あなたは普段、Googleドキュメントやスプレッドシートなどを使って仕事をすることはありますか?
また、TwitterやInstagramなどのSNSを使うことはありますか?
これらのサービスは総称して「クラウドサービス」と呼ばれます。
世界中どこにいても、インターネットにさえ接続できれば使えるサービス、それを世界中の上空にある「雲」にたとえて、クラウドサービスと呼びます。

そして、今回の記事で紹介する「SaaS(サース)」とは、そのクラウドサービスの中でも「ソフトウェア」を提供するサービスです。
実は、クラウドサービスの中には「SaaS」「PaaS」「IaaS」という3つの「S(Service)」が存在します。
それぞれの用語の意味はあとで詳しく説明しますが、「SaaS」はソフトウェア、「PaaS」はプラットフォーム、「IaaS」はインフラを提供するサービスです。

この3つのSのうち、多くの人にとって身近なのが「SaaS」であり、私たちが普段使っているGoogleのサービスやSNS系のサービスが該当します。
ちなみに、当社HubSpotが提供する「HubSpot CRM」を始めとしたサービス群もすべてSaaSです。
つまりSaaSとは、インターネットを通じて使えるソフトウェアといえます。
今、世の中にはさまざまなSaaSがあり、多くの企業がさまざまなSaaSを提供しようと、日々開発を続けています。
なぜなら、SaaSには大きなビジネスチャンスがあるからです。
今回の記事では、SaaSという言葉の意味や、SaaSが世の中に増えている背景をお話しします。
また、SaaSを使う上で知っておくと便利な、SaaSのメリット・デメリットについてもお話しします。
1.SaaS(サース)とは?(SaaS・PaaS・IaaSの違い)
冒頭でお話ししましたが、SaaS(サース)とは、インターネットを通じて使えるソフトウェアのことです。
私たちが普段何気なく使っている、Googleのサービスや、TwitterやInstagramなどのSNSもSaaS(サース)です。
会計ソフトのfreee、ビデオ会議ツールのZoom、チャットツールのSlackなどもSaaS(サース)。
さらには、Netflix、Prime Video、Spotify、Apple MusicなどもSaaS(サース)です。
冒頭で、SaaSとは「クラウドサービス」の中にある3つの「S(Service)」のひとつだとお話ししました。
「クラウドサービス」とは、世界中どこにいても、インターネットにさえ接続できれば使える、上空に浮かぶ雲のようなサービスのこと。
SaaSをしっかりと理解するために、クラウドサービスの中にある「SaaS」「PaaS」「IaaS」という3つの「S(Service)」を知っておきましょう。
1.SaaS(サース)
「Software as a Service」の略語。
直訳すると、「サービス(クラウドサービス)としてのソフトウェア」という意味で、簡単にいえば、インターネットを通じて使えるソフトウェアのことです。
「ソフトウェア」とはスマホやパソコンなどの機械を動かすプログラムが集合したもの。
ゲームにたとえると、ゲームソフトがソフトウェアで、ゲーム機本体がパソコンやスマホです。
例:Googleドキュメント、Googleスプレッドシート、YouTube、Twitter、Instagram、Slackなど
2.PaaS(パース)
「Platform as a Service」という言葉の略語。
直訳すると、サービス(クラウドサービス)としてのプラットフォームという意味で、ソフトウェアが動くためのOSなどの「環境」を提供するサービスです。
ゲームに例えると、PaaSが提供する「環境」はゲーム機本体を指します。
PaaSではこの「環境」を、ゲーム機本体のように物理的に提供するのではなく、インターネットを通じて提供しているのです。
例:Google App Engine、Microsoft Azure、Amazon Web Services(AWS)など
3.IaaS(イアース)
「Infrastructure as a Service」という言葉の略語。
直訳すると、サービス(クラウドサービス)としてのインフラという意味で、ソフトウェアやOSなどの環境が動作するために必要な「インフラ」を提供するサービスです。
