アクセス解析を導入している国内上場企業は、 9割近くにまで上ります。
しかし、Google アナリティクスを導入しても放置気味になっている、見ていたとしても、アクセスの増減だけを確認するに止まっている企業は多いのではないでしょうか。
アクセス解析はユーザーの行動を分析し、その裏側にある心理を推測するために行います。
解析ツールがどれほど優秀になったとしても、提供してくれるのはあくまでデータだけです。データそのものがユーザーの心理を教えてくれるわけではありません。表れた数値を分析し、いかにユーザーの心理を読み解き、具体的な施策へと落とし込むかが重要です。
本記事では、アクセス解析の基本的な定義や主な指標の解説、実際に施策へ繋げるためのコツを解説します。また、日本におけるアクセス解析の第一人者である小川卓氏のアドバイスもお届けします。
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アクセス解析とは?
アクセス解析とは、自社が保有するWebサイトにアクセスしたユーザーの行動を追い、そのデータを分析することを指します。
そして、アクセス解析を行うために必要なユーザーの行動データを拾ってくれるのが「アクセス解析ツール」です。
まずは、アクセス解析ツールがWebサイトにアクセスしたユーザーの動向をどのように把握するのか、どこまで追えるのかをおさえておきましょう。
解析ツールの仕組と特徴
Webサイトの情報は、それぞれのWebサーバーに置かれています。
ユーザーがGoogle ChromeやSafariなどのWebブラウザから目当てのWebサイトにアクセスする際、裏側では、対象のWebサイトのWebサーバーに閲覧リクエストが送られます。
Webサーバーからデータを取得できれば、無事にWebサイトを閲覧できる状態になるわけです。
こうしたWebブラウザとWebサーバーのやりとりは、すべてアクセスログデータとしてWebサーバー内に記録されています。
アクセス解析の発想は、当初Webサーバー内に保存されているアクセスログデータを何とか活用できないか、というところから生まれたようです。
アクセス解析を行う目的は?
アクセス解析は、何のために行うのでしょうか。私たちHubSpotでは、Webサイトにおけるユーザー体験の改善こそが、アクセス解析の目的だと考えています。
アクセス解析を通じてユーザー体験を改善すると、コンバージョン率の向上とトラフィックの増加が見込めます。それぞれを達成するために、以下に挙げた2つの視点を持ってアクセス解析に臨みましょう。
- コンバージョンに至ったユーザーの意図を推測する
- コンテンツを改善し、各チャネルからの流入を増やす
この2点についてくわしく見ていきましょう。
1. コンバージョンに至ったユーザーの意図を推測する
あなたは自社サイトを訪れたユーザーに、どのような行動を取ってもらい、何を提供したいでしょうか?
要するに、「どこをコンバージョンポイントにしているのか」を考えてみましょう。
例えば、B2B企業のオウンドメディアを例としてみてみましょう。
このオウンドメディアでは、自然検索やWeb広告を通じて流入してきたユーザーに、メルマガを登録してもらったり、ホワイトペーパーや無料eBookをダウンロードしてもらいたかったりするとします。
このようなケースでは、実際にコンバージョンしてくれたユーザーが、どうやって自社のWebサイトにたどりつき、どのような行動を経たのかを把握しましょう。
ユーザーの行動経路をしっかり理解すれば、コンバージョンしてくれるユーザーのインサイトを推測しやすくなるからです。
そこからWebサイトの導線やコンテンツを改善していけば、ユーザー体験がより良いものとなり、最終的に成果を高められるでしょう。
また、コンバージョンに至らなかった、特に直前で離脱してしまったユーザーの行動経路を追うのも有効です。
2. コンテンツを改善し、各チャネルからの流入を増やす
アクセス解析では、ユーザーがGoogle やYahoo!などの検索エンジンから訪問したのか、TwitterやFacebookから訪問したのかなど、どのチャネルから訪問し、どのページにたどり着いたのかを調査できます。
どのチャネルから訪れるユーザーが多いのか、どのコンテンツが人気なのかを知れば、ユーザーが求めるものをより理解しやすくなるでしょう。
例えば、リモートワークの導入に関する記事を閲覧しているユーザーの多くが、Facebook経由で記事に流入していることが分かったとします。
その場合、記事の主なユーザー像は「Facebookをよく利用するビジネスパーソン」で「リモートワークに関心が高い」であると推測できます。
そのような方に向けて、よりリモートワーク関連の記事を増やしたり、もしくはインサイドセールスやDXなど関心を持ってもらえそうなカテゴリの記事を増やしたりすれば、ユーザー体験を高められます。
すると、より多くの類似ユーザーに訪れてもらえて、アクセス数の増加に繋がります。
アクセス解析で見ておきたい主な指標は?
