デジタルマーケティングにおけるKPI(Key Performance Indicators)は、デジタルマーケティング活動の成果や効果を定量的に測定し、評価するための指標のことを指します。
KPIの設定により、デジタルマーケティングの成功を数値で評価し、適切かつ迅速な改善が可能になります。
本記事では、デジタルマーケティングにおける具体的なKPI指標の解説から、その設定方法、さらに注意すべきポイントを解説します。
【目的別】デジタルマーケティングKPIの活用方法
デジタルマーケティングは、サイトや媒体の目的などによってKPIの目標が異なります。ここでは、4つの目的に分けて、デジタルマーケティングにおけるKPIの活用方法を紹介します。
集客・認知拡大
集客や認知拡大を目的とする場合は、広告がユーザーのもとに届いた数などが主な指標となります。
Web広告
Web広告にはディスプレイ広告、リスティング広告、動画広告、SNS広告などの種類があります。集客や認知拡大を目的とする場合、潜在層向けであるディスプレイ広告やSNS広告、動画広告などで配信します。
主な指標は次の通りです。
- インプレッション数
- CPM(インプレッション単価)
- リーチ数
- フリークエンシー
- CPV(視聴単価)
オウンドメディア
オウンドメディアでは、自社と関連の深いサービスに関するお役立ち情報などを提供します。
顕在層向けのコンテンツもありますが、自社の集客や認知拡大を目指す際には、広く潜在的な顧客層に向けたコンテンツを積極的に発信しています。この取り組みの成果を測るために、オウンドメディアではサイトを訪れたユーザー数を主要な指標として利用しています。
主な指標として、次のようなものがあげられます。
- セッション数
- PV(ページビュー数)
- UU(ユニークユーザー数)
- クリック数・CTR(クリック率)
- 検索順位
- 回遊率・離脱率・直帰率
SNS
InstagramやFacebook、X(旧Twitter)といったSNSの運用では、購入の促進よりも自社や商品の認知拡大、ブランディングなどが中心的な目的です。
そのため、KPIを設定する際には、次のような数値に注目します。
- アカウント閲覧数
- クリック数
- CTR(クリック率)
- エンゲージメント数
- フォロワー数
誘導
自社サイトや製品ページ、LPへの誘導を目的とする場合、適切な指標の活用が重要です。
特にWeb広告においては、次のような主要な指標が活用されます。
- クリック数
- CTR(クリック率)
- CPC(クリック単価)
CV促進
デジタルマーケティングにおいてCV(コンバージョン)促進は重要な目標の一つです。購入・申し込み・会員登録などのCVを増やすために、適切なKPIを設定することが重要となります。
CV促進は、先に紹介した集客・認知拡大や誘導などの上位に位置づけられます。
このため、KPIツリーの下層には、セッション数、PV(ページビュー)、UU(ユニークユーザー数)、インプレッション数などが位置しています。
これらの指標は、CV促進に向けた戦略の評価や最適化に役立ちます。
Web広告
Web広告でのCV促進を目的とする際には、次の指標が重要です。
- CV数
- CVR(コンバージョン率)
- CPA(顧客獲得単価)
広告の場合、出稿の費用がかかるため、投資対効果を確認することが不可欠です。費用対効果を評価するためには、以下の指標が活用されます。
- ROAS(広告の費用対効果)
- ROI(投資利益率)
ROASは、広告費に対する回収率を示します。例えば、100万円の広告費に対して120万円の売上があればROASは120%となります。一方、ROIは投資に対する収益率で、広告費用に限らず、総投資に対する収益を示します。
オウンドメディア
オウンドメディアにおいてCV促進が主な目的の場合、次の指標が重要です。
- セッション数
- CV(コンバージョン)数
- CVR(コンバージョン率)
- 目標ページ到達数
- CTAのクリック数/クリック率
- 検索順位
なお、KPIを設定する際は、メディアを立ち上げたばかりの初期なのか、それとも中期、後期などフェーズごとにKPIの指標が変わるため、その状況によって適切なKPIを設定することが大切です。
LP
LP(ランディングページ)は、購入や申し込みを促すためのページであり、CV数やCVRだけでなく、ページ内でのユーザーの動線を把握することが重要です。