ゲームにたとえて説明すると、ゲーム機本体が動くためには、その本体への電力供給やネットワーク接続が必要です。
その電力供給やネットワーク接続などの設備を提供するのがIaaS(イアース)。
つまり、IaaS(イアース)は、そのサービスがインターネット上で動くために必要となる設備(インフラ)を提供しているのです。
例:Amazon Web Services(AWS)、Azure IaaS、Z.com Cloud
※実はAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureは、PaaSもIaaSも提供しています
ちなみにSaaS(サース)では、インフラやプラットフォームが整備された上で「ソフトウェア」が提供されます。
また、PaaS(パース)はインフラが整備された上で「環境」が提供されます。
よって、それらの関係性を表や図でカンタンに表すと以下のようになります。
●SaaS・PaaS・IaaSの関係性を表した表

●SaaS・PaaS・IaaSの関係性を表した図

ちなみに、PaaS(パース)やIaaS(イアース)は、基本的にソフトウェア開発で使われます。
よって、ソフトウェア開発者でないかぎり、PaaS(パース)やIaaS(イアース)に触れる機会は少ないでしょう。
さて、先ほど、SaaS(サース)とはインターネットを通じて使えるソフトウェアであると説明しました。
SaaS(サース)を語る上で欠かせないのが、この「インターネットを通じて使える」という視点です。
今でこそ日常的に使われるようになったSaaSですが、SaaSがビジネスの現場で普及し始めた頃は、SaaSは画期的なソフトウェアだとして注目を集めていました。
続けて、なぜSaaS(サース)が画期的だと思われたかという背景を踏まえたうえで、SaaSを使うメリットとデメリットを整理していきます。
2.SaaS(サース)が普及した背景
インターネットが普及し、いつでもSNSを使えたり、YouTubeなどの動画を自由に見られるようになったりしたのはここ15年くらいの間です。
それまではインターネットの回線をはじめとした設備が発展途上で、大容量のファイルのやりとりが難しかったり、処理の重いソフトウェアをインターネット上で動かすことができませんでした。
そのため多くの人は、ソフトウェアを各人が所有するパソコンにインストールし、インターネット上ではなく、いわゆる「ローカル環境(=自分のパソコンの中につくった環境)」で動かしていたのです。
しかし、インターネット関連の設備が発展したり、インターネット上で使える技術やプログラム言語が進化したりしたことで、事情は変わっていきます。
開発企業(ベンダー)各社が「自社のソフトウェアをより多くの人に使ってもらいたい」という意向から、SaaS(サース)と呼ばれる、インターネット上で使えるソフトウェアとしてのサービスを開発・提供し始めたのです。
それらのサービスの種類は多岐に渡りました。
Google社が提供するGmail、Googleドキュメント、スプレッドシートなどの一連のサービスや、DropboxやiCloudなどのクラウドストレージ、TwitterやFacebookなどのSNS、さらにはSlackやChatworkのチャットツール、SalesforceやHubSpot CRM(当社開発のCRMツール)などの顧客管理ツールに至るまで、さまざまなSaaS(サース)が生まれました。
まさにあらゆるソフトウェアがインターネット上で使えるようになったのです。

これらのサービスはすべて、パソコンへのインストールを必要としません。
ユーザー登録し、ユーザーアカウントを作りさえすれば使えるものばかりです。
Microsoft社も、元々はパソコンにインストールしなければ使えなかったWordやExcelといったソフトを、「Office online」というプランでインターネット上からも使えるようにしています。
SaaS(サース)が世の中に増えたことで、ビジネスシーンにおける生産効率は飛躍的に高まりました。
私たちがノートPC片手に色々な場所で仕事をストレスなくできるのも、SaaS(サース)が増えているおかげです。
では、そんなSaaS(サース)のメリットをあらためて整理してみましょう。
3.SaaS(サース)を利用する4つのメリット
SaaS(サース)のメリットは大きく分けて4つあります。
- ソフトウェアのインストールが必要ない
