ビジネスを拡大していくためには、新規顧客の開拓は切っても切り離せないプロセスです。
「新規顧客開拓」と聞くと、テレアポや飛び込み営業をイメージするかもしれませんが、それ以外にも様々な方法があります。
ぜひこの記事を参考に、自社のビジネスにあった新規顧客開拓の方法を見つけてみてください。
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営業活動における新規顧客開拓とは?
営業における新規顧客開拓とは、これまで関係がなかったターゲットにアプローチし、新たな顧客となってもらうための営業活動です。
紹介や既存顧客に対する営業と比べて、0から信頼関係を構築する必要があるため、難易度が高いのが特徴です。
「営業職は大変だ」と言われることが多いのも、この新規開拓の難しさにあります。
新規顧客開拓の目的と重要性
起業したばかりの場合、創業者の人脈を活用して営業することが多いでしょう。しかし、ビジネスをより大きくしていくためには、新規顧客の開拓は避けて通れないプロセスです。
もちろん、既存顧客の維持も重要です。しかし、どんなに優良企業であっても解約率を0にするのはほぼ不可能。そのため、新規開拓をしなければ売上が頭打ちになり、月の収益は徐々に減少していくでしょう。
さらなるビジネスの飛躍を目指すのであれば、既存顧客の維持と並行して、新規開拓を進めることが不可欠となります。
新規顧客開拓のコツ
ビジネスの成長には欠かせない新規開拓ですが、関係を0から構築しなくてはいけないため、難易度が高いのも事実です。
ここからは、新規開拓の成功率を上げるためのコツを紹介します。
相手の抱える課題を把握する
ニーズがないところに営業をしても成果が出ずに時間が無駄になるばかりか、顧客体験が下がり自社ブランドを損ねる可能性があります。
リストに沿って上から順番に新規開拓するのではなく、顧客の企業についてリサーチし、相手の抱えている課題を把握、もしくは課題の仮説を持って新規開拓に臨むべきです。
相手にとってのメリットを明確に提示する
特に飛び込みやテレアポなどのアウトバウンド手法の場合、営業をかけられる立場からすれば、「何かを売りつけられるのは迷惑」と身構えることでしょう。
したがって、相手が話を聞きたくなるようにメリットを明確かつ簡潔に伝え、まずは信頼関係を築くことが重要です。
複数の手法を掛け合わせる
前章で紹介した手法を掛け合わせることで、より成果を出すことができる場合があります。例えば、手紙を出した相手に、「手紙を確認していただけましたでしょうか?」という切り口で電話をかけることもできます。
また、営業メールに相手に合わせたブログコンテンツを添付することもできます。
新規顧客開拓をする際の手順
新規顧客開拓のコツが分かったら、顧客を得るまでの具体的な手順を確認していきましょう。
ターゲットを明確に定める
効率的に、かつ確度の高い新規顧客開拓には、自社サービスや商品を買ってくれるターゲット層の明確な定義が重要です。
手当り次第に新規顧客開拓を進めても、効率を損なうばかりで費用対効果は悪くなっていきます。また、数打つことで当てようと思っても、開拓を進めようとしている層に適したターゲットがいなければ集客もままならないでしょう。
自社のサービスや商品はどんな人や会社のどのような課題を解決するのか、改めて定めてみましょう。社外の関係者にも分かりやすく伝わるよう再定義することが大切です。そうすることで、どのようなターゲット層にアプローチするべきかが見えてきます。
また、手当り次第に営業をかけるよりも、費用対効果や最終的な成果が改善されていくでしょう。
過去の事例を参考にする
効率よく新規顧客開拓を進めるには、新規顧客開拓に成功している過去の事例を参考に営業計画の見直しも検討しましょう。同じような営業計画をずっと実施し続けるのではなく、必要な箇所はアップデートしていくことが大切です。
過去にどのような営業があってどんな結果になったのか、あるいは成功している他社がどのような手法を取っていたのかを知ることで、確実性のない手法を避け、より成功の可能性が高い手法を選択しやすくなります。
