ULSSAS(ウルサス)は近年登場したマーケティングの概念であり、SNS時代に適した購買モデルです。SNS上のUGC(ユーザー生成コンテンツ)を起点に購買行動サイクルを回せるため、コスト削減や効率的な新規顧客創出につながります。
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ただし、ULSSASは、商材によって向き・不向きがあるため、活用時のポイントをしっかりと押さえることが大切です。
本記事では、ULSSASのステップごとの特徴やメリット、成功事例を解説します。
ULSSASとは
ULSSAS(ウルサス)とは、株式会社ホットリンクの提唱する、SNS時代に合わせた購買行動モデルの一種です。ここでは、ULSSASの概要と6つのステップの特徴、ほかの購買行動モデルとの違いを解説します。
ULSSASの概要と6つのステップ
ULSSASは、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を起点に、「Like(お気に入り)」「Search1(SNS検索)」「Search2(Google /Yahoo!検索)」「Action(購買)」「Spread(拡散)」の6つのステップが、サイクル状に構成されています。これらのサイクルが回ることで購買行動が拡大します。
従来の購買行動は、広告やWeb検索を起点としていました。一方、ULSSASは、SNSを中心としたユーザー行動に着目しています。
ULSSASを構成する6つのステップの一例は次の通りです。
- UGC(ユーザー生成コンテンツ):
ユーザーAが購入した商品を使ってSNSに写真や口コミを投稿する - Like(お気に入り):
その投稿を見たユーザーBが、いいねやシェアといったリアクションを行う - Search1(SNS検索):
ユーザーBが自社商品に興味を示し、SNS上で情報を調べる - Search2(Google /Yahoo!検索):
商品に関するさらに詳しい情報や購入できる店舗を探そうと、検索エンジンで情報を収集する - Action(購買):
WebサイトやEC、店舗で目的の商品を購入する - Spread(拡散):
ユーザーBが購入した商品の写真や口コミを投稿する(新たなUGCが発生し次のサイクルが生まれる)
ほかの購買行動モデルとの違い
購買行動モデルには、ULSSASのほかにも、AIDMA(アイドマ)やAISAS(アイサス)、AISCEAS(アイシーズ)などの種類があります。
従来の購買行動モデルの多くはファネル型なのに対し、ULSSASはフライホイール型の形状をしている点で違います。
ファネル型は、最上部に位置する「認知」から、最下部の「購買」に向かって先細りする形をしています。広告を見た1,000人のユーザーのうち、実際に購買へと至ったのは10人のみといったように、購買プロセスが進むに従って対象が徐々に減少するのが特徴です。
一方、ULSSASはフライホイール型をしています。最終ステップのSpread(拡散)から、再びLike(お気に入り)、Search1(SNS検索)へと至り、サイクルが繰り返し回転するのが特徴です。ファネル型の購買行動モデルのように何度も広告費を投じなくても、自然に購買行動が起こり、さらには新規顧客の創出につながるサイクルが期待できます。
ULSSASが必要とされる背景
ULSSASが必要とされる背景には、既存のマーケティング手法が限界を迎えていることとUGCの活発化が挙げられます。
デジタルマーケティングの領域では、Google やX(旧Twitter)などの限られたプラットフォーム上で、多くの企業がコンテンツ配信や広告出稿を競っています。ところが、入札競争の激化によるCPAの高騰や、検索エンジンにおける上位表示の難易度上昇などが起こり、既存のマーケティング手法では対応が難しくなりつつあります。
一方で、注目を集めているのがUGCです。SNSが普及した現在において、「友人が使用していたので興味を持った」「数多くの人から注目を集めているので自分も欲しい」など、UGCが購買行動に影響を与えるケースは珍しくありません。
例えば、アジャイルメディア・ネットワーク株式会社の「SNSのクチコミが購入・来店に与える影響調査」によると、消費者が商品やサービスの購入を検討する際に、最も強い影響を与えているのは「SNS検索で偶然見つけた投稿」であるとの調査結果が出ています。
UGCを活用してマーケティングコストを最適化したうえで、よりスムーズな購買活動へとつなげようとするのがULSSASの考え方です。既存のマーケティング手法での最適化が難しくなった昨今、ULSSASは重要な意味を持つといえるでしょう。
ULSSASを活用するメリット
マーケティングにULSSASを導入する際は、そのメリットや効果を理解することが大切です。ULSSASの活用には次のような恩恵があります。
- 広告費を抑えられる
- 顧客の声を起点にファン創出のきっかけが生まれる
ここでは、それぞれのメリットを詳しく解説します。
広告費を抑えられる
ULSSASでは、従来のマーケティング手法に比べて広告費をおさえることが可能です。
サイクルの最終段階であるSpread(拡散)のステップに至ると、商品やサービスを購入したユーザーの口コミやレビューの効果で、さらにUGCが拡大します。ULSSASのサイクルが繰り返し回転することで、数珠つなぎのように情報が拡散され、高額な広告費をかけずに認知拡大が図れます。
また、広告費の削減によって余った予算を製品開発に費やせば、より価値の高い商品やサービスへと発展させることが可能です。さらに良い口コミやレビューの投稿につながり、ロイヤルカスタマーの増加や売上の最大化といった好循環が期待できるでしょう。
顧客の声を起点にファン創出のきっかけが生まれる
ULSSASのサイクルを繰り返し回転させると数多くのUGCが生まれるため、さまざまなVOC(Voice Of Customer/顧客の声)を収集できます。VOCは、より多くのファンを創出する大きなヒントになります。