- インターネットにつながっていれば、いつでもどこでも利用できる
- コストを抑えながら利用できる
- ソフトのバージョンアップやメンテナンスを自分でおこなう必要がない
1.ソフトウェアのインストールが必要ない
先ほどもお話ししたとおり、SaaS(サース)はソフトウェアのインストールを必要としません。
そのため、パソコンのハードディスクやSSDの容量を節約できます。
(ただし、古いブラウザを使っている場合などは、そのブラウザをアップデートするために、ブラウザだけをインストールする必要があります)
2.インターネットにつながっていれば、いつでもどこでも利用できる
SaaS(サース)はクラウドサービスですので、インターネットに接続すれば、基本的にはいつでもどこでも使えます。
(ただし、諸外国の法律やガイドラインによっては、特定のSaaSへのアクセスが制限されている場合があります)
また、PCやスマホなど、使用する端末の種類にも融通が利きます。
PC専用、スマホ専用という括りはあるかもしれませんが、スマホの特定の端末だから使えなかった、というケースはあまりないでしょう。
(ただし、SaaSと連携したアプリの場合、iOS端末限定、Android限定といった条件が用意されている場合があります)
3.コストを抑えながら利用できる
ソフトウェアを動かす場合は、通常、パソコン上にソフトウェアを動かすため環境を用意する必要がありますが、SaaS(サース)の場合はその必要がありません。
SaaS(サース)側がすでにその環境をクラウド空間に用意しているため、利用者(ユーザー)は、そのクラウド空間にアクセスするだけでソフトウェアを使うことができます。
よって、利用者側の、開発環境を用意するコストが必要ないのです。
さらには、ソフトウェアのバージョンアップやメンテナンスはすべて、SaaSの提供企業(ベンダー)側がおこないます。
よって、基本的には機能のバージョンアップも無料となりやすく、バージョンアップのために再度ソフトウェアをインストールするといった手間もかかりません。
これらの仕組みはSaaSの提供企業(ベンダー)側にもメリットが多く、利用者(ユーザー)が別々のバージョンのソフトウェアを使えなくすることで、サポートのコストを減らせるようになっています。
4.ソフトのバージョンアップやメンテナンスを自分でおこなう必要がない
SaaS(サース)では、ソフトウェアが動作する環境の運用や、機能のアップデート、システムのメンテナンスなどはすべて、SaaS(サース)の提供企業(ベンダー)が行います。
そのため、SaaSの利用者はとくに何もしなくても、常に最新の状態のサービスを利用できます。
上記はSaaS(サース)のメリットですが、残念ながらSaaS(サース)はメリットだけがあるわけではありません。
たとえばSaaSの最大のメリットである「インターネットを通じて使う」「インターネット上にデータを保存できる」という特徴は、実はデメリットにもなり得ます。
ここからは、SaaS(サース)のデメリットについても見ていきましょう。
デメリットを知っておくことで、SaaS(サース)のメリットをより享受していただけるはずです。
4.SaaS(サース)を利用する4つのデメリット
便利なSaaS(サース)にも、デメリットはあります。
デメリットは大きく分けて以下の4つです。
- インターネットにつながっていないと使えないことがある
- 大きなカスタマイズはできないことが多く、利用者側がサービスの仕様に合わせる必要がある
- 社内のセキュリティポリシーやガイドラインの整備などが必要になる
- メンテナンス期間など、使いたいときに使えないことがある
1.インターネットにつながっていないと使えないことがある
SaaS(サース)はインターネットを通して提供するソフトウェアですから、当然インターネットにつながっていないと使えないことがあります。
最近のSaaSの中には、オフライン環境である程度作業できるような仕組みを提供しているものがありますが、大部分のSaaSは今もオンライン環境での作業を前提としています。
たとえば、Googleスプレッドシートの例でいえば、インターネットに接続できなければ、Googleスプレッドシート上のデータにアクセスできません。
一応、直近で利用したデータについてはオフラインでも編集や閲覧が可能ですが、すべてのデータを閲覧することはできません。
