データドリブンとは?意味や注目される背景を解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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インターネットの普及によって、人々は多くの情報に瞬時にアクセスできるようになりました。人々の求める「モノ」が多様化している今、経験や勘に頼るだけではなく、ビジネス活動で収集したデータを活用し、データに基づいた意思決定を行う「データドリブン」の実施が求められています。

データドリブンとは?意味や注目される背景をご紹介

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しかし、データ活用や分析が難しく感じたり、具体的な実践手順がわからなかったりする方もいるでしょう。

本記事では、データドリブンの意味や注目される背景、実施するメリットなどを詳しく解説します。また、データドリブンにおけるデータの活用例や導入時の注意点も紹介するので、自社で取り組む際の参考にしてください。

データドリブンとは

データドリブン(Data Driven)とは、個人の勘や経験など定量的に評価できないものではなく、顧客データや売上データなどの各種データを基に意思決定を行う手法です。マーケティングに活用する際は「データドリブンマーケティング」、経営に活用する際は「データドリブン経営」と呼ばれます。
 

データドリブンが注目される背景

近年、データドリブンが注目される背景には、次の3つの理由があげられます。

  • インターネットの普及とデジタル技術の発展
  • 顧客行動の複雑化・多様化
  • DXレポート発表によるDX化の推奨
     

インターネットの普及とデジタル技術の発展

インターネットの普及に伴って膨大なデータが飛び交うようになった一方で、デジタル技術の発展により、従来に比べてデータの入手経路が拡大しています。その結果、自社サイトへの流入経路や、口コミ・評価などを容易に、かつ大量に収集できるようになりました。

流入経路を例にあげると、「Webサイトからのお問い合わせ」「広告からの流入」「SNSでの口コミ経由」など、幅広い経路が想定されます。また、口コミや評価も同様に、SNSやネットリサーチなどのオンライン上から大量のデータを容易に収集することが可能です。

これらのデータを分析・活用して顧客ニーズを捉え、それに伴って売上・利益の増加をめざす動きからデータドリブンは注目されています
 

顧客行動の複雑化・多様化

実店舗への来店に加え、ECサイトでのショッピングなど顧客の購入先が多様化した影響もあり、顧客の購買行動は多様化しています。インターネットを介してさまざまな情報にアクセスできるようになった結果、顧客が店舗やWebサイトを訪れる理由を経験や勘だけに基づいて推測することが難しくなりました。

顧客が自社の商品・サービスを選ぶ際、どこで商品を知ったのか、どこから流入したのか、決め手になった理由は何かなど、把握すべき事柄は複数あります。これらの事項を把握し、企業活動に活かすためにデータドリブンが必要とされているのです
 

DXレポート発表によるDX化の推奨

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、データとデジタルの力で商品やサービス、ビジネスモデルに変革を起こすことです。ビジネスにおいては古い情報管理システムを一新し、ITシステムやIoT、AIを活用し業務改善や効率化を図ることを意味します。

経済産業省が公表したDXレポートではDXが実現しない場合の経済損失について記載され、DX化が推進されています。データを活用して事業全体に変革を起こすDXと、データを活用して意思決定を行うデータドリブンには密接な関係があるため、データドリブンも同様に注目されているのです

 

データドリブンで期待できる効果やメリット

データドリブンには、主に3つの効果やメリットが期待できます。

  • 明確な根拠を基に施策が打てる
  • 顧客との良好な関係性を築ける
  • 新たな価値創出につながる

それぞれご紹介します。
 

明確な根拠を基に施策が打てる

定量化できない勘や経験を基にした施策が、想定以上の効果を発揮する場合もあります。しかし、勘や経験だけでは担当者によって施策にバラつきが生じ、再現性も低くなるため、必ずしもうまくいくとは限りません。

データドリブンを実行すれば、勘や経験にデータが加わることで根拠に基づいた施策を考案し実行できるため、担当者が違っても施策は左右されず、再現性を保てるでしょう。
 

顧客との良好な関係性を築ける

顧客ニーズが多様化した昨今、顧客それぞれに適した商品・サービスを提供するには、その属性や行動履歴などの特性に応じたパーソナライズ化が求められます。また、情報に容易にアクセスでき、モノが溢れている現代において、競合他社との差異を図るうえでもパーソナライズ化は重要です。

データドリブンを取り入れ、顧客データを明確に分析すれば、ユーザーごとに異なる属性や嗜好に的確にアプローチできます。顧客理解を深め、顧客が求めるものを提供できれば良好な関係性を築くことができます。結果的に、企業側にも利益がもたらされるでしょう。
 

新たな価値創出につながる

蓄積されたデータを分析すると、課題や隠れたニーズを見つけることができます。例えば、「20代男性向けの商品だが、実際は30代男性の購入率が高い」「商品Aを購入している人は商品Bも購入している割合が高い」といったケースです。

明らかになった課題を改善すれば、既存顧客との関係性向上だけでなく、新たな顧客の創出につながる可能性があります。顧客インサイトを分析すると顧客自身が気付いていない潜在的なニーズの発掘にもつながり、そこに重点を置いた施策を実行すれば、既存顧客の満足度をさらに高められるでしょう。
 

