SNSといえば、主にBtoC企業の施策と考えている方も多いでしょう。実際に、帝国データバンクによるSNSのビジネス活用に関するアンケート結果では、企業におけるSNSの導入は小売業での導入が69.3%と最も高くなっています。
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しかし一方で、卸売業や製造業、運輸・倉庫といったBtoB事業でも、約30~40%の企業がSNSを活用していることが同調査で明らかになっています。SNSは、BtoBでも認知度向上やブランディングなどに効果を発揮します。「SNSを活用したマーケティングはターゲットが限られているBtoBには向いていない」と切り捨てずに、施策を検討してみましょう。
この記事では、実際にBtoB事業でSNS運用に成功している例も取り上げながら、具体的なメリットや運用のポイントなどを紹介します。
BtoB企業におけるSNS活用の目的
まずは、BtoB企業がSNSを活用する主な目的を見ていきましょう。SNSの役割を理解することで、効果的な戦略立案につながります。
認知拡大とリードの創出
BtoB企業がSNSマーケティングを行う目的としてまずあげられるのが、認知拡大とリードの創出です。SNSを通して商品やサービスの紹介や専門知識、ノウハウ、キャンペーン情報を配信することで認知拡大につながります。
SNSには情報が拡散されやすいというメリットがあり、幅広い層にリーチできる可能性もあります。SNS広告であれば、ターゲティングを活用しながら多くのユーザーに訴求が可能です。
リードの醸成と関係性の向上
リードの醸成やコンバージョンの獲得、ユーザーとの関係構築を目的としてSNSを活用する企業も多くあります。
ほとんどのSNSプラットフォームでは、コメントやDMを活用してユーザーとの直接的なコミュニケーションが可能です。SNSでのコミュニケーションを通してユーザーと良好な関係性を築くことで、企業への安心感や信頼感を高め、ユーザーが企業やブランドのファンになってくれるでしょう。ファン化によって購買意欲の向上や、リピートへつなげることができます。
また、良好な関係構築にはクリック数など、さまざまな数値を分析してユーザーニーズを把握し、ユーザーが好むコンテンツを配信することが重要です。FacebookやInstagramのようなSNS広告では、Webサイトのようにタグの設定をしなくても、プラットフォームからキャンペーンのパフォーマンスを確認・分析できます。こういったPDCAの回しやすさも、SNSがBtoBマーケティングの手法として選ばれる理由の一つです。
ブランディング
ブランディングの強化にもSNSの活用は効果的です。商品やサービスについてだけでなく、企業についても発信すると、Webサイトだけでは伝えきれない価値観や世界観をユーザーに伝えることができます。
SNSでの最新情報発信は、特にIT企業やメーカーなど、技術や情報の更新が早い業種に適しています。専門知識や最新情報をユーザーに提供することで、専門性が高く、最先端をいく企業というイメージを持ってもらえるでしょう。
こうしたブランディングは競合企業との差異化につながり、ユーザーの検討フェーズにおいて役立ちます。
BtoB企業がSNSを運営するメリット
目的とは別に、BtoB企業がSNSマーケティングを行うメリットもあります。SNSならではのメリットを理解し、施策立案に活かしましょう。
低コストで運営できる
SNSプラットフォームの多くは、登録や使用に費用がかかりません。広告や大々的なプロモーション活動に比べて低コストでスタートが可能で、ランニングコストも抑えられます。
SNS運用の代行を専門に行う外部パートナーに依頼する方法もありますが、まずはコストをあまりかけずに自社で運営してみることもできます。そのため、広告予算が少なめの中小企業やスタートアップ企業でもチャレンジしやすいでしょう。
SNSの場合、魅力的なコンテンツがあれば限られた予算でも大きな影響力を発揮することが可能です。
情報をシェアしやすく幅広い層へリーチしやすい
SNSは、情報公開の自由度が高く、最新情報を発信するのに適しています。また、多くのSNSプラットフォームではシェア機能が備わっているため、情報が拡散されやすいのもSNS独自のメリットです。
SNSは年齢や職業を問わず幅広い層に使用されています。国内シェアを広げにくいBtoB企業で、新しい層へリーチしたいと検討している場合は特に効果的です。
コミュニケーションで関係性を構築できる
