ARPUとは?計算方法や改善策、ARPPU・ARPAとの違いを解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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ARPU(アープ)とは、「ユーザー1人あたりの平均売上高」を表す指標です。ビジネスで一般的に用いられるKPIとして「ユーザー数」があげられますが、市場が飽和状態に陥っている市場では新規ユーザーの創出自体が難しく、KPIとしてうまく機能しないことがあります。

ARPUとは?計算方法や改善策、ARPPU・ARPAとの違いを解説

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一方の「ARPU」は、既存ユーザーも含めたKPIとして設定できるため、より現実的な戦略が立てやすくなります。

本記事では、ARPUの意味や計算方法、改善策を考える際のポイントをご紹介します。ARPUの向上は同時に顧客満足度の向上を意味するため、マーケティング担当者は必見です

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    ARPU(アープ)とは

    ARPU(アープ)とは

    ARPU(アープ / Average Revenue Per User)とは、「ユーザー1人あたりの平均売上高」を表す指標のことです

    もともとARPUは、月額課金モデルを採用する通信キャリア事業者の間で活用されていました。通信キャリア業界では、NTTドコモ・au・ソフトバンクの3社がマーケットシェアを独占しており、市場の飽和とともに新規顧客の創出が難しくなりました。それを受けて、ライバル企業はユーザー数を増やすことよりも、ARPUの数値を改善して業績の維持・向上をはかろうとしました。

    近年は、通信キャリア業界に加えて、SaaSビジネスや課金モデルを採用するアプリサービスでも、ARPUを重視するケースが増えています。このようなビジネスモデルでは、商品やサービスが普及するにつれてユーザー数が伸び悩む傾向があるからです。

    ユーザー数が増えなくても、1人あたりの平均売上高を増やすことで売上を増やすことが可能になります
     

    ARPUの重要性

    事業の成功のためにどのようなKPIを定めるかは企業によって異なりますが、なかでも課金モデルを採用する企業にとって、ARPUの重要性はひときわ高いといえます。なぜなら、ARPUを分析することで、商品・サービスの品質やカスタマーサクセスの改善につながる大きなヒントを得られるからです。

    実際にARPUを活用する際は、複数のKPIとの相関性を分析します。

    例えば、特定の測定期間中にARPUと顧客継続率、NPS(顧客ロイヤルティを評価する指標)の3つのKPIが同じように伸びていれば、相関性が高いという仮説が立てられます。そのため、いずれか1つの指標に対して仮具体的な課題解決策を立案することで、相関性の高いすべてのKPIを改善できる可能性があります。

    ARPUは、KPIのなかでも売上の向上に直結する仮説や課題解決策を立案しやすいのが特徴です。ARPUそのものや、ARPUと相関性の高いKPIを改善すれば、安定した売上の確保へと結び付くでしょう。
     

    ARPPUやARPAとの違い

    ARPUに似た用語に、「ARPPU」や「ARPA」があります。両者はARPUをさらに細分化した指標なので、特定の業種や業態によっては、ARPPUやARPAを活用したほうが有効なケースもあります。それぞれの用語の定義を詳しく見ていきましょう。
     

    ARPPU

    ARPPU(Average Revenue Per Paid User)とは、「有料課金ユーザー1人あたりの平均売上高」を表す指標です。

    無料プランと有料プランのサービスを提供している場合や、非課金ユーザーと有料課金ユーザーが存在するモバイルアプリを取り扱っている場合、ARPUの代わりにARPPUをKPIに設定することがあります。

    ARPPUの計算方法は次の通りです。

    • ARPPU(円)= 総売上高 ÷ 有料課金ユーザー数

    例えば、スマートフォンアプリの1日あたりの総売上高が10万円で、有料課金ユーザー数が50人であれば、ARPPUは2,000円/日となります。ARPPUは、特定の期間における有料課金ユーザーあたりの課金額を求めたい場合に役立ちます。
     

    ARPA

    ARPA(Average Revenue Per Account)とは、「1アカウントあたりの平均売上高」を表す指標です。

    特にSaaSの場合は、1アカウント単位の契約で、複数のユーザーが同時にサービスを利用できるケースも珍しくありません。このようなケースでは、ARPUではなく、ARPAを活用したほうが正確な平均売上高を算出できます。

    ARPAの計算方法は次の通りです。

    • ARPA(円)= 総売上高 ÷ 契約アカウント数

    例えば、1つのアカウントで同時に10ユーザーが利用できるSaaSを提供している場合、「総売上高 ÷ 総ユーザー数」の計算式を用いるARPUを使用してしまうと、契約単位ごとの正確な平均売上高を計算することができません。そのため、自社のビジネスモデルに合わせてKPIを使い分ける必要があります。
     

    【ビジネスモデル別】ARPUの計算式

    ARPUは次の計算方法で算出できます。

    • ARPU(円)= 総売上高 ÷ 総ユーザー数

    ただし、利用課金モデルを採用するSaaSビジネスや、広告収入で事業を行っている企業の場合、より正確なARPUを算出するために上記とは別の計算式が必要です。

    【ビジネスモデル別】ARPUの計算式

     

    1. 利用課金モデル

    利用課金モデルには、サブスクリプション型のSaaSや、ゲーム内アイテム・ガチャ券を購入できるモバイルアプリなどが該当します。利用課金モデルの場合、次の計算式を用いたほうが、より正確なARPUを算出できます。