データドリブンの軸となる4つのステップ

データドリブンを成功に導くためには、次の4つのステップに従って進めることが重要です。ここからは、各ステップの概要を解説します。

データドリブンの軸となる4つのステップ

 

1. 目的に沿ったデータ収集

まず、データドリブンで最も重要な要素であるデータを収集します。ここでの注意点は、すべてのデータが重要なデータに該当するわけではない点です。闇雲にデータを集めても手間や時間、コストがかかってしまい非効率的です。

無駄なコストが発生しないよう、データ収集では目的を持つことが欠かせません。

例えば、「昨年よりもECサイトの売上を20%上げる」という目的を設定した場合であれば、顧客の年齢層や顧客単価、流入経路、リピート率などのデータを収集します。ここでは、在庫情報自体はさほど重要なデータではないでしょう。

このように、目的が定まればどのような情報を収集すべきかが明確になります。
 

2. データの可視化

データは収集するだけでは役に立ちません。活用するには加工・分析して、それを基に施策を決める必要があります。

このとき注意したいのが、収集後にいきなり分析を開始するのではなく、前処理としてデータやグラフ、表などに加工して可視化する点です。データ量が少ない場合はExcelやスプレッドシートを使ってデータのフォーマットを調整できます。しかし、時間がかかり、人的ミスが生じる可能性もあるでしょう。

データドリブンでは膨大な量のデータを扱うケースが多いので、データドリブンに役立つ各種ツールを活用するのがおすすめです。活用するツールについては後半の「データドリブンに役立つツール」の章で紹介しています。
 

3. データ分析

データを可視化したら、実際に分析を行います。分析によって、自社の強みや課題、事象の因果関係などを把握できます。データ収集と同様に設定した目的に沿って行うのが重要です。

例えば、ステップ1で先述した「昨年よりもECサイトの売上を20%上げる」目的を設定するケースでは、顧客の年齢層や顧客単価、流入経路、リピート率などを収集すると説明しました。この場合、年齢層ごとの流入経路、顧客単価など複数のデータを基に分析を行います。一見何ら関係なさそうな事象でも、分析によって関係性が明らかになる可能性があります。

また、顧客単価や年齢層など定量化できるデータに加えて、ユーザーの嗜好やレビューなど定性的なデータも含めると、より多角的な分析ができるでしょう。
 

4. データに基づいた意思決定・アクション

データ分析を基に意思決定を行い、具体的なアクションを取ります。その際考慮しなければならないのは、意思決定は「人」が行うという点です。

データ収集・分析はあくまでも意思決定をするための手段であり、データを基にビジネスを改善することが前提になります。

つまり、分析結果を基に人が意思決定を行うことで成果が表れるのです。さらに、意思決定に基づく施策の実行後はPDCAサイクルを回し改善し続けることで、データドリブンの効果を最大化できるでしょう。
 

データドリブンを導入する際の注意点

データドリブンを実現させるために、次の2点に注意しましょう。

  • データ分析に長けた人材を確保する
  • 社内で理解を得て各部署と連携する
     

データ分析に長けた人材を確保する

データドリブンの実行には、データの読解力のある人材の育成・採用が欠かせません。データはあくまでも材料に過ぎず、そこからどのように組み合わせるかは人が行う必要があるためです。

また、意思決定はデータ分析の結果を基にして行うため、元データの収集や読み取り、分析にミスがあれば結果が変わり、意思決定に大きく響きます。そのため、「データサイエンティスト」や「データアナリスト」などデータ分析の専門家に加え、商品やサービス、企業理念などに精通した人材が求められます
 

社内で理解を得て各部署と連携する

データドリブンの実現には、社内で理解を得て各部署と連携するのも重要です。データの重要性を理解していながらも、経験と勘に基づいて意思決定するのが適切だと考える人がいると、導入がうまくいかない可能性があるからです。データドリブンの重要性とメリットを伝えて、理解を得ましょう。

また、データは一つの部署にのみ集まるのではなく各部署に分散されて蓄積されているため、各部署と連携によって分析に必要なデータをスムーズに収集できます。情報を共有し合うことで、より顧客ニーズに即した対応を提案できるようになるでしょう。
 

データドリブンにおけるデータの活用例

データドリブンにおける3つの活用事例をご紹介します。

  • ECサイト
  • 不動産事業
  • 食品メーカー
     

ECサイト

ECサイトでは、主に次のデータを収集します。

  • 顧客の購入履歴
  • 流入経路
  • 顧客情報
  • 顧客単価
  • 商品への満足度
  • アンケート結果
  • 在庫状況

顧客情報や購入履歴などを複合的に分析し、A商品を購入している人の多くがB商品も購入している傾向がある場合には、レコメンド商品を表示して顧客体験を向上させる施策を実行できます。