営業計画の立て方については以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
潜在顧客を見込み客に変える
新規顧客開拓でアプローチするべきは、潜在顧客と見込み客です。両者はどちらもまだ顧客になっていない層であり、適切なアプローチを行うことで顧客になってくれる可能性があります。
潜在顧客とは、自社サービスや商品をまだ認識していない段階の層を指します。潜在顧客へは、まず自社サービスや商品を知ってもらうためのアプローチを行います。
見込み客とは、自社サービスや商品を認識し、少しでも興味を持っている層を指します。ただ興味を持っているだけの段階から、問い合わせや資料請求など具体的なアクションを起こしている段階までが見込み客であり、購買に結びつくと顧客となります。
さらに詳しい違いについては、以下の記事をあわせてご参照ください。
新規顧客開拓の初期段階では、潜在顧客を見込み客へシフトさせることが重要です。
潜在顧客や見込み客を集める方法は、大きくインバウンド型(プル型)とアウトバウンド型(プッシュ型)に分かれます。詳しくは、次の項目にてご紹介します。
購買意欲を高める
潜在顧客へアプローチし、見込み客を増やすことができれば、次は見込み客へさらにアプローチを行い購買意欲を高めていきます。
見込み客の中でも段階があるため、それぞれの段階に合わせたアプローチを実施します。購買意欲を高めてから営業を行うことで、成約率の向上が期待できます。
ホットリードを厳選する
見込み客を別の言葉で「リード」と言います。ホットリードとは、リードの中でも特に購買意欲が高いと思われるリードのことです。見込み客の中からホットリードを見極めることができれば、顧客への醸成につながる可能性が高まります。
ホットリードを見極めるには、Webサイトの訪問数やお問い合わせの回数などの行動をスコアリングすることが重要です。
ホットリードについて詳しくは、以下の記事をあわせてご覧ください。
ホットリードへ営業をかける
ホットリードを厳選することができれば、あともうひと押しで顧客になってくれると期待できます。ここで営業をかけることで、手当り次第に営業をかけるよりも効率的かつ確実に新規顧客開拓を進めることが可能です。
具体的には、顧客が企業であれば電話やメールなどのアウトバウンド型の手法を取っていき、成約へつなげていきましょう。
新規顧客開拓の方法
新規顧客開拓の手順を押さえたところで、特に「潜在顧客を見込み客に変える」や「購買意欲を高める」の段階で重要となる具体的な手法についてご紹介します。
インバウンド型とアウトバウンド型
新規顧客開拓における潜在顧客、見込み客へのアプローチ手法は、主にインバウンド型(プル型)とアウトバウンド型(プッシュ型)に分かれます。
インバウンド型は、潜在顧客や見込み客へ向けて情報を発信し、自社サービスや商品を見つけてもらう方法となります。一方、アウトバウンド型では自社のほうから積極的にコンタクトを取り、サービスや商品を伝えていきます。
なお、上記の説明は一般的に言われているインバウンド型とアウトバウンド型の違いです。HubSpotではインバウンド型とアウトバウンド型の違いを、「新規顧客開拓における思想の違い」と捉えています。
インバウンドとは、自社のサービスや商品の価値を先に相手へ提示し、潜在顧客や見込み客と良好な関係を構築しようとする思想です。
一方アウトバウンドとは、自社が享受する利益を優先する思想と考えています。
例えば、インバウンド型の手法としては、以下に詳しくご紹介しますが、ブログやSNSがよく知られています。しかし、自社の利益を優先するような発信の仕方では、真の意味でのインバウンドとは言えません。
また、アウトバウンド型の代表的な手法であるテレアポでも、相手にとっての価値を先に伝え良好な関係を築こうという姿勢で行えば、インバウンド的だと言えます。
具体的な手段:プル型
ここでは、潜在顧客や見込み客に見つけてもらうためのプル型の代表的な手法をご紹介します。
ブログ・オウンドメディア
ブログやオウンドメディアなど、テキストコンテンツによる情報発信を起点に新規顧客を開拓する手法です。