SNSでは、ユーザーとの相互的なコミュニケーションが発生しやすいため、企業とユーザーの関係性を構築するプラットフォームとしても適しています。
BtoCよりも購買プロセスが複雑なBtoBビジネスでは、ユーザーと良好な関係性を築いていくことは、とても重要です。ユーザーからの反応や質問に迅速に対応していくことで信頼関係が生まれ、長期的に良好な関係性の構築につながります。
BtoB企業が活用できるSNS媒体
SNSプラットフォームは数多くあります。ここでは、BtoB企業が活用できるSNSと具体的な方法をご紹介します。
Facebookは、SNSのなかでもビジネスで活用されやすく、30代から40代のアクティブユーザーが最も多いという特徴があります。仕事関係の知人など実際につながりがある人とのコミュニケーションに使用しているユーザーも多く存在します。
Facebookは、実名登録を基本とする性質などもあり、他のSNSと比べて広告のターゲティング精度が高いといわれています。「リード獲得広告」の機能もあり、見込み客の創出にも役立ちます。
また、CRMとの直接連携機能も備えており、HubSpotツールでも連携が可能です。CRMとの連携は、見込み客の醸成に力を入れたい企業に向いているでしょう。
X(旧Twitter)
2023年のSNS国内シェアにおいてXは、LINEに次いで2位となっており、日本でのアクティブユーザー数は4,500万を超えています。ユーザー数が多いXの活用は、これまで接触機会がなかった新たな業種や、Xを利用している企業役員や経営者といった新しい層への認知拡大につながります。
ただし、SNSが得意とするのは、あくまでも入り口となる認知拡大の部分です。販売や契約をSNS運営の最終ゴールに設定してしまうと、思うような成果が出ないことがあります。
LINE
立ち仕事や移動が多い業界や、パソコンをあまり使わない業界には、LINEがおすすめです。LINEを使用することでスマートフォンからの問い合わせがしやすくなり、ユーザビリティの向上につながります。一例として、展示会やウェビナーからLINEへと集客し、無料相談につなげるなどの活用方法があります。
LINEにはアンケート機能も備わっているため、ユーザーを深く理解しやすいのも特徴です。
リッチメニューも設定可能で、最新のセミナー情報の獲得や資料請求などもユーザーがLINEから気軽に行えます。
Instagramは、写真や短い動画に特化したプラットフォームです。一般消費者が情報収集を行うイメージが強いため、BtoB企業の場合には、集客よりもブランディングを目的とした利用に適しています。企業カラーやロゴを使用した画像や動画を使い、商品や企業のイメージをビジュアルで表現できます。
Instagram広告では個人情報を登録する必要がありませんが、Meta社が運営するFacebookのデータを利用できるため、Facebook同様に細かなターゲティングが可能です。Facebookと比較して若い世代や女性ユーザーが多いため、特にZ世代やミレニアル世代、女性が多い業界にリーチを広げたい場合に向いている媒体です。
YouTube
YouTubeは動画のプラットフォームとして世界的に知名度が高く、最大で12時間(256GB)の動画をアップロードできるのが特徴です。
自社商品・サービスの紹介や利用方法を動画にまとめて見込み客に提供することで、商品やサービスへの理解を深めてもらうことが可能です。それによって、商談の成功率が高まる効果が期待できます。
また、使用方法を解説したマニュアルのような動画は、カスタマーサクセスにも活用できます。
TikTok
TikTokの利用者は世界中で急激に増加しており、特にZ世代やミレニアル世代といった若い層に人気があるプラットフォームです。TikTokはBtoC向けのイメージを持っている人が多いかもしれませんが、「社内の雰囲気を動画で伝えて採用活動に活かす」といった使い方をする企業もあります。
SNSを活用したBtoB企業の成功事例4選
ここでは、SNS運用に成功しているBtoB企業を4社紹介します。成功のポイントもあわせて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
X(旧Twitter):サイボウズ株式会社
出典:cybozu
チームワークを支援するグループウェアを開発・提供しているサイボーグ株式会社の公式Xアカウントでは、主に事業に関する最新情報やセミナー情報などを発信しています。
また、「サイボウズ式」と呼ばれるオウンドメディアやYouTubeを運営しており、ユーザーは記事や動画の新着情報を公式Xアカウントから確認できる仕組みです。SNSを入り口としてオウンドメディアやYouTubeにユーザーを誘導することで、より充実したコンテンツを届けることができます。
