クレーム対応は、過度な要求や高圧的な態度など負の面もあるものの、企業の信頼性や顧客満足度の向上を実現するために重要な要素のひとつです。しかし、対応が不適切であったり担当者によって対応が異なったりする場合、顧客に不快な思いをさせてしまう可能性があります。また、迅速な対応ができなければ、企業イメージの低下にもつながりかねません。

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適切なクレーム対応マニュアルを作成できれば、リスクを回避し、迅速で一貫した対応を行えるようになります。結果的に、顧客との信頼関係構築につながり、顧客満足度・LTVの向上、ロイヤルカスタマーの醸成も期待できます。
本記事では、クレーム対応マニュアルに記載する具体的な項目や作成時の注意点、クレームを生まないための取り組みについて解説します。クレーム対応の品質や業務効率に悩む担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
クレーム対応マニュアルの必要性
クレーム対応は、企業のイメージに関わる重要な業務のひとつです。
経験の浅い担当者がクレームに慌ててしまい、うまく対応できなくなることもあるでしょう。このような事態を避け、迅速かつ適切に対処するために役立つのが、クレーム対応マニュアルです。ここでは、クレーム対応マニュアルがもたらす主なメリットを5点解説します。
誰が対応しても同じ対応ができる
クレーム対応マニュアルを導入することで、担当者のスキルや経験に依存せず、誰が対処しても同じ基準で対応しやすくなります。
クレームが発生した際、担当者によって対応が異なると、「前回はこうしてもらえたのに」「他の客がしてもらった対応と違う」といった不満が出て、新たなクレームにもつながりかねません。
マニュアルによって方針や基準を予め定めておけば、担当者ごとの対応差が生まれにくくなり、前述したような事態は防げるでしょう。具体的には、クレームの聴き取り方から、解決策の提案、フォローアップにいたるまでの手順や各段階での対応方法を記載しておくのがベストです。
担当者の負担を軽減できる
クレーム対応は、担当者にとって精神的にも負担がかかる業務です。感情的なクレームに対処する際に慌ててしまい、どのように対応すれば良いかわからなくなる場合もあるでしょう。そうした場合にマニュアルがあれば、クレーム対応の流れや基準が明確になり、担当者は冷静に対応しやすくなります。
また、クレーム対応マニュアルに、よくあるクレームのケーススタディや対応例を記載すれば、同じようなクレームが寄せられた際に対応を一から考える必要がなく、担当者の負担が軽減されます。
適切なタイミングでエスカレーションを行える
クレーム対応においては、企業にとって必要な意見を伝えてもらえる一方で、過度な要求や高圧的な態度など利益にはなかなかつながらないものも存在します。また、顧客の要求に対してオペレーターが十分に対応できないケースも考えられます。
こういった場合にはスーパーバイザーなど上長へ対応を代わってもらう「エスカレーション」が重要となります。エスカレーションのタイミングは個人の判断に委ねるとためらいの原因になるため、マニュアルで明記し、必要なタイミングには遠慮なくエスカレーションできるようにすることが重要です。
一次解決率の向上につながる
マニュアルが整備されていれば、顧客の要望に対してどのように回答すればいいかがすぐにわかるため、一次解決率の向上につながります。
一度コミュニケーションが途切れ、再び顧客と接点をもった時点で解決する「二次解決」では顧客満足度が上がりにくいだけでなく、担当者や上長の手間が大幅に増えて生産性の低下につながります。
一次解決率を上げ、クレームをその場で解決するためにも、マニュアルの整備は必要となります。
顧客に寄り添った対応を行える
クレーム対応では強い言葉を受けてしまうケースもあるものの、顧客はこちらの不手際や設計不良、わかりにくさにより困っている状態には違いありません。
マニュアルがあれば、顧客がどのような点で困っているかをオペレーターが理解しやすくなり、気持ちに寄り添った対応を行えるようになります。
クレーム対応マニュアルに記載すべき項目
クレーム対応マニュアルは、企業が顧客からのクレームに適切に対応するための重要なツールです。効果的に活用するためには、具体的かつ実践的な項目を記載すると良いでしょう。
ここでは、クレーム対応マニュアルに記載しておくべき主要な項目を解説します。
- クレームの定義・自社の方針
- クレーム対応手順
- よくあるクレームの事例集
- 関連部署の相談先
クレームの定義
