売れる営業プロセスには共通の成功パターンがあり、そのテクニックや知識を「営業ノウハウ」と呼びます。
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営業ノウハウは、営業成績向上や営業活動を効率良く進めるうえで役立ちます。営業ノウハウの効果を最大限に活かすためには、ナレッジをチーム全体で共有し、ブラッシュアップしていくための仕組み作りが必要です。
この記事では、営業ノウハウの共有に課題を感じている管理職の方に向けて、営業活動の改善に役立つノウハウの例、効果的な共有方法、ノウハウを蓄積するのに役立つツールをご紹介します。
営業ノウハウの確立が重要な理由
営業ノウハウとは、営業活動に関する専門的な知識やテクニックのことです。例えばセールストークや商談の進め方、提案やクロージングなどの手法が該当します。
営業に関するスキルや知識は個人個人ではなく、チームで共有することが重要です。営業ノウハウの共有された組織には、以下の効果が生まれることが期待できます。
1. 組織全体の営業の質が均質化する
個人で活動することが多い営業組織は、成果や売上が個人に依存する「属人化」の状態になりやすいといわれています。
属人化とは、ある情報を特定の人しか把握していないことを意味します。一部の人の成績が良いだけでは、全体のパフォーマンスレベルの底上げにはつながりません。
さらに、優秀な担当者が異動や転職をしてしまうと、組織の売上ダウンや生産性の低下にもつながってしまうため、属人化は組織にとってリスクでもあります。
そこで、営業成績の良い人や経験豊富な人の成功パターンを全体で共有しておけば、組織全体の営業の質が均質化し、部門全体の成績が安定・向上します。
2. 業務効率が上がる
担当者が変わったり、期間をあけて再提案をしたりする際、商談履歴や資料などが残っていないと一からやり直さなければならなくなってしまいます。
営業担当者にとっても手間がふえるほか、顧客にとっても再度状況を説明する余計な時間や手間を割いてもらうことになりかねません。
商談履歴に失注理由や刺さっていたポイントをメモし、ノウハウ化して残すことで営業活動にかかる準備時間の短縮や、より顧客ニーズに沿った提案ができるようになるため、業務効率の向上が見込めます。
また、成果が出る売り込み方は自社サービスの特徴によって異なるため、業務効率の向上には自社ならではのノウハウを持つことが重要です。他社の情報やインターネットで良いとされている方法が自社にも当てはまるとは限りません。
営業ノウハウを共有して業務効率が上がると、業務の無駄が削減され、時間的リソースを有効に活用できるようになります。
日本の営業活動に関する調査を行った「日本の営業に関する意識・実態調査2023」では、回答者の加重平均で「業務の22.37%が無駄」だと感じているという結果が出ており、多くの営業チームで対策が必要だということが分かります。
この業務時間の無駄は、金額に換算すると年間約9,802億円にものぼるという結果が出ています。無駄に感じている具体的な内容は「社内会議」と「報告業務」が上位ですが、営業ノウハウを適切に共有することも無駄の削減につながると期待できます。
3. 顧客満足度の向上につながる
先述した「業務効率が上がる」という利点は、結果的に顧客満足度の向上にもつながります。
営業ノウハウの共有は、引き継ぎが発生したケースでも有効です。顧客視点で考えると、情報共有がされておらず担当者が変わるたびに何度も説明を要する企業と、誰が担当であっても顧客の課題を理解し、適切な提案ができる企業とでは、後者に信頼をおくことは言うまでもありません。
顧客とのコミュニケーションをスムーズに行い、関係性の強化ができれば、顧客満足度だけでなくロイヤルティ向上も期待できるでしょう。
【営業プロセス別】自社内に蓄積すべき営業ノウハウとは
営業ノウハウは、営業活動の質を高めるために活用するものなので、正しくノウハウが蓄積されれば、以下のような各営業プロセスの転換率を上げていくことができます。
ここでは、営業プロセスの転換率を上げるために、組織として蓄積していくべき営業ノウハウの例を5つご紹介します。
1. 見込み客選定・商談機会の獲得において
営業プロセスの第一段階に、見込み客選定があります。見込み客とは、すでに商品やサービスに関心があり、購買に至る可能性が高い人のことです。
見込み客選定のプロセスで大事なのは、商談や成約につながりやすいホットリードに優先順位をつけることです。ホットリードとは、自社商品やサービスに強い興味を抱く見込み客を指します。
自社におけるホットリード、受注につながりやすいと考えられる見込み客の定義を、明文化してノウハウとして残しておきましょう。見込み客の見極めは、以下3つのレベル順で進めます。
リードがホットか否かは温度感のような感覚的な指標で判断されてしまうことも多いため、MA(マーケティング・オートメーション)ツールを利用して行動履歴ごとにスコアをつけていくと曖昧な基準にならずに管理できます。
2. 商談スタイルにおいて
近年はインサイドセールスの重要性の高まりや、新型コロナウイルスの影響などにより、非訪問型の営業スタイルも増加しました。
