Webサイトは公開することがゴールではなく、公開後に分析・改善を重ねていくことが重要です。Webサイトの分析方法には「定量分析」と「定性分析」があり、それぞれ手法が異なります。主な分析手法を把握した上で、自社のWebサイトに必要とされる分析をしていく必要があります。
今回は、Webサイトの分析に役立つ手法と無料で利用できる分析ツール6選を紹介します。Webサイトを効果的に分析・改善するためのポイントとあわせて見ていきましょう。
Webサイトの分析は、分析ツールさえ導入すれば必ず効果が得られるというものではありません。分析に際して準備しておくべきポイントは次の3点です。
第一に準備しておきたい点として、分析の目的を明確化することが挙げられます。Webサイトの分析といっても、分析の対象や手法はさまざまです。自社のWebサイトが抱えている課題を抽出し、適切な改善策を選択することが分析のゴールであることを常に意識する必要があります。
Webサイト分析の大きな目的は、コンバージョンに至ったユーザーの意図を理解すること、およびコンテンツを改善して流入を増やすことにあります。そのために必要な分析の手法を適切に選択するためにも、まずは分析の目的を定めておくことが重要です。
分析を通じてどの数値を追っていくべきかを絞り込んでおくことも重要です。Webサイトの分析ツールを通じて判明する数値は、セッションやページビュー、直帰率など多岐にわたります。それらの数値を漠然と眺めていても、数値の変化がなぜ起きているのか、その結果を受けて次にどのようなアクションを取ればよいのか適切に判断できません。
重要度に応じて各数値に優先順位を付け、KPIを設定して改善を繰り返していく必要があります。追うべき数値を抽出可能なツールを選ぶためにも、事前に分析対象を決めておくことが大切です。
Webサイトの分析に取り組む期間を具体的に決めておくことも大切なポイントです。Webサイトの分析と改善に終わりはなく、漠然と続けていても成果は望めません。過去のデータと比較しながら、改善が図られているのかどうか客観的な視点で確認していく必要があります。たとえば「1週間単位で分析する」「月単位で分析する」といったように周期を決めておくとよいでしょう。
また、分析と改善の効果が表れるまでには一定の期間を要します。ある程度の期間を確保しなければ、その間のトレンドを把握しにくくなりがちです。分析期間を短く設定しすぎないよう注意する必要があります。
冒頭でお伝えした通り、Webサイトの分析手法には大きく分けて定量分析と定性分析の2つがあります。それぞれの分析手法について、基本を押さえておきましょう。
定量分析とは、具体的な数値データとして表れる結果をもとに分析を進める手法のことを指します。下記は定量分析の一例です。
数値として明確に表れるため、データにもとづいて客観的に分析・改善を進めやすい点が特徴です。複数のメンバーで分析に取り組む際にも、各担当者の主観や経験則が混在しにくく、分析・改善のフローを平準化しやすいというメリットもあります。
定性分析とは、数値以外の情報をもとに課題とその原因を分析したり、ユーザーニーズを深掘りする際に役立てたりすることを指します。下記は定性分析の一例です。
定量分析では把握しきれない部分を補うことが、定性分析の主な役割です。数値データが変化した理由や、伸び悩んでいる原因などを探る際に役立ちます。一方で、定性分析に用いられる要素は主観によって左右されやすい面があるため、客観性を担保できる調査方法を確立することが重要です。
無料で利用できるWebサイト分析ツール「Google アナリティクス」は、Webサイトの定量分析に欠かせない存在です。無料とは思えないほど多彩な機能がある一方、確認できる項目が多すぎて、最初はどこをどう見るべきかわからないと感じる方も多いでしょう。
実際のところ、基本的なWebサイト分析で見るべき項目はそれほど多くはありません。最低限確認しておきたい指標を見ていましょう。
まず見るべきは、サイト全体のアクセス数です。Google アナリティクスの左メニュー「レポート」から、「エンゲージメント」「ページとスクリーン」へ進むことで以下の画面を確認できます。
ここではサイト全体の表示回数(ページビュー)、ユーザー数、アクセス数の多いページなどが確認できます。右上の日付を設定することで、アクセス数を見たい期間を変えられます。
なお、Google アナリティクスは2023年7月から新プロパティ「GA4」へ完全移行しており、セッションではなくユーザー数ベースの分析に変わっています。セッション数も確認できますが、このページではユーザー数を確認できるようになっています。
ユーザーがどのように自社サイトへアクセスしてきたのかを知ることも、今後の施策を考える上で重要です。
Google アナリティクスでは、「レポート」「集客」「トラフィック獲得」と進むことで、以下の画面を確認できます。
それぞれの指標は、以下のような意味があります。
なお、Webサイトへの流入経路をさらに詳しく知るにはGoogle の別ツール「サーチコンソール」を利用するのがおすすめです。
サーチコンソールとは、Webサイトへの流入経路について分析できるツールです。
