サイボウズ社が提供するkintoneは、プログラミングの知識がなくても、ノーコードで業務のシステム化や効率化につながるアプリが作成できるクラウドサービスです。導入した企業の93%が非IT部門であるというデータもあるように、特別なスキルや知識が無くても始められるのが特徴です(2020年12月時点)。
しかし、ExcelやWordなど従来のオフィスツールに慣れ親しんでいる方は、kintoneの使い方がわからず不安に感じるかもしれません。
本記事では、kintoneの使い方を初級・上級に分けわかりやすく解説します。kintoneをこれから活用したい方や、すでに利用を始めたが使い方に戸惑っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
kintoneを使う前に知っておきたい基本事項
kintoneを使う前に、まずはシステム内で使われる基本用語について理解しておきましょう。
- ポータル:全体へのお知らせやアプリ一覧、グラフなどを表示する場所
- アプリ:kintoneで作成できる業務システムのこと
- フィールド:レコードを構成する各データのこと
- フォーム:アプリにデータを入力する画面のこと
- レコード:kintoneのアプリケーション内で、1行にまとめられた一組のデータセットのこと
- スペース:個々の参加者を設定し、チーム内で情報共有とコミュニケーションができる場所
- スレッド:メンバー間でコミュニケーションや情報共有を行える機能
kintoneの基本的な使い方【事前準備】
まずはkintoneを始める準備を行うため、基本的な操作方法を学んでいきましょう。
kintoneアカウントへログインする
- kintoneの公式ホームページにアクセス
- ログイン名とパスワードを入力
- ログイン情報の入力後、ログインが完了
- ログイン後、プロフィールの編集画面に進む
アプリを選択する
ログイン後には、使用するアプリを選択します。
kintoneのアプリはデータベースのようなもので、特定の業務プロセスや情報管理を行うために設計されています。
kintoneの使い方【初級編】
はじめに初級編では、kintoneの基本操作や機能についてわかりやすく解説します。
アプリを作成する
アプリの作成方法は、大きく以下の3つに分けられます。
- アプリを一から作る方法
- サンプルアプリを使う方法
- ExcelやCSVを読み込む方法
それぞれの作成方法の流れをみていきましょう。
アプリを一から作る方法
- 「アプリを作成する」をクリック
- 「はじめから作成」をクリック
- アプリ名を入力
- 配置したいフィールドを決める
- フィールドを追加
- 配置したフィールド名を変更
- アプリを公開
サンプルアプリを使う方法
- アプリストアを開く
- アプリを選択
- アプリを追加
ExcelやCSVを読み込む方法
【Excelの場合】
- Excel・CSVファイルを整形
- 「Excel(CSV)を読み込んで作成」で「作成を開始する」を選択
- 「アップロードへ進む」をクリック
- ファイルを選択
- データの範囲指定(CSVでは不要)
- フィールドタイプを確認
- アプリを確認
実際にアプリの中身を作成する際は、フォーム画面にて、左側のフィールド一覧より必要な項目を選んでドラッグ&ドロップしながら、フォームを作成していきます。
kintoneのアプリ作成方法については、こちらの記事にて画像つきで詳しく解説しています。
スペースを作成する
- スペース作成の開始
kintoneのポータル内「スペース」エリアにある「+」アイコンをクリックし、「スペースを作成」を選択します。 - 作成方法の選択
新規にスペースを作成する場合は「はじめから作る」を選択します。
スペーステンプレートを利用する場合は、好みのテンプレートを選びましょう。スペーステンプレートとは、スペースの作成に使用するひな型のこと。「スペーステンプレートの管理」より設定が可能で、デフォルトでは入っていません。このテンプレートを使う場合、ここで作成手順は完了です。 - 新規作成の詳細設定
「基本設定」タブでスペースの名称やカバー画像などの詳細を設定します。 「参加メンバー」タブでメンバーを追加します。 - 保存と完成
最後に「保存」をクリックし、スペースの作成が完了となります。
スレッドを作成する
スレッドは、スペースの設定にて「スペースのポータルと複数のスレッドを使用する」が有効になっているスペースのみで追加可能です。
- スレッド作成の開始
対象スペースのポータルで、「スレッド」エリアの「+」アイコン(スレッドを作成)をクリックします。 - スレッド情報の入力
スレッド名と内容を入力します。 - 通知設定
「自分宛」で通知する場合は、[スレッドの作成をスペース参加メンバーに「自分宛」で通知する]にチェックします。チェックなしの場合、通知は「すべて」のメンバーに送信されます。 - スレッドの完成
「スレッドを作成」ボタンをクリックして完了です。