アクセス解析で使われる指標と意味を見ていきましょう。
アクセス数
アクセス数には大きく分けて「ユーザー数(ユニークユーザー数)」「PV数」「セッション数」があります。各々の数値が何を意味するか異なるため、使用する際は注意が必要です。
ユーザー数
ユーザー数は「ユニークユーザー数」と呼ばれることもあります。 Webサイトを訪れたユーザー数の中から、重複を除いた数を指します。 ユーザー数については、次の2点に留意しておいてください。
- 1日に同じユーザーが何度Webサイトを訪問しても、ユーザー数は「1」となる
- ただし、同じユーザーが異なるブラウザやデバイスでアクセスした場合には、別にカウントされる。
以下のような場合は、ユーザー数は「2」とカウントされる
- 一つのスマホ(もしくはPC)でGoogle Chromeで閲覧した後にSafariで閲覧した場合
- スマホで閲覧後、PCで閲覧した場合
PV数
PV数はページビュー数と呼ぶこともあります。PV数はWebサイト内のページが表示された延べ回数を指します。 以下のような場合は、PV数が追加されます。
- ユーザーが異なる記事を3本読んだ場合、PV数は「3」となる
- 異なる記事を2本読み、最初に読んだ記事を再度読むために、ブラウザの「戻る」ボタンを押した場合、PV数は「3」となる
- Webページの読み込みがうまくいかず、同じページ上でリロードした場合、PV数は「2」となる
セッション数
セッション(訪問数)とは、ユーザーがWebサイトへ訪れた回数のことです。セッション数は他の指標にも使われる重要な数値です。セッション数のカウントには、以下の定義があります。
- 30分以上Webサイト上で動きがない場合はセッション終了
- Webサイト離脱後、30分以内に戻れば「同一セッション」と計測される
- Webサイト離脱後、30分以内に異なる参照元や広告、メディアなどを経由してWebサイトに戻った場合は「別のセッション」と計測される
- 深夜0時でセッションが終了する。たとえば、23時55分に訪問しWebページの閲覧を続け、0時5分に別のページに遷移した場合、23時55分から23時59分までと、0時0分から0時5分までが「別のセッション」として計測される
ここまでに説明した「ユーザー数」「PV数」「セッション数」については以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
滞在時間
滞在時間とはWebサイトに来訪したユーザーが、Webサイトに留まる時間を指しています。「セッション時間」と呼ぶ場合もあります。
滞在時間を計測し、複数のWebページを比較することで、人気のあるWebページやWebページの読みやすさなどが測れます。また、平均サイト滞在時間を求めることで、ユーザーがWebサイトのコンテンツに満足しているかどうかを測る目安にもなります。
ただ、あくまで目安であり、長ければ長いほど良い、というわけではありません。
知りたい情報がすぐに見つかりその場でブラウザを閉じた場合は、滞在時間は短いものの、ユーザーに有益な情報を届けているよいコンテンツだと言えます。
平均滞在時間は以下の式で求めることができます。
平均滞在時間=訪問者の全滞在時間 ÷ セッション数
滞在時間については以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
回遊率
Webサイトを訪れたユーザーが、他のページを見て回ることを「回遊」と言います。1人のユーザーがWebサイトの中をどれだけ見て回ったかを示す指標が「回遊率」です。
回遊率は以下の式で求めることができます。
回遊率 = PV数 ÷ セッション数
直帰率
直帰とは、ユーザーが最初にアクセスしたページを見た後、そのままWebサイトを離れることを言います。直帰率は、直帰したユーザーの割合のことです。
直帰率が高くなる原因として、ユーザーが求めていることとWebページの内容がミスマッチを起こしていることが考えられます。
ページと合わないユーザーを流入させているのか、ページの内容がわかりにくいのか、などの原因が考えられるので、直帰率の高いページは改善が必要です。
直帰率は以下の式で求めることができます。
直帰率 = 直帰したセッション数 ÷ 全セッション数
離脱率
