AIDMA(アイドマ)とは、ユーザーが商品・サービスを購入する際の流れを表す購買行動モデルの一種です。マーケティングにAIDMAを取り入れると、購買プロセスのステップごとに消費者のニーズを特定することが可能になり、顧客体験やマーケティング活動の最適化につながります。
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本記事では、AIDMAの概要やステップごとの特徴を解説します。さらにAIDMA活用時のポイントも紹介しているため、購買行動を理解したうえで効果的なマーケティングを行いたい方は、ぜひ参考にしてください。
AIDMAとは
AIDMA(アイドマ)は、「Attention(注意)・Interest(興味)・Desire(欲求)・Memory(記憶)・Action(行動)」の5つのステップで成り立っています。1920年代に米国で提唱された概念で、各ステップにおける消費者のニーズや適切な施策を検討するのに役立ちます。
100年ほど前に提唱されていることから、現代のインターネットを通じた購買行動にはあてはまらない部分もあります。しかし、AIDMAから派生したマーケティングのフレームワークは数多く存在します。AIDMAについて知ることで、基本的な購買行動の流れが把握でき、マーケティングのフレームワークへの理解も深まるでしょう。
AIDMAの5つのステップ
AIDMAは、次の5つのステップで構成されています。
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
マーケティングにAIDMAの仕組みを取り入れるには、ステップごとの特徴を押さえることが大切です。それぞれ詳しく解説します。
1. Attention(注意)
Attentionは、商品やサービスの存在を知らない消費者に対して認知を促すステップです。商品やサービスの存在が認知されない限り、購買の選択肢に入ることはないため、AIDMAのなかでも特に重要なステップです。
「Attention」の代表的な手法は次の通りです。
- マス広告(テレビ・ラジオ・新聞など)
- Web広告
- SEO(検索エンジン最適化)
- SNS
- 動画配信
- 展示会
- プレスリリース
2. Interest(興味)
Interestは、消費者が商品やサービスの存在を把握しているものの、まだ興味を示していない段階です。この状態では、自社商品・サービスが購入の選択肢になることはあっても、購買意欲が低いため、競合他社に機会を奪われる可能性が高いといえます。そのため、消費者の興味・関心を引くことが不可欠です。
例えば、Attentionの段階で用いたマス広告やWeb広告を繰り返し配信したり、ユーザーが興味を持つコンテンツを増やしたりして、内容をブラッシュアップする方法が効果的です。繰り返し商品やサービスの情報に触れることで、徐々に関心度合いが高まります。
ターゲットとなるユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供し、消費者と何度も接点を持つ方法も良いでしょう。価値を感じる情報やコンテンツは相手の立場や属性によって変わってくるため、ターゲット層のニーズを見極めて訴求する必要があります。
このように、Interestのステップでは消費者との接点を持ち続け、着実に関係構築を図ることが何よりも重要です。
3. Desire(欲求)
Desireは、消費者が商品・サービスに対して興味を持ったものの、特別な欲求までは持っていない段階です。世の中には膨大な種類の商品やサービスが存在し、「お金を支払ってまで欲しいとは思わない」と感じるケースも珍しくありません。そのため、Desireの段階では、消費者の欲求を掻き立てる必要があります。
消費者の欲求に訴えかけるには、ベネフィットを意識することが重要です。マーケティングにおけるベネフィットとは、商品やサービスの利用により顧客が得られる利益のことです。
ベネフィットの一例として、ドリルを購入する顧客は、ドリルそのものではなくドリルで空けた「穴」を購入しているという有名な話があります。この場合、ドリルではなく「穴」がベネフィットになります。
商品やサービスが持つ機能ではなく、商品やサービスの購入により顧客が得られるベネフィットを意識することで相手の感情が動き、興味を持ってもらえるようになります。
4. Memory(記憶)
消費者の興味や欲求が高まっても、すぐに購入に至るとは限りません。商品やサービスの詳細な情報を調べている途中で購入意欲を削がれたり、仕事が忙しくて商品やサービスの存在を忘れてしまったりすることも考えられるでしょう。
このようなリスクをカバーするのが「Memory」のステップの役割です。一度記憶から消去された商品やサービスの存在をリマインドし、再認識させる取り組みを行います。
