売上予測とは、過去の売上や市場動向など客観的なデータをもとに、将来の売上を予測することです。精度の高い売上予測を立てることで、経営判断も正確にできるようになり、企業の継続的な成長につながります。
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一方で、精度の高い売上予測の効率的な立て方がわからず、悩んでる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、売上予測の重要性や計算方法、売上予測を立てるために役立つツールなどをご紹介します。これから売上予測を立てる方は、ぜひ参考にしてください。
売上予測とは|定義と計算方法
売上予測とは、過去の売上や実績などの客観的な数値をもとに、将来のある一定期間における売上の予測を立てることです。
売上予測は、売上目標の設定や適切な予算配分・人員配置など社内での運用に限らず、金融機関や株主など対外的に用いられることもあります。経営戦略や営業戦略における重要な指針となるため、精度の高さが求められます。
売上予測を立てる際は、売上の概算や、企業・個人の主観的な希望や目標を含めず、客観的で根拠のあるデータをもとに算出することが重要です。具体的には、前年の売上データや自社の平均成長率、業界・市場の動向など、具体的で精緻な数値を用いる必要があります。
売上予測の計算方法
売上予測は、次の計算方法によって算出します。
過去の売上(過去数年の売上平均や前年同月の売上など)×成長率
例えば、2年前の売上が1,000万円、前年の売上が1,200万円の場合、年間成長率は20%になります。
(1,200万円-1,000万円)÷1,000万円×100%
したがって、今年の売上は「1,200万円×120%=1,440万円」と予測できます。
ただし、この計算式だけでは高精度の売上予測は算出できません。正確な売上予測を立てるためには、現在の業界動向や経済・社会情勢なども加味して、より事実に沿った計算を行いましょう。
売上予測と売上目標の違い
売上予測と混同されがちな用語に売上目標があります。ここで両者の違いについて理解しておきましょう。
売上予測が客観的なデータをもとに算出される現実的な数値なのに対し、売上目標は売上予測をもとに戦略の質を改善することへの期待や効果を上乗せした数値です。
<売上予測と売上目標の違い>
先述の計算式では、売上予測は前年の売上と成長率から算出しました。売上目標では、「このくらい売りたい」という希望や理想も含んで考えます。そのため、通常は前年や前月よりも高く設定されます。
つまり、売上目標はあくまで目標で、期待や理想に基づいて設定される指標です。客観的で正確性が必要とされる売上予測とは異なります。
売上予測を立てる重要性
売上予測は経営戦略や営業戦略に欠かせない重要なもので、正しく立てることで企業の成長に大きく寄与します。ここでは、売上予測を立てる重要性について、次の4つの観点から解説します。
- 適切な在庫量や人員の把握に役立つ
- 実態に即した売上目標を設定できる
- 金融機関や株主とのコミュニケーションが円滑になる
- 予算やキャッシュフローの適切な管理が可能になる
1. 適切な在庫量や人員の把握に役立つ
売上予測を立てることで、適切な在庫管理や人員配置が可能になります。
例えば、製造業では売上予測をもとに、「商品が何個売れるか」という概算を出すことが重要です。生産すべき数や必要な部品、原料数を把握しておくことで無駄な発注を抑え、適正在庫を実現できるようになります。
また、各部署に配置すべき人員数も把握できるため、従業員のリソースを適正に維持できるメリットもあります。
2. 実態に即した売上目標を設定できる
営業活動では、「〇か月で売上〇〇万円アップ」「売上を前年より〇%増やす」などの売上目標を設定するのが一般的です。データに基づいた売上予測を加味すれば、現実的かつ利益を最大化できる売上目標が設定できます。
売上予測がないと、実現不可能な高すぎる目標を設定しかねません。あまりに現実とかけ離れる目標は、従業員のモチベーション低下につながり、達成が困難となる可能性も出てきます。一方で、目標が低すぎても成長の機会を逃してしまうかもしれません。
売上予測を立てることで、適切な目標数値を具体化でき、目標達成までの戦略を立てやすくなるでしょう。
3. 金融機関や株主とのコミュニケーションが円滑になる
金融機関への資金繰り相談、株主とのコミュニケーションにおいても、売上予測は重要な役割を担います。
資金繰り相談では、根拠のある数値を用いた事業計画書の提出が求められます。返済計画を立てる際も、売上予測がないと見積もりを誤り、資金繰りが困難となる可能性もあるでしょう。
株主へ事業成長性の説明をする際にも、売上予測を活用すれば説得力が増します。
4. 予算やキャッシュフローの適切な管理が可能になる
売上予測を立てると、予算やキャッシュフローを管理する際にも役立ちます。企業の経営において、資金繰りは今後の成長にも関わる重要なポイントです。予算やキャッシュフローが適切に管理できなければ、経営状況の悪化を招く恐れもあります。
売上に応じて、設備費や人件費といった細かい予算を決められます。憶測で判断するのではなく、根拠を持った判断ができるでしょう。
予測を立てる際には、入金されるタイミングも押さえなければなりません。売上はすぐに現金化できるとは限らず、売掛金として支出に消えるケースもあるためです。売上予測を正確に算出できればこのようなキャッシュフロー上のトラブルも減少し、経営のリスクもある程度は抑えられます。
売上予測を立てる3つの方法
売上予測の立て方にはさまざまな方法があり、業界や企業により採用するアプローチ方法は異なります。ここでは、再現性の高い方法を3つご紹介します。
1. 過去の売上データをもとに算出する
過去の売上と、直近何年間かの成長率を計算して算出する方法です。先にご紹介した通り、「過去の売上×成長率」から売上予測を立てます。