潜在顧客の検索ニーズに合わせてコンテンツを発信し、Googleをはじめとする検索エンジンからの流入によって集客します。検索ニーズに合わせてコンテンツを配信するため、知りたい情報が明確になっている潜在顧客に対して有効な手法です。
ブログやオウンドメディアで成果を出すために必要なのは、顧客にとって有益なコンテンツを最適な形で提供することです。
潜在顧客へコンテンツを届ける有効な手段としては、SEOが挙げられます。何かしらの課題を持って検索している方に対し、課題を解決するコンテンツを提供できれば、自社に関心を持ってもらえる可能性が高くなります。
YouTube
ブログやオウンドメディアに続いて、近年注目されているのがYouTubeの活用です。
通信環境やプラットフォームの発達で、それまで文字でしか伝えられなかった情報を動画で伝えられるようになりました。漠然とした課題を抱える潜在顧客に対しては、文字よりも多くの情報量を伝えられる動画はとても有効です。
一方で、知りたい情報が明確な潜在顧客にとって、動画は本当に知りたい情報にたどり着くまで時間がかかる場合があり、最後まで見てもらえない可能性もあります。
これからは、プラットフォーマーであるGoogle によって、動画への集客が重要視される可能性もあるため、動画での発信も始めていくべきでしょう。
SNS
TwitterやFacebookなどでのコミュニケーションを通じてアプローチする方法です。過去の投稿から、抱えている課題や人となりが把握できるのがメリットです。
有益な情報発信でフォロワー数を増やし、そのフォロワーに向けて自社サービスを紹介する、または、自分の課題を発信している人に対しコミュニケーションするなど、様々なアプローチが可能です。
プレスリリースの配信
新たなサービスや商品の発表、あるいはなんらかの取り組みを発表できることがあれば、積極的にプレスリリースの発信を行いましょう。
プレスリリースは報道機関向けに発表する文書のことであり、報道やSNSでの拡散効果が期待できます。
認知が拡大し、潜在顧客や見込み客に興味を持ってもらえる可能性が高まりますが、一方であまり取り上げられなければ広まりにくいという運の要素もあります。
具体的な手法:プッシュ型
ここでは、自社から積極的にコンタクトを取っていくプッシュ型の手法についてご紹介します。
電話
いわゆるテレアポのことであり、顧客の課題解決ができる確信がある際には、最も即効性が高い手法です。その場で商談までこぎつければ、最短で契約獲得までいけるでしょう。
しかし、電話を受けた相手にとっては仕事の手を止めなくてはならず、顧客体験を損なう可能性もあります。また、一定規模以上の企業では営業電話を断るプロセスが確立されていることもあります。
メール
名刺交換をしたことがある相手に、メールを使って営業する方法です。担当者のメールアドレスがわかっている場合、担当者まで確実に届くのがメリットです。
しかし、懇親会などで一度名刺交換をしただけの場合は、相手が自分のことを覚えていないケースもあります。いきなり営業をかけられると、場合によっては不快に思われてしまうため、相手との関係性を考慮して行いましょう。
手紙
手紙も新規開拓の手法のひとつです。古い方法と思われがちですが、大企業の意思決定者とコンタクトをとるためには未だに有効な手段です。
手書きで手紙を書くことで、相手に誠意を伝えられるでしょう。また、封書が届けば、受付の人がその宛名の人に渡してくれるという期待もできます。ただ、手書きは時間的コストがかかるのがデメリットです。
飛び込み
飲食店などの実店舗がターゲットの場合、飛び込みがよく使われます。 直接会ってその場で説明できること、店舗が密集しているエリアでは効率よく営業できることがメリットです。しかし、お店が忙しい時間帯では迷惑となるので、時間や曜日を考慮して行う必要があります。
新規顧客開拓における主なKPI
ビジネスに欠かせない新規顧客開拓を進めるにあたっては、KPIを設置しPDCAを回していくことが重要です。
KPIを定め、定量的に効果測定することで、数ある新規顧客開拓の手法の中から自社のビジネスにとって適切なものを見つけることができます。
顧客獲得単価(CAC)
CACとは顧客1人を獲得するのにかかったコストの総額です。