データを見る・編集する
- データ編集の開始
右の「アプリ」の項目から、データ編集を行いたいアプリをクリックします。 - 一覧画面を表示
一覧画面が表示されるので、画面左側のオレンジの枠のデータ編集を行いたいアイコンをクリックします。 - 詳細画面を表示
詳細の画⾯が表⽰されたら、「レコードを編集する」のアイコンをクリック。入力欄が表示され各項目が編集可能になります。 - 保存をクリック
編集を終えたら「保存」をクリックします。
データを追加する
データを追加したいアプリを選択します。画面右上の「+」をクリックすると、新しいデータを追加できます。
- 保存をクリック
必要な情報を入力したら、「保存」をクリックします。
コメントを書く
kintoneでは、一つのデータに紐づけて、コメントを残すことが可能です。データを見ながら一つの画面で質問や相談などを行えるので、スムーズなコミュニケーションが実現します。
- コメントを記入
詳細画面の右側に表示されているのがコメント欄です。コメントを記入します。 - 「書き込む」をクリック
入力を終えたら「書き込む」をクリックします。
宛先を指定した場合は、指定された人に通知されます。
kintoneの使い方【上級編】
上級編では、kintoneをより便利に使うための機能と、それらを効果的に活用するためのテクニックを掘り下げていきましょう。
アプリのデータ入力をより便利にする
まずは、アプリのデータ入力を便利にする機能について紹介します。
選択肢の活用による入力ミスの軽減
選択肢を用いることで、入力作業が簡単かつ迅速になります。これにより、入力ミスや変換ミスが減少し、データ品質の向上が見込めます。また、選択肢にすることで表記揺れを防げるため、データ集計の効率化にもつながるでしょう。
なお、活用できる選択肢のフィールドには、ラジオボタン、チェックボックス、ドロップダウン、複数選択などがあります。
出典:kintone公式サイト
選択肢の使い方は、以下のとおりです。
まず、フィールド一覧からラジオボタン、チェックボックス、ドロップダウン、複数選択など、必要な項目を選んでドラッグ&ドロップします。
出典:kintone公式サイト
合計金額や時間を自動計算する
計算が必要なフィールドの場合、計算フィールド機能を利用して計算式を予め設定することができます。データ入力時の自動計算ができるため、とくに合計金額や時間計算の際に便利です。
計算フィールド機能により、入力作業が容易になるだけでなく、計算ミスのリスクも軽減され、結果としてデータの精度と信頼性が高まります。
出典:kintone公式サイト
計算フィールド機能の使い方は、以下のとおりです。
- フィールド一覧から「計算」を選んでドラッグ&ドロップする
- 「計算」フィールドの設定をクリックし、計算式を入力する
同じ情報を効率的に入力する(ルックアップ機能・アクション機能)
情報入力をさらに効率化するための機能として、ルックアップ機能やアクション機能もあります。
ルックアップ機能で情報入力をより効率的に
ルックアップは、他アプリで登録したデータを参照し、アプリ上でデータを取得できるようにした機能です。例えば、顧客情報アプリに登録した顧客名を案件管理アプリ上で引っ張ってくることなどができます。
この機能により、単価やその他の関連データの手動入力の手間が大幅に減少します。結果として、データ入力プロセスが効率化され、時間と労力の節約につながるでしょう。
出典:kintone公式サイト
ルックアップ機能の設定は、以下のとおりです。
- あらかじめマスターデータ(参照先)となるアプリを作成しておく
- データを取り込みたいアプリの設定画面にフィールド一覧から「ルックアップ」を選んでドラッグ&ドロップする
- ルックアップの設定をクリックし、それぞれの項目を設定後、保存する
ルックアップの使い方は、ルックアップを設定したアプリのレコード登録画面を開き、「取得」をクリックすることで使うことができます。
kintoneのルックアップ機能について、こちらの記事で詳しく解説しています。
アクション機能で任意のアプリから他アプリへ転記
アクション機能を活用することで、顧客情報などのデータを複数のアプリ間で簡単に転記することが可能です。この機能により、必要な情報を効率的にコピーし、データ入力の手間を大幅に削減します。
また、入力ミスや表記揺れを防ぐことができ、データの一貫性と正確性が保たれます。
出典:kintone公式サイト
例として、顧客リストアプリのデータを注文管理アプリに転記する場合のアクション機能の使い方は次の通りです。
- 顧客リストアプリを開き、転記したいレコードの詳細画面を表示する
- 「注文管理アプリに登録」というアクションボタンをクリックする
- 注文管理アプリの新規レコード追加画面が開き、転記されたデータが表示される
- 必要な追加情報を入力し、レコードを保存する 出典:kinntone公式サイト
案件・タスクのステータスを見える化する(プロセス・ステータスの管理機能)