ただし、この方法は、購入条件が一定で、競合企業や業界、経済、技術革新などの外部要因の変化がないことを前提としています。不況に強い商品を販売し、市場を完全に独占している場合を除いて、この方法では高精度の予測はできない点に留意してください。
2. 商談ステージに基づいて予測する
営業活動における商談ステージごとの成約率をもとに算出する方法です。具体的には、コンタクトから成約に至るまでの各ステージ(ヒアリング、提案、見積もりなど)について、次のステージに進む割合や成約見込み率、概算取引額を導き出し、最終的な売上予測を立てます。
商談ステージに基づいて売上予測を立てる際は、一定の期間を指定し、各商談ステージの成約見込み率と取引数をかけ合わせて概算取引額を算出します。これらの合計額が売上予測になります。例えば、次の表の条件で商談1件あたりの取引額が10万円の場合、売上予測は8,000万円です。
商談ステージに基づいた計算では、営業メンバーの活動状況や実績データを用いて、市場動向を踏まえた高精度の予測が期待できます。
また、商談ステージごとの実績を出すことで、どのステージのアプローチが足りていないかなどが可視化されるため、戦略構築につなげることも可能です。
ただし、営業チームで商談ステージごとの整理を行っていなかったり、全体的な戦略の中でステージごとの管理を十分にできていなかったりすると、正確な見通しを立てられない可能性があります。
営業担当者それぞれに正確な情報を報告・管理してもらうことはもちろんですが、場合によっては他の予測方法も併用して、より精度の高い売上予測を立てましょう。
なお、HubSpotが2023年2月に発表した「日本の営業に関する意識・実態調査2023」では、営業活動における無駄な時間が働く時間のうち22.37%にも上るという結果が出ています(回答者全体の加重平均)。この無駄は金額に換算すると約9,802億円となり、特に「社内会議」や「社内報告業務」が無駄な時間だと捉えられているという結果が出ています。
全体的な戦略の中で、営業担当者それぞれの情報を適切に管理する仕組みを作ることが、売上予測の精度向上や達成につながるでしょう。また、売上予測を効率的かつ正確に立てるためには、次にご紹介するツールの活用も重要です。
3. 営業パイプラインをもとに算出する
売上予測には、営業パイプラインをもとに算出する方法もあります。営業パイプラインとは、案件の獲得から受注に至るまでのプロセスのことです。
顧客の行動をまとめたカスタマージャーニーマップをもとに、フェーズごとで算出しましょう。営業パイプラインをもとに算出すれば、顧客の属性に合わせた売上予測が立てられます。
営業パイプラインを作成するもう1つのメリットは、従業員の取るべき行動が明らかになる点です。算出した売上予測を参考にしながら、顧客へのアプローチ法も決めやすくなります。顧客がどのフェーズで停滞しているかを、営業パイプラインから捉えることが大切です。
パイプライン管理について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。
売上予測の精度向上に必要なこと
売上予測の精度を高めるのに必要な要素は、算出基準の統一です。会社全体での予測に一貫性がなければ、精度が低くなる恐れもあります。
各部署で売上予測を立てる際には、何を基準に算出するかをあらかじめ決めましょう。そのためにも、重要なデータは1つの部署だけで保管するのではなく、会社全体での共有が重要です。
他にも、ツールの導入も売上予測の精度向上に貢献します。ツールを導入すれば、分析する際に大量のデータを使えるためです。従業員の負担が軽減されるほか、作業のミスも減らせます。
ツールを用いた分析で、より客観的に売上予測が立てられるでしょう。主に次の見出しで紹介するツールの活用をおすすめします。
売上予測を立てるために役立つツール
最後に、売上予測を立てるツールとして、エクセルとSFA(営業支援システム)をご紹介します。
どちらも使いやすく導入しやすいので、売上予測に必要なデータ量や予算など自社の導入条件にあわせて選ぶと良いでしょう。
1. エクセル
Microsoft Excelには予測シート機能が備わっており、既存データから売上予測を導き出せます。操作方法は次の通りです。
まず、毎月の売上データを入力し、予測データの元データとなる表を作成します。表を選択した状態で[データ]タブの[予測シート]ボタンをクリックすると、[予測ワークシート]ダイアログボックスが表示され、売上予測を確認できます。
少量のデータから売上予測を立てる場合や、コストを抑えたい場合はエクセルでも十分でしょう。ただし、エクセルには保存できるデータ量に限りがあるため、データ量が膨大な場合は次にご紹介するSFA(営業支援システム)の導入をおすすめします。
2. SFA
SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)は、営業部門の情報やプロセスを自動化し、管理・分析などを行うシステムです。売上予測機能が備わっているSFAも多くあります。
SFAは大容量データを扱う前提で構成されているため、データ量が多い場合はSFAの活用をおすすめします。必要なデータを取り込むだけで自動集計し、売上予測レポートを作成できるため、分析手法の知識がなくても精度の高い予測が立てられます。
適切なデータを蓄積して高精度な売上予測を立てよう
売上予測は、経営戦略や営業戦略にとって重要な役割を果たすため、客観的なデータにもとづく精度の高さが求められます。過去の売上や営業活動の商談ステージ別のデータなど、適切なデータを集めたうえで、根拠のある売上予測を立てましょう。
データ量が少なければエクセルでも十分売上予測を立てられますが、規模が大きくなるにつれ、管理や分析が煩雑になってしまいます。より詳細で正確な売上予測のためには、SFAの導入を検討してみるのもおすすめです。
高精度な売上予測を立て、健全で安定的な企業の成長に役立てましょう。