購買に至るまでの各段階にいる見込み客(リード)に対し、最適なアプローチを行うマーケティング手法として「リードナーチャリング」があります。「ナーチャリング」は育成・養成を意味し、見込み客と良好な関係を築くことで、ひとつ先の購買プロセスへ進んでもらうことを目指します。
顧客体験の向上にも役立つリードナーチャリングですが、具体的な手法が分からず、お困りのマーケティング担当者の方も多いのではないでしょうか。リードナーチャリングという考え方を、営業やマーケティングの現場に取り入れたことで成果につながった事例が、数多く報告されています。
今回は、リードナーチャリングの成功事例5選と、成果につながるポイントを解説します。自社の施策立案にぜひお役立てください。
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リードナーチャリングの成功事例5選
リードナーチャリングでは、購買プロセスの異なるフェーズにいる見込み客それぞれに対して、適切な施策を適切なタイミングで実行することが重要です。
さっそく、リードナーチャリングの成功事例を5つご紹介します。自社の課題と照らし合わせながら、具体的な施策や成果に結びついた点を参考にしてみてください。
事例1. 株式会社ランドネット ~提案の質を高め、面談申込数増加~
株式会社ランドネットは、国内で不動産流通事業や不動産投資事業を展開している会社です。顧客に寄り添った提案に注力することで、面談申込数の増加を実現した事例について、詳しく見ていきましょう。
抱えていた課題
- 顧客情報の時系列管理
- リード創出からアプローチまでのタイムラグ
同社の以前の課題は、成約に至るまでの顧客情報を時系列に沿って管理することでした。
不動産投資を検討している人向けの定期的なセミナーの集客方法として、資料請求、オウンドメディア、リスティング広告などさまざまな媒体を利用していたため、媒体ごとにリード管理をしている状態になっていました。
施策・取り組みの具体例
- 購買意欲のレベルごとの顧客管理
- レベルに応じたアプローチ方法の用意・実施
最初の取り組みは、顧客をステータスごとにセグメントし、すべての集客媒体からの情報を一括管理することでした。この施策により、顧客ごとの行動を時系列で追えるようになり、一人ひとりに合ったアプローチを実施することで、深いコミュニケーションが可能になっています。
また、MAツールによるスコアリングやリードの振り分けの自動化も取り入れ、リード創出からアプローチまで迅速な対応ができるよう工夫されています。
リードナーチャリングの成果
同社では、顧客情報管理の仕組みを見直し、それぞれに合ったコンテンツを用意することで、セミナーからの面談申込数の増加という成果につながりました。
さらには、顧客の行動を点ではなく線で追えるようになったことで、顧客に寄り添った提案ができるようになり、顧客との信頼構築にもつながっているとのことです。
この事例がマッチする業界
- 不動産業界
- 金融業界 など
株式会社ランドネットの事例は、比較的高額な商品・商材を扱う業界で汎用性があります。企業・顧客間で深い信頼関係が求められる反面、顧客にとっての安心感と、企業にとってのLTV(顧客生涯価値)の向上も期待できます。
事例2. 株式会社キャリアデザインセンター ~丁寧なアプローチで成約率1.8倍に~
株式会社キャリアデザインセンターは、転職サイト「女の転職type」の運営会社です。リードナーチャリングにより、成約率や営業効率が改善しています。
抱えていた課題
- 問い合わせページからの流入経路が活用できていなかった
- 社内でリードナーチャリングの方向性やノウハウが共有できていなかった
同社では、これまでは企業側からの営業アプローチ(アウトバウンド)を主軸に行っていましたが、営業担当者個人の手腕に依存していることが課題でした。
利用者自身で情報収集することが主流となった転職市場では、顧客側から企業へ問い合わせなどをしてもらう方法(インバウンド)を活用することが急務となっていました。
施策・取り組みの具体例
- スコアリングの条件を明確にして実施
- 営業部門と連携した丁寧なアプローチ