いかに低コストで顧客獲得ができているかを示す指標であり、CACには単純な広告などのマーケティングコストだけでなく、担当者の人件費も含まれます。
CACについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
顧客ライフタイムバリュー(LTV)
顧客ライフタイムバリュー(LTV)は、日本語だと「生涯顧客価値」と訳されます。
単月だけでなく、その顧客が生涯でどれだけの利益をもたらしてくれるのかを計測するもので、SaaSなどの定額制サービスや、リピート率が重要となる商材など、あらゆる業種で重視するべき指標です。
LTVの詳細について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
新規顧客開拓のチャネル別にCACとLTVを算出し、その比率を求めることで、その手法がどれだけ効率的なのかを検証できるようになります。
LTVをCACで割った数字が大きいほど、その手法の効率が良いということを意味します。
例えば2つの顧客獲得チャネルがある場合、それぞれのCACとLTVは以下のようになりました。
この場合、CACだけを見ると、チャネルAの方が低コストで顧客獲得ができるため、一見良さそうに見えます。しかし、LTVまで含めて計算してみると、AよりBの方がROIが高いことがわかります。
このように、CACとLTVの2つのKPIをモニタリングすることで、より効率の良い手法、チャネルを判別できるようになるのです。
なお、サブスクリプション型のSaaS企業ではLTV÷CACの数値が3以上であることが、健全な営業活動のベンチーマークとされています。
(参考:CACとは?計算方法やCACを利用したSaaSビジネス健全度の計測手順 )
新規顧客開拓の注意点
新規開拓の数値目標に追われていると、契約を取ること自体が目的になってしまい、本来の目的を見失うこともあります。
しかし、もし自分が営業をかけられる側であった場合、仕事が忙しいときにテレアポや飛び込み営業で仕事が中断されたうえに、自社にとって必要ないものだったとしたら、どのような心境になるでしょうか?
おそらく、良い印象は持たないでしょう。これから契約を目指す中でマイナスからのスタートとなってしまいます。
また、その企業に悪い印象を抱き、将来的に同様のサービスが必要になったときにも選択肢から除外されてしまう恐れもあります。
実際、「購入者の73%は、購入の決定において重要な要素として顧客体験を挙げている」という調査結果もあります。
(出典:HEINZ:B2B Customer Experience: Why It Matters and Where to Start(英語))
目標に追われているときこそ、顧客視点に立って「今電話をしてもいいタイミングか」、「相手が必要としている情報は何か」という想像力を持てるようにしましょう。
顧客視点に立つことが、顧客体験の向上につながり、結果として営業成果にもつながります。
(参考:3 REASONS WHY SALES IS NOT CUSTOMER SUCCESS|zuora(英語))
新規顧客開拓のコツはインバウンド的なアプローチ
新規顧客を開拓する方法はたくさんありますが、どの方法を選ぶとしても相手の立場を理解したうえでアプローチすることが大切です。
相手が何を求めているのかを把握したうえで、それに対して解決策やメリットを提示し、顧客体験を高めることに注力しましょう。
相手の状況を理解しないまま自社を売り込む「アウトバウンド的な営業手法」は、一度に大量のターゲットにアプローチできるという利点があります。ただ、自社本位の営業活動で悪い印象を与えてしまうと、顧客体験が損なわれ、将来的な営業のチャンスを失ってしまうことにもなります。
一方で、顧客のニーズを汲み取り、適切な情報を提供して興味を喚起する「インバウンド手法」は、受注しても失注しても相手に対して良い印象を残せる可能性が高く、営業アプローチとして非常に優れています。
自社の営業戦略に基づいて、適切な営業手法を選択し、できるかぎりインバウンドなアプローチに寄せられるよう考えてみましょう。