2.大きなカスタマイズはできないことが多く、利用者側がサービスの仕様に合わせる必要がある
SaaS(サース)は、多くの利用者(ユーザー)と同じサービスを使うことが基本のため、サービスの機能や設定を大きくカスタマイズできないことが多く、カスタマイズを希望する場合は、別途コストが必要になります。
そのため、各利用者の業務フローに合わせて使うためには、利用者側の業務フローをSaaS側の仕様に合わせる必要があります。
3.社内のセキュリティポリシーやガイドラインの整備が必須になる
ほとんどのSaaS(サース)はセキュリティに配慮されていますが、利用者のログイン情報(ログインIDやパスワード)があれば、第三者でも容易に利用できる恐れがあります。
最近ではそのような第三者の利用を防ぐために、「二段階認証」や「怪しいアクセスをブロックする機能」などを設けているSaaSが増えていますが、それでも利用者のログイン情報の漏洩には気を付けなければいけません。
たとえば、社員が退職したときはその社員のログイン情報を削除しなければいけませんし、社員がスマホやノートPCを紛失したりした場合も迅速な対応が必要です。
さらには、そういった事態に備えるためにも、スマホやPCの紛失時にはすぐに連絡する、パスワードは第三者が容易に推測できないものにするなど、社内のセキュリティポリシーやガイドラインを事前に整備しておくことが大切でしょう。
4.メンテナンス期間など、使いたいときに使えないことがある
SaaS(サース)は、サービスの運用すべてを提供企業(ベンダー)が担っています。
そのため、提供企業(ベンダー)側の都合で、突然利用が制限される場合があります。
利用ができなくなる場合には、定期メンテナンスやシステム障害などがあります。
また、ソフトウェアのアップデート時にも、一時的にサービスが止まる場合があります。
(ただし、ほとんどのSaaSは、想定外の障害でなければ、利用者の少ない時間帯にメンテナンスをおこなうことが一般的です。定期メンテナンスやサービスのアップデートであれば、利用者に大きな影響はありません)
メリットだけがあるように見えても、もちろんデメリットも少なからず存在します。
とはいえ、SaaSが便利なことは事実です。
その証拠に、世の中には日々便利なSaaSがリリースされ続けています。
続いて、SaaSのメリットやデメリットを、今度は利用者側(ユーザー側)ではなく、SaaS提供側(ベンダー側)の視点で見ていきましょう。
提供側(ベンダー側)の視点をもつことで、なぜ今、世の中にSaaSが増え続けているのかがより理解できると思います。
5.SaaS(サース)を開発・提供する4つのメリット
先述したとおり、SaaSには今、大きなビジネスチャンスが広がっています。
ここからは、SaaSの提供側(ベンダー)として、SaaSの開発に興味がある方へ向けてお話しします。

最初にお話ししたいのは、なぜ、SaaSをビジネス展開するとよいのかという、SaaSの開発・提供のメリットです。
SaaS(サース)を開発・提供する4つのメリット
- 利用者の申し込み(契約)がインターネット上で完結する
- 利用者の利用データを取得しやすく、そのデータをさらなる機能開発やマーケティングに活用しやすい
- 利用者に導入および継続利用してもらいやすい
- 機能の追加や不具合の対応がしやすい
1.利用者の利用登録(契約)がインターネット上で完結する
SaaSの場合、利用者は基本的にインターネット上でサービスへ申し込みます。
利用料の支払いや契約手続きもインターネット上でおこなわれるため、利用者とのやりとりをインターネット上だけで完結できるメリットがあります。
従来、ソフトウェアの提供側(ベンダー)は、利用者にディスクを送付したり、インストール作業に赴くといった作業を求められることがありました。
しかし、SaaSの場合はそういった作業が必要ありません。
よって、諸々のコストを抑えることができます。
2.利用者の利用データを取得しやすく、そのデータをさらなる機能開発やマーケティングに活用しやすい
SaaSはインターネット上にあるひとつのソフトウェアを複数の利用者が使うため、利用者の利用データ(行動データ)をまとめて取得しやすいメリットがあります。
従来のソフトウェアは、個人のパソコンに個別にインストールされることで、個々人がソフトウェアをどのように使っているかというデータをまとめて取得しにくい状況にありました。