Google アナリティクスがWebサイトへ流入してからのユーザーの動きなどを分析するツールである一方で、サーチコンソールは流入するまでの分析を行います。
サーチコンソールでは、たとえば、オーガニック検索からの流入においてどのようなキーワードで検索されているか、SEO上問題のあるページはあるかなどをチェックできます。
Google アナリティクスでは、サイト内のユーザーの行動を可視化することもできます。
左メニューの「探索」から、初めて使う場合は「経路データ検索」から新しいデータ検索を作成することで以下のページを確認できます。
デフォルトでは「ステップ+1」の部分も「イベント名」になっているため、「ページタイトルとスクリーン名」に変更します。すると、セッションスタートからのユーザーのサイト内回遊が見えるようになります。
反対に、ゴールとなるページ(コンバージョンページ)から逆算し、どのように遷移してきたかを見ることもできます。
Google アナリティクスでは、コンバージョンを設定することでそれが達成されたかどうかを確認できます。
ページ右下の「設定」から「イベント」をクリックすると、以下のページを確認できます。
Google アナリティクスでは、ユーザーがサイト内で行った行動をすべて「イベント」として計測しています。イベントにはページビューやスクロールなどがあり、特定のページへのアクセスなど自身でカスタムすることもできます。
上図のページにてイベント数が計測されているので、コンバージョンとして設定したいイベントのトグルをオンにします。
その後、「レポート」「エンゲージメント」「コンバージョン」と進みます。
ここで設定した期間のコンバージョン数が確認できるので、ユーザー数あるいは表示回数などで割ることでコンバージョン率を算出できます。
以下コラムでは、Google アナリティクス(GA4)の使い方や分析内容を詳しく解説しています。
次に、定性分析に役立つ手法を紹介します。できるだけ客観性を担保しつつ、定量分析では計測しきれない傾向を捉えるには、次の5つの手法が効果的です。
ヒートマップとは、Webページのどこにユーザーの視線が集まっているのか、あるいはマウスが通っているのかを分析する手法のことです。
専用のツールを使うことで、サーモグラフィで温度差を見るように注目箇所を把握できます。ユーザーの行動や興味が集まっている箇所が可視化される点が大きな特徴です。
ヒートマップで分析を行うことで、コピーの位置やCTAの位置を改善できます。たとえば、ユーザーがあまり見ていない箇所にCTAボタンが設置されているようなら、より注目されやすい位置へと移動させることでコンバージョン率の改善が見込めるでしょう。
CRM(顧客関係管理)ツール、あるいはMA(マーケティングオートメーション)ツールを用いることで、Webサイトを訪れたユーザーのアクションをその前後とあわせて追跡する手法です。
CRM・MAは定量分析にも活かせますが、カスタマージャーニーマップとあわせてどこで離脱が起きているかを見ることで、定性的な分析も可能です。
ユーザーの行動を結果として捉えるだけでなく、行動の理由や背景に対して理解を深めることは、Webサイトの改善に大きく寄与します。
ユーザビリティテストとは、実際にWebサイトを触ってもらい、ストレスなくタスクを実行できるかを確認する手法のことです。
ユーザーが意図どおりにタスクを完了できるか確認し、操作に迷うところがあれば改善の余地があると捉えます。
よりユーザーの実態に即した課題を抽出し、改善を図りたい場合におすすめの手法です。
ヒューリスティック分析はユーザビリティテストと近いものの、実行者がUI・UXに精通した専門家である点が異なります。
専門家ならではの視点でUI・UXの欠点を洗い出し、ユーザビリティテストでは顕在化していない改善点を発見します。
Webサイトの視認性や可視性、操作性、導線の適切さ、ストレス要素などを詳細に分析したい場合に用いられる手法です。
ユーザーインタビューは、客観的に定性分析を進めるための手法として広く活用されています。インタビューの手法として挙げられるのが、デプスインタビューやグループインタビューです。
デプスインタビューとはグループインタビューに対して1対1のインタビューを指し、インタビュー相手とじっくり話しながら考えていることを引き出せる特徴があります。
グループインタビューでは、インタビュアーが複数人相手に同時にインタビューを行います。話題を広く取ってインタビューできる他、共通の話題や認識から話が弾む場合もあり、思わぬ意見を拾えることがあります。
Webサイトの分析に役立つ無料ツールを6つ紹介します。いずれも手軽に利用できる定番ツールです。ぜひ使ってみてください。
先ほどチェック項目を解説した「Google アナリティクス」は、アクセス分析に必須のツールです。
ユーザーが①どこから、②何を目的にサイトを訪れ、③何をどの時間見て、④目的を果たしたのかを解析できます。
「Juicer」は、人工知能がGoogle アナリティクスと連携してデータを解析し、ユーザーの属性や興味、心理などを教えてくれるツールです。
たとえばペルソナ分析では、データから導かれたユーザー像を提示してくれます。リードスコアリングでは、認知からコンバージョンに至るまでの各ステージにいる人数を確認できます。