    • ARPU(円)= 商品単価 × 平均購入点数 × 平均購入頻度 × 有料課金ユーザー率
    • 有料課金ユーザー率(%)= 有料課金ユーザー数 ÷ 総ユーザー数 × 100

    例えば、ユーザーが自分の好きなタイミングで課金できるゲームアプリを想定し、次の条件でARPUを計算してみましょう。

    • ゲームアプリの利用状況(月次)
      • 商品単価:1,000円
      • 平均購入点数:3点
      • 平均購入頻度:2回
      • 総ユーザー数:10,000人
      • 有料課金ユーザー数:4,000人
    • ARPUの計算式
      • 有料課金ユーザー率 = 4,000人 ÷ 10,000人 = 40%
      • ARPU = 1,000円 × 3点 × 2回 × 40% = 2,400円
         

    2. 広告表示課金モデル

    広告表示課金モデルとは、自社が提供するモバイルアプリやWebサイトに広告を設置し、画面にその広告が表示されるたびに収益が発生するビジネスモデルです。広告表示課金モデルでは、次の計算式でARPUを算出します。

    • ARPU(円)= ユーザー1人あたりの広告表示平均回数 ×(CPM※ ÷ 1,000)
    • ユーザー1人あたりの広告表示平均回数(回)= 広告表示合計数 ÷ 総ユーザー数
      ※CPM=画面に広告が1,000回表示された際の広告単価

    例えば、自社開発のモバイルアプリに広告を掲載し、広告収益でビジネスを展開するとします。1か月の広告表示回数が1,000万回、総ユーザー数が20,000人、CPMが100円であれば、次のようにARPUを計算します。

    • ユーザー1人あたりの広告表示平均回数(月次) = 10,000,000回 ÷ 20,000人 = 500回
    • ARPU = 500回 ×(100円 ÷ 1,000)= 50円
       

    3. 広告クリック課金モデル

    広告クリック課金モデルとは、自社が提供するモバイルアプリやWebサイトに広告を設置し、その広告がクリックされるたびに収益が発生するビジネスモデルです。広告クリック課金モデルでARPUを算出するには、次の計算式を用います。

    • ARPU(円)= CPC※ × 広告クリック率
    • 広告クリック率(%)= 広告クリック回数 ÷ 広告表示回数 × 100
      ※CPC=広告が1回クリックされた際の広告単価

    例えば、1か月の広告クリック回数が70万回、広告表示回数が1,000万回、CPCが500円の場合、ARPUの計算式は次の通りです。

    • 広告クリック率(月次) = 700,000回 ÷ 10,000,000回 × 100 = 7%
    • ARPU = 500円 × 7% = 35円
       

    ARPUを向上させる改善策

    ARPUを向上させる改善策

    ここでは、ARPUの改善に役立つ3つの施策をご紹介します。
     

    1. 顧客ロイヤルティを高めてアップセルやクロスセルを提案

    現在よりも価格の高い商品・サービスを提案する「アップセル」や、関連性の高い商品・サービスのセット販売を提案する「クロスセル」を実施することで、ARPUを底上げできます。

     

    アップセルやクロスセルを提案する際は、顧客満足度やロイヤルティが十分に高まったタイミングで実施すると良いでしょう。ユーザーが使用中の商品やサービスに満足している状態は、「事業拡大に向けて上位機種を使いたい」「オプションで機能を拡張したい」といったポジティブな感情に結び付きやすく、アップセルやクロスセルの成功率が高まるからです。

    顧客満足度やロイヤルティは、NPSやCSATなどの手法で数値化できます。そのデータをもとに、アップセルやクロスセルを提案するタイミングを判断することが大切です。

     

    2. ユーザーの購買頻度を高める

    購買頻度の低いユーザーよりも、購買頻度の高いユーザーのほうが、売上に対する貢献度が高くなります。購買頻度の高いユーザーが増えるほど、ARPUの向上につながるでしょう。

    ユーザーの購買頻度を高めるには、接触機会を増やし、価値の高い提案を行うことが重要です。

    例えば、利用課金モデルを採用するゲームアプリの場合、新アイテムの入荷やお得な「ガチャキャンペーン」の開催時に、SNSやメールでいち早く情報を発信する方法などが効果的です。
     

    3. 無料プランと有料プランの差を明確にする

    ARPUを向上するには、有料課金ユーザー数を増やすのも方法のひとつです。無料プランと有料プランの差を明確にし、課金を行う優位性を積極的にアピールしましょう。

    ユーザーにとって本当に必要な機能が有料プランに搭載されていれば、「課金をしてでも商品やサービスを使いたい」と感じる可能性があります。

    ただし、有料プランのみが優遇され、無料プランの使い勝手が悪いと、お試し感覚で無料プランを選んだユーザーが離反することも考えられます。有料プランのメリットを明確にすることは大切ですが、両者の差が開きすぎないよう、バランスを考慮する必要があります。
     

    ARPUを向上させて安定した売上を確保しよう

    競合企業の参入や価格競争の激化により、新規顧客を創出するのがますます難しくなる昨今において、ユーザー単体の売上高に着目したARPUという考え方は重要な意味を持ちます。

    KPIとしてARPUを活用することで、既存ユーザーの売上を増やす施策に注力しやすくなります。なぜなら、ARPUの分析によって顧客満足度や売上貢献度が明確になれば、商品・サービスの品質やカスタマーサクセスの改善につながるからです。そして、個々の売上が最大化した結果、企業全体の売上向上に寄与します

    そのためにも、ぜひ今回ご紹介したアップセルやクロスセル、購買頻度を高める施策などを活用してください。

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