しかしSaaSなら、「この機能は多くの利用者に使われている」「この機能はほとんど使われていない」といった利用状況をまとめて把握しやすくなります。
その利用データがあれば、利用者により喜んでもらうための機能開発や、さらに多くの利用者に使ってもらうためのマーケティングも可能になります。
3.利用者に導入および継続利用してもらいやすい
SaaSはさまざまなコストが省かれているため、利用者も従来のソフトウェアに比べて低コストで導入できます。
また、SaaSは後述する「サブスクリプション」型のサービスが多く、使う期間だけ費用を払い契約はいつ辞めてもいいという条件のため、利用者側の導入ハードルや継続ハードルは大きく下がります。
そのため、導入しやすく継続利用されやすいメリットがあるといえるでしょう。
もちろん、導入しやすいということは、逆の見方をすれば競合のSaaSに乗り換えられやすいというデメリットもあります。
乗り換えられないためには、機能の継続的な追加や、快適な利用環境を維持するためのメンテナンスが欠かせません。
4.機能の追加や不具合の対応がしやすい
従来のソフトウェアでは、機能追加や不具合の対応をする際、アップデート版のディスクを送付したり、設定ファイルの更新に赴いたりするなど、提供側(ベンダー)および利用者双方にコストがかかっていました。
しかしSaaSの場合、提供側(ベンダー)がインターネット上にあるひとつのソフトウェアをアップデートすれば、基本的には自動的にすべての利用者に反映されます。
よって、機能の追加や不具合の対応を、提供側(ベンダー)の都合で柔軟に実施できます。
その一方で、現在のSaaSは、利用者からの機能追加に常に応じなければいけない、という状況にもあります。
多くのSaaSが継続的に機能を追加し続けているため、「SaaSなら機能のアップデートは当然」といった風潮が生まれています。
そのためSaaSを提供する際は、どういった形で機能を追加していくかということを前もって考えておく必要があります。
では続いて、SaaSを開発・提供する際に押さえておきたい注意点を見ていきましょう。
6.SaaS(サース)を開発・提供する際の2つの注意点
SaaSを開発・提供する際には、大きく2つの点に気を付けなければいけません。
その2つの注意点を前もって知っておくことで、開発・提供時の失敗を未然に防ぎやすくなります。
以下がその2つの注意点です。
SaaS(サース)を開発・提供する際の2つの注意点
- セキュリティに配慮するためのコストがかかる
- サービスの不具合やセキュリティの問題が起こると、すべての利用者に影響が出る
1.セキュリティに配慮するためのコストがかかる
SaaSはインターネットという公共のネットワークを通るため、提供側(ベンダー側)は、利用者の情報漏洩などのリスクに備える必要があります。
堅牢なシステムの構成や、利用者のデータの暗号化、セキュリティ認証の取得など、セキュリティに配慮すべき項目は山ほどあります。
セキュリティに配慮すればするほど、利用者の信頼を担保できる一方で、開発や運用のコストがかかります。
2.サービスの不具合やセキュリティの問題が起こると、すべての利用者に影響が出る
悪意ある第三者からのハッキングによる情報漏洩や、不具合やシステム障害でサービスが止まると、すべての利用者が影響を受けます。
(SaaSの設計次第で一部の利用者のみの影響に留めることはできますが、多くの場合は、すべての利用者に影響が出ます)
また、先述したPaaS(パース)、IaaS(イアース)といった外部の環境を用いて開発を進めている場合、これらのPaaSやIaaSにトラブルが起きると、SaaS側が巻き込まれる形となり、正常にサービスを提供できなくなることもあります。
SaaSを提供する際は、あらゆるトラブルを想定し、準備しておくことが必要なのです。
さてここまで、SaaSの特徴やSaaSのメリット、デメリットについて一通り解説してきました。
SaaSについての理解が深まったのではと思います。
では続いては、世の中にあるSaaSの一例を取り上げておきます。
私たちのまわりにどれだけ多くのSaaSが存在し、それらが日々どのように使われているかを知ることで、SaaSへの理解がより深まります。
7.代表的なSaaS(サース)の例
以下で紹介しているSaaSは、世の中にあるSaaSのほんの一部です。
