営業業務は多岐にわたるため、各プロセスをできるだけ効率化したいものです。しかし、無計画に業務の削減や時短に取り組んでしまうと、営業のコア業務である顧客とのコミュニケーションの質を落としかねないため注意が必要です。
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営業業務の効率化は、あくまでも顧客体験の向上につなげるための施策であると認識し、適切なステップで効率化を目指しましょう。
本記事では、営業を効率化を進めるステップや施策を解説します。営業に関する意識調査のアンケート結果を踏まえたうえで効率化する方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
営業の効率化とは
業務効率化とは、既存の業務を見直して、ムダやムラをなくすことを指します。営業部門においては、事務作業にかかる時間の削減や顧客への提案内容の均質化などがあげられます。
HubSpotが調査した「日本の営業に関する意識・実態調査2024の結果」によると、勤務時間のうち顧客とのやりとりに使う時間は業務時間の54%でした。一方で、「理想とする業務の時間配分(割合)」の質問に対しては、社内報告や見積書作成といった業務を減らして、「1日にあと25分」顧客とのやりとりに使いたいという回答がありました。
下表は、「時間があったらやりたいこと・今よりも時間を割きたい業務」に対する回答の結果です。
このように、営業担当者は「顧客のために使う時間が足りない」と感じていることがわかります。
業務効率化を考える際は、まず日常的に行っている業務から見直してみましょう。5分や10分で終わる簡単な業務であっても、日々の積み重ねによってかなりの時間を使っているものです。
また、担当者によって進め方が違う業務があると「ムラ」が発生し、結果的に業務効率が下がることがあります。業務の「ムダ」を取り除き、「ムラ」が発生しないような仕組みづくりが重要といえるでしょう。
営業の効率化によるメリット
ここでは、営業の業務を効率化するメリットを解説します。
- 営業担当者の負荷を軽減できる
- コア業務に集中できる
- コストを削減できる
それぞれ見ていきましょう。
営業担当者の負荷を軽減できる
営業担当者は、見積書や日報の作成、名刺情報のシステムへの入力といった事務作業を日々行っています。
見積書や請求書などの書類は、テンプレートを使用すれば短時間で作成が可能です。また、名刺情報を読み込むことができる専用のシステムの導入で、情報を手入力する手間が省けます。
このような業務効率化によって、営業担当者の負荷を減らすことが可能です。
コア業務に集中できる
営業担当者が最優先すべき業務は、見込み客や顧客への提案やフォローといったコミュニケーションです。
業務効率化によって、営業担当者が本来注力すべき業務に割く時間を確保できます。コミュニケーションの質を高め、頻度を増やすことで満足度が高まります。結果的に売上の向上にもつながるでしょう。
コストを削減できる
コスト削減が可能になることも、業務効率化によるメリットのひとつです。
営業部門のコスト削減の一例として、メールや電話を活用したインサイドセールスを取り入れる方法があります。直接訪問する見込み客を絞り、電話やオンライン面談を併用することで移動時間や交通費が不要になり、コスト削減が可能です。
また、効率的にリソースを配分できるようになるため、経営資源の有効活用にもつながるでしょう。
営業の効率化を進める4ステップ
ここでは、営業を効率化する流れを4つのステップで解説します。
- 現状の業務を洗い出す
- 業務をノンコア業務とコア業務に分類する
- 効率化の施策を立てる
- 空いたリソースでコア業務の改善に取り組む
1. 現状の業務を洗い出す
営業業務を効率化するためには、まず現状を正しく把握することが大切です。
「どのような業務」を「どれくらいの時間をかけて行っているのか」を、現場の担当者にヒアリングして、業務の洗い出しを行いましょう。それにより、営業活用のボトルネックの把握や課題の抽出が可能になります。
各プロセスを洗い出し、細かい業務も検証するのがポイントです。
2. 業務をノンコア業務とコア業務に分類する
現状の業務を洗い出したら、それらをノンコア業務とコア業務に分類しましょう。
ノンコア業務とは、提案書・見積書・日報の作成などのルーティン業務です。ノンコア業務は簡略化しやすく、顧客への影響も少ないため、まずはノンコア業務の効率化から取り組むと良いでしょう。ノンコア業務のなかでも、特に時間や労力を費やしているものを優先します。