Memoryの段階では、リターゲティング広告を活用するのが効果的です。過去にWebサイトやECサイトを訪問したユーザーを追跡し、広告を配信できるため、購買意欲の醸成やサイトへの再訪問促進が可能です。
また、会員特典やクーポンを提案し、購買意欲を喚起するのも良いでしょう。
5. Action(行動)
Actionは、消費者が商品やサービスを購入するステップです。
消費者は自らが下した判断に十分に納得してから購買行動に移りますが、同時に、「本当に購入しても大丈夫か」、「購入後に後悔したらどうしよう」といった不安も抱えています。Actionのステップでは、消費者の不安を取り除き、スムーズに購入へと移ってもらうための仕組みづくりを行うのがポイントです。
具体的には、商品陳列方法の最適化やECサイトのUI・UX改善などの施策があてはまります。期間限定の特典を提供し、消費者の行動を後押しするのも方法のひとつです。
AIDMAを活用する効果・メリット
マーケティングでAIDMAを活用すると、次のようなメリットが生まれます。
- 一気通貫のマーケティング戦略を構築できる
- ボトルネックを特定しやすく適切な効果検証が可能
それぞれのポイントを詳しく解説します。
一気通貫のマーケティング戦略を構築できる
マーケティングには、一連の流れがあります。そのため、全体的なプロセスを無視して個別に施策を展開するだけでは、成果を最大化できないでしょう。
AIDMAを活用することで、消費者が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの流れが可視化されます。その結果、各ステップにおける消費者のニーズや心理状況、行動などの傾向が把握でき、適切な施策を考案できます。
さらに、AIDMAの流れを意識することで一気通貫のマーケティング戦略立案が可能になり、相乗効果が生まれることで成果の最大化につながります。
ボトルネックを特定しやすく適切な効果検証が可能
AIDMAの一連のプロセスを可視化すると、特に重要な課題が発生しているステップが明らかになります。
ボトルネックが発見できたら優先して問題解決を図ることで、マーケティングプロセス全体のパフォーマンスの向上が可能です。問題が解決した後は、また新たなボトルネックを特定し、繰り返し改善を行うことで最適化を図れます。
AIDMAとAISASの違い
AISAS(アイサス)は、AIDMAから発展した購買行動モデルの一種です。それぞれの特徴と違いを理解し、目的に合わせて使い分けられるようになりましょう。
AISASの特徴
AISAS(アイサス)とは、「Attention(注意)・Interest(興味)・Search(検索)・Action(行動)・Share(共有)」のステップで成り立つAIDMAの発展モデルです。
インターネット社会における消費者の新たな購買行動を表すフレームワークで、行動を起こす前にWeb上で情報を調べるSearch(検索)や、購入後の情報を他者と共有するShare(共有)のステップに大きな特徴があります。
AIDMAとAISASの使い分け方
AIDMAは、消費者に向けて、商品・サービスに対する興味喚起や購買意欲の醸成を図るために活用するフレームワークです。そのため、購入者自身が意思決定を行うBtoCに向いています。
AISASも、基本的にはBtoC向けとされていますが、消費者が入念にリサーチを行ったうえで行動を起こすことを前提としているため、購買プロセスが長期にわたるBtoBにも適用可能です。
また、AIDMAに含まれる「Interest(興味)・Desire(欲求)・Memory(記憶)」のステップは、購入の意思決定が感情に左右されるという特徴があります。このことから、比較的安価で、衝動買いが発生しやすい日用品などの商材に合うモデルだといえるでしょう。
高額な商品やサービスの場合は、AIDMAよりもAISASのほうが適しています。
AIDMAを活用する際のポイント
AIDMAを活用する際は、次のようなポイントを意識しましょう。消費者のニーズや行動の傾向を、より正確に把握できます。
AIDMAの流れをカスタマージャーニーマップで可視化する
AIDMAを活用して施策を考案したり、ボトルネックを特定したりするには、Attention(注意)からAction(行動)までの流れを可視化することが重要です。わかりやすい形で一連のプロセスを図式化すると、ステップごとの消費者のニーズや、これからやるべきことが明確になります。
購買行動の可視化には、カスタマージャーニーマップの作成がおすすめです。認知から購買までのステップと、各ステップにおけるユーザーの行動や思考、タッチポイントなどをわかりやすく整理できます。
カスタマージャーニーマップがあれば、消費者の行動傾向が明らかとなり、より正確なニーズの特定につながります。AIDMAを活用する際にスムーズな施策立案が可能です。
