営業活動における商談から受注までの流れを可視化・管理するために用いられるSFA(Sales Force Automation)。効率的な営業活動につながるほか、商談情報や営業プロセスなども蓄積できるため、見込み客にとって価値の高い提案を実践しやすくなります。
SFA (営業支援システム) 導入の基礎ガイドと実践用チェックリスト
SFA導入を成功させるためのポイントを徹底解説!
- SFAの導入を成功させる方法
- スムーズな社内導入5つのチェックポイント
- SFAツールのご紹介
- SFA導入「実践用チェックリスト」
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全てのフィールドが必須です。
一方で、SFAの導入自体が目的化するケースも。SFAによって解決すべき課題や目的が明確になっておらず、ツールを生かしきれないままフェードアウトしてしまう企業は少なくありません。
今回は、SFA導入のメリットや導入手順、事例から学ぶポイントを解説していきます。SFAの適切な導入方法を知り、営業効率を向上させたうえで、見込み客との信頼関係を築いていきましょう。
SFAとは?
SFA(営業支援システム)は、営業活動の効率化と管理を支援するシステムです。営業担当者が顧客との関係を構築し、売上を最大化するためのツールとして使用されます。
例えば、営業プロセスの自動化、顧客情報の統合、販売予測、タスク管理、報告書作成などの機能を備えています。これにより、タスクの追跡と計画、効果的な顧客とのコミュニケーション、売上向上のための営業パフォーマンスの分析が可能です。
SFAは営業プロセスの効率化と組織全体の生産性向上に貢献し、効果的な営業活動をサポートしてくれます。
SFAの導入メリット
SFAは、うまく活用すれば企業と見込み客双方に恩恵をもたらすツールです。
具体的には、以下のようなメリットが挙げられるでしょう。
- 営業活動の見える化
- 営業の知識・情報の共有
- 営業活動の効率化
- 教育コストの削減
- 売上の向上
- 戦略立案に活かせる
- 退職に伴う情報流出を防げる
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
営業活動の見える化
第1のメリットは、営業活動のプロセスや各営業パーソンの行動を見える化できる点です。
個々に営業活動を行うと、どうしても直近のタスクのみに注力しがちです。しかし、全体の状況を把握しないままに営業活動を行うことは、無駄な動きによる時間ロスの増加はもちろん、見込み客に対して何もケアせず放置してしまうような事態も招きかねません。
SFAの導入で営業プロセスを見える化することで、全体を俯瞰しながら活動ができるため、見込み客への提案状況、今後取るべき行動などを画一的に管理できます。
HubSpotが2023年2月に発表した「日本の営業に関する意識・実態調査2023」でも、無駄な時間を削減することの重要性が浮き彫りになっています。
この調査では、営業活動における無駄な時間はどのくらいかという調査にて、22.37%が無駄な業務だと感じるという結果が出ています。
内訳の上位は「社内会議」「報告業務」ですが、見える化を行うことでも無駄な時間を削減することにつながるでしょう。
また、営業活動の状況を一元管理できることで、報告業務などの無駄も削減していけると考えられます。
営業の知識・情報の共有
これまでの成功・失敗事例などを共有することで、営業のヒントを得られるのもSFAのメリットです。
たとえば、失注につながってしまった過去の営業プロセスを洗い出し、その内容を営業マネージャーが確認・分析することで、見込み客のニーズに応じた最適なアプローチができます。
見込み客は自分のニーズに適った製品を提案してもらえるため、満足度が向上し、ひいては企業の売上にも直結するのがポイントです。
営業活動の効率化
SFAには、見込み客の情報や案件を一元管理できる機能が備わっています。従来、こうした情報は営業パーソン各々のパソコンで管理する手法が一般的でした。しかしSFAを導入すれば、パソコンはもちろん社用のスマホやタブレットからでも、各々が自由に情報へアクセスできるようになります。