一方で、買い手企業が非訪問型営業を受け入れているかどうかは、冷静に判断する必要があります。
前出の「日本の営業に関する意識・実態調査2023」では、買い手が考える好ましい営業スタイルとして、訪問型営業を好ましいとする回答とどちらでもないの回答がともに約40%となっています。
特に「どちらでもない」は前回調査で上昇してから2023年では横ばいであり、今後も柔軟な選択が求められることになるでしょう。
訪問型か、非訪問型かの2つの選択肢があった場合、どちらを選んだほうが良いかというのは経験によって判断できるようになっていきます。
この点も、ハイパフォーマーの判断基準などを共有できると会社としての信頼度の向上につながるでしょう。
3. 商談において
商談時には、同社に向けた過去の提案資料や同業他社の提案資料、過去評判の良かったセールストークのスクリプトがあると役立ちます。
初回のヒアリングは提案ではなくあくまで課題のヒアリングが主目的になることが多いですが、先に過去の資料に目を通すことで顧客の状況の予想が立てやすくなります。
業種や組織としてのフェーズが近い企業の場合、課題やサービスに求めている要件も似たものであることが多いでしょう。特に経験の浅い営業担当者の場合、事前の知識のインプットがヒアリングの質に関わります。
資料は共有資産として残しておき、ハイパフォーマーが事前にどのようなリサーチをしているかもノウハウ化しておくとよいでしょう。
【事前把握しておくべき情報例】
- 見込み客の基本データ(問い合わせ状況など)
- 見込み客が抱えている課題や関心
- 自社で提供できるソリューション
- 業界動向
4. 提案において
課題に対して共通認識が得られたところで、課題を解決するための提案をしていくフェーズへと移ります。商談時と同じように過去の提案資料やセールストークのスクリプト、そして顧客から聞かれやすい質問集のノウハウが役立ちます。
営業活動をしていると、はっきりとした断言が難しい質問をされることがあります。
例えば、サービスを購入した際の費用対効果です。シミュレーションは出せるかもしれませんが、企業がサービスをどう活用するかの要素も大きいため、断言できない場合もあります。
その際に答えに迷ったり、曖昧な答えをしてしまうと顧客の納得感が得られず、失注につながることがあります。
無理に期待値を上げる必要がありませんが、回答が難しい質問をされた際にハイパフォーマーがどう回答しているかは共有しておくとよいでしょう。
5. クロージング・受注において
営業プロセスの最終段階であるクロージングは、顧客に購入の意思を確認し、契約の決断を促すための手段です。顧客に、「課題解決のためには、この商品・サービスが必要だ」と納得してもらったうえで、最後のひと押しをすることが重要です。
一般的にクロージングで使えるテクニックとして以下4つが挙げられます。
- 購入すべき理由を伝えて決心を後押しする
- ゴールデンサイレンス(顧客が考えている沈黙の時間)を妨げない
- Aを購入するか、Bを購入するかを選んでもらう(松竹梅の法則)
- 購入を前提とした質問をする
1.と2.に関しては使いやすいテクニックですが、3.と4.は購入を前提として話を進めるため、より顧客心理に寄り添った丁寧なコミュニケーションが求められます。
顧客の購入意欲が高くない状態で行うと、強引な営業活動と思われてしまいます。
コミュニケーションを明文化するのは難しいため、営業のロールプレイングや実際の営業の様子の映像を残しておくと有効です。
営業ノウハウを組織に浸透させるためのステップ
営業ノウハウを組織に浸透させるためには、以下のステップを踏みましょう。
- 各営業担当者の、営業成績を可視化する
- ハイパフォーマーの営業パターンを洗い出し、どういった行動が成果に結びついているのか分析する
- ハイパフォーマーの営業方法を標準化する
まずは、営業成績の可視化です。成果が出ていない担当者とハイパフォーマーとの違いが明確になり、課題が見えてくるでしょう。
具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定しダッシュボードで公開すれば、一人ひとりが自身のパフォーマンスと他担当者の成績を比較し、改善のための反省や目標設定につなげられます。
次にハイパフォーマーの営業パターンを洗い出し、どういった行動が成果に結びついているのか分析しましょう。どのような資料を使い、顧客とどのようなコミュニケーションをとっているのかなど、具体的なアクションの洗い出しが重要です。
成功パターンが見えたら、各担当者にノウハウを共有し営業方法を標準化しましょう。
ただ成功パターンを模倣するだけではなく「なぜそれが成功につながったのか」についての理解が重要です。
営業ノウハウを社内に貯めるためのツール
営業担当者は顧客対応をはじめとしたコア業務で忙しいため、資料を作ったり勉強会を開いたりといった時間のかかる方法で営業ノウハウを開示してもらうのは難しいのが現実です。
したがって、営業担当者からの発信を期待するのではなく、仕組みとしてノウハウの共有や意見交換が活発化する体制を作らなければいけません。