プロセス・ステータスの管理機能を利用することで、タスクや案件の進捗状況が一目で分かり、管理が容易になります。
この機能により、タスクのステータス管理や申請承認業務がスムーズに進行し、業務の効率化が図れます。また、プロジェクトの進捗や担当者の状況が視覚的に把握でき、チーム全体の連携も促進されるでしょう。
出典:kintone資料
プロセス管理は、レコード一覧画面の右上にある歯車の形をしたアプリ設定アイコンをクリックし、「設定」タブの「一般設定」内の[プロセス管理]を選択することで設定できます。
プロセス管理の詳しい設定方法については、kintone公式サイトをご参照ください。
タスクや対応の抜け漏れなどを防ぐ(リマインダー機能・コメント機能)
kintoneには、タスク処理を効率的に行うためのリマインダー機能・コメント機能などもあります。
リマインダー機能の活用で対応漏れを防止
リマインダー機能は、特定の日時や条件に基づいて通知やリマインダーを設定できる機能です。例えば、案件の納期当日AM10:00の時点でタスクが未完了だった場合にメッセージを送信する、などです。
レコード一覧画面の右上にある歯車マーク(設定)をクリックし、[通知]を選択することで条件の設定ができます。
リマインダー機能を活用することで、タスク漏れの軽減につながるでしょう。
コメント機能を活用してメンバーへ通知する
レコード画面の右側にコメントを書き込む欄があり、ここからコメントの入力が可能です。
このコメント欄へ書き込むと、「アプリの条件通知」にて設定されたメンバー宛に通知がいきます。また、「@」マークで宛先を指定した場合は、通知の条件に関係なく宛先のメンバーへ通知がいく仕組みです。(レコードの閲覧権限が無いユーザーを除く)。
各アプリのレコード上でコメントができるため、顧客情報を変更した際の連絡、案件の進捗状況の報告など、さまざまな場面で役立つでしょう。
日々の活動をリアルタイムに見える化する(グラフ・レポート機能)
グラフ・レポート機能を用いることで、視覚的なレポーティングを作成できます。部門を超えてリアルタイムに情報を共有できる便利な機能です。
例えば、営業部では、アプリに保存された担当者別の案件数や進捗状況、売上予測などのデータを集計し、直感的に理解できるグラフで表示できます。
出典:kintone資料
設定を一度保存すれば、アプリのメインページ(レコード一覧画面)にアクセスするだけで、常に更新されたグラフを確認できます。
プラグインの利用で高度なカスタマイズを実現
kintoneでは、プラグインの導入によって機能拡張が可能です。プログラミング不要で、ユーザーのニーズに合わせた高度なカスタマイズが実現できます。
kintoneが提供する業務アプリパッケージや拡張機能サービスを活用して、効率的に機能追加やカスタマイズを行いましょう。
プラグインの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
【入力・編集補助系】
- 条件分岐処理プラグイン
- 一覧画面編集プラグイン
【画面表示系】
- 関連サブテーブル一覧表示プラグイン
- 添付ファイル表示プラグイン
【検索系】
- 一覧テキスト絞り込み検索プラグイン
なお、プラグインのインストール方法は以下の手順で行います。
- ホーム画面の設定より「kintoneシステム管理」を選択
- 「その他」より「プラグイン」を選択
- 左上の「読み込む」より、プラグインのzipファイルを選択し、読み込み
無料で使えるkintoneのプラグインについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
外部サービスとの連携による効率化(API連携)
kintoneでは、電子契約サービス、ファイル管理サービスなど、多くのクラウドサービスとのAPI連携が可能です。各種サービスとの連携によって、kintoneの機能をさらに拡張し、業務効率化を図れます。
以下は、実際にkintone連携できる外部サービスの例です。
- 電子契約サービス:GMOサイン、freeeサイン
- ビジネスチャット:Chatwork
- ファイル管理:Dropbox
HubSpotも、kintoneとの連携が可能です。双方向同期のため、HubSpotとkintone、いずれかで入力したデータがリアルタイムに共有されます。
詳しくはこちらをご参考ください。
kintoneの使い方を押さえて業務効率化に役立てよう
今回は、kintoneの操作方法や使い方を初級編・上級編に分けてわかりやすく解説しました。
kintoneは、実際の業務課題に対処するための多くのアイデアを実現できる強力なツールです。適切な使い方をマスターすることで、業務の効率が大幅に向上する可能性があります。また、入力ミスといったヒューマンエラーを減らすなど、サービス品質の向上にもつながります。
kintoneの使い方を知って社内で上手に活用し、ぜひ業務改善に役立てましょう。