3. 効率化の施策を立てる
改善すべき業務が決まったら、具体的に「どのような施策」を、「誰が・いつまでに」行うのかを決めます。具体的なアクションに落とし込まないと、施策が実行されないまま終わってしまう可能性があるので注意が必要です。
例えば、メール送信に時間がかかっている場合には、次のようなタスクを設定します。
【施策内容】
- メールのテンプレートを作成する
- よくある質問に対する定型文を用意する
【担当者】
- 作成担当:鈴木
- チェック担当:佐藤
【期日】
- 一次提出:2024年×月×日
- チェック:2024年×月×日
- 修正提出:2024年×月×日
- 社内へ展開:2024年×月×日
SFA(営業支援システム)やMA(マーケティングオートメーション)などのツールの活用もおすすめです。
4. 空いたリソースでコア業務の改善に取り組む
ノンコア業務の効率化によって生まれた社内リソースをコア業務の改善へまわすことで、商談化率や成約率が向上し、営業効率全体の改善が期待できます。
コア業務の業務効率化は、専門的な知識や経験、高度な判断を要するため、中長期的な取り組みになります。状況に応じて、外部から講師を招くなどの方法も良いでしょう。
営業の効率化を進める施策
ここでは、営業活動を効率化するための具体的な施策を8つ紹介します。
- メールのテンプレート化
- インサイドセールスと訪問を使い分ける
- 顧客リストをつくって共有する
- 社内でスキルやノウハウを共有する
- 社内向けの資料や会議を見直す
- 業務の一部を外部へ委託する
- CRMやSFAなどのツールを導入する
- 自社サイトを充実させる
それぞれ見ていきましょう。
メールのテンプレート化
よく使うメールのフォーマットや定型文のテンプレート化は、取り組みやすい施策のひとつです。例えば、よくある質問の回答テンプレートを用意しておくと、同じ質問があった際に迅速に対応できます。
テンプレートを共有しておくと、社内全体で統一された回答ができるのもメリットです。メールだけでなく、見積書や契約書、業務報告書、営業日報などのよく使う書類も、ある程度テンプレート化しておくと良いでしょう。テンプレート化することで作成スピードがアップするほか、記載もれの防止や見やすさ・整理しやすさの改善も期待できます。
インサイドセールスと訪問を使い分ける
見込み客の状況に応じて、訪問営業(フィールドセールス)とインサイドセールスを使い分けることも大切です。すべての見込み客や既存顧客に対して訪問を行っていると、リソースが足りません。状況に応じてオンライン会議や電話、メールを活用して、移動時間や交通費といったコストを削減しましょう。
初期段階ではインサイドセールスを活用し、契約の可能性が高まった段階で訪問営業を行うなど、段階的なアプローチをする方法もおすすめです。
「訪問営業をやめると相手からの印象が悪くなるのでは?」といった懸念もあるかもしれません。しかし、リモート営業が一般化しつつある昨今、買い手が好ましいと考える営業スタイルは変わってきています。実際、HubSpotが調査した「日本の営業に関する意識・実態調査2024」では、次のような結果になりました。
「買い手の好ましい営業スタイル」は、「訪問とリモートのどちらでも良い」の割合が年々高くなっています。この結果からも、リモート営業が悪い印象を与えることは少なくなってきていることが読み取れます。
また、買い手側が感じる「信頼」できると感じるポイントの1位は「営業担当者が自社の要望を的確に実行してくれる (54.4%)」という結果でした。
訪問・リモートは顧客の要望やその時の状況に応じて使い分けつつ、顧客のニーズを適切に把握し、解決策を提示する営業としての基本を徹底するのが大切といえるでしょう。
インサイドセールスで具体的に何ができるのか知りたい方や、自社へどのように導入すれば良いか悩んでいる方は、こちらの資料も参考にしてください。
顧客リストをつくって共有する
顧客情報を一元管理し、営業チーム全体で共有できるようにしておくと業務効率が高まります。
顧客リストには、連絡先情報、過去の取引履歴、ニーズや課題などを記載しましょう。リストを作成しておくことで、連絡先を確認したり、過去のやり取りをメールから探したりすることなく、欲しい情報を迅速に見つけられます。