離脱とはユーザーがWebサイトを離れることを指しています。離脱したユーザーの割合が離脱率です。
各Webページの離脱率を割り出すことで、Webサイトのどのページを見て離脱したのか、Webページのどこに問題があるのかを割り出すことができます。
注意が必要なのは、「ユーザーが求めている情報を得て満足して離脱した場合」と「そのページに魅力がなくて離脱した場合」の両方があることです。離脱率の高低を機械的に見るのではなく、そのページの性格を確認しておくことが必要です。
離脱率の高さが問題にならないページとしては、購入完了ページや登録完了ページなどです。逆に、ユーザーが目標とする行動の途中で離脱した場合には、注意と改善が必要です。
離脱率は以下の式で求めることができます。
離脱率 = 離脱したセッション数 ÷ 全ページビュー数
回遊率、直帰率、離脱率については以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
コンバージョン率
コンバージョンとは、Webサイト上で目標とする行動をユーザーが取ることを指します。あらかじめ何を「コンバージョン」とするかを定めておく必要があります。コンバージョンに設定する行動には、以下のものが考えられます。
- メルマガ登録
- ホワイトペーパーダウンロード
- 会員登録
- 資料請求
- 購入
- 問い合わせ
Webサイトにアクセスしたユーザーのうち、どれだけがコンバージョンしたかを示す指標がコンバージョン率です。
コンバージョン率 = コンバージョン数 ÷ セッション数
コンバージョンの考え方については以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
アクセス解析レポートを作成するには?
アクセス解析ツールで確認した指標を、サイト改善に関わる他のメンバーにも共有したいときは、レポート機能を使ってデータを抽出できます。
ただしアクセス解析ツールで得られる指標は多岐にわたるため、まずレポート作成の目的を明確にし、得たいデータを決めてからレポートを作成しましょう。目的に沿って必要なデータを洗い出し、レポートに抽出します。
ほとんどのアクセス解析ツールにレポート機能が実装されているため、作成自体はそれほど難しくはありません。
アクセス解析レポートの目的とは
上司や他チームからアクセス解析のレポートを依頼された場合、何を知りたいのかを必ず依頼主に確認しましょう。
たとえば、コンテンツSEOを進めているチームの上司からの依頼は、投資対効果を確認したい場合が多いです。
また、他チームからの依頼は、解析データのうち一部の情報を確認したい場合が多いです。
このように、目的によって、どんなデータを抽出するのかが変わります。
ユーザー数やコンバージョン数、前年比のセッション数など、自社が重視する指標をしっかり理解した上で、それに関連するデータを抽出し、レポートに落とし込みましょう。どのようなレポートを作成するにしろ、以下の3つを軸に構成すると良いでしょう。
- 数値を共有する
- 数値の解釈を共有する
- 対照データと比較する
3点についてもう少しくわしく説明します。
数値を共有する
アクセス解析ツールで取得したデータの中から必要な要素を抽出し、数値をわかりやすくレポートに記載します。
数値の解釈を共有する
数値だけでなく、「その数値をどう見るか」という解釈もセットで共有しましょう。
同じ数値でも人によって見方が異なります。レポートは関連する他部署でも共有される可能性があるため、アクセス解析に不慣れな方が見てもわかりやすいような解説を心がけましょう。
対照と比較する
例えば「直帰率60%」という数値が得られた場合、その数値を見ただけでは、それが良い数値なのか悪い数値なのかは判断できません。そこで、何かとの比較が重要です。
よく使われる比較軸には次のものがあります。
- 時間(先月と今月、前年の同時期と今年、平日と休日)
- ユーザー(新規ユーザーとリピーター、男性と女性、未購入者と初回購入者と継続購入者)
- 環境(PCとスマホ、iPhoneとAndroid、Google ChromeとInternet ExploreとFirefox)
- 地域(関東と関西、都市圏と地方)
アクセス解析ツールからレポートを出力してみよう
