STP分析は、マーケティング戦略を効果的に立案するためのフレームワークです。Segmentation(セグメンテーション)とTargeting(ターゲティング)とPositioning(ポジショニング)の頭文字を取って、STP分析と呼びます。
マーケティング担当者のためのデータ可視化入門
分かりやすく、かつ説得力のあるグラフを作成する方法
- 可視化のツールとソフトウェア
- データの種類、関連性、形式
- データの効果的な可視化方法
- データ可視化の概要
今すぐダウンロードする
全てのフィールドが必須です。
市場における自社の立ち位置と、ターゲットとなる顧客層を具体的に分析できるのが特徴で、特に新規ビジネスを展開するうえで有効な手法です。
本記事では、STP分析の基礎から、分析を行うステップまで解説します。STP分析とあわせて活用できるフレームワークも紹介しますので、活用してみてください。
STP分析とは
STP分析とは、マーケティングにおける基本的なフレームワークで、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)の3つの観点から分析を行います。特に、新規ビジネス展開に有効な手法です。
市場全体を理解し、目標市場を選択し、競合との位置関係の決定に役立ちます。フィリップ・コトラー氏によって提唱され、業界や商品に関係なく適用可能です。この分析法で重要なのは、顧客のニーズを理解し、それに基づいて事業を展開することです。
S:セグメンテーション
セグメンテーションは、市場を特定の基準に基づいて細分化するプロセスです。例えば、「性別」や「年齢」などの基準によって市場を細分化します。さまざまな基準を用いた市場の細分化により、後述するフローとあわせて自社の商品やサービスが、必要とされるユーザー像を明確にすることにつながります。
セグメンテーションの指標としては、「デモグラフィック(人口統計的変数)」「サイコグラフィック(心理的変数)」「ジオグラフィック(地理的変数)」「ビヘイビアル(行動変数)」の4つが一般的です。
- デモグラフィック(人口統計的変数):年齢、性別、収入など人口統計のデータによるセグメント
- サイコグラフィック(心理的変数):趣味、価値観、嗜好など心理的なデータによるセグメント
- ジオグラフィック(地理的変数):国、地域などの地理的なデータによるセグメント
- ビヘイビアル(行動変数):購入商品、利用目的、購入金額など行動のデータによるセグメント
これらの基準を用いて市場を細分化することで、自社の強みを活かせる市場を見つけることができます。
T:ターゲティング
ターゲティングは、自社の製品やサービスが最も響く市場を見つけるプロセスです。セグメンテーションで細分化した市場から最適なものを選びます。参入市場の選択は自社の強みやブランドイメージ、市場のニーズや規模感を考慮して行われます。ターゲティングの手法は、主に次の3つです。
- 集中型マーケティング:特定の市場に焦点を当て、その市場に対して最大限にアピールする。
- 差別型マーケティング:複数の市場に対して、それぞれのニーズに合わせた製品を提供する。
- 無差別型マーケティング:市場の細分化を無視し、広範な市場に対して同一の製品を提供する。
ターゲティングの際は、自社の製品やサービスが最大限に活かされ、顧客満足が達成されるような市場選定を目指します。
P:ポジショニング
ポジショニングは、ターゲティングで策定した市場における自社の位置を明確にするプロセスです。自社の特性や強み、弱みを考慮しながら、競合他社と比較してどのように差異化され、どのような価値を提供するかを明確にします。
ポジショニングマップを作ることで、よりポジショニングについての理解が深まります。ポジショニングマップは、自社と競合他社の位置を視覚化するツールです。消費者が購入の決定をする際に影響を与える要素を軸に作成されます。ポジショニングマップの作成時には、軸が消費者の選択基準になっているかどうか確認することが重要です。
競合他社の位置は、客観的な競合分析に基づいて決定されます。企業の規模や業界特有の要素も、ポジショニングを定める際に考慮されます。ポジショニングは、マーケティングや経営戦略に活用され、他社との差異化や優位性を獲得するうえで有効です。
STP分析の目的・メリット
ここでは、STP分析の目的やメリットを確認しましょう。
- マーケティング戦略が明確になる
- ユーザーのニーズを正確に把握できる
- 自社の強みを認識し、他社との差異化が図れる
マーケティング戦略が明確になる
STP分析は、市場の複雑さを整理し、戦略策定に必要な情報を抽出するのに役立ちます。経営戦略やマーケティングの方向性を決定する際に有用です。STP分析によって作成された戦略は、組織内での共通認識を形成しやすく、効果的な活動を促進します。