LPの効果を評価するための指標には、次のようなものがあります。
- CV数
- CVR(コンバージョン率)
- ファーストビュー離脱率
- 読了率・スクロール率
- フォーム遷移率
なお、ユーザーの動線を把握するためには、ヒートマップツールの導入が役立ちます。ヒートマップは、ページ上のどの部分がユーザーの注目を集めているかを視覚的に表示するツールです。熟読度などを確認しながらLPを改善していくことができます。
ECサイト
Amazonや楽天といったECサイトで売上の増加を目指す場合は、次のようなKPIを設定することが重要です。
- CV数
- CVR
- リピート率・解約率
- 顧客単価
- カゴ落ち率(カート放棄率)
リードナーチャリング
リードナーチャリングは、見込み客と良好な関係を築き、将来的な顧客を醸成するためのマーケティング手法です。
メルマガ
メルマガの効果は、メールの到達数、開封率、およびメール内に設置したリンクのクリック率などが重要な指標となります。
これらのデータを分析することで、メルマガキャンペーンの効果を把握し、戦略の最適化に活用することができます。
- 配信数
- 到達率・エラー率
- 開封率
- リンククリック数
- 反応率
- 配信停止率(解約率)
ウェビナー
ウェビナーやセミナーの場合、次の指標が主に利用されます。開催の目的によって指標が変動するため、自社の目的に適したKPIを設定することが重要です。
<開催前~実施直後>
- メルマガ開封率
- 申込率・出席率
- アンケート回答数
<開催後>
- 個別相談件数
- アンケート回収数
また、その後の成約率や案件化率なども確認し、総合的なウェビナーの効果を把握します。これにより、デジタルマーケティング戦略の最適化に役立ちます。
パーソナライゼーション
パーソナライゼーションは、顧客の行動履歴などを分析し、最適な商品やサービスを提案する手法です。
この戦略では、顧客体験価値を向上させることが重要視され、その評価のために適切な指標が設定されます。
- CX(顧客体験価値)
- 顧客満足度の向上
- CPA(顧客獲得単価)
- CPM(広告を1,000回表示するのにかかる費用)
顧客ロイヤリティ向上
顧客ロイヤリティは、顧客が特定の企業や商品・サービスに対して抱く信頼感や愛着の程度を指します。いわゆる既存顧客との関係性を評価する指標のことです。
SNS
SNSにおいて、顧客ロイヤリティ向上を促進するための指標には次のようなものがあります。
- フォロワー数
- エンゲージメント率
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)数
- 指名検索数
コミュニティマーケティング
コミュニティマーケティングにおいて、顧客ロイヤリティの向上を図る際に注視すべき指標は次の通りです。
- 会員数
- アクティブ率
- アクションユーザー率
- 投稿数
- コメント数
これらの指標を通じて、コミュニティ内での顧客の参加度や関与度を評価し、顧客ロイヤリティの向上に寄与する戦略を展開することが重要です。
デジタルマーケティングのKPIの設定手順
ここでは、デジタルマーケティングKPIを効果的に設定する手順を説明します。正しい手順を踏むことで、デジタルマーケティングの目標設定から具体的な成果測定までを効果的に行うことができます。
手順1. 最終目標である「KGI」の設定
最初に行うべき手順は、デジタルマーケティングの最終目標であるKGI(経営目標達成指標)の設定です。
KGIは、ビジネスの主要な成果や目的を示すもので、具体的な数値や指標で表現されます。例えば、「〇〇部門の月あたりの売上を100万円増加させる」や「会社全体の利益を前年比で25%アップさせる」などがKGIとなります。
この最終目標がデジタルマーケティングの方向性を明確にし、戦略の成功を定量的に評価する基準となります。
手順2. 「KGI」の達成するために「KSF」の設定
KGIを達成するためには、KSF(重要成功要因)の設定が不可欠です。KSFは、KGIに直接影響を与える要素であり、目標達成に欠かせないポイントといえます。
例えば、KGIが「〇〇部門の月あたりの売上を100万円増加させる」の場合、そのために何をすべきかを考えます。KSFとして考えられるのは、「認知度を向上させる」「購入数を増加させる」などで、KSFが具体的な戦略やアクションプランの立案につながります。
