特に電話から受けるクレーム対応では、オペレーター一人ひとりの対応品質向上にあわせ、コールセンター全体で品質を底上げする仕組み作りも重要となります。

    フローチャートの作成は、センター全体でクレーム対応に当たるための手法の一つです。
     

    オペレーターの対応品質を底上げ・平準化する

    クレーム対応時のフローチャートを作成することで、オペレーターの対応品質を底上げし、平準化することができます。

    クレームでは顧客が感情的になっていることも珍しくなく、普段通り冷静な対応が難しいケースもあります。どう対応すればいいかわかりやすいフローチャートがあれば、冷静に対応しやすくなり、オペレーターの対応品質が向上します。クレームの解決率向上はもちろん、顧客体験の向上によりファンを増やすことも期待できるでしょう。

    また、オペレーターごとの対応の差を埋める平準化のためにもフローチャートは有効です。
     

    マニュアルとの組み合わせで適切な対応を行う

    フローチャートもマニュアルの一部と捉えることもできますが、マニュアルと組み合わせることで顧客ごとに適切な対応を行えるようになります。

    マニュアルは、ケースごとの具体的な対応内容や指示を記したものであり、対応品質の向上につながりますが、オペレーターは状況ごとに参照する必要があります。

    ひと目でわかりやすいフローチャートがあれば、自身は今何を判断すればいいのかがわかりやすくなり、適切な対応を選択しやすくなります

     

    クレーム対応のフローチャート

    下図は、クレーム対応における基本的な分岐を定義したフローチャートです。

    クレーム対応のフローチャート

    フローチャートの各要素について、対応の流れを詳しく解説します。
     

    1. クレームの発生

    1. クレームの発生

    クレームを受けた際には、まず顧客の不満を真摯に受け止める姿勢が大切です。クレームを入れる顧客は、その多くが自分の不満を理解してもらいたいと考えています。顧客の話をしっかりと聞き、冷静に対応することで、顧客も落ち着いて話ができます。

    また、コールセンターシステムによってはクレームが発生したことを伝える機能があるため、SVやチームにクレーム対応中であることを知らせつつ、クレーム対応のためのマニュアルを呼び出しておきます。
     

    2. お詫び・内容の確認

    2. お詫び・内容の確認

    まずは顧客からクレーム内容を伺います。顧客は自身の正当な権利がなんらかの形で侵害されたと感じているため、感情的になっている可能性もあります。

    ひとまずクレーム内容を聞いたら、不快な思いをさせたことに対して謝罪を行います。クレームに対応する意図があることを伝えることで、顧客の態度は軟化するかもしれません。例えば、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」「ご不便をおかけし、申し訳ございません」のように、企業としての誠意を示します。

    一方で、この時点ではクレーム内容には言及せず、内容に対しての謝罪は行わないよう注意する必要があります。

    その後、クレームの内容を詳しく聞きます。顧客のしてほしいことを引き出せるような質問を重ねつつ、以下の3点についてオペレーターが判断を行います。

    • 自社に原因があるか?
    • 顧客に原因があるか?
    • 顧客に悪意があるか?

    この判断をオペレーター自身で行うことが難しければ、SVなどへエスカレーションを行います。
     

    3. 要望の確認・解決策の提案

    3. 要望の確認・解決策の提案

    「自社に原因があるか?」の分岐が【YES】だった場合、顧客の要望を確認し、解決策の提案を行います。

    例えば、「届いた商品が壊れていた」など、解決すべき問題が具体的にある場合は、返金対応や新しい商品の再送付といった解決策の提案を行います。一方で、顧客の要求が「謝罪」なのか、それとも「商品の交換や返金」といった具体的な対応なのかを確認し、「要望に応えること」を忘れないようにします。商品の交換をしてほしいのではなく、謝罪だけがほしい場合、勝手に交換対応の話を進めてしまうとかえって怒りに火を注ぐ結果となります。

    自社に原因がある場合はできる限り顧客の要望に応える必要がありますが、規定の範囲外のため要望に応えられない場合、要望の切り分けが難しい場合、オペレーターの一存では決められない問題の場合など、さまざまなケースが考えられます。実際にフローチャートを作成する場合は、こういった分岐も設定し、オペレーターが迷わないようにすることが重要です。
     

    4. 要求を拒否

    4. 要求を拒否

    「自社に原因があるか?」の分岐が【NO】、「顧客に原因があるか?」の分岐が【YES】、「顧客に悪意があるか?」の分岐が【YES】だった場合、相手の要求を拒否します。

    クレームに悪意がある場合、要求内容が不当だった場合は、相手のペースに合わせる必要はなく、毅然とした態度で要求を拒否します。

    一方で、相手に問題があるケースではなかなか納得せず暴言がエスカレートすることも考えられます。その際は、すみやかにSVなどへエスカレーションし、早期にコミュニケーションを断ち切ります。

