「SFAとCRMの違いって何?どっちを導入すればいいの?」 と混乱されている方は多いのではないでしょうか。
それもそのはずで、これらの言葉が日本で広がり始めた2010年代には、両者は明らかに別のツールとして棲み分けされていました。
- SFA:営業支援システム
- CRM:顧客関係管理
しかし現在では、CRMシステムに、SFAが連携されたツールが主流となっています。
近年、デジタルトランスフォーメーションが進む中で、企業の競争力を左右する要素として、CRMおよびSFAの重要性が高まっています。
本記事では、全世界でCRMの導入実績19万社を超える私たちHubSpotのマーケティングチームが、CRMとSFAの基本知識をわかりやすく解説したうえで、“現代の実務”に合わせてアップデートした最新情報をお届けします。
単なる用語知識ではなく、CRM・SFAを売上アップにつなげるために必要な知識を、吸収していただければと思います。
CRM・MA導入の事前準備チェックリスト
CRMやMAを導入する際にマーケティング施策別に準備するべきことをチェックリストにしてまとめました。
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1. CRMとSFAの違いは何か?
まずは「CRMとSFAの違いって何?」という疑問から、クリアにしていきましょう。
1-1. CRM・MA・SFAの概念図
言葉で説明するよりも、図解したほうがイメージしやすいので、先に以下をご覧ください。
出典:CRMとは?基本の意味からツールの必要性・事例までわかりやすく解説
本記事の主題は「CRMとSFA」ですが、同時に語られることの多い「MA」も、ここで一緒に押さえておきましょう。
それぞれの意味を、以下で解説します。
1-2. CRM:顧客関係管理
CRMは「Customer Relationship Management」の略語で、“カスタマー リレーションシップ マネジメント” のことです。日本語では「顧客関係管理」と訳されます。
CRMは、もともと「リレーションシップ(顧客との長期的な関係づくり)をマネジメントするビジネス手法」を指す言葉でした。
顧客情報を管理・分析し、顧客満足度や顧客ロイヤルティを向上することによって、取引を継続的なものにしていく取り組みです。
しかしながら現在では、CRM戦略の実践を支援する「ツール・システム」を指す言葉として使われるシーンが増えています。
たとえば「CRMを導入する」という例文は、“手法をビジネス戦略に取り入れる” というより、“CRMのシステムやツールを導入する” というニュアンスで使われることが多いでしょう。
このような意味は文脈によって変わりますので、注意して解釈するようにしてください。
1-3. MA:マーケティングオートメーション
MAは「Marketing Automation」の略語で、日本語ではそのまま「マーケティングオートメーション」と訳されています。
前述のCRMは、概念・ツールの双方を指すのに対し、MAは基本的にツールを指す言葉です。
MAの主要な役割は、マーケティング活動の自動化によって、潜在顧客(Web訪問者など)を見込み客(リード)へと醸成することです。
自動車の“マニュアル車”に対する“オートマ車”のように、「マーケティング活動をオートマ化する」と捉えると、イメージしやすいかもしれません。
目的地を決めるのは運転者(マーケター)であり、操作のすべてが自動化されるわけではありませんが、多くの部分を手動ではなく、MAによる自動制御で実行できます。
具体例としては、 「潜在顧客が資料請求をした3日後に、アンケート回答の興味関心に合った情報を、自動的にメール配信する」 というように、従来は手作業で行っていたマーケティング活動を、自動化するのがMAです。
上記例はわかりやすく単純化していますが、実際には、複雑な分岐や高度な分析をもとに、最適なマーケティング活動を設計します。
1-4. SFA:営業支援システム
SFAは「Sales Force Automation」の略語で、“セールス フォース オートメーション” のことです。「セールスフォース」は英語で “営業部隊” といった意味があります。
MAが “マーケティング活動” を自動化するのに対し、SFAは “営業活動” を自動化する、という関係性にあります。
- MA:“マーケティング” オートメーション
- SFA:“セールスフォース” オートメーション
ただし、SFAの日本語訳はセールス フォース オートメーションではなく、「営業支援システム」が定着していますので、そのように覚えておきましょう。
SFAも、MAと同じく、概念ではなく「システムやツール」を指す言葉です。
BtoBビジネスの文脈では、
- 潜在顧客を見込み客へ醸成する“マーケティング活動”のフェーズはMA
- 見込み客を顧客化(成約)する“営業活動”のフェーズはSFA
という具合に、区別されてきた経緯があります。
一方で、営業活動が存在しないBtoCにもMAが浸透したり、MA・SFAの機能を統合的に備えるCRMツールが登場したりする中で、棲み分けは曖昧になりつつあることも知っておきましょう。