「USER HEAT」はユーザーのマウスの動きや熟読エリア、離脱エリアなどをサーモグラフィのように色で表示するヒートマップツールです。
数値にできない行動が理解でき、コンテンツのリライトやデザインの改修に活用できます。
「WooRank(英語)」は、SEOの観点からサイトを解析するツールです。
入力されたURLのサイトについて、タイトル文字数やhタグ利用数など50の要素をもとにチェックして点数化します。SEO上弱い部分を見つけて改善するのに役立ちます。
「AIアナリスト」はGoogle アナリティクスと連携し、自動解析から改善提案まで行ってくれる解析ツールです。
これまでご紹介してきたツールは、改善を検討する上で必要なデータを抽出するものだったのに対し、AIアナリストは改善点まで提案してくれるという特徴があります。
「Content Hub」は、当社HubSpotが提供しているマーケティングソフトウェアです。
HubSpot独自のCMSを含むコンテンツ作成ツールですが、HubSpotのツール群と簡単に連携できるため、同一のプラットフォーム内でアナリティクスも利用できます。
ビジネス向けのテーマで作成したWebサイトを高度なアナリティクスで分析でき、レポートも自動で作成可能です。
次にWebサイトの分析・改善を行う上で押さえておくべきポイントを5つ解説します。
分析の結果、課題を発見できたと同時に解決策も考えるようにしましょう。
Google アナリティクスを巡回して課題をいくつか見つけたものの、そのまま放置してしまって手をつけていない……ということにならないよう、ネクストアクションもセットで考えるとよいでしょう。
発見したそれぞれの課題について、具体的な対策をできる限り考えましょう。
主観的な解釈ではなく、客観的事実にもとづいて分析を行いましょう。
アクセス解析ツールから得られたデータをどう受け止めるかは担当者次第。自分の仮説に合わせて都合よく解釈してしまうのはよくあることです。
主観を完全に排除するのは難しいため、チームメンバーの意見やユーザーインタビューなどを通じて、できる限り客観的な視点を取り入れるようにしましょう。
分析によって得られたデータは、過去のデータとの比較が大切です。
日々のPV数やセッション数の増減に目が行きがちですが、週単位・月単位など長期的にデータを比較し続けることで、施策の効果やトレンドなどを把握できるようになります。
アクセス数の変動はWebサイト自体だけでなく、外部要因が影響する場合もあります。
たとえば、Google では検索アルゴリズムを見直す「コアアップデート」を年に数回実施しています。これにより検索結果の順位が落ち、自然検索による流入が減少することはよくあります。
近年あった大きな外部要因としては、新型コロナウイルスの影響があります。また、競合他社の広告が自社のWebサイトに影響することもあります。
こうした外部要因まで広く考慮し、アクセス数の変動のうち本当に自社が原因である部分を見極めることが重要です。
PDCAを継続的に回し続けることも大切です。期間限定公開などの一部の例外を除き、ほとんどのWebサイトは長期的に運営されるものであり、それに伴い改善施策も長期間かけて取り組まなければいけません。
アクセス分析についてのさらなるコツについては、以下のコラムをご覧ください。
また、以下のコラムではホームページの改善方法全般について解説しています。こちらもあわせてご参照ください。
まず必要なことは自社Webサイトの分析ですが、継続的に成長していくためには競合他社のWebサイトの分析も重要です。
マーケティングにおいて、競合他社の動きを分析しない手はありません。
Webサイトにおいても同様であり、競合他社のWebサイトも分析することで自社にない要素、競合他社が行っている戦略などがわかるようになります。
また、ターゲットのニーズを分析することにもつながります。
競合サイトの分析ツールとして有名なものの1つが、「SimilarWeb」です。
SimilarWebは、競合サイトのアクセス状況をリサーチできるツールです。アクセス数だけでなく、流入キーワードや外部リンクまで検索可能ですが、無料版では対象期間が1か月と短くデータ不足になることもあります。
より長い期間の分析がしたい場合は有料版に登録しましょう。
競合他社の分析において、気軽に始められるのはアクセス数の比較です。
分析のやり方としては、たとえば同業であれば繁忙期が被ると考えられますが、自社Webサイトではあまりトラフィックが増えていないのに競合他社では増えているとすると、自社にはない要素や施策があると考えられるでしょう。
競合サイトを分析するためのさらに詳しいコツや、その他の便利なツールについては、以下コラムをご覧ください。
今回はWebサイトの主な分析手法や役立つツール、分析・改善に取り組む際のポイントなどを中心に解説しました。
Webサイトの分析そのものが目的ではなく、手段でしかありません。数値の収集・分析に終始するのではなく、データの背後にあるユーザーの欲求や心理について深く考察していくことが重要です。この記事で紹介した分析・改善のポイントを参考に、粘り強く試行錯誤を繰り返すことでWebサイトの改善を実現してください。