営業活動に必要な情報が部門内でリアルタイムに共有されることで、担当者が不在でも見込み客へのスムーズな対応が可能です。
外出が多い場合は、スマホやタブレットで業務報告ができるツールを導入すれば移動時間も活用できます。
上記にてご紹介した「日本の営業に関する意識・実態調査2023」では、CRM(SFA)を導入している営業組織は36.1%、顧客の管理方法が「明確ではない・わからない」と回答した営業組織は31.0%という結果も出ています。
両者は必ずしも直結するとは言えませんが、営業活動や顧客の管理がそれぞれの営業パーソン頼りになってしまい、効率的な活動ができていない可能性が考えられます。
こうしたツールの導入により、組織内で情報をきちんと管理できていないという課題にも対応できると言えるでしょう。
教育コストの削減
SFA導入による効果は、新人教育の面にも現れます。SFAの機能を使えば、営業ノウハウを蓄積したうえで標準化させることが可能になるからです。先輩社員の勘や経験に頼らずとも複数の新入社員をまとめて教育できることから、教育コストの削減につながります。
また、営業活動において常に一定の質を確保できるため、たとえ担当者が変更になった場合でも、見込み客や顧客の満足度が低下するといった事態を防げます。
売上の向上
SFAを導入して、営業の仕事全体を管理するのは、売上向上のためといっても過言ではありません。業務内容をSFA上に記録しておくことで、顧客情報や営業メンバーの行動が可視化されます。
成果の出ている営業メンバーの行動を分析したり、売上につながった顧客の課題分析したりすることで、売上を上げるためのヒントが得られます。
戦略立案に活かせる
SFAには、営業に関するさまざまなデータが登録されます。日々の営業活動で起こった出来事を記録しているため、リアルタイムの一次情報をもとに分析可能です。
データから傾向や行動パターンが分かれば、どの顧客にどんなアクションをすべきかが明確になるので、SFAは今後の戦略立案にも活かせます。
退職に伴う情報流出を防げる
SFAツールで情報を一元管理しておけば、情報漏洩を防止できます。ツールへのアクセス権をなくすだけで、退職した社員は情報にアクセスできなくなるためです。
また、退職者が担当していた顧客について知りたい情報が出てきた際、SFAに記録があればすぐに情報にたどりつけます。情報収集にかかる時間や引き継ぎ漏れによる顧客トラブルを回避可能です。
SFA導入で失敗しないために抑えるべきポイント
SFAツールにはさまざまな種類があり、「有名なツールだから安心だろう」と言って安易に選ばないよう注意が必要です。
SFA導入で失敗しないためには、各ツールの特徴や性能を比較するのはもちろんのこと、導入前に以下のようなポイントも押さえておくと良いでしょう。
無料トライアルがあるか
有料SFAツールのなかには、14日間・30日間など期間限定で無料トライアルができるものもあります。トライアル期間中に確認しておくべき主なチェックポイントは以下の通りです。
- 全体的にツールが使いやすいかどうか
- 普段使わないような余計な機能が含まれていないか
- 搭載されている機能に対して適切な価格が設定されているか
- 利用中のMAツールと問題なく連携ができるか
- スマホやタブレットでもスムーズに操作できるか
トライアル期間中にツールの操作性や費用感などを確認しておけば、いざ導入した際に「欲しい機能がなかった」「思ったより使い勝手が悪く社内に浸透しなかった」といった事態を最小限に抑えられます。
サポート体制が充実しているか
SFA導入を検討するうえで、ベンダーのサポート体制を確認しておくことも重要です。ツールを安定して運用するにはある程度の時間がかかり、その間に疑問点を洗い出して、すべて解消しておくべきだからです。
サポート体制を確認するには、以下のチェックポイントを参考にしてください。
- 困ったときにいつでも迅速に対応してくれるか
- 機能説明や初期設定など初歩的な質問にも応じてくれるか
- 障害やトラブル発生時に担当者を直接派遣するような仕組みがあるか
- 常に最新情報やシステムアップデートを提供してもらえるか
- 保守・運用サポートに費用が発生するかどうか