Google Analyticsなどの代表的なアクセス解析ツールをはじめ、ほとんどのアクセス解析ツールにはレポート機能がついています。レポート機能を利用すると、レポート作成が簡単に行えます。
Google Analyticsであれば上記のようなレポートがホーム画面で作成されます。マイレポートにはデフォルトで以下のデータが表示されます。
- ユーザー
- 新規ユーザー
- セッション
- ユーザーあたりのセッション数
- ページビュー数
- ページ/セッション
- 直帰率
- 平均セッション時間
マイレポートはグラフやテーブルを追加するなどカスタマイズ可能です。また、マイレポートよりもさらにくわしく分析できるカスタムレポートも作成できます。
マイレポートやカスタムレポートについては以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
アクセス解析ツール
ここからは、無料・有料のアクセス解析ツールを紹介します。
無料・有料のアクセス解析ツールについては以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
無料アクセス解析ツール
無料のアクセス解析ツールは、非常に有名なGoogle Analyticsのほかにも、ユーザーの行動を色で可視化してくれる「ヒートマップ」とあわせて使えるサービスがあります。
それぞれのサービスを詳しく紹介します。
Google Analytics
すでに多くの企業が導入している無料のアクセス解析ツールです。
無料であるにもかかわらず、アクセス解析に必要な基本的な機能やレポートの作成に対応しています。
自身でカスタマイズする必要はありますが、解析したデータをビジュアライズすることも可能です。
以下の記事ではGoogle Analyticsの機能や導入方法を解説しているため、導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
Google サーチコンソール
Google Analyticsとあわせて、Google が提供しているアクセス解析ツールです。
Google サーチコンソールでは、WebページがGoogle 検索結果においてどのようなパフォーマンスを示しているのか、どの部分を改善できるのかなどを調べることができます。
Google Analyticsとあわせて活用することで、Webサイトの状況やユーザーの動きをより正確に把握できるようになります。
Ptengine
Ptengineは無料版と有料版がありますが、無料版でも3,000PVまでのアクセス解析ができます。
また、ユーザーの滞在時間やクリックした場所を色で可視化した「ヒートマップ」も1枚利用できます。
ヒートマップは細かなデータを追わなくても、直感的に把握できるメリットがあります。
ノーコードでWebサイトをエディットできる機能や簡単にA/Bテストができる機能など、独自の機能性を持っている点も特徴です。
ヒートマップについては以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
Similarweb
Similarwebは、自社サイトのアクセス解析に加えて、競合他社のアクセス状況と比較できるツールです。
Similarwebでは独自クローラーで毎月10億以上のページをクローリングするなどしてデータを蓄積しており、様々なデータをかけ合わせて推測値を出すことで競合との比較ができるようになっています。
無料版ではウェブトラフィックデータの収集期間は3か月、キーワード分析は上位10件などの制限がありますが、有料版ではデータの収集期間が最大3年、キーワード分析は500件以上が可能になるなど制限が解除されます。
有料アクセス解析ツール
有料のアクセス解析ツールには、無料のものにはない機能が搭載されています。
Google Analytics 360
Google Analytics 360は大企業向け統合マーケティングツールであるGoogle Marketing Platformの中に含まれている機能の1つです。
データの更新頻度が無償版のGoogle Analyticsが24時間であるのに対し、有償版の360は4時間です。
また1か月当たりのヒット数の上限が無償版が1,000万であるのに対し、有償版のヒット数が10億とスケールの違いに驚きます。ヒット数とは、Google Analyticsにおいては処理データの最小単位であり、ユーザーのあらゆるインタラクションが1ヒットとカウントされます。