取り組みとして、マーケティングの意義やスコアリングの条件を社内で共有し、一定のスコアに達したものを見込み客(リード)として営業担当に引き継ぐことを実践しました。顧客にとって有益な情報を揃え、最適な提案をすることを徹底して行いました。
リードナーチャリングの成果
マーケティング部署と営業部署とが連携して丁寧なアプローチを行ったことにより、アポイント獲得率は従来のテレアポと比べて10倍に、成約率は1.8倍へ増加しました。
部署を超えて情報共有することで、営業担当者以外の社員も、企業と顧客のつながりを感じられるようになったそうです。
この事例がマッチする業界
- リクルート業界(転職、人材派遣)
- スクール業界
- 資格業界 など
株式会社キャリアデザインセンターの事例は、インバウンドが期待できる業界に適した内容です。特に、最終的なコンバージョンが営業個人の手腕に影響を受けやすい「B2C」の分野で参考になるでしょう。
参考:株式会社キャリアデザインセンター_HubSpot導入事例
事例3. 株式会社Kaizen Platform ~徹底した顧客理解で受注率倍増~
株式会社Kaizen Platformは、Webサイトや動画広告などのDX(デジタル領域での顧客体験)支援を手掛けている会社です。ペルソナと購買プロセスの設定の精度を高めることで、コンテンツのクオリティが改善し、結果として受注率の倍増につながった事例をご紹介します。
抱えていた課題
- KPI設定や振り返りに必要な数値の計測ができていなかった
- 活用できていないリードが多かった
同社では、これまでクライアントの課題解決をする一方で、自社のマーケティング施策の仕組み作りにはそれほど力を入れていませんでした。そのため、施策の結果を次に活かせておらず、コンテンツマーケティングの体系化に課題を感じていたといいます。
施策・取り組みの具体例
- 精細なペルソナ設定
- 購買プロセスから仮説を立てたコンテンツマーケティング
最初に取り組んだのは、マーケティング部署だけでなく、営業メンバーと協力したリアルなペルソナ設定です。同時に、購買に至るまでの「認知→情報収集→評価・選定」のステップごとに顧客にとっての「真の課題」を抽出し、コンテンツへ反映させていきました。
リードナーチャリングの成果
顧客の課題解決に役立つコンテンツを継続的に投入することで、キーワード検索経由のコンバージョン、アポイントメント、商談などが激増しました。2021年度のインバウンド経由のアポイントメント獲得数は2020年度比で140%増へ、実際の商談は215%増へと改善しています。
この事例がマッチする業界
- コンサルティング業界
- IT・ソフトウェア業界 など
株式会社Kaizen Platformの事例は、コンバージョンが数値化しにくい業界で役立つ内容です。見込み客と信頼関係を築き、長期的な視点でファン化を目指す際に有効でしょう。
参考:株式会社Kaizen Platform_HubSpot導入事例
事例4. ランスタッド株式会社 ~ツールの最適化で案件マッチング率改善
ランスタッド株式会社は、総合人材サービス事業を展開する外資系企業です。ターゲット層に合ったコミュニケーションツールを導入することで、案件マッチング率の改善につながった事例を見てみましょう。
抱えていた課題
- 返信率の低さ
- 休眠会員の増加
同社では、求職者とのコミュニケーションツールとしてメール・電話・ショートメールを利用していましたが、返信率の低さが課題としてあがっていました。リードの状況が把握できず、休眠会員も増加傾向にあったといいます。
施策・取り組みの具体例
- コミュニケーションツールの見直し
- リードの状況の把握
まずは、日本人の利用者層が利用しやすいLINEと連携することで、返信率の改善を目指しました。求職者とコミュニケーションを取ることで就業状況や希望を把握できれば、適切なタイミングで案件の紹介ができると考えたからです。
リードナーチャリングの成果
LINEに切り替えたことで、求職者からの返信率が20%から80%へ上昇し、案件マッチング率も改善しました。リードとの定期的なコミュニケーションができるようになり、希望に沿った提案が可能になりました。
この事例がマッチする業界
- 人材紹介業界