    近年は、あまりにもしつこい場合は「オペレーター判断で通話を切る」ことも許可するコールセンターも登場しています。
     

    5. 正しい情報を伝える

    5. 正しい情報を伝える

    「顧客に悪意があるか?」の分岐が【NO】だった場合、顧客の気持ちに寄り添いつつ、正しい情報を伝えます。

    顧客が商品の使い方やサービスの対応範囲について勘違いしてしまうケースも十分にありえます。自社に落ち度がない場合は、特別対応する必要はありませんが、正しい情報を伝えつつ心情にはしっかり寄り添います。

    納得してもらえれば、顧客満足度は向上する可能性があります。
     

    6. 丁寧に説明する

    6. 丁寧に説明する

    「顧客に原因があるか?」の分岐が【NO】、つまり双方の捉え方の違いによるクレームだった場合は、どういうすれ違いがあったかを丁寧に説明します。

    自社と顧客どちらにも原因がないケースにおいても、そのクレームからはヒントが得られるかもしれません。例えば、商品・サービスの捉え方について周知する機会を増やしたり、説明の仕方を工夫したりと、商品開発部門やマーケティング部門へのフィードバックを行えます。
     

    クレーム対応のフローチャート作成のポイント

    ここでは、クレーム対応におけるフローチャート作成のポイントを4つ解説します。

    • フローチャートの目的を明確にする
    • プロセスを洗い出す
    • 要素は時系列に配置する
    • シンプルなデザインでわかりやすく表現する

     

    フローチャートの目的を明確にする

    フローチャートを作成する際は、誰がどのような場面で使うのかを明確にすることが大切です。

    対応時に役立つフローチャートをつくるために、次のことを明確にしましょう。

    • どのようなクレームか:通常のクレーム対応、悪質なクレームへの対処
    • 使用者は誰か:一般の担当者、責任者

    解決したい課題を明確にすることで、より効果的なフローチャートの作成が可能になります。
     

    プロセスを洗い出す

    フローチャートを作成するためには、クレーム対応の全体像を把握する必要があります。まずは、クレーム対応の際に必要なプロセスをすべて洗い出し、どのようなアクションが必要かをリストアップします。工程を洗い出したうえで、フローチャートに必要な要素を選定しましょう。

    選定のポイントは、クレーム対応時に重要かどうかです。切り分けによってその後の対応が変わるようなものは重要なポイントなので、フローチャートに含めると良いでしょう。
     

    要素は時系列に配置する

    フローチャートを作成する目的は、手順などの流れを視覚化してわかりやすくすることです。人は視線の流れに沿った図であれば、流れが理解しやすくなります。

    視線は「上から下」あるいは「左から右」に動くのが一般的なので、どちらかを選び、クレーム対応のプロセスが時系列になるように要素を配置しましょう。次に何を行うべきかが感覚的にわかるので、スムーズな対応につながります。
     

    シンプルなデザインでわかりやすく表現する

    クレーム対応中は迅速な判断が求められる場面が多く焦ってしまいやすいため、フローチャートはできるだけシンプルにしましょう。色を使いすぎたり、文字が多かったりすると見づらくなるため、注意が必要です。

    緊急の対応で慌てている状況でも迷わず対応できるよう、箇条書きを使うなど簡潔でわかりやすい表現を心がけましょう。
     

    AIを活用し、クレーム発生を抑制・顧客満足度を向上できるカスタマーサポートを構築

    本記事ではクレーム対応のフローチャートについて解説してきましたが、クレームはそもそも発生させないことが理想です。クレーム発生を抑制するポイントの一つとして、テクノロジーの効果的な活用が挙げられます。

    特に近年は、生成AIの急速な発達により、カスタマーサポートの現場にも生成AI活用の波が訪れています。AI活用は一時的なトレンドではなく、「活用することが当たり前」の段階に突入しようとしている一方で、焦りからくる拙速な導入にも注意が必要です。

    当社HubSpotでは、カスタマーサポートの現場へAI技術を段階的に導入し、AIと人の得意な領域を組み合わせた生産性の高いチーム作りを継続しています。実際に、AIによる解決率を高い水準に引き上げることで、人による対応品質も向上しました。

    満足度が向上すれば、クレーム発生の抑制につながり、VOC(Voice of Customer:顧客の声)を効率よく収集することで各部門との連携強化にもつながります
     

    クレーム対応のフローチャートを作成して迅速な対応を実現しよう

    クレーム対応のフローチャートは、企業が迅速かつ的確に顧客対応を行うための指針となります。担当者が迷わず次のアクションを取るために、フローチャートの作成前には、目的を明確にしましょう。

    また、クレーム対応時は担当者が焦っていることも多く、じっくり文章を読み込む余裕はありません。そのため、シンプルなデザインで簡潔な表現を使うことも大切です。誰でも流れが理解できるフローチャートを作成することで、迅速な解決に導けるでしょう。

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