日常の業務のついでとして行える形でノウハウを共有できるよう、ツールを導入することをおすすめします。
1. チャットツール
チャットツールは、パソコンやスマートフォン上で、リアルタイムのコミュニケーションをとれるツールです。
チャットツールを活用することで、個人間で埋没しがちな営業ノウハウに関する情報を、記録に残せるようになります。
例えば、次のようなビジネス向けチャットツールは、営業ノウハウの共有・蓄積に向いています。
いずれのツールも、営業資料をPDF化してチャットツール内に格納することや、取扱製品・担当・顧客・エリアごとなどでグループ作成するといった活用方法があります。
営業資料や過去の商談の内容といった情報を営業部署内で共有することで、疑問点を全体に投げかけてディスカッションすることも容易になります。
2. ナレッジマネジメントツール
ナレッジマネジメントとは、企業が保有する情報や個人の知識・ノウハウなどを集約させて管理することです。
ナレッジマネジメントツールは、営業マニュアルや議事録・チーム全体へのアナウンス・知見などの共有に役立ちます。
代表的なナレッジマネジメントツールとして、次のようなものがあります。
Qastは、自らのノウハウを「wiki機能」へ、疑問は「Q&A機能」に投稿するなど、ナレッジ共有に特化したツールです。添付ファイル内検索もできるため、営業資料を一つひとつ開いて調べなくても、欲しい情報へアクセスできます。
情報共有ツールのDocbaseは、文書作成・管理のためのツールです。同時編集機能があり、チームでノウハウ共有しやすい点が特徴的です。
3. SFA・CRM
営業活動の効率化に役立つSFA(営業支援ツール)やCRM(顧客関係管理)は、営業ノウハウの共有・蓄積にも活用できます。
SFA・CRMのおすすめツールは、次の通りです。
- HubSpot(SFA・CRM)
- Salesforce(CRM)
SFAでは、主に案件ごとの行動履歴や商談管理ができるため、営業活動の成功・失敗パターンを分析し、ノウハウとして次に活かせます。
CRMは、顧客に関する情報の管理に特化したツールです。その顧客が、「今どの購買ステージにいるか」「どのような提案が通りやすかったか」といった、商談を進めるうえで有益な情報の共有がしやすいのが特徴です。
前出の「日本の営業に関する意識・実態調査2023」では、CRMを導入している営業組織の割合は36.1%と、前回調査の34.8%に続いて低い水準となっています。
また、自社の顧客管理方法について「明確ではない・わからない」と回答した割合も31.0%と低く、顧客データの管理において多くの営業組織が課題を抱えていることがわかります。
SFAやCRMは営業ノウハウの共有だけでなく、顧客のことや営業活動の状況について把握するためにも有用なツールなので、積極的に導入を検討するのがおすすめです。
営業ノウハウを蓄積するうえでのポイント
ツールを活用することで、営業ノウハウの資産化を加速していくことができます。本章ではより良くノウハウを貯めていくためのポイントを紹介します。
行動にフォーカスする
ハイパフォーマーの営業ノウハウの中には、営業活動の信念や価値観、心構えといった内面的な要素も少なからず関係しています。
しかし、こういった心理的要素はノウハウとして蓄積するのが容易ではないうえに真似するのも難しいです。提案資料やトーク内容、クロージングのタイミングといった、具体的な行動にフォーカスして明文化されたドキュメントを貯めていきましょう。
テキスト、映像など多彩な方法を試みる
ノウハウを蓄積する時には、再現性が高まるよう工夫しましょう。
例えばクロージングの手順について、やるべきことを箇条書きで示すだけではなく、具体的なトークスクリプトや次回アクションの提案方法など、誰が見ても同じ理解となるような内容で蓄積することが大切です。
また、実際の商談イメージを膨らませるためにも、ロープレの様子を映像として記録しておくなどすれば、間の取り方や手振りといった要素もノウハウとして蓄積できるでしょう。
ノウハウを公開する側・受け入れる側それぞれのメリットを示す
ハイパフォーマーによっては、自身で生み出したノウハウを共有したくないと考える人もいます。また、ノウハウを受け入れる営業担当者も「自身のやり方が否定された」と感じ、モチベーションが低下してしまうことも考えられます。
そこで、両者それぞれにメリットを示すことで、事前に理解を得ておくことも大切です。
例えばハイパフォーマーには貢献度に合わせて評価に反映させたり、受け入れる側の営業担当者には、高いスキルを身につけより活躍してほしい、と期待をこめた伝え方をするとよいでしょう。
営業ノウハウを「資産」と考えてチームで共有する
営業ノウハウをチームで共有することで、組織としての「勝ちパターン」を構築することができます。チーム一丸となってノウハウのブラッシュアップに取り組めば、自動的に組織全体のパフォーマンスが上がっていくはずです。
そのためには、ノウハウを「資産」と考え、チームで共有・蓄積する仕組みを作ることが大切です。
ノウハウ共有に役立つツールなども活用し、営業スキルの属人化を防いで、メンバー全員が以前の水準よりも高いパフォーマンスを目指せる環境作りを進めましょう。