カスタマーサポート部門による問い合わせ対応の品質は、顧客満足度を決める重要な要因のひとつです。カスタマーサポートの問い合わせ対応品質を向上させていくには、目的にあわせたKPIを設定することが重要です。

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顧客が対応に満足すれば良好な関係構築につながり、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上が期待できます。カスタマーサポートは、一般的に利益を生まない「コストセンター」に分類されますが、顧客に価値を提供することで営業部門のように利益を生む「プロフィットセンター」として、将来の収益に貢献することも可能です。
カスタマーサポートの品質を向上するための重要なプロセスとして、本記事ではKPI設定の重要性やカスタマーサポートにおける代表的なKPI、運用時の注意点についてご紹介します。
KPIとは?カスタマーサポートでも必要?
KPI(重要業績評価指標)とは、ビジネスの最終的な目標に到達するために設定する中間指標です。最終的な目標のことをKGIと呼び、KPIはKGIを達成するためのマイルストーンとして設定されます。KPIには定量的な目標を設定し、客観的に評価しながらマイルストーンを一つずつ達成していきます。
これらの目標は、まずKGIを先に設定し、それを達成するためのKPIを設定していきます。そのため、上の図のように、設定する順番と達成する順番は反対になります。
また、企業単位でKPI・KGIを設定することはもちろん、部門ごとに設定することも有効です。部門特有の業務内容や目標に合わせてKPI・KGIを設定することで、従業員それぞれが目標を見据えて業務に取り組めるようになります。
カスタマーサポートでKPIを設定する目的
カスタマーサポートでKPIが重要なのは、成果を客観的に評価できるためです。KPIを目標として設定することで、やるべきことが明確になります。
仮に目標を達成できなかったとしても、複数の指標の関連性を分析しながら原因を探れるため、より具体的な解決策が見つかります。PDCAのサイクルを回すことで、さらに、理想に近い成果へとつながるでしょう。
KPIはカスタマーサポート全体のマネジメントにも重要な役割を果たします。KPIにもとづいてマネジメントを行うことで、チーム全体のパフォーマンスが底上げされます。
カスタマーサポートにおけるKPI設定例
では、カスタマーサポートにおけるKPIを考えてみましょう。最終目標を「今年度末のアンケートで顧客満足度を10ポイント向上させる」と仮定して、カスタマーサポート部門でのKPIを設定してみます。
カスタマーサポートに相談をした顧客は「電話をしてつながるまで待たされた」「迅速な対応だった」「問題が解決できた」など、さまざまな経験をします。それぞれの体験が指標になるようにKPIを検討します。
【KPIの例】
- 顧客の電話問い合わせが受付窓口につながるまでの待ち時間:平均応答速度(●分)
- 顧客が相談してから解決するまでの時間:課題解決時間(●分)
- 問い合わせ数に対して問題が解決できた件数の比率:課題解決率(●%)
KPIを決定する際は、上のような基本的な指標を踏まえつつ、自社の商品やサービス、顧客層、経営方針などを考慮して検討します。
カスタマーサポートでKPIを設定するときの注意点
最終目標を意識したKPIを設定する際には、最終目標とKPIの整合性を取ることが大切です。「すべてのKPIを達成すれば最終目標を達成できる」というロジックを明確にしておくことが、カスタマーサポートの担当者のモチベーション向上につながります。
KPIを適切に設定するには、最終目標となるKGIを明確にしておくのがポイントです。事業として成し遂げたいゴールをKGIとして可視化することで方向性が整理され、より具体的なKPIが設定できます。
未達のKPIが多い場合は、現状に対して目標が高すぎる可能性があります。現場の従業員のモチベーションを高めるためには、努力次第で達成可能な目標をKPIに落とし込む必要があるため、状況に応じてKPIの見直しを検討しましょう。
カスタマーサポートで重視したいKPI
カスタマーサポートで用いられる代表的なKPIは次の通りです。以下のKPIには、受電ならではのKPI、さまざまなチャネルで設定できるKPI、チャネルを横断したKPIの3つのカテゴリがあります。
- AHT(平均処理時間)
- 応答率
- エスカレーション回数
- 一次応答時間
- 自己解決率
- 課題解決時間
- 課題解決率
- 顧客満足度
- リピート率(継続率)
各指標の特徴や計算方法を解説します。
1. 【受電】AHT(平均処理時間)
AHT(Average Handling Time:平均処理時間)とは、1件あたりの問い合わせを完結するまでの平均時間です。「平均通話時間(ATT) + 平均後処理時間(ACW)」で求められます。
電話での受け答えの時間だけでなく、その後のデータ入力や報告などの後処理の時間も含まれてるのが特徴で、カスタマーサポートにおける各従業員の業務効率性を的確に表す重要な指標です。
また、平均通話時間と平均後処理時間をそれぞれ見直すことで、効率の悪い業務を洗い出せます。通話時間が目標値よりも長ければ、トークスクリプトやマニュアルの作成、引き継ぎプロセスの最適化といった施策が時間短縮に役立ちます。後処理時間が長い場合は、業務フローの見直しや外部委託、RPAをはじめとするシステム導入などが効果的です。