1-5. CRMとSFAの違いとそれぞれの目的
ここまでの話をまとめておきましょう。
略語 |
日本語訳 |
対象顧客 |
対象部署 |
---|---|---|---|
CRM |
顧客関係管理 |
潜在顧客〜プロモーター(推奨者)まですべての顧客 |
マーケティング部門 |
MA |
マーケティング |
おもに潜在顧客〜見込み客 |
マーケティング部門 |
SFA |
営業支援システム |
おもに見込み客〜新規顧客 |
営業部門 |
定義や捉え方は、企業やツールのベンダー(提供元)によって異なる、という前提ではありますが、それぞれの目的は以下のとおり整理できます。
- CRM:顧客と企業の最初の出会いから最後まですべてのプロセスに関わり、顧客満足度や顧客ロイヤルティを高めて、永久的に良好な関係を構築・維持することを目指す。
- MA:新規顧客の獲得につなげるための潜在顧客の興味関心や購買意欲を高め、見込み客へと醸成することを目指す。
- SFA:成約確度の高い見込み客を見極め、営業活動の効率化や成約率の向上を図り、より多くの見込み客を成約につなげて顧客化することを目指す。
それぞれの具体的な実践は、ツール(システム)を導入して進めていくことになります。
以降のセクションでは、より具体的に、 「CRMやSFAのツールは、どのような機能を保持していて、何ができるのか?」 について、掘り下げていきましょう。
2. CRMの基本的な3つの機能
まず、CRMツールは、企業の顧客関係管理の中枢となる機能を提供します。基本的な3つの機能を、見ていきましょう。
- 顧客情報をデータベース化して管理する
- 顧客の動向を追跡し分析する
- セキュリティを強化する
2-1. 顧客情報をデータベース化して管理する
1つめの機能は「顧客情報をデータベース化して管理する」です。
顧客情報のデータベース化は、CRMの最も基本的な機能です。このデータベースを通じて、企業は顧客に関する有益な情報を、一元的に管理できます。
【具体的な機能の例】
- 定量情報の記録:会社名や担当者名など、顧客に関する基本的な情報を記録します。
- 定性情報の記録:購買目的やニーズといった、顧客の購買行動に影響を与える情報を収集します。
- 購入履歴の管理:顧客が過去に購入した商品やサービスの履歴を管理します。これにより、顧客の嗜好や購買パターンを分析できます。
CRMを活用して、正確かつ詳密な顧客情報を一元的に蓄積し、分析することは、顧客満足度の向上に直結します。
さらに付け加えると、上記を “スキルがなくても、誰でも簡単にできる” ことが、CRMを導入する大きな意義です。
CRMが人気となったのは、データ入力や煩雑な作業をCRMが引き受け、手作業による管理業務の多くを、自動化するからです。
2-2. 顧客の動向を追跡し分析する
2つめの機能は「顧客の動向を追跡し分析する」です。
まだ、CRMを “顧客の連絡先情報を管理するデータベース” としか捉えていない方は、多いかもしれません。
しかし、最新のCRMは、それ以上の機能を備えています。
企業が最初に顧客と接触してから、直近の取引履歴に至るまで、すべての顧客とのやり取りを追跡するのが、CRMの真骨頂といっても過言ではありません。
たとえば、顧客が行った操作や行動、送信したメール、読まれたメッセージ、その他さまざまな情報を、CRMは蓄積します。
【CRMに記録される情報の例】
- 問い合わせ内容:顧客が製品について問い合わせた際の詳細
- 行動履歴:ウェブサイト閲覧やキャンペーンメールの開封など、顧客の行動データ
- 購入履歴:過去の購入データや取引履歴
- 顧客フィードバック:アンケート回答やレビューなど、顧客からの直接的なフィードバック
CRMは蓄積したデータを分析し、「いつ・誰に・どのようなアプローチをするべきか?」を的確に決定する判断材料を、提供してくれます。
CRMがあれば、データドリブン(勘や経験ではなくデータを活用して意思決定すること)なマーケティング戦略や営業活動が、大きく前進します。
参考:What is customer relationship management?(英語)
2-3. セキュリティを強化する
3つめの機能は「セキュリティを強化する」です。
いうまでもなく、顧客情報の漏えいは、経営を揺るがす大きなリスクです。
加えて、災害やシステム障害、あるいは従業員のミスによるデータ損失も、経営に損害を与えるリスクがあります。
CRMは、企業がリスクに対処し守りを固めるための、セキュリティ機能を備えています。
【具体的な機能の例】
- データの暗号化:顧客情報を含むデータベースの内容を暗号化し、不正アクセスによる情報漏えいを防ぎます。万が一、データが外部に流出しても、内容を解読されるリスクを最小限に抑えます。
- バックアップ作成:定期的なデータバックアップを行い、万が一のデータ損失時に迅速に復旧できる体制を整えます。災害やシステム障害からデータを守るために不可欠です。
- 監査ログ:システムへのアクセス記録や操作履歴を記録することで、不正行為や情報漏えいを追跡できます。トラブル発生時の迅速な対応に役立ちます。