クレームというと、苦情や不平不満、一方的な主義主張といったネガティブなイメージが強いかもしれません。しかし、クレーム対応の目的は、顧客の不満を解消し、信頼回復に努めることです。また、クレームは企業が気付かなかったサービスの欠点を明らかにし、改善のヒントを与えてくれる可能性もあります。
一方で、クレームには過度な要求や理不尽な罵倒、一方的な不平不満など企業の利益にはなりえないものも含まれます。こういったタイプのクレームはオペレーターの大きな負担になってしまうため、解決するべきクレームと明確に区別し、「対応しなくてもいい」という毅然な姿勢を明示することも大切です。
「クレームとは何か」「クレーム対応がなぜ必要なのか」という点を明確にしつつ、対応するべきものとそうでないものを区別することで、オペレーターのクレームへの向き合い方を醸成することができるでしょう。
クレーム対応における自社の方針
クレームを受けた際には、顧客への最初の対応方法や基本方針をあらかじめ定めておく必要があります。例えば、「店舗内で顧客がスタッフに対して不満を訴えた」場面での、担当者の受けとめ方はさまざまです。
- まずは顧客の話をしっかりと聞いて、冷静に対処しよう
- 自分の対応が間違っていたかもしれないので、すぐに謝罪しなければならない
- トラブルが大きくなる前に、他のスタッフに助けを求めよう
このような受けとめ方の違いは、対応のばらつきを生む原因になります。個々の対応が一致しないと、顧客に不信感を与えるおそれがあるため、統一した対応基準を設けましょう。
一例として、次のような対応方針が考えられます。
- 顧客に不快な思いをさせたときは、まずその事実に対して誠実に謝罪する
- 顧客からの不当な要求に対しては、上司に対応してもらう
クレームに対する組織としてのスタンスを明確にすることで、同じ基準で対応を行えるようになり、対応品質の向上につながるでしょう。
クレーム対応手順
クレームの受理から解決までの流れを記載します。以下は、対応手順の一例です。
- クレームを受けた際の初期対応(不快な思いをさせた事実に対するお詫びなど)
- 担当者へのエスカレーション(上司に相談して判断を仰ぐ/対応をゆだねるなど)
- 事実確認・原因追求
- 解決策・代替案の提示
- 顧客へのフォローアップ
手順では、各段階で誰が何をすべきかを明確にしましょう。また、対処する際に注意すべきポイントや言葉遣いなどの具体例を記載すると、担当者が対応しやすくなります。結果として対応の一貫性が保たれ、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
クレーム対応の具体的な手順やフローチャートについては、こちらの記事で解説しています。
よくあるクレームの事例集
クレーム対応では、顧客の悩みを速やかに解決する必要があります。その際、よくあるクレームの事例が役立ちます。過去に寄せられたクレームの具体例と、それに対してどのように対応したかを簡潔に記載しましょう。
例えば、商品の不具合やサービスの遅延など、起きがちな問題のケーススタディを掲載します。そうすれば同様のクレームが発生した際に、迅速かつ適切な対応が可能となるでしょう。
関連部署の相談先
クレームの内容によっては、専門知識を持つ部署への相談が必要です。そのため、マニュアルには、関連部署や担当者(責任者)の連絡先を記載しておくと良いでしょう。
<例>
- 商品の不具合に関するクレーム → 品質管理部門、製造部門
- オンライン購入のページに関するクレーム → 情報システム部門(□□さん)
担当者の連絡先以外にも、相談する際のフローやどのような情報を共有する必要があるかも記載すると、効率的に対応できます。
相談先が明確になれば、クレームを受け付けた従業員が迷うことなく対応にあたることができるでしょう。
クレーム対応マニュアルを作成・運用するときの注意点
マニュアルを作成する際には、次の4つのポイントに注意しましょう。
- ルールや対処法を細かく書きすぎない
- わかりやすい表現で記載する
- 定期的にマニュアルを見直す習慣を作る
- ロールプレイングで実践的にトレーニングする
ルールや対処法を細かく書きすぎない
マニュアルをあまりに細かく設定すると、担当者が混乱しやすく、かえって対処が遅れたり判断を誤ったりするおそれがあります。書かれていること以外のクレームが寄せられると慌ててしまい、適切に対応できなくなるといった弊害も考えられます。
また、細かすぎるルールがあると、担当者はマニュアル通りの対応をしようとしてしまいがちです。そうした対応は、ときに機械的な接客態度と受け取られ、顧客をヒートアップさせる要因にもなりえます。
手順やクレームの事例を記載することは大事ですが、すべての事象に対して一つひとつ細かく対処法を書くのではなく、方針や基準を明確にして、顧客対応の方向性を示すようにしましょう。
わかりやすい表現で記載する