SFAを導入すると、新しいルーティンワークを社員に強制することになります。導入したら終わりではなく、使い方レクチャーの機会や質問会を開くようにしましょう。
社員がSFAに慣れるまでサポートして、SFA活用を浸透させていくのがおすすめです。
SFAの導入の手順
SFAは複数の営業パーソンが利用する以上、導入前に社内体制を整備しておかなければなりません。事実、SFAの導入から運用までの間には以下のようなプロセスが発生します。
- プロジェクトチームの発足
- 目的の明確化とSFA導入の検討
- 自社に適したSFAの選定
- 運用前の準備
- 契約・運用開始
それぞれ順を追って解説していきます。
1. プロジェクトチームの発足
まず、SFAを活用して営業改革を行おうとするプロジェクトチームを発足させます。
必ずしもSFAを利用する営業パーソン全員が参加する必要はなく、企業規模に応じて2~5名ほどでチームを編成しましょう。プロジェクトチームはあくまで営業改革が目的となるため、メンバーは少人数でも問題ありません。
ただし、社内改革を行おうと思えば組織の一部で反発が生じやすいため、プロジェクトチームに対する経営トップのサポートやバックアップは欠かせません。社内からの反発が強い場合には、経営トップや営業統轄役員をチームの責任者に起用するのも方法の一つです。
2. 目的の明確化とSFA導入の検討
次に、SFAを導入する目的や機能要件、運用スケジュール、予算を決定します。
上記のうち、もっとも重要な要素が「導入目的」です。目的が明確になっていないと、当然目的を達成するための機能や必要期間、必要資金を決められません。
「見込み客の優先順位付けを行って営業効率を高める」や「営業エリア拡大にあたって顧客情報を一元管理・共有する」など、まずは部門内における現状の課題を洗い出したうえで目的を設定しましょう。
3. 自社に適したSFAの選定
SFA導入を決断した後は、複数のベンダーを比較したうえで自社に最適なツールを検討していきます。先に紹介したポイントを踏まえつつ、各ツールの情報を収集しましょう。
情報源としては、各社のWebサイトやパンフレットはもちろん、ベンダー主催のセミナーなども活用できます。あるいは、ベンダーに対してRFPを提出するのも方法の一つです。
RFPとは「提案依頼書」を指します。発注側の要件を記した書類をベンダーに提出することで、自社の要望に合った提案をしてもらえます。複数社から同一のフォーマットで提案を受けられるため、評価基準が統一されスムーズな比較が可能です。
選定したツールに無料トライアルがある場合は、期間内で操作感等を確認しておきましょう。
以下の記事では、複数のSFAツールを取り上げ、それぞれの特徴やメリットなどを解説しています。SFAの導入を検討する場合に参考にしてみてください。
4. 運用前の準備
利用するSFAツールが決定したら、今度はプロジェクトチームに実際の運用者も加えたうえで運用方法を決めていきましょう。検討すべきポイントは以下の通りです。
- SFAを導入する目的を再確認し、チームと運用者全員で共有する
- SFAの運用ルールやマネジメント手法を決める
- 収集すべき情報を明確にしておく
- 成約率や顧客単価といったKPI(計測可能な目標値)を設定しておく
5. 契約・運用開始
ベンダーと契約を交わし、実際にツールを使って運用をスタートします。
SFA導入後は、ツールを利用する人全員が参加できる研修を開催するとよいでしょう。参加者全員がツールの操作方法を習得できるうえ、導入目的やKPIを部門全体で共有することができます。
その後SFAの運用を開始していきますが、最初に行うのはマスタやパラメータ情報の登録です。システム管理者の監督のもと、事前に打ち合わせした運用ルールに沿って見込み客情報や名刺データ、マスタ、パラメータ情報を登録していきましょう。
6. 運用の定着化
SFAの運用を定着させるには、プロジェクトリーダーの役割が非常に重要です。とくに操作に慣れないうちは営業社員の不満がたまりやすいものですが、毎日必ずSFAと接点を持たせるようにし、フィードバックを通じて課題を解決していくとよいでしょう。
細かい操作方法や運用ルールを確認したい営業社員のために、社内ヘルプデスクを設置するのも効果的です。