- アクセス制限:ユーザーごとにアクセス権を設定し、必要な情報のみにアクセスできるようにします。これにより、情報の不必要な共有を防ぎ、セキュリティを強化します。
Excelなどで顧客情報を管理している場合、セキュリティ面が脆弱であるといわざるを得ません。
CRMを導入して、CRM上で一元管理することで、セキュリティ面のリスクをマネジメントできます。
2-4. 補足:代表的なCRMツール20選
ここで「具体的なツールを確認したい」という方も多いと思いますので、代表的なCRMツール20選をご紹介します。
【代表的なCRMツール20選】
出典:【2023年版】CRM比較15選|特徴別に国内主要ツールを徹底比較
上表の詳細は、【2023年版】CRM比較15選|特徴別に国内主要ツールを徹底比較にて解説していますので、あわせてご覧ください。
3. SFAの基本的な4つの機能
続いて、SFAの基本的な4つの機能を、見ていきましょう。
- リード管理
- 営業担当者のマネジメント
- 営業活動の効率化・自動化
- 営業分析とレポート作成
3-1. リード管理
1つめの機能は「リード管理」です。
リード(商談化前の見込み客)管理は、「営業は足で稼げ」という従来のやり方から脱却するために不可欠です。
営業チームが「量より質」で動くことを可能にする機能といえます。
【具体的な機能の例】
- 対応が必要な見込み客を常に把握できるよう可視化する。
- 見込み客の情報登録・管理・追跡が簡単にできる。
具体的には、SFAが見込み客の情報をリアルタイムに管理します。営業担当者が、バラバラの人物やシステムから情報をつなぎ合わせる必要はありません。
営業担当者が必要なときに必要な情報へ、簡単にアクセスできるようになります。
さらに、絶好の商談機会を逃すことがないように、営業担当者へ注目すべきリードを知らせ、メールの送信や次のステップの計画といった営業活動を支援します。
参考までに、Sales Hub(HubSpotの営業支援ソフトウェア)の場合、《導入後6ヶ月で成約率が78%向上》しています。
3-2. 営業担当者のマネジメント
2つめの機能は「営業担当者のマネジメント」です。
【具体的な機能の例】
- 優先順位を付けて重要なタスクに集中できるようにし、時間の使い方を最適化する。
- 顧客への訪問頻度を記録し、営業活動の内容を可視化する。
- 商談の進展度合いや成約率など、重要な成果指標を追跡する。
- データをもとに、個別の教育プログラムやトレーニングを計画する。
別の表現では、“営業チームのマネジャーの支援” といってもよいでしょう。
【マネジャー支援のイメージ(コーチング)】
適切なマネジメントを通じて、営業チームは顧客との接点を最大化し、各担当者の強みを活かした戦略を立てられるようになります。
全体の生産性が高まるため、より高い成果が上がり、チームの体質が改善していきます。
3-3. 営業活動の効率化・自動化
3つめの機能は「営業活動の効率化・自動化」です。
たとえば、以下はSales Hubが保有している機能の一例です。
- 日程調整:ミーティングの日程をスムーズに調整しましょう。Eメールで何往復もやり取りしなくて済むので、節約した時間を他の業務に充てられます。
- ドキュメントのトラッキング:チームで共有する営業コンテンツをライブラリーにまとめ、成約への貢献度を資料別に把握できます。
- プレイブック:コールの台本、競合他社の比較情報、自社のポジショニングに役立つガイドなど、営業力を高めるさまざまなコンテンツをHubSpot内で閲覧できます。
- 取引パイプライン:取引の作成、タスクの割り当て、有望な見込み客のトラッキングといった作業を全て1か所から簡単に行えるため、商談の流れが止まることはありません。
- 見積書作成:見積書の作成や送信から、電子署名の収集、代金の回収までの手続きを、HubSpot内で行うことができます。
たとえば、以下は見積書作成の機能のイメージです。
依頼を受けてから数秒で(顧客の関心が高まっているうちに)、自社のブランドイメージに合った見栄えの良いデザインの見積書を送信できます。
3-4. 営業分析とレポート作成
4つめの機能は「営業分析とレポート作成」です。
「営業会議のたびに、資料作成に時間がかかって、営業活動に割く時間が削られる」という悩みは、現場担当者からよく聞くものです。
SFAには、このような本末転倒な悩みを解消するとともに、営業担当者の力量を超えた高度な分析を提供する機能があります。
- セールスアナリティクスとレポート:営業プロセス全体を把握できるため、予測の効果を高めて結果につなげることができます。
- コミュニケーションインテリジェンス:大切な顧客との会話をCRM上に記録することで、通話内容からインサイトを引き出し、社内の効果的なコーチングに生かしましょう。
- フォーキャスト:取引の進捗を包括的に把握し、四半期ごとの目標達成状況を確認して、チームの方向性を調整できます。
ダッシュボードを開けばいつでも、リアルタイムのレポートが表示されているため、営業チームの目標管理と達成を強力に支援します。
3-5. 補足:SFAの料金はいくら?
