自社ホームページを訪れたユーザーの属性や行動を把握し、それらに合わせた施策を打つことは、目的達成のために必要不可欠です。ホームページ運営に関わるならば、解析、改善の基本は理解しておきたいところです。

本記事では、ホームページ解析・改善の基本的な流れや有用なツール、重要ポイントを解説します。
ホームページ解析・改善の流れ

まずは、ホームページ解析・改善の流れをおさえましょう。基本的には、以下の5つのステップを繰り返します。
1:現状分析
まずは現状分析として、ホームページのアクセス状況やユーザーの行動データを調べていきましょう。また、サイトの使い勝手や改善すべきポイントなど、実際に操作した人の感想や意見も積極的にヒアリングするようにしましょう。
以下が、サイトの現状を把握するための定量および定性分析のアプローチ例になります。
定量分析
- Googleアナリティクス分析(サイト内滞在時間、バウンス率、クリックスルー率、コンバージョン率、トラフィックソース、トップランキング、ページ合計ページビュー等)
- ヒートマップ分析
- A/Bテスト実施
- SEO分析
定性分析
- ユーザーテスト
- ユーザーアンケート/インタビュー
- 自社内各ステークホルダーへのヒアリング
2:問題点の整理
次に、上記の分析結果から見えたサイトの問題点を整理しましょう。トップページの直帰率が高すぎるのかもしれませんし、重要ページからのコンバージョン率が低いのかもしれません。
問題は複数あるケースが多いので、できる限り洗い出すようにしましょう。
その際に気をつけたいのは、問題の「親子関係」をつけること。似たような問題はグルーピングしたり、「これらが解決すれば、これが解決する」といった具合で問題をツリー構造状に可視化してみると、より全体像を把握しやすくなります。
3:問題解決のための仮説構築
問題点の洗い出しと整理が完了したら、具体的にどうすればそれらを解決できるのか仮説を立てましょう。
例えば、「問い合わせ数が少ない」という問題がある場合、原因とそれに対する仮説として以下のような項目が考えられます。
- 流入数が少ない→SEO施策を見直す・問い合わせフォームの設置場所がわかりにくい→ナビゲーションの改善・CTAボタンを増やす
- フォームの入力工数が多く途中で離脱しやすい→フォームの項目を見直し、入力の負担を軽減する
仮説を考える際に大切なのは「どこを改善すればインパクトが大きいのか」を念頭に置くことです。例えば上記の例の場合、そもそもの流入数が少ないのに入力フォームの改修ばかりに注力しても効果は薄いでしょう。
定量・定性調査で得た情報をもとに、どこを重視するべきかを見極めましょう。また、そこから仮説を実行することでどれだけの成果があげられそうか、具体的な数値目標を設定しておきましょう。
4:仮説の実行
次は、ここまで立てた仮説を実行するフェーズです。
このフェーズで気をつけたいのは、なるべく同じ環境の元で実行すること。前提が異なる環境で仮説を実行しても、結果の違いがアクションによるものなのか環境によるものなのか、区別がつかないからです。
5:仮説検証・分析
最後に、その効果を検証し分析します。
どの仮説にどれだけの効果があったのか、それは仮説段階の想定と比べて高いのか低いのかなどを検証します。もし仮説と大きく異なる結果が出た場合は、外れた原因を分析してみましょう。
分析していくと、また新たな問題点と仮説が出てくるはずです。それらをまだ実行し、検証してを繰り返していきます。このサイクルが、ホームページ解析・改善の大きな流れになります。
ホームページの分析・解析に役立つツール7選
それでは、ホームページの分析と解析を進めるために、具体的にどのようなツールを使えば良いのでしょうか?以下、7つのサービスをご紹介します。

「Googleアナリティクス」とは、米Googleが提供するWebアクセス解析ツールです。サイト訪問者数やページごとの訪問者数、流入元など、様々なアクセス関連指標を確認できます。無料とは思えないほど高性能で、多くの企業がGoogleアナリティクスを利用しています。
「Google Analytics 360」という有料版もありますが、大規模サイトの解析を進めるのでなければ、無料版の利用で十分でしょう。
いずれにせよ、ホームページの解析と改善を進めるのであれば、Googleアナリティクスは必須のツールと言えます。

「Googleサーチコンソール」も、米Googleが提供する高機能サイト解析ツールです。
上述のアナリティクスが「サイト流入後」のユーザー行動を解析するツールなのに対し、サーチコンソールは「サイト流入前」のユーザー行動を解析するツールです。Googleでの検索結果や表示回数、検索ワードなど、検索エンジン上でのユーザー行動をチェックできます。
つまり、SEO解析と対策を行うために必須のツールであると言えますね。
こちらもアナリティクスと同様、無料で利用することができます。

「PageSpeed Insights」も、米Googleが提供するツールです。Webページの表示速度を計測してくれます。
速度は100点満点で評価され、モバイルとパソコンそれぞれのデバイスに対して、修正案を提示してくれます。「画像を最適化する」や「CSSを縮小する」など、具体的な提案を優先順位別に提案してくれるので、サイトスピードの改善施策を進めたい場合に必須のツールになります。
こちらも無料で利用することができます。

「モバイルフレンドリーテスト」も米Googleが提供するツールで、スマホ・タブレットで見やすいかを計測してくれるサービスです。
トップ画面の入力欄にWabページURLを入力して[URLをテスト]をクリックすると、Googleの判断基準によりモバイルでの表示が適切かの診断結果が表示されます。問題ない場合は「このページはモバイル フレンドリーです」、問題がある場合は「このページはモバイル フレンドリーではありません」と表示され、併せてその理由も明記されます。
ホームページはモバイルからの閲覧が前提になってくるので、非常に重要な指標だと捉えておきましょう。
こちらも無料で利用することができます。