リストは定期的に更新し、常に最新の情報を保つことが大切です。古い情報をもとに連絡してしまうと、「顧客情報が適切に管理されていない企業」という印象を与えかねません。変更を知ったら、すぐに情報を更新しましょう。
社内でスキルやノウハウを共有する
社内でスキルやノウハウを共有すると、短期間でスキルアップが可能です。営業は個人の経験や能力に依存しやすく、情報やノウハウが属人化してしまうことも多くあります。そのため、有効な営業手法や成功事例を組織全体で共有する環境を整えることが必要です。
営業マニュアルを作成し、いつでも参照できるようにすると良いでしょう。商談におけるプレゼン手法や顧客ごとに最適なコミュニケーション方法など、実際の営業現場で役立つ知識を共有します。
また、定期的に勉強会やワークショップを開催し、営業担当者同士が情報交換を行う場を設けても良いでしょう。過去に成功した方法を共有することで、組織全体の成約率や売上の向上も期待できます。
その他、ナレッジベースツールを活用する方法もあります。ナレッジベースツールについては、次の記事を参考にしてください。
社内向けの資料や会議を見直す
社内向けの資料や会議を見直すことで、社内向けの業務に時間をかけすぎていることがわかる場合もあります。
HubSpotが実施した日本の営業組織を対象とした意識・実態調査からも、社内会議や社内報告業務がムダであると感じている担当者が多いことがわかっています。しかし、その気持ちとは裏腹に、社内報告業務が営業担当者の業務のうち13%を占めている現状があります。
また、本来は社内業務よりも顧客対応に時間を使いたいと感じている営業担当者が過半数という結果になりました。
リソースは有限なので、書類の提出を求める場合や会議を開催する際は、目的を明確にすることが大切です。チャットやメールで完結する業務や1つに集約できる会議などは、取り組み方を見直しましょう。
業務の一部を外部へ委託する
ノンコア業務は、可能な範囲で外部へ委託することも検討すると良いでしょう。アウトソーシングサービスがある業務の例として、プレゼンの資料作成や企画書の作成、データ入力、DMの発送などがあげられます。
特定の業務に特化したサービスであれば、社内で行うよりも業務のスピードや質を改善できる可能性もあります。外部へ委託することで、社内のリソースに余裕ができ、コア業務に集中できるようになる点が大きなメリットといえるでしょう。
CRMやSFAなどのツールを導入する
営業の業務効率化には、顧客情報を管理するCRMやSFA(営業支援ツール)の導入も効果的です。顧客情報や営業活動の履歴などの管理を各担当者に任せるケースはよくありますが、ツールを使えば情報の可視化と一元管理が同時に実現できます。
営業担当者のタスクや進捗状況が確認できる機能は、営業担当者の行動管理に役立つだけでなく、マネジメント業務の効率化にもつながります。効率化したい業務や費用対効果を考慮して、ツールの導入を検討しましょう。
HubSpotのSales Hubでは、営業担当者が見込み客へアプローチを行うと、成約に向けてどの程度進んでいるかが自動的に割り当てられます。当日のタスク一覧や進捗状況も確認でき、見込み客の管理がしやすくなります。
自社サイトを充実させる
自社サイトのコンテンツを充実させることも、営業の効率化を図るうえで重要です。
商品やサービスの説明、FAQ、ダウンロード可能な資料などを充実させ、見込み客が求める情報を提供しましょう。読者は、提供された情報から商品やサービスが自分のニーズに合っているかを判断できるので、自ら問い合わせなどのアクションを起こしてくれる可能性が高まります。
さらに、サービス内容を解説するブログ記事や具体的な導入事例を紹介するページも効果的です。興味・関心度が高い見込み客からの問い合わせ増加につながります。
また、問い合わせをする見込み客はコンテンツを通じてすでに基礎的な情報を把握できるため、営業担当者はより発展したコアな内容を伝えられるようになります。結果として、営業活動の効率が上がり、成約率の向上が期待できるでしょう。
営業活動を効率化して成果につなげよう
営業活動の効率化は、現場の負担軽減や売上にも関わってくる重要な課題のひとつです。効率化を進めることで、営業担当者はコア業務に集中でき、顧客との関係構築や提案活動に多くの時間を割けるようになります。
営業の効率化を進める際は、優先順位を決めて計画的に行うことが大切です。積極的に業務の効率化を進め、空いたリソースを最適化すれば、結果的に売上の向上も期待できるでしょう。