SFAの料金は、その機能によって幅があります。
高度な機能を多く保有しているSFAほど、料金は高額です。自社の営業活動に合わせて、ちょうどよく適合する機能性のSFAを選ぶことが、コスト削減につながります。
たとえば、Sales Hubの場合、4つのプランが用意されています。
- 無料ツール 月額0円
- Starter 月額2,160円〜
- Professional 月額54,000円〜
- Enterprise 月額180,000円〜
詳しくは Sales Hub(無料版も利用可能な営業支援ソフトウェア)にてご確認ください。
4. CRM・SFAのツールを選ぶ際の考え方
CRMとSFAのツールを選ぶ際には、どう考え、何に注意すべきでしょうか。
この記事の締めくくりとして、ツール導入の選択肢とそのメリット・デメリット、推奨される選び方について、解説します。
4-1. ツール導入の3つの選択肢
ツール導入には、大きく分けて3つの選択肢があります。
(1)単独のCRMツール
(2)単独のSFAツール
(3)CRMとSFAの機能を統合した総合ツール
各選択肢は、企業の規模、業種、営業プロセスの複雑さによって、その適合性が異なります。
4-2. 3つの選択肢のメリット・デメリット比較
3つの選択肢のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
(1)単独のCRMツール
◎メリット:顧客情報の詳細な管理と分析が可能です。顧客満足度・顧客ロイヤルティの向上が期待できます。
△デメリット:営業活動の自動化機能が限られているため、別途SFAツールが必要になる場合があります。
(2)単独のSFAツール
◎メリット:営業プロセスの効率化が図れます。時間を要する営業活動の自動化に貢献します。
△デメリット:顧客情報の管理と分析機能が限られているため、CRMツールとの併用が望ましいでしょう。 めておく
(3)総合ツール
◎メリット:CRMとSFAの機能を1つのプラットフォームで管理できます。連携による相乗効果が見込めます。
△デメリット:全機能を網羅しているため、導入コストが高くなる可能性があります。
4-3.「CRM総合ツール」を基盤に展開するのがグローバルの主流
3つの選択肢のうち、より多くの企業にとって推奨されるのは、「CRM総合ツール」を導入することです。
日本国内では、まだCRM・SFA・MAを個別に区分する風潮が根強く残っていますが、欧米諸国では、 「包括的なCRMツールに、SFAやMAがサブセットされる」 という概念へと進化してきています。
日本国内でも、上記の考え方が主流となるのは、時間の問題と考えられます。
今後の将来を見据えるなら、SFA単独ツールではなく、「SFAをセットできるCRM総合ツール」を導入することが望ましいといえます。
米国に本社を持つ私たちHubSpotのサービスも、CRMをベースとして、SFA(=Sales Hub)やMA(=Marketing Hub)、その他の各種ツールをセットできる形態を取っています。
出典:HubSpot
出典:HubSpot
前述のとおり、総合ツールの採用には、料金が高くなりやすいデメリットがありますが、HubSpotの場合は、無料のプランからご用意しています。
「CRMやSFAを導入したいけれど、予算を確保できない」 という場合には、まずは無料で可能な範囲で構築し、必要に応じて、必要な分だけの有料プランを加えていくとよいでしょう。
詳しくは、HubSpotのページよりご確認ください。
5. CRMで顧客理解できる環境を整備し、SFAを駆使して営業活動を推進しよう
本記事では「SFAとCRM」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
- CRM:顧客関係管理
- SFA:営業支援システム
CRMの基本的な3つの機能は、以下のとおりです。
- 顧客情報をデータベース化して管理する
- 顧客の動向を追跡し分析する
- セキュリティを強化する
SFAの基本的な4つの機能は、以下のとおりです。
- リード管理
- 営業担当者のマネジメント
- 営業活動の効率化・自動化
- 営業分析とレポート作成
近年では、「CRM総合ツール」を基盤に展開するのがグローバルの主流となっています。
CRMとSFAは、それぞれが独立して重要な機能を持ちながらも、統合されることでその真価を発揮するといえるでしょう。
自社が直面する課題や目標に応じて、最適なツールを選択し、生産性を高めていきましょう。