大企業向けのサービスということもあり、Google Analyticsだけの価格は公開されていません。
Google Analytics 360の無料版との機能の違いついては以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
Adobe Analytics
Adobe AnalyticsはAdobeが提供するアクセス解析ツールです。こちらもGoogle Marketing Platformと同様、大企業向けのサービスです。
Adobe Analyticsの特徴としては、AIによる分析レポートが利用できることや、カスタマイズしやすい反面、利用者側にある程度の知識とスキルが要求されることが挙げられます。
費用 は「サーバーコール」という解析サービスへのデータの送信回数によって料金が決まる従量課金制で、3段階に分かれています。
具体的な価格は公開されておらず、お問い合わせが必要です。
AIアナリスト
AIアナリストはWebサイトの膨大なデータを分析し、改善点などを提示してくれる解析ツールです。
AIアナリストはGoogle Analyticsに連携することで使用するため、初期設定が簡単という特徴があります。あまり機能していない広告を教えてくれたり、コンバージョン率を上げるために誘導するべきページを教えてくれたりと、AIを駆使した改善提案をしてくれるのが大きな特徴です。
分析したい項目をあらかじめ設定しておけば、分かりやすいレポートを自動で作成できるため、集計工数を減らしつつ成果につなげる施策を組みやすくなります。
マーケティングアナリティクス&ダッシュボード
当社 HubSpotが提供するアクセス解析ツールは、CRMツールと連携できるため、マーケティングに強いという特長があります。Webサイトの分析が可能なだけでなく、顧客1人ひとりの行動を詳細に追うことができます。
(CRMツールとは、顧客の情報を管理できるツールを指します)
【Marketing Hub 料金プラン】
くわしくは「マーケティングアナリティクス&ダッシュボード | HubSpot(ハブスポット)」を参考にしてください。
上記にてご紹介した8つのツールの特徴を、以下の表にまとめましたので、ツール選びの参考にしてください。
アクセス解析に取り組む際のポイント
Webサイトを運用する最大の目的は、Webサイトを通じて得たい成果を得ることです。
より大きな成果を得られるように、アクセス解析によってWebサイト上でのユーザー体験をデータから分析・予測し、ユーザー体験を改善します。
そのため、アクセス解析をおこなう場合は、以下2つのポイントを心がけましょう。
- 解決したい課題や目的を明確にする
- 得られた数値をもとに仮説を立てる
アクセス解析の目的を明確にすることで、アクセス解析で見るべき数値が明らかになります。
アクセス解析を実施する上でのポイントについて、小川卓氏にも伺ってみました。
【小川卓氏プロフィール】
ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。KPI設計、分析、改善を得意とする。ブログ「Real Analytics」を2008年より運営。全国各地での講演は500回を突破。
HAPPY ANALYTICS代表取締役、デジタルハリウッド大学院客員教授、AVANCELLMONT CAO、UNCOVER TRUTH CAO、Faber Company CAO、日本ビジネスプレスCAO、SoZo最高分析責任者、ニフティライフスタイル 社外取締役、ウェブ解析士協会顧問。ウェブ解析士マスター。
著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。
引用:小川卓氏公式サイト
「分析は『改善』が前提です。仮に分析しても、そこから改善案を導けなければ、せっかくの分析も水の泡になりかねません。だからこそ、そもそも何を改善したいのか、改善策のアイデアが先にあった方が良いでしょう。それを裏付けるために、データを用いて分析を行う。これにより、改善策のアイデアの妥当性が判断できます」(小川氏)
