マーケティング部門と営業部門でリードの引き渡しを行う際、部門間に溝が生まれてしまうケースは珍しくありません。リードの抽出方法が不明瞭で、マーケティング部門と営業部門にでリードの認識にズレが生じている場合が多いようです。
このような課題を解決するには、今回ご紹介するMQLとSQLの理解が必須です。MQLとSQLの理解が進めば、マーケティング部門と営業部門が共に連携し合ったうえでよりフォーカスするべきリードの選別が可能になります。
今回は、MQLとSQLの違いやそれぞれの特徴を解説します。MQL・SQLを抽出するうえで生じやすい課題とその解決策も紹介します。マーケティングと営業の連携に悩まれている方はぜひ参考にしてみてください。
MAとコンテンツを活用したリードナーチャリングガイド
〜maでリードナーチャリングを行う5つのステップとは?〜
「MQL(Marketing Qualified Lead)」とは?
MQL(Marketing Qualified Lead)とは、マーケティング活動によって創出されたリードのうち、営業部門へ引き渡すべきと判断された見込み客、つまり「見込みが高いと判断されたリード」を指します。
マーケティング活動では、広告流入や資料ダウンロードなどによって創出されたリードにより興味・関心を持ってもらうために、メール配信やセミナーで有益な情報を提供します。その結果、課題解決に合うサービスとして一定以上関心が高まり、そのうえで話を聞きたいという反応を示した見込み客はMQLだと判断できます。
MQLとSQLの違い
MQLと似た言葉にSQLがあります。SQL(Sales Qualified Lead)とは、マーケティング部門から引き継いだMQLをさらに精査したうえで、営業部門でフォローすべきと認定した見込み客のことです。
マーケティング部門で精査したMQLは営業部門やインサイドセールス部門に引き渡されます。その後、インサイドセールス担当者などが電話でクオリファイドリード(自社製品に強い関心を示す見込み客)であることを確認し、SQLかどうかを判定する仕組みです。
営業活動におけるMQLの重要性
MQLは、単に効率的に売上を増やしていくことだけに寄与するだけではありません。企業と顧客が長期的に良好な関係を築くための第一歩となる重要なステップなのです。
MQLの重要性について、詳しく見ていきましょう。
営業活動の効率化につながる
MQLを的確に抽出できれば、営業活動において見込みのあるリードにのみ時間を割けます。つまり、MQL抽出の手順を踏むことで営業効率が向上するということです。
営業活動では、あらゆる見込み客に対して闇雲にアプローチすることもできますが、この方法では思ったように成果はあがりません。限られた人員で無作為の見込み客にアプローチするのは非効率的だからです。
一方、的確にMQLの抽出ができていれば、見込み客の傾向をある程度理解したうえでアプローチを行えます。営業効率が高まった結果、成約率の向上が見込めるのもメリットの一つです。
見込み客とより良い関係を構築することに注力できるに
MQLになるのは、商談化する確率の高いリード、つまり、自社製品を必要としている可能性が高い見込み客、といえます。そのような、優先的にアプローチすべき見込み客が浮き彫りになると、「時間をかけるべき(自社サービスを必要とする)リード」と「かけるべきでない(自社サービスを必要としていない)リード」が選別でき、見込みの高いお客様とコミュニケーションをとれる時間(商談やヒアリングなど)が増えます。つまり、今まで以上に見込み客との関係性を深めることができるわけです。
MQL・SQLの運用で起こりがちな課題と解決策
MQLやSQLを創出する際、マーケティング部門と営業部門で別々の課題が露わとなり、部門間に溝が発生してしまう恐れがあります。各部門で想定される課題を明確にし、部門間で相互連携を図ることで、こうした問題を未然に防ぐことができます。
MQL・SQL運用時に起こりがちな課題とは?
まずはマーケティング部門と営業部門で起こりがちな課題を解説します。
マーケティング部門側
マーケティング部門では、せっかくMQLを創出したとしても、その情報が売上につながっているかどうかがわかりづらいケースもあります。そうなれば、MQLを再び創出するときに精度が向上しない課題を抱えてしまいます。
また、引き継いだMQLが営業部門でフォローされないのも課題の一つです。MQLの抽出に時間がかかればかかるほど、フォローされなかったときに見込み客のモチベーションが下がりやすくなります。
営業部門側
マーケティング部門で上記のような課題が発生した場合、必ずしも営業部門に非があるわけではありません。マーケティング部門が課題に悩まされているのと同様、営業部門でも、商談に発展しないリードが送られている、過去のコミュニケーション履歴が不明瞭、といった不満を抱えている恐れがあるのです。
こうした課題は、総じて部門間の連携がとれていないときに生じます。かと言って翌日からすぐに部門間の連携を強化するのは難しいため、連携強化をサポートしてくれるツールの力を借りるのがよいでしょう。
どのように解決すればいいのか?