SNS
- ・Twitter
- アメリカに本社を置くTwitter社が、2006年に開始したSNS。
全角140文字までのテキストや画像、動画を投稿し、ほかのTwitterユーザーと共有できます。
- ・Instagram
- Facebook社の子会社のInstagram社が提供するSNS。
画像や動画が大きく表示されるため、コンテンツを視覚的に楽しめます。
24時間で削除される「ストーリー」という短時間の動画投稿が可能で、とくに10~20代のユーザー間で人気のSNSです。
- ・Facebook
- Facebook社が2004年に開始したSNS。
多くのSNSが匿名で利用できますが、Facebookの場合はユーザーが実名で利用するという特徴があります。
TwitterやInstagramと比べてユーザー層の年齢が高く、国内では30~50代のユーザーを中心に利用されています。
データ保存・管理ツール
- ・Dropbox
- Dropbox社が提供する、さまざまなデータをクラウド上で保存できるサービスです。
2021年6月現在、無料プランであれば2GBまで、有料プランでは2TB(2,000 GB)までデータを保存できます。
また、Dropboxに保存したファイルはリンク一つでカンタンに共有できます。
- ・Google フォト
- Google社が提供する、クラウド上で写真を保存できるサービスです。
社内チャットツール
以下で紹介する2つのサービスは、ビジネス用に提供されているチャットツールです。
どちらもプロジェクトごとにグループを作成できる他、メンバーがグループに招待された日時に関わらず、過去の投稿をさかのぼって閲覧できます。
また、ツール内で共有されたPDFなどのファイルはインターネット上に保存されます。
そのため、途中でプロジェクトに参加したメンバーが過去に共有されたファイルを検索し、ダウンロードするといったことも可能です。
- ・Slack
- アメリカのSlack Technology社が開発・提供しているチャットツールです。
- ・Chatwork
- 日本のChatwork株式会社が開発・提供しているチャットツールです。
顧客管理ツール(CRMツール)
顧客管理ツールとは、顧客の名前や住所などの属性情報や、顧客の購買情報を管理し、社内でスムーズに共有するためのツールです。
ただし近年、顧客情報の管理だけでなく、メール配信などのマーケティング機能や、営業活動の進捗を共有できる機能が備わったツールも増えています。
ここでは顧客情報の管理からマーケティング機能まで一通り備わっている、2つのツールを紹介します。
- ・Sales Cloud
- アメリカに本社を置くSalesforce社が提供するCRMツール。
業界トップのシェアを誇り、「売上を最大化する」ために自社のビジネス形態に合わせてツールを柔軟にカスタマイズできるのが最大の特徴です。
- ・HubSpot CRM
- 当社HubSpot社が提供する、無料のCRMツール。
「インバウンド」という思想を大事にして開発しており、見込み客へのアプローチから、商品購入後の顧客まで一貫してサポートできるように、幅広く機能を備えているという特徴があります。
会計ソフト
会計ソフトとは、会社のお金の動きを管理・集計するツールです。
経理について専門的な知識がなくても決算書をカンタンに作成できます。
また、インターネット上にデータを保存でき、紙の帳簿が不要でPCのみで管理ができるため、在宅ワークの社員やフリーランサーの間でも利用されています。
ここでは、国内の会社が提供する2つのツールを紹介します。
- ・freee
- freee株式会社が提供する無料の会計ソフト。
質問に答えていくだけでカンタンに確定申告の書類を利用できるという特徴があります。
また、アプリを使って経費精算するためのレシート画像を読み込み、システムに自動で経費入力も可能です。
- ・マネーフォワード クラウド会計
- マネーフォワード社が提供する会計ソフト。
銀行やクレジットカード、またECサイトやPOSレジと連携し、取引の明細や売上データを自動で取得できます。
その他
- ・Google Workspace
- GmailやGoogleカレンダー、Googleドキュメントなど、Googleが提供するビジネス向けの17種類のSaaSを一度に導入できるサービスです。