ユーザーのニーズを正確に把握できる
「どのようなユーザーがどの市場に、どの程度存在しているか」を理解できるのも、STP分析の特徴です。自社の商品やサービスを利用する具体的なユーザー像(ペルソナ)を設定するのに役立ちます。STP分析を通じて、市場ごとの顧客ニーズを整理・把握することが可能です。自社の商品に適した顧客層を理解しやすくなります。
自社の強みを認識し、他社との差異化が図れる
STP分析を通じて自社のサービスの強みや改善点を理解し、ターゲット市場や競争相手との関係を把握することで、事業展開を効率化する効果も期待できます。マクロ視点の導入により、市場内での自社の位置を客観的に把握し、参入後の優位性をデータに基づいて合理的に判断し、不要な競争を避けることが可能です。
自社の製品が優れていても、すでに実績やブランド力を持つ競争相手が存在する場合は、その市場を避ける選択も可能です。自社の強みは市場の変化に応じて変わるので、定期的なSTP分析により、どの時代・市場でも自社の強みが明確であれば、安定したシェアを確立できるでしょう。
STP分析のポイント
STP分析を行う際は、次の2つのポイントを意識しましょう。
市場を客観的に判断する
市場の規模や成長性は、ビジネスの成功に直結します。そのため、STP分析で見つけた市場が本当に適切なのか、その市場が将来的に成長する可能性があるのかを客観的に確認することが必要です。市場への参入は、単に市場が大きいからといって成功するわけではありません。
重要なのは、自社のサービスや商品が市場で受け入れられ、収益を上げることができるかどうかを検討することです。市場が小さい場合や、将来的に市場が縮小する可能性がある場合でも、適切なマーケティング戦略を立てることで成功する可能性はあります。STP分析だけでなく、他の分析手法やフレームワークも活用した、市場の状況の多角的な理解が重要です。
分析の順番にとらわれすぎない
STP分析を行う際は、自社の目標と差異化の要点を整理するために、セグメンテーションのプロセスから始めるのが一般的です。しかし、途中でより効果的な分析方法が見えてくることもあります。
そのため、全体を見渡しながら必要に応じてS・T・Pを行き来しながら分析し、有効な情報整理を行うことが重要です。また、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つの要素は、連動して考えることで効果を発揮します。これらの要素はそれぞれ相互作用するため、単体で考えると矛盾した結果になることもあります。
分析の見直しや軌道修正を行う際には、該当する部分だけでなくSTP全体を見渡して矛盾を防ぐことが重要です。プロセスの進行に困難を感じた場合は、他の着手しやすい項目から進めましょう。こうした工夫を行うことで、STP分析のプロセスを少しでも簡単にできます。
STP分析とあわせて活用できるフレームワーク
STP分析は、他のフレームワークとあわせることで、欠点・デメリットを補ったり、相乗効果を生むことが可能です。STP分析とあわせて活用できるフレームワークを紹介します。
- 3C分析:企業(Company)、顧客(Customer)、競合他社(Competitor)の3つの視点からビジネス環境を分析。
- 4P分析:製品(Product)、価格(Price)、販売場所(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの視点からマーケティング戦略を考えるフレームワーク。
- 5フォース分析:業界の競争状況を理解するために、競争者間の競争、潜在的な参入者の脅威、代替品の脅威、バイヤー(顧客)の交渉力、サプライヤー(供給者)の交渉力の5つの視点から分析。
- PEST分析:政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの視点からマクロ環境を分析。
- SWOT分析:企業の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの視点から内部と外部の環境を分析。
STP分析で独自のポジショニングを確立する
STP分析は、マーケティング戦略を効果的に立案するための重要なフレームワークです。
セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つのステップを踏むことで、市場を理解し、適切なターゲットを選択し、そのターゲットに対する独自のポジショニングを確立することが可能です。
本記事で紹介したSTP分析の方法やポイントをぜひ参考にして、自社のマーケティング戦略の立案に活用してみてください。