また、改善策のアイデアが浮かばない場合は、得られたデータをもとに仮説を立てることで、その仮説を元にWebサイトの改善策を立案しましょう。そうすれば、改善策の検証を繰り返すというPDCAサイクルを回せます。
「例えば、読了率が高い記事と低い記事を比較することで、読まれる記事のポイントが見えてくるかもしれません。文章の長さ、テーマ、タイトル、読まれている記事には、何かしら理由があるものです。データを軸に読まれる記事の共通項を見つけ出し、仮説を立てて地道に検証を繰り返すことで改善につなげられるでしょう。例えば読了率が高い記事は、2画面に1回見出しが入っている、画像が複数枚使われているなどの共通項があるかもしれません。」(小川氏)
また、アクセス解析を行う際に持っておきたいスタンスがあると小川氏は指摘します。
「仮説が100%当たることはほぼありません。実際は3割は想定通りの結果が出て、残りの1割でヒントを得られれば良い方です。しかし、その1割を掴めるかどうかでサイト運営の成否が分かれます。だからこそ、根気強くアクセス解析を進める必要があるのです」(小川氏)
3つのタイプのアクセス解析ツール
これまでご紹介してきたアクセス解析ツールにも、いくつかの種類があります。ここでは、3つのタイプの特徴についてご紹介します。
1. 「サーバーログ型のアクセス解析ツール」の特徴
アクセスログデータの中には、ユーザーがWebブラウザ経由で送ったリクエストだけでなく、検索エンジンがWebサイトのデータを取得するために訪れた際のアクセスログも保存されています。
サーバーログ型のアクセス解析ツールでは、雑多なアクセスログデータから、Webブラウザからのリクエスト情報だけを取り出して解析を行います。
2. 「パケットキャプチャ型のアクセス解析ツール」の特徴
パケットキャプチャ型の解析は、Webサイトからのコンテンツデータのリクエストや、Webサーバー側からのデータの送信情報をキャプチャしてアクセスログデータとし、解析する仕組みです。
3. 「Webビーコン型のアクセス解析ツール」の特徴
サーバーログ型もパケットキャプチャ型も、元々ユーザーのアクセス情報を取得するために使われた技術ではありませんでした。それに対して、ユーザーのアクセス情報を取得するという目的で開発されたのが Webビーコン型のツールです。
Webビーコン型の場合、あらかじめWebページにトラッキングコードを埋め込んでおき、ユーザーが閲覧するたびにそのコードが読み込まれることによって、アクセス情報が送られます。
アクセス情報は、アクセス解析用の解析サーバーに送られ、そこからアクセスログデータに送られる仕組みになっています。
Google アナリティクスや、当社が提供するHubSpotのアナリティクスツールなど、多くのアクセス解析ツールがこのWebビーコン型を採用しています。
また、取得できるデータの内容もタイプによって変わります。
Webビーコン型ではリアルタイムのデータ収集が可能であり、ヒートマップなどの詳しいデータも収集できますが、サーバーログ型ではできません。
サーバーログ型では、クローラーのアクセスも解析できるという特徴があり、ログさえ残っていればツール導入前からのデータを取得することも可能です。
パケットキャプチャ型では、Webビーコン型と同じようにリアルタイムの収集能力に優れている他、画像や音声ファイル、PDFファイルなども個別に計測ができます。
ここまで紹介した3つの解析ツールの設置方法や計測精度、メリット・デメリットをまとめてみました。
ユーザーの生の声を聞く機会の仕組み化を
この記事の冒頭で、アクセス解析の目的は「ユーザー体験の向上」と書きました。
ユーザー体験を向上するためには、当然ユーザー理解を深める必要があります。ユーザー理解を深めるためには、アクセス解析のデータだけでなく、ユーザーからの生の声も聞いて定量・定性双方の情報を収集する必要があります。
小川氏も「仮説が浮かばないとき、自社のサイトを5分使ってもらうだけでもヒントが見えてくる」と語ります。
ユーザーの声を集める方法は以下のように様々な方法があるので、自社に合ったやり方を実施してみましょう。
>「 Google フォームだけじゃない!無料で使える高機能なフォーム作成ツール5選 」
>「 有益なアンケート調査を実施するには?基本的な手法とフローを解説 」
>「 顧客満足度調査向けのアンケート作成&実施後のポイントを解説 」