また、アンケート結果を基に商品やサービスの質を改善して満足度を高めることも可能です。
 

不動産事業

不動産事業では、主に次のデータを収集します。

  • 顧客情報
  • 顧客単価
  • 坪単価
  • 資材原価
  • 平均工期
  • 営業リスト
  • 顧客満足度
  • 1件あたりの利益

不動産事業でデータドリブンを成功させるには、事業部同士で連携し各データを蓄積することが重要です。例えば、顧客情報や顧客単価、顧客満足度の分析は顧客ニーズや課題の理解につながり、より良い提案が可能になります。また、データに基づいてクロスセルやアップセルなどを行うことで、さらに顧客満足度を高めることもできるでしょう。
 

食品メーカー

食品メーカーでは、主に次のデータを収集します。

  • 商品ごとの販売数
  • 年齢層ごとに人気のある商品のランキング
  • 市場トレンド
  • SNSでの口コミ

例えば、新商品を開発に活用できるのが、市場トレンドやSNSでの口コミです。ターゲットとなる顧客を絞り込んで興味や関心を把握し分析することで、顧客ニーズに応えられる新たなアイデアを創出できます

他にも、商品ごとの販売数を季節ごとに把握しておけば、需要に見合った製造ができ、適正在庫を保つことができるでしょう。
 

データドリブンに役立つツール

ここでは、データドリブンに役立つツールを紹介します。

  • BIツール
  • DMP
  • アクセス解析ツール
  • CRM
  • MAツール
  • SFA
     

BIツール

BI(Business Intelligence)ツールとは、データの収集から可視化、分析に特化したツールです。

膨大なデータを取り扱うデータドリブンでは、データを効率的に収集し、分析する必要があります。BIツールを活用すれば、必要な情報にすぐにアクセスでき、スピーディーな分析が可能です。レポート作成機能を使えば、分析結果をグラフや表などで視覚化できるため意思決定をスムーズに行えるでしょう。

 

DMP

DMP(Data Management Platform)とは、インターネット上にあるデータを収集・分析してマーケティングに活かすためのプラットフォームです。一般公開されている自社以外のデータも活用できるため、データドリブンな意思決定が可能となります。

また、DMPで集めたデータを他のツールと連携させれば、より多角的なデータ分析ができるでしょう。
 

アクセス解析ツール

アクセス解析ツールを使うと、Webサイトを訪れたユーザーの行動データが解析できます。Google Analyticsなどのアクセス解析ツールを用いると、自社のWebサイトを訪れたユーザーの行動をデータとして可視化できます。測定できる指標の一例は次の通りです。

  • PV(ページビュー)数
  • セッション数
  • インプレッション数
  • UU(ユニークユーザー)数
  • 直帰率

これらの指標を分析すれば、顧客の興味関心やニーズの把握につながるだけでなく、Webサイトの改善にも役立ちます。
 

CRM

CRM(Customer Relationship Management)は顧客関係管理とも呼ばれ、顧客ごとの基本情報や購入履歴などをまとめて管理するツールです。CRMの導入によって、顧客一人ひとりの情報がわかるため、顧客への理解を深められます。

顧客理解が深まれば商品やサービスに活かせるため、自社への信頼の向上によるリピート率の増加や新規顧客の創出にもつながります。顧客管理の効率化により、営業パフォーマンスが向上する副次的な効果も期待できるでしょう。

 

MAツール

MA(Marketing Automation)ツールとは、マーケティング業務を自動化し、顧客ごとに最適化した施策を実行できるツールです。

顧客体験を高めるためにはパーソナライズ化させた施策が有効です。しかし、顧客行動が多様化した昨今、顧客ごとに最適なアプローチをするには時間や労力がかかるため、本来の業務を圧迫しかねません。

MAツールを利用すれば顧客ごとに最適なアプローチを自動化できるため、業務効率化につながります。また、顧客ごとのアプローチは顧客体験の向上を図れるため、顧客との良好な関係性を築けるのも特長です。
 

SFA

SFA(Sales Force Automation)は、営業支援システムとも呼ばれ、営業の進捗状況や商談状況の可視化、営業活動の自動化ができるツールです。ツールによって詳細は異なりますが、一般的には次の機能が搭載されています。

  • 顧客管理
  • 案件管理(受注予測)
  • 行動管理
  • 予実管理
  • 顧客とのコミュニケーション機能
  • 見積書作成
  • タスク管理
  • レポーティング

SFAは営業に特化しており、導入すれば営業チームの活動状況をリアルタイムで把握でき、社内で共有できます。データドリブンなアクションの実行に役立つでしょう。
 

データドリブンなマーケティング活動で顧客理解を深めよう

インターネットの普及とデジタル技術の発展に伴い、人々の購買行動は多様化かつ複雑化しています。このような状況下では、経験や勘だけに頼って効果的な施策を実行するのは難しいため、定量化されたデータを活用するデータドリブンが注目されています。

データドリブンには、明確な根拠を基に意思決定できる、顧客との良好な関係性を築ける、新たな価値創出につながるなど数多くのメリットがあります。本記事で紹介した導入時の注意点やステップを確認しながら、ツールを活用してデータドリブン化を進めていきましょう。

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