例えば、VOCのデータを製品開発やサービスの品質向上に活用すれば、顧客満足度の向上につながるでしょう。
コアなファンが増えるほど、LTVの向上や顧客離脱率の低下などの恩恵が得られ、企業の業績にも良い影響を与えます。
ULSSASを活用したマーケティングの成功事例
成功事例を参考にすることで、マーケティングにULSSASを導入する際の具体的なイメージが湧きます。ここでは、花王株式会社と株式会社ワークマンの2社を例に挙げ、ULSSASの活用方法や成果を解説します。
花王株式会社
花王株式会社は、日焼け止めブランド「ビオレUV」において、Z世代向けに日焼け止め習慣を普及させたいと考えていました。そこで、Z世代から強く支持されているTikTokを活用し、新商品「ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトミスト」におけるブランドエフェクトとハッシュタグチャレンジを展開しました。
ブランドエフェクトとは、動画投稿時にオリジナルエフェクトを作成してブランド体験を促進できる、TikTok広告メニューの一種です。ハッシュタグチャレンジもTikTok広告メニューのひとつで、ハッシュタグ付きの動画投稿を促せる施策です。
これらの施策により、TikTok上では、自社商品を用いた数多くのメイクアップ動画が投稿され、1年目には約1,200件、2年目には約2,600件のUGCが発生しました。同商品の出荷数は、発売から約6か月弱で600万本もの記録を達成しています。
参考:【PR】TikTok売れでシェア1位に 花王ビオレUVのTikTok活用戦略
株式会社ワークマン
株式会社ワークマンは、作業服や安全靴を販売する小売企業です。同社は、自社商品に強い関心を示すアンバサダーを積極的に起用しています。
ULSSASの活用において特筆すべきは、アンバサダーと公式サイトを上手く組み合わせている点です。
アンバサダーは、「ワークマン女子」というハッシュタグ付きで、SNSにコーディネート写真を投稿します。続いて、その投稿写真を株式会社ワークマンが自社サイトに掲載します。この連携により、「自身のコーディネートもワークマンの公式サイトに載せて欲しい」との啓蒙活動となり、アンバサダー以外の一般ユーザーの投稿が促される仕組みが構築されているのです。
一般ユーザーのニーズを上手く捉え、UGCを効率良く増やした好事例といえるでしょう。
参考:【PR】ユーザー目線のUGC活用でファンを獲得 先進事例を紹介
ULSSASを活用する際のポイント
ULSSASの仕組みを最大限に活用するには、ユーザーが自らコンテンツを投稿したいと思える環境を整えることが大切です。ここでは、ULSSASを活用する際の3つのポイントを解説します。
- ULSSASに向いている商材を理解する
- 自然にUGCが生まれる仕組みを構築する
- ターゲットに合わせて適切なプラットフォームを選ぶ
ULSSASに向いている商材を理解する
ULSSASを活用する際は、向いている商材を理解することが重要です。なぜなら、どのような商材でも活用できるわけではないからです。
例えば、BtoBビジネスにおけるターゲットの母数は、BtoCビジネスに比べて少ないため、UGCの量産は現実的ではありません。ほかにも、ゴミ袋や割り箸など、商品ごとに機能や価格に大きな差がない商材は購入時に口コミやレビューを参考にする機会が少ないため、ULSSASには不向きです。
ULSSASによって成果を得るためにも、フレームワークの導入前に、自社商品・サービスとの相性を見極めることが重要です。
自然にUGCが生まれる仕組みを構築する
UGCは自然発生することもあれば、企業側の行動喚起によって生じることもあります。例えば、独自のハッシュタグを作成してSNSでの投稿を促す「ハッシュタグキャンペーン」は、後者に該当します。
ただし、企業が後押ししないとUGCが生まれない環境下では、広告費やキャンペーンの設計コストがかさむため、ULSSAS本来のメリットであるコスト削減にはつながりにくいでしょう。
企業が意図せずとも、自然にUGCが生まれる環境づくりが大切です。そもそも、商品やサービスそのものに価値があってはじめて、自発的な投稿につながります。製品開発の段階から、ULSSASを意識して取り組みましょう。
具体的には、ユーザーが投稿したくなるようなデザインのパッケージや、第三者に薦めたくなるような強みを持つ商品、投稿することで話題を生み出しそうなコンテンツなど、クオリティや意外性に着目すると良いでしょう。
ターゲットに合わせて適切なプラットフォームを選ぶ
InstagramやX、TikTokをはじめとするSNSは、プラットフォームごとに特色があり、ユーザー層も異なります。効率良くUGCを生み出すには、商品やサービスのメインターゲットと相性の良い、適切なプラットフォームを選択することが大切です。
前述の花王株式会社が成功したのは、ターゲットとなるZ世代に合わせてTikTokというプラットフォームを選択したことが大きな要因です。
また、ファッション性が重視される商品なら写真や動画に強いInstagram、限定商品のような注目度が重視される場合は拡散力の高いXを選ぶというように、商材の特徴もプラットフォームを選択するうえで重要な要素となります。
ULSSASを活用してマーケティングに好循環を生み出そう
ULSSASはSNS時代に適した購買モデルで、フライホイール型の形状に特徴があります。UGCの投稿やそれに対する反応、情報の拡散などのステップを経て、繰り返しサイクルが回転します。そのため、売上の拡大や新規顧客創出の良い循環を目指すには、サイクルの起点となるUGCを活用することが大切です。
ただし、UGCを生み出すには、そもそも商品やサービスが魅力的であることが求められます。ULSSASを活用する際は、投稿を促進する施策に加えて、UGCが自然発生するような価値ある製品開発に努めることが重要です。
今回紹介したポイントを意識し、ぜひ自社のマーケティングにULSSASの考え方を取り入れてみてください。