- 保険業界
- 美容・健康業界 など
ランスタッド株式会社のリードナーチャリングの事例は、顧客の状況や購買モチベーションが変化しやすい業界に適した内容です。こまめなコミュニケーションによって、顧客の現状の課題を知ることで、最適な提案が可能になります。
事例5. 株式会社シンフィールド ~アプローチのタイミングを適正化し、アポイント率向上~
株式会社シンフィールドは、漫画を用いたWebマーケティングを提供している会社です。リードの購買意欲が高まっているタイミングでアプローチすることで、アポイント率が向上した事例です。
抱えていた課題
- リードへ効果的なアプローチができていなかった
- ランダムなテレアポでは成果につながらなかった
株式会社シンフィールドでは、展示会での名刺交換や、セミナー・営業活動でのリスト獲得など、多くのリードを創出できていました。しかし、ランダムなテレアポでは成果につながりにくいという課題がありました。
施策・取り組みの具体例
- 2種類のメールを用いた反応率の検証
- 購買意欲レベルに合わせたアプローチ
取り組んだのは、売り込み要素のないメールと営業要素の強いメールの2種類を用い、後者から流入した人のみフォローコールをするという施策でした。その際に、メールの形式や電話のタイミング、電話がつながらなかった場合のメールの文面なども工夫をしたといいます。
リードナーチャリングの成果
営業要素の強いメールから流入したリードのみにアプローチを限定したところ、フォローコールからのアポイント率が10~15%へ増加しました。相対的に、成約率も向上しています。
この事例がマッチする業界
- アプリ業界
- エンターテイメント業界
株式会社シンフィールドのリードナーチャリングの事例は、最初のコンバージョンを低めに設定している業界で有効な施策です。無料ダウンロードやメルマガ会員などから創出したリードに対し、適切なタイミングでアプローチしていくために活用できる内容でしょう
リードナーチャリングの事例からわかる成果につながる2つのポイント
ここまでご紹介した5つの実例を見ると、成功の背景にはいくつかのポイントがあることが分かります。リードナーチャリングを導入するにあたって、成果につながるポイントを確認しておきましょう。
1.課題を明確にする
リードナーチャリングには、「リードのフォローの継続」と「購買意欲の醸成」の2つの側面があります。
「リードのフォローの継続」は、こまめなコミュニケーションを維持し、適切なタイミングでアプローチすることを目的としています。「購買意欲の醸成」は、積極的にリードの課題認識を高め、商品やサービス導入の必然性を意識してもらうためのものです。
それぞれ、取り組むべき施策や使用するツールが異なるため、まずは自社でどちらに取り組むべきか課題を明確にしましょう。それにより、最も重要な課題に注力できるようになり、成果につながりやすくなります。
2.継続して取り組むための仕組み化
一般的にリードナーチャリングは、成果や成約までに長い期間を要する商品やサービスに用いられるマーケティング手法です。
リードナーチャリングでの成功には、継続した取り組みが必須であるため、施策の習慣化や仕組みを構築することが大切です。
自社の人員やシステムだけで対応することが難しい場合には、目的や規模にあわせてツールを導入することも視野に入れると良いでしょう。
リードナーチャリングの具体的な手法や、役立つMAツールについては、こちらの記事をご覧ください。
リードナーチャリングの成功事例を参考に自社の課題を明確にしよう
リードナーチャリングは、企業や商材によって手法・戦略が多岐に渡ります。実際の成功事例を見ることで、自社の課題が明確になり、具体的なイメージができるようになるはずです。
抱えている課題によって取り組むべき施策が異なるため、まずは自社の課題を明確にしてみましょう。また、継続した取り組みが必要なリードナーチャリングでは、施策の習慣化や仕組みを構築することもポイントになります。
ご紹介した成功事例を参考に、自社の課題を抽出し、施策の仕組み化を考えてみましょう。
リードナーチャリング以前の「リードジェネレーション(リードの創出)」に課題を感じている方は、こちらもあわせてご活用ください。