2. 【受電】応答率
応答率とは、電話がかかってきた件数(着信数)に対して、オペレーターの応答件数の割合です。「応答件数 ÷ 着信数 × 100」の計算式で求めます。
待ち時間が長いと、顧客が相談自体を断念するケースがあります。顧客が課題を解決できないままになると満足度が大きく低下するため、応答率が低い場合は早急な対応が求められます。
また、応答率に関連するKPIとして、「サービスレベル」と「平均応答速度」と呼ばれる指標があります。それぞれの概要は次の通りです。
サービスレベル(SL:Service Level)
サービスレベルとは、サービスの提供にかかるスピードや時間のことです。サービスの提供が速いほど、顧客満足度につながるという考え方です。
電話によるカスタマーサポートのサービスは、「着信から20秒以内に応答」のように、一定時間内にオペレーターが応答した件数の割合を示します。通常の応答率は一定時間内より応答が遅れてもカウントされますが、サービスレベルはカウントされません。
平均応答速度(ASA:Average Speed of Answer)
平均応答速度とは、電話が着信した瞬間からオペレーターが応答するまでの時間のことで、顧客を待たせている時間を表します。
3. 【受電】エスカレーション回数
エスカレーション回数とは、問い合わせへの回答が困難な際に、上司や他部署の担当者に相談する回数です。
エスカレーション回数が増えると電話口の相手を待たせることが増え、信頼度や顧客満足度の低下につながる可能性があります。
また、「総エスカレーション回数 ÷ 問い合わせ総数 × 100」の計算式で、組織全体の平均値を求めるケースもあります。平均エスカレーション回数が目標よりも多い場合は、マニュアル・社内向けFAQ・トークスクリプトの作成や研修の実施など、スキル向上に向けた取り組みが欠かせません。
なお、エスカレーションはオペレーターレベルでは解決できない課題や、クレーム対応の引き継ぎなど、必要不可欠なケースもあります。こうした必要なエスカレーションと、オペレーターの一次対応で解決できたエスカレーションを区別し、別々に評価することが大切です。
以下コラムでは、クレーム対応のポイントについて解説しているので、あわせてご覧ください。
4. 【複数チャネル】一次応答時間
一次応答時間とは、顧客から問い合わせを受けてカスタマーサポートが最初に応答するまでの時間のことです。顧客は、何かしら解決したい課題があって連絡しているため、なるべく早く応答することはカスタマーサポートの基本的な対応といえます。
初回の応答で解決しない案件が多い場合、一次応答後の応答回数や平均応答時間もカスタマーサポートのKPIとして検討しましょう。
5. 【複数チャネル】自己解決率
自己解決率とは、問い合わせ総数に対して、顧客が自ら課題を解決できた件数の割合のことです。オペレーターに直接質問することなく、FAQやマニュアル動画などを見て顧客自ら問題を解決できた場合は、自己解決件数としてカウントします。
自己解決率を高めることで、問い合わせ件数の削減が可能です。適正水準の問い合わせ件数を確保できれば、従業員の負担軽減や顧客の待ち時間減少につながります。問い合わせ件数が減ると、人によるサポートを必要とする顧客に、より時間をかけて対応することが可能になり、顧客満足度を高められます。
6. 【チャネル横断】課題解決時間
課題解決時間は、短いほうが顧客満足度が上がりやすくなります。同時に、チケットの再オープン率にも着目しましょう。
多くのカスタマーサポートツールでは、電話やメール、SNS、チャットなど、さまざまなチャネルからの問い合わせを「チケット」として管理します。問い合わせが解決したらチケットのステータスを「解決済み」とします。
解決したと判断したチケットに対して再度問い合わせがあれば、ステータスを再度「オープン」にします。つまり、チケットの再オープン率が高いということは、顧客の課題が的確に解決されていなかったことを示します。
課題解決時間は、追加の課題解決が発生しなくなるまでの時間を指しますが、サポートの現場では、解決の判断が難しいことがあります。KPIを確認する際には解決の判断基準についても決めておくと良いでしょう。
7. 【チャネル横断】課題解決率
課題解決率とは、問い合わせ数に対して解決できた件数の比率のことです。
課題解決率とあわせて、関連する2つのKPIも設定すると良いでしょう。
3つのKPIは、下にいくほど達成難易度が上がっていきます。
「課題解決率」は、チケット総数に対し、最終的には解決できたチケットの割合を計測します。2回以上のやり取りや、複数チャネルでの対応があった場合でも、解決されればカウントされます。
「ワンコール解決率」は、1回のコールで解決できた問い合わせ数の比率を計測します。関連部門への転送で待たせる時間があった場合、最初は受電できずにカスタマーサポート側から折り返しを行うコールバックがあった場合もカウントします。
「一次解決率」は、顧客からの最初のコンタクトにて解決できた問い合わせ数の比率を計算します。最初のコールで適切なスキルセットのオペレーターへ接続し、放棄呼とならずに受電し、転送なしで解決する必要があるため、最も難易度が高くなります。顧客としては、最も素早く問題が解決するため、理想的な対応だといえます。
8. 【チャネル横断】顧客満足度