KSFの設定が、目標達成への道筋が明確になり、戦略的なアプローチが可能となります。
手順3. 目標達成の進捗を測定するために「KPI」を設定
最後に、KGIとKSFをもとにして具体的なKPIを設定します。KPIは、目標達成の進捗や成功を測定するための指標であり、数値で具体的な成果を表現します。
この段階では、KGIとKSFから派生させ、戦略の効果を定量的に評価するための具体的な数値目標を明確にします。
また、KPIを設定する際には、「SMART」と呼ばれるフレームワークを活用します。SMARTは、目標設定が「Specific(具体的)」、「Measurable(測定可能)」、「Achievable(達成可能)」、「Relevant(関連性がある)」、「Time-bound(時間制約がある)」となるように設定する手法です。
これにより、明確で実現可能な目標を設定し、戦略のモニタリングや最適化に有益な情報を得られます。
手順4. PDCAを回し、適宜軌道修正を行う
KPIを設定したあとは、KPI達成に向けて必要なPDCAサイクルを回しましょう。
デジタルマーケティングにおいて、KGI・KPIの設定だけでなく、PDCAサイクルの実施は、戦略の成功に向けて欠かせないステップとなります。
デジタルマーケティングにおけるKPI達成のPDCAサイクルを、具体例とあわせて紹介します。
1.KGIからKPI設定
(例)
KGI:月間のWebサイトの新規ユーザー数を20%増加させる
KPI:Webサイトへの新規ユーザー登録数が前月比で20%増加すること
2.具体的なアクション計画
(例)
- リターゲティング広告キャンペーンの実施
- ユーザーエクスペリエンスの向上を目指したWebサイトのリニューアル
- メールマーケティング戦略の最適化
3.実行と評価
(例)
- リターゲティング広告キャンペーンを開始し、広告のクリック数やCV率、CPAなどをモニタリング
- Webサイトのリニューアルを実施し、ユーザーフィードバックやPV数の変動を分析
- メールマーケティングの成果を確認
4.原因分析と改善策特定
(例)
- クリック数が伸び悩む場合、広告の対象ターゲットを見直す
- PV数が増加しているがCV率が低い場合、ユーザー行動分析を行い不備を特定する
- メールの開封率が低い場合、ターゲットセグメンテーションの見直し
5.軌道修正
(例)
- リターゲティング広告の対象ターゲットを調整し、再評価する
- webサイトの特定ページを修正してCV率の向上を目指す
- メールマーケティング戦略を再検討し、開封率向上の施策を実施
このような流れにより、PDCAサイクルを通してデジタルマーケティングのKPIが達成され、戦略の最適化が可能です。継続的な振り返りと改善を通じてデジタルマーケティング戦略を最適化しましょう。
デジタルマーケティングのKPI設定のポイント
デジタルマーケティングにおけるKPI設定のポイントとして、KPIツリーと呼ばれるロジックツリーを作成することがあげられます。KPIツリーは、KGI・KFS・KPIで構成され、頂点にKGIを配置したツリー状の構造を持っています。
KPIの設定には、KGIから逆算して具体的なKPIを設定していくことが重要です。
また、一つのKGIに対して達成すべきKPIが一つに限らないよう留意してください。
KPIツリーの作成により、KGIからKPIまでのつながりが視覚的に明確化され、ボトルネックの発見や具体的な施策の策定・効果検証に役立ちます。
施策の成果を最大化するKPIを設定しよう
デジタルマーケティングの手法は幅広く、マーケティング施策を実行するためのツールや分析ツールも多岐にわたります。
デジタルマーケティングの成果を正しく把握し、施策を最適化するためには、適切なKGIとKPIが必要です。今回の記事を参考に、KGIを起点としたKPIを設定し、ストーリーを描くという流れでデジタルマーケティングに取り組んでみることをおすすめします。
また、今回はデジタルマーケティングのKPIについて指標の例を紹介しましたが、商談化率や案件化率など、セールス側のKPIも存在します。マーケティング部門と営業部門、両方の指標を意識しながらマーケティングの施策を実行することが重要です。
最終的なゴールを逆算し、効果的なデジタルマーケティングを展開しましょう。