ここでは以下3つの解決策を解説していきます。
- CRMを活用した部門間の情報共有
- MAを活用したリードのスコアリング
- ABMを活用した部門間の連携
CRMツールを活用した部門間の情報共有
CRM(Customer Relationship Management)とは、「顧客とのやりとりの情報を集約して管理する」という概念を差します。CRMツールとして、見込み客に対する営業担当のアプローチ履歴や顧客の購買履歴など、お客様との関係性を示すデータを一元管理するシステムがあり、「顧客管理システム」とも呼ばれます。
CRMツールは、顧客だけではなく過去にアプローチをかけた見込み客の情報もデータベース化されているため、これまでのコミュニケーションの履歴をマーケティング部門と営業部門で情報を共有することで部門間の連携を強化できます。
MAツールを活用したリードのスコアリング
MA(マーケティングオートメーション)ツールに搭載されているスコアリングを駆使することで、部門間で生じる問題を抑制できます。
スコアリングとは、社内に蓄積された多数のリード情報から見込み度の高いリードを抽出する方法です。ウェブサイトへの訪問やホワイトペーパーのダウンロードといった行動履歴をもとに、各リードの点数付けを行います。
つまり、スコアリングを実施することでより確度の高いMQLを創出できるというわけです。MQLの質が高くなれば、「マーケティング部門から送られてくるリードの質が低い」といった課題の解消につながります。
なおスコアリングについては以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味がある方はぜひご覧ください。
ABMを活用した部門間の連携
ABM(Accout Based Marketing)とは、販売活動の優先順位が高い企業、組織(アカウント)に営業・マーケティングリソースを集中し、各アカウントのニーズを深く理解したうえで、各企業に寄り添ったアプローチを進める戦略です。
ABMは、受注確度の高いアプローチ先の抽出からフォローに至るまで、マーケティング部門と営業部門が同じ情報を共有することを基本としています。部門間で常に同じリード情報を共有しながら営業活動を行うため、MQL・SQLにおける部門間の溝が発生しづらくなります。
なお、当社HubSpotが提供する製品群(HubSpot CRM(無料)、Marketing Hub、Sales Hub)を活用すれば、CRMを軸にマーケティング部門と営業部門のスムーズな連携を実現しやすくなります。ABM機能も実装されているため、より相手に寄り添ったアプローチが可能です。気になる方は、まずは無料のCRMツールから気軽に試してみてください。
HubSpotが提唱する「ライフサイクルステージ」を活用してみよう
MQLやSQLをより深く理解するには、まずマーケティングプロセスや営業プロセスを把握することが大切です。当社HubSpotでは、潜在顧客が自社のファンに至るまでのプロセスを、以下のようなライフサイクルステージで定義しています。
- サブスクライバー:メールなどでの定期的な情報受信を許諾した人
- リード:何らかのやり取りを経て、情報受信以降の段階にある人
- MQL:マーケティング部門から営業部門へ引き渡し可能だと判断された見込み客
- SQL:営業部門から、受注確度が高いと判断された見込み客
- 商談:営業部門がフィールドセールスを実施する見込み客
- 顧客:完了済の取引が1つ以上あるお客
- エバンジェリスト:リレーションシップを深め、自社のファンとなった顧客
ターゲットが現在どの段階にいるのかを把握したうえで、最適な営業活動やマーケティングを実施していきましょう。
部門間の連携を強め、見込み客へ最適なアプローチを
価値のあるリードを選別し営業効率を高めるためには、MQLとSQLの理解が必須です。
MQLの質が上がれば、見込み客は自社の課題解決に繋がる商談に時間を割けるので、満足度が向上します。さらに、企業側は一定の購買意欲があるリードだけと商談ができるため、営業活動の効率化とリードへの提供価値の向上が見込めます。
上記のような成果を出すためには、マーケティング部門と営業部門の連携が欠かせません。今回お伝えしたCRMやMA、ABMを活用し、部門間の垣根を越えて効率的なアプローチを行っていきましょう。