顧客満足度も、カスタマーサポートのKPIとして活用可能です。対応を行った顧客に対して直接意見を聞くことで、サービス改善のヒントを得られます。
顧客満足度を調査するにはアンケートを用いるのが一般的です。メールやチャット、SNSなどのチャネルであれば、対応後に「今回のオペレーターの対応はいかがでしたか」といった形で、顧客のリアルな声を収集できます。
他にも、顧客満足度を測る指標としては以下のようなものがあります。
- NPS
- CES
- LTV
- チャーンレート
NPS(ネットプロモータースコア)は、その商品・サービスを他人へどのくらいおすすめするかを調査するスコアです。ブランド価値や口コミ効果などを確認できます。
CES(顧客努力指標)は、顧客がサービスを利用する際、どのくらいの努力を必要としたかを調査するスコアです。努力の量が多いほどサービスに接続するためのハードルが高くなるため、CESは低いほうが望ましいスコアとなります。
LTV(ライフタイムバリュー)は、顧客一人が生涯のうちにブランド・企業へ提供する価値・金額を指します。ライフタイムバリューが高いほど、顧客ロイヤルティが高く、離反が少なく、ブランドとしての価値を感じてくれていると評価されます。
チャーンレート(解約率)は、主にサブスクリプションサービスにて設定されるKPIで、継続利用サービスが解約された割合を計測します。新規契約数が多くてもチャーンレートが多いと売上は増えず、顧客ロイヤルティも上がらないため、チャーンレート改善はサブスクリプションサービスにおいて非常に重要となります。
9. 【チャネル横断】リピート率(継続率)
リピート率とは、新規顧客数に対するリピーターの割合を示す指標です。リピート率は、期間を設定して計算します。例えば、月間リピート率は次の計算式で算出します。
- 月間リピート率(%) = 月間のリピーター数 ÷ 月間の新規顧客数 × 100
カスタマーサポートの取り組みだけでリピート率が上がるわけではないものの、リピート率を決める要因のひとつであることは間違いありません。
また、リピート率は、企業の収益力を高めるうえで重要になる顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)と密接な関係があります。商品やサービスを購入した顧客と良好な関係を構築することが、経営上の鍵を握るため、リピート率は重要なKPIだといえるでしょう。
KPIを達成するためには?
設定したKPIを達成するためには、以下のポイントを意識し、カスタマーサポートのチーム全体で達成を目指すことが重要です。
全従業員と目標を共有する
KPIの設定は管理者レベルで行うものの、その内容や、なぜそのKPIが必要なのかを従業員が知らなければ、達成に向けて改善することはできません。
KPIを全従業員へ共有する際は、なぜそのKPIを達成したいのか、カスタマーサポートは社内でどのような立ち位置を目指しているかなどを同時に伝えることが大切です。
KPIと実績の確認を定期的に行う
KPIを設定したら、目標を達成できているか、あとどのくらい必要なのかなど、実績の確認を定期的に行います。
その際には、従業員もできるだけ巻き込むといいでしょう。常に目標を見据えることで、当事者意識を醸成し、カスタマーサポートのチーム全体で目標を達成する意識作りになります。
必要に応じてKPIの見直しを行う
一度決めたKPIは達成するまで変えないのではなく、必要に応じて見直しも行います。
例えば、競合の動きや新しいテクノロジー・ツールの登場、市場の変化など、外的要因によって自社の目指すべき方向性を調整しなければならないことがあります。こういった場合にはKPIを柔軟に見直し、そのときに必要な業務改善を行うことが大切です。
AIを始めとした適切なツールを導入する
設定したKPIを達成するには、KPIに対して適切なツールを導入し、現場の対応レベルを上げていくことが重要です。
AIを始めとしたツールの導入は、導入が目的になってはならず、KPI達成の手段として十分に検討する必要があります。そのうえで、AI技術については積極的に導入を検討しましょう。カスタマーサポートに必要なツールへのAI技術の導入が急速に進んでいるため、競合との優位性を保つためにも、AI技術の導入検討は必須の時代が訪れています。
当社HubSpotのカスタマーサポートでも、AI技術を段階的に導入することで、約40%のチケットをAIのみで解決することに成功しています。AI技術の導入を検討する際は、AIと人間の役割を明確にし、顧客視点でのサービス設計を忘れないようにすることが重要です。
自社のカスタマーサポートの課題に合ったKPIを検討しよう
カスタマーサポートの業務改善は、顧客満足度の向上に直結します。中長期的な企業の利益にも影響するため、重要度が高い施策といえるでしょう。
実際にKPIを設定する際には、自社のカスタマーサポートの課題に合ったものを選択しましょう。また、企業の方針や顧客が問い合わせをするチャネル、顧客の属性などによっても、KPIの基準は変わってきます。例えば、あえて時間を長くしてサポート内容の価値を高める考え方もあります。また、「ありがとう」と言われた回数をKPIとして設定することも可能です。
ビジネスにマッチしたカスタマーサポートのKPIを検討し、環境の変化に応じて変化させながら最終目標を達成する柔軟な考え方が大切です。
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