SFAを導入してから運用が定着するまでは、3か月ほどの期間がかかると言われています。導入後、始めの3か月目を目安に効果測定を行い、その後も四半期単位で検証と改善のサイクルを繰り返していきましょう。
導入前に、よくある失敗例を知っておこう
営業効率の向上に寄与するSFAですが、ツールを導入すれば必ずしもメリットが生まれるわけではありません。SFA導入後のポイントを押さえておかなければ、営業効率が高まるわけでもなければ、見込み客の満足度が向上することもないのです。
当社HubSpotも、SFA機能を実装したセールスツールである「Sales Hub」を提供しているのですが、見込みのお客様から「一度SFAツールを導入してみたものの、成功できなかった」とご相談をいただくことが多々あります。
ここでは、よく起こりがちな失敗例を踏まえ、SFA導入のポイントを解説していきます。
SFAの導入自体がゴールでないことを意識する
さまざまなツールを比較・検討するうちに、いつの間にかSFAの導入自体が目的化してしまうことがあります。これはSFAに限らず、社内に何らかのツールを導入するときに起こりがちです。
あくまでSFAは目的を達成するための手段であることを忘れてはいけません。目的と手段があいまいなまま運用を進めてしまうと、期待した効果は得られないでしょう。
このような事態を防ぐには、SFAの導入前に現状の課題と導入の目的を明確にしておくことが大切です。また、SFA導入後もツールを使用すること自体が目的になりがちなため、事前に定めた目的を周知徹底し、日々の運用結果を評価・改善する仕組みを整えましょう。
現場担当者と管理者での行き違いに注意
SFAを導入する際、管理部や情報システム部の責任者がプロジェクトリーダーを務めるケースも珍しくありません。その結果、現場の実情がわからないまま導入を進めてしまい、現場担当者と管理者の間で齟齬が発生しがちです。
このような行き違いが生まれると、営業の現場から「SFAは意味がない」といった反発の声が上がる原因にもなるでしょう。
必ずしも営業部門の責任者がプロジェクトリーダーになる必要はありませんが、管理部門や情報システム部門が中心となって運用を進めていくなら、現場のメンバーにヒアリングするなど、状況を理解したうえで適切な導入を行う必要があります。
また、プロジェクトリーダーは必要だと思っていたものの、現場社員はいらないと感じている機能のため、結局使われないことになってしまいます。無駄なコストになる可能性があるので、必要な機能をきちんとすり合わせるようにしましょう。
現場担当者にとって使いやすいかを事前にチェックする
情報共有・可視化に特化したSFAですが、入力項目が多かったり操作が複雑だったりすると、利用率が下がる原因にもなりかねません。
このような事態を避けるには、SFAの選定段階でトライアルを活用し、現場担当者に体験してもらうなど、あらかじめツールの操作性を確認しておくことが有効です。
SFA導入の目的が浸透しているか確認する
SFAを導入した企業のなかには、データ入力は適切に行えていたとしても、そのデータを営業活動に活かしきれていない場合もあります。その主な原因は、自社の課題や目的が明確になっていない、あるいは課題や目的が営業社員全員に行き渡っていないことです。
結果的に、データを入力する行為そのものが目的となってしまい、かえって作業が増えて営業効率が低下してしまう恐れもあります。
もちろん、この状況では見込み客への提案の質が上がることもないでしょう。プロジェクトチーム内で課題と目的を明確にし、研修や会議などを通じて営業社員全員に情報を行き渡らせるようにしましょう。
営業チームが提供できる価値を底上げしよう
営業プロセスの可視化や営業活動の効率化に役割を発揮するSFA。ただ、SFAを導入したところで、そのツールを営業活動に活用できなければ意味を成しません。
SFAを適切に運用・管理するには、自社が抱えている課題からゴールを導き出し、営業部門全体で目的を共有する必要があります。営業効率が高まり、見込み客の満足度が向上して初めて、真価が発揮されたと言えます。
SFAは単なる効率化の手段ではなく、見込み客に対する価値提供の質を上げるツールであることを理解したうえで、改めて導入を検討しましょう。