- ・One note
- Microsoft社が開発・販売する、無料で利用できるデジタル版のノートです。
編集した内容が自動保存されるほか、紙の資料に書かれたテキストを読み込み、文字に変換することもできます。
SaaSの種類は年々増えており、上記以外にもさまざまなSaaSが各社から提供されています。
SaaSの提供に力を入れている企業(ベンダー)や、各ベンダーが手がけるSaaSについて、より詳しい記事もあります。
興味がある方は、ぜひ以下のリンク先の記事もお読みください。
>2020年の参考にすべき36のトップSaaS企業、トップSaaS製品とは
ここからは番外編です。
SaaS(サース)について調べていると、「サブスプリプションモデル」や「ASP」といった言葉も見かけることがあり、人によっては、これらの言葉とSaaSを混同してしまうケースがあります。
そうならないためにも、「サブスプリプションモデル」や「ASP」という2つの言葉について、最後にカンタンに説明しておきます。
8.SaaS(サース)とよく混同されがちな言葉
SaaSと混同されやすい「サブスプリプションモデル」や「ASP」という2つの言葉。
この2つの言葉について、SaaSとの違いを取り上げながら解説していきます。
8-1.「サブスクリプション」とSaaSの違い
サブスクリプションとは英語の「subscription」の略で、元々は新聞や雑誌の「定期購読」や「予約購読」といった意味を表す言葉です。
そこから派生し、IT業界をはじめとしたビジネスの現場では「利用者が定額料金を支払うことで、その料金を払い続けている期間、サービスを利用できる」というサービスの提供形態を示すようになりました。
身近なサービスでは、NetflixやSpotifyなどがサブスクリプションの形態で提供されています。
利用者は特定のプランを選び、そのプランに対して、定額の料金を毎月支払い続けます。
そして、その支払い期間中のみ、サービスを使うことができます。
基本的にはいつ解約しても問題なく、解約すると次月以降、そのサービスを使えなくなるといった仕組みです。
8-2.ASPとSaaSの違い
SaaSとよく比較されるもう一つの言葉に、「ASP」という言葉があります。
この文脈におけるASPとは「Application Service Provider(アプリケーションサービスプロバイダ)」の略で、インターネット上でアプリケーション(ソフトウェア)を提供する提供者(事業者、プロバイダ)を指します。
ASPは提供者(事業者、プロバイダ)、SaaSはソフトウェアと、言葉上は異なるように見えます。
しかし実際の現場では、ASPをSaaSと同じような意味をもつ言葉として用いる場合があります。
なぜなら、「提供者」という言葉は、インターネットを通じてソフトウェアを提供するという意味とほぼ同じだからです。
そのため、「提供者」や「SaaS」という意味もすべてまとめて「ASP」と呼ばれる場合があります。
9.まとめ
インターネットの進化により、SaaSは飛躍的に進化し続けています。
ここ数年で、SaaSを導入し、活用して成果につなげている企業が増えています。
波に乗らなければとSaaS導入を検討されている企業も増えているでしょう。
(実際、当社HubSpotに寄せられるSaaS導入の相談も年々増えています)
ここで、SaaSの導入を検討されている方に絶対に気を付けていただきたいのは「運用にのせられるかどうか」という点です。
そもそも運用できる体制があるのか、これから整備できるのか、自社の従業員が使いこなせそうか。
様々な要素を十分検討したうえでSaaS導入に踏み切るべきです。
なお、私たちは、HubSpotのサービスをしっかり運用していただき、さらにお客様が成功しなければ導入していただく意味がないと考えています。
ですので、SaaSに慣れていない方でも使いやすいようわかりやすいサービス設計を追求し続けていますし、導入いただいたお客様には専属のサポートメンバーがつき、しっかり伴走して運用にのせ、さらに成功するまでのお手伝いをしています。
もちろん、このような考えはHubSpotだけでなく、多くのSaaS提供企業が持っています。
SaaSを導入するなら、必ず目に見える成果に結びつける。
そのような意思を持ち、同じ目線を持つ企業をパートナーにすれば、きっとSaaS導入を成功させられるでしょう。