クレーム対応はスピードが求められるため、焦ってしまうこともあります。そのため、細かい文章よりも図表や箇条書きを使った説明の方がわかりやすいでしょう。
例えば、対応の流れをフローチャートで示したり、具体的な対応方法をイラストで解説したりすることで、担当者が視覚的に理解しやすくなります。対応中に必要な情報を迅速に確認できるような表現の工夫が大切です。
チャネルごとのクレームの特徴や対応例は、こちらの記事で解説しているので、参考にしてください。
定期的にマニュアルを見直す
クレームへの対応方法は、社会的な環境や顧客ニーズの変化に応じて変わります。そのため、クレーム対応マニュアルも定期的に見直しを行い、最新の情報や対応方法を反映させる必要があります。
特に、顧客からのフィードバックや新たに発生したクレーム事例を参考に、マニュアルをアップデートすると良いでしょう。情報や対応方法を常に最新の状態にしておくことで、顧客のニーズに応えられる可能性が高まります。
ロールプレイングで実践的にトレーニングする
企業の生産性を高めるクレーム対応のためにはマニュアルの作成が必須ですが、作ったマニュアルをそのまま渡してもすぐに実践に移せるわけではありません。オペレーターがマニュアルの内容をスムーズに実施できるようになるには、ロールプレイングによるトレーニングが効果的です。
ロールプレイングとは、複数人でチームを組み、各メンバーに役割を与えた上で想定されるシーンを演じるトレーニング手法です。クレーム対応においては、顧客役とオペレーター役に分かれてロールプレイングをすることで、実際のシーンを想定した実践的なトレーニングとなります。
クレームを生まないための取り組み
カスタマーサポートにおいては適切にクレーム対応を行うことも重要ですが、そもそもクレームを発生させないための取り組みも重要です。
商品・サービスを継続的に改善していくことはもちろん、以下の取り組みによってクレームの発生を抑制することができます。
顧客が知りたい情報にアクセスできる仕組み作り
クレーム発生の原因の一つは、困ったことがあるのに解決策がわからないという点にあります。顧客が知りたい情報にいつでもアクセスできる仕組みを作ることで、顧客による自己解決をサポートし、クレームを抑制することにつながります。
具体的には、顧客接点(チャネル)の見直しが必要となります。例えば、商品・サービスを提供するときの説明の方法、WebサイトのFAQ(よくある質問)ページ、問い合わせページ、チャットによる問い合わせなどがあります。特に、FAQページの充実や問い合わせページへのわかりやすい導線の整備はクレームの抑制に効果的です。
近年のトレンドとしては、AIによるチャットボットシステムを構築することもクレームの抑制につながります。
AIを活用したカスタマーサポートの仕組み作り
上記にてAIチャットボットを仕組み作りの一環として上げたように、近年はAI活用がカスタマーサポートの現場でも広がっています。AI技術を適切に活用できれば、顧客の課題をより効率的に解決できるようになり、結果的にクレームの発生も抑制可能となります。
HubSpotのカスタマーサポートでは、増加する問い合わせや複雑化する課題に対応するためにAIを活用。定型的な問い合わせはAIによって解決しつつ、複雑な問い合わせは人が対応することによって、課題解決率や満足度の向上を実現しています。
AIは基本的に、反復タスクや大規模なデータ分析に向いており、複雑な対応や創造的な業務、顧客との戦略的な関係構築は苦手です。こうした特性を理解しつつ、どのような体制を構築すれば顧客の課題を効率よく解決できるかを考え、AI導入を進めることが重要です。
クレーム対応マニュアルを作って対応品質を上げよう
クレーム対応マニュアルは、企業が顧客との信頼関係を築くための大切な要素のひとつです。迅速な解決が求められるクレーム対応は、適切なマニュアルによって対応品質を下げずにスムーズに解決できるようになります。一貫性のある対応も実現でき、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
クレーム対応マニュアルは一度作成したら終わりではなく、定期的に見直し、最新の事例や対応方法を反映させることが大切です。マニュアルのアップデートを繰り返すことで、常に高品質な対応を提供できる体制を整えましょう。
マニュアルの整備とあわせて、問い合わせチャネルの工夫も重要です。例えば、自動応答サービスを取り入れれば、担当者の負担軽減につながります。有人での対応が難しい時間帯でも、自動応答であれば速やかな解決につながる可能性もあり、顧客体験も向上するでしょう。
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