HubSpotが提供しているMAツール「Marketing Hub」には、「アドバンストマーケティングレポート」と呼ばれる機能が搭載されています。カスタマージャーニーの一連の流れを可視化できるため、AISASのステップごとの施策効果を検証するのに役立ちます。
Marketing Hubには無料で使用できるプランがありますので、ぜひお試しください。
ステップごとにKPIを設定する
KPI(重要業績評価指標)とは、目標達成度の計測や評価を行うための指標です。「3か月でCVRを20%向上させる」のように、達成すべき数値や日程を具体的に設定します。
AIDMAの各ステップにKPIを設定するとパフォーマンスが可視化され、効果的な改善が可能になります。
必要に応じて別のフレームワークにも着目する
AIDMAは約100年前に提唱された概念です。インターネットやモバイル端末の普及、デジタル技術の発展といった現代の時代背景は反映されていないため、AIDMA以外のフレームワークもうまく活用しましょう。
購買行動モデルには、AIDMAや前述したAISASのほかにも次のような種類があります。
AIDCAS(アイドカス)
AIDCAS(アイドカス)は、「Attention(注意)・Interest(興味)・Desire(欲求)・Conviction(確信)・Action(行動)・Satisfaction(満足)」のステップから成り立つ、購買行動モデルの一種です。
ランディングページの構成を考える際に用いられることが多いフレームワークで、AIDMAに「Conviction(確信)・Satisfaction(満足)」のステップが追加されています。AIDCASでは、消費者の欲求を確信へと変化させるための施策や、購入後の顧客満足度を高める施策が重視されます。
AISCEAS(アイシーズ/アイセアス)
AISCEASは、「Attention(注意)・Interest(興味)・Search(検索)・Comparison(比較)・Examination(検討)・Action(行動)・Share(共有)」の7ステップで構成されています。日本語では「アイシーズ」や「アイセアス」と呼ばれています。
インターネット社会の購買行動を表しているのが特徴で、購買前に行うWeb検索や比較サイトの活用、SNSでの口コミ収集などのステップが追加されています。
DECAX(デキャックス)
DECAX(デキャックス)とは、2015年に株式会社電通が提唱した購買行動モデルの一種です。「Discovery(発見)・Engagement(関係構築)・Check(確認)・Action(行動)・Experience(体験・共有)」の5ステップから成り立っています。
複数のチャネルを駆使した現代の購買行動が反映されているフレームワークで、SNSを活用した情報収集やWeb上での資料請求などが含まれます。
SIPS(シップス)
SIPS(シップス)は、「Sympathize(共感)・Identify(確認)・Participate(参加)・Share&Spread(共有・拡散)」のステップから成り立つ購買行動モデルの一種です。
ソーシャルメディア時代の購買行動に特化したフレームワークで、企業からのメッセージ発信や社会に対する貢献などによって、消費者の共感を得ることを重視しています。
企業に共感した消費者は、コミュニティに参加する形で情報を調べたり、商品やサービスを使用したりするため、周囲との関係構築に役立つSNSの存在が欠かせません。
ULSSAS(ウルサス)
ULSSAS(ウルサス)もSIPSと同様、ソーシャルメディア時代に即した購買行動モデルです。UGC(ユーザー生成コンテンツ)を起点として、「Like(お気に入り)・Search1(SNS検索)・Search2(Google /Yahoo!検索)・Action(購買)・Spread(拡散)」の5つのステップがサイクル状に構成されています。
「Spread(拡散)」の段階で自社に関する好意的な情報が世の中に広がることで、新たな顧客が創出される好循環が生まれます。そのため、自然にUGCが生まれるための付加価値醸成や、インフルエンサーなどを活用した情報発信が特に重要です。
AIDMAを活用してマーケティングプロセス全体の成果を高めよう
5つのステップから成り立つAIDMAは、消費者の購買プロセスを整理するための基本的なフレームワークです。
AIDMAの各ステップにおける消費者のニーズや心理状況、行動などをカスタマージャーニーマップで可視化し、一気通貫した施策を展開すれば、マーケティングプロセス全体の成果向上につながるでしょう。
また、「AISAS」や「AIDCAS」など、マーケティングでよく用いられるフレームワークはAIDMAがベースになっています。AIDMAの仕組みを理解することで、その他のフレームワークに対する理解も深まるでしょう。
AIDMAの目的や活用方法を把握し、その他のフレームワークも活用しながらマーケティング活動を最適化しましょう。