User Heatは、ヒートマップ解析を行えるツールです。ヒートマップとは、Webサイト訪問者がどこをよく見ているのか、どこで離脱しやすいのかをサーモグラフィーを利用して見える化したものです。
熟読されているエリアを色のグラデーションで分けて見える化した「アテンションヒートマップ」や、ユーザーのクリック状況を色で重み付けする「クリックヒートマップ」など、ユーザー行動を直感的に把握できる点が大きなメリットになります。
基本的には有料ツールが多いのですが、株式会社ユーザーローカルが提供するUser Heatは、1サイトのみ月間30万PVまでなら無料で利用できます。

「SimilarWeb(シミラーウェブ)」は、イスラエル発の競合Webサイトデータ分析ツールです。
競合他社のホームページやサービスページについて、どれくらいのアクセス数があるのか気になりますよね。SimilarWebを使うと、運営会社が世界中に張り巡らした計測プラグラム等のデータをもとに、該当サイトの推定アクセス数やPV数を弾き出してくれます。
もちろん完全に正しい情報ではありませんが、競合調査の目安として参考にできる内容です。
無料版と有料版があり、有料版の方が圧倒的に多くの情報量を受け取ることができますが、競合の傾向のみざっくりと調べたいときはまずは無料版から始めるのも良いでしょう。

「SEOチェキ」とは、他WebサイトのSEO状況をチェックできる定番の無料SEOツールです。SEOに役立つさまざまな情報を調査するのであれば、まずはこちらをチェックするマーケターの方も多いのではないでしょうか。
サイトSEOチェック、検索順位チェック、キーワード出現頻度チェック、発リンクチェック、Whoise情報チェック、HTTPヘッダ情報チェックの6機能がベースとして用意されており、サクサクと結果を表示してくれるので、ストレスなく調査を進めることができます。
ホームページを改善する上で意識すべきポイント

最後に、ホームページの改善において優先度の高いポイントを解説します。
1. サイトの表示速度
どんなに良いコンテンツであってもページがなかなか表示されないとなると、ユーザーの離脱を招いてしまいます。1ページだけ参照するのであればさほど問題にならなくても、サイト内を回遊する場合はいちいち表示が遅いので、訪問者にとっては相応のストレスになります。
サイトの表示速度に問題がある場合は、なるべく早く抜本的な対応をするようにしましょう。
2. ユーザビリティ
ホームページのUX設計は非常に重要です。ユーザーがせっかく自社サービスに興味を持ってWebサイトに訪問しても、どこから問い合わせをすれば良いかわからない構造だともったいないですよね。
サイト訪問者がどんな目的で訪問し、どんな情報を欲しているのかを継続的に調査して改善をすることが、ユーザーフレンドリーなUX構築への第一歩になります。
3. モバイルフレンドリー
こちらも先述の通り、ホームページ含めたWebサイトはモバイル参照が前提となります。例えば、スマホでサイトを表示した時に、そのままスマホ画面サイズに縮小されたような仕様だと、訪問者にとって見づらいだけでなく、自社に対する印象を悪くしてしまう可能性があります。
上でご紹介した「モバイルフレンドリーテスト」を活用して、モバイルフレンドリーなホームページになっているか、最低限のチェックは済ませておくようにしましょう。
4. コンテンツの信頼性と有用性
ホームページは外側のデザインだけでなく、当然ながら中身のコンテンツの“質”も大切です。可能な限り、その道の専門家や知見のある人が情報を発信して、信頼性と有用性のあるコンテンツを構築するようにしましょう。
5. CTAのスムーズさ
ホームページの目標であるCV率を最大化するためにも、CTA(Call-To-Action)、つまり「行動喚起」がスムーズになされるように設計することも大切です。
ユーザーは実に多様な動機を持ってホームページを訪れるます。それぞれの動機に応じてCTAを設置するようにしましょう。
6. 入力フォームの簡潔さ
お問い合わせなどの入力フォームが簡潔であることも、ホームページ改善施策として大事です。
入力フォームは、顧客と企業の接点としてWebサイトにおいて最も重要なページの一つです。ここが煩雑だと、訪問者は「やっぱり問い合わせしなくていいや」と簡単に離脱してしまいます。内容によっては、入力フォームでの離脱率が70%を超えるという話もあるくらいです。
一方で、簡潔すぎると今度は必要な情報を取得できず、結果として最終成果までの道のりを伸ばしてしまうので、自社にとって適切な「入力フォームの簡潔さ」を探りましょう。
ユーザーファーストをベースに改善し続ける
改善する上で留意したいのは、「ホームページの解析・改善は百発百中ではない」「ユーザーが心地よく利用できるか」ということです。
例えば、「トップページの離脱率が高すぎる→サイトの表示速度が遅いからでは?→そういえば画像の容量がすごいことになっている→ならば圧縮しよう」という流れで解析〜改善を実行したとします。
仮にサイトの表示速度が改善したとしても、肝心の離脱率は下がらなかった…という結果は充分にあり得るわけです。離脱率が下がったとしても、もっと効果の高い施策が他にあるかもしれません。
また、改善策を考える場合はデータだけを見て判断してしまいがちですが、「人間としての感性」を忘れてはいけません。例えば、コンバージョン率が低いからといってホームページのあらゆる箇所にCTAボタンを設置した場合、一人のユーザーとして訪問した際に良い印象を抱くでしょうか。
定量・定性の双方を踏まえて仮説を立て、ひたすらPDCAを回す。基本的な部分ではありますが、ここを守っていれば成果改善につながるはずです。