こういった他媒体との連携を活用し、2023年12月現在では1万人以上のフォロワーの獲得に成功しています。
YouTube:freee株式会社
クラウド会計ソフトや給与計算ソフトなどを提供しているfreee株式会社は、YouTubeを積極的に活用しています。
主な配信内容は、ソフトの使用方法や会計・開業に関する基礎知識で、専門的で難しい内容を動画でわかりやすく解説しています。2023年12月現在のチャンネル登録者数は2.7万人を超えており、視聴者にとって有益なコンテンツを発信することに成功しているBtoB企業の事例といえるでしょう。
Instagram:Salesforce
出典:Salesforce Japan (@salesforcejapan) o Instagram photos and videos
CRMを提供しているSalesforceのInstagramでは、製品やイベント・セミナー情報に加えて、AIに関する情報なども発信しています。
このアカウントでは、画像だけでなくショート動画も多く活用することで、SNSの限られた枠のなかでも内容の濃いコンテンツを提供しています。
Instagram:HubSpot
出典:HubSpot (@hubspot) o Instagram photos and videos(英語)
HubSpotのInstagramでは、企業カラーであるオレンジをメインとしてクリエイティブを作成し、メッセージが届きやすいようにテキストにインパクトを持たせる工夫をしています。
ショート動画を活用したユーザーに役立つ情報提供から、画像や動画に表現や言葉を書き換えるミームを使ってユーザーからの共感を得る、ユニークな投稿も発信しているのが特徴です。
公式アカウント以外にも、HubSpot AcademyやHubSpot Lifeという別アカウントから、ユーザーにさまざまな情報を提供しています。
BtoB企業がSNS運用を行う際のポイント・注意点
SNSは、情報発信の自由度が高く、拡散力が高いことが大きなメリットですが、目的をはっきりさせないと期待したような成果が得られないことがあります。また、いわゆる「炎上」が起きないよう、発信する内容には十分注意しなければなりません。ここでは、BtoB企業がSNS運用を行う際の注意点や運用のポイントを紹介します。
ターゲットと方向性の明確化
BtoB企業が効果的なSNS運用を行うためには、ターゲットとアカウントの方向性を明確にしておくことが大切です。
BtoBビジネスでは企業向けの商品やサービスを取り扱っているため、一般消費者向けのコンテンツは適していません。まずはターゲットを明確にして、ビジネスやSNS運営の目的に合わせて適切なコンテンツを作成していきましょう。
リスク管理とガイドラインの設定
SNSは情報発信のしやすさや、シェアによる拡散力の高さから炎上のリスクがあります。そのため、信頼関係が重要なBtoB企業においては炎上のリスク管理や、投稿のガイドラインの設定が特に重要です。
投稿担当者だけでなく、関係者全員がネットリテラシーについて学んでおくと良いでしょう。
PDCAを回す
効果的なSNS運用を行うためには、分析と改善を繰り返し、常にPDCAのサイクルを回すことが重要です。
SNSプラットフォームには、ビジネスアカウント向けに簡単なアナリティクス機能が備わっています。より詳細なデータを取得したい場合は、専門ツールを活用すると良いでしょう。
定期的に数値を分析し、課題に向けて施策立案や改善を行うことが大切です。
社内の運用体制を整える
SNSを活用したマーケティング施策は、中長期で行うことになるため、社内体制をしっかりと整えておきましょう。
属人的な運用は避け、チームとしての運用体制を構築することをおすすめします。投稿担当者が複数人になる場合には、投稿コンテンツに一貫性を保てるように意識することがポイントです。
社内での運用が難しい場合には、SNSの運用代行会社に依頼することも可能です。
BtoB企業でもSNSマーケティングを活用してビジネスを成功させよう
SNS上での発信やユーザーとのコミュニケーションは、BtoBにおける潜在客や見込み顧客との関係構築にも役立ちます。
また、コンテンツを工夫することで、広告予算がそれほど多くない中小企業やスタートアップ企業も認知拡大などを効果的に行うことが可能です。
SNS運用の目的や自社のターゲットを明確にしたうえで、注意点を意識しながら、運用を開始してみてはいかがでしょうか。