コールセンター(コンタクトセンター)の重要な業務の一つとして、「クレーム対応」があります。クレームには自社に責任のない一方的な内容もありますが、自社の過失等による正当な意見もあり、正確な切り分けと適切な対応が重要となります。

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コールセンター管理者はこの点を十分に把握し、仕組みやシステムで対応する必要がありますが、オペレーター一人ひとりの役割も重要です。
本記事では、コールセンターの管理者・オペレーター双方に参考にしていただける内容として、コールセンターにおけるクレーム対応の切り分け方や対応のポイント、クレームを減らす方法についてご紹介します。
コールセンターにおけるクレーム対応
コールセンターにおけるクレームには、大きく分けて次の3種類があります。
- 企業側に原因があるクレーム
- 顧客側に原因があるクレーム
- 双方の捉え方の違いによるクレーム
クレームの例と対応方法について、順番に解説します。
企業側に原因があるクレーム
企業側に原因があるクレームの多くは、納期遅延や品質に関するものです。
【クレーム例】
- 商品が破損して届いた
- 予定された配送日を過ぎても商品が届かない
- 請求書に誤りがある
このようなケースでは、まずは謝罪して顧客の要望を丁寧に聞く必要があります。商品破損の場合は、顧客の要求が新品との交換なのか、返金なのかによっても対応が異なるでしょう。
顧客がどうしてほしいのかをヒアリングして、要求に応じた対応をすることが大切です。
顧客側に原因があるクレーム
顧客に原因があるケースは、多くの場合が「勘違い」によるものです。
【クレーム例】
- 頼んだものとは違う商品が届いた(誤って注文)
- 説明書通りの操作をしているのに動かない(操作方法の誤り)
このような場合でも、まずは顧客の話を聞き、相手を否定しないようにしましょう。否定されると、さらなるクレームに発展する可能性があるためです。
顧客の話を最後まで聞いてから、正しい操作方法を丁寧に伝えるといった対応をしましょう。
双方の捉え方の違いによるクレーム
企業と顧客の価値観や物事の捉え方の違いから生じるクレームもあります。このタイプのクレームは、個々の認識の差によって発生します。
待ち時間に対する感じ方の違いを例に考えてみましょう。顧客が待ち時間の長さに不満を感じる一方で、企業側がそれを適切な待ち時間と考えている場合などが典型的な例です。
さまざまな価値観の人がいるので、そのすべてに対応することは難しいですが、「大変お待たせして申し訳ありません」などと言い添えると良いでしょう。クレーム対応では相手の不満を理解し、寄り添う姿勢が大切です。
コールセンターでのクレーム対応でやってはいけないこと
ここでは、コールセンターにおけるクレーム対応で特にやってはいけない対応を4つ解説します。
- 話を遮る
- 顧客の話を否定する
- 安易に特別対応を約束してしまう
- 同じ説明を何度もさせる
話を遮る
コールセンターでのクレーム対応において、顧客の話を遮ることは避けましょう。顧客がコールセンターに電話をかけてクレームを入れるときは、怒りや憤りを感じているケースが大半です。そのため、話を途中で遮ると、顧客の不満がさらに増幅され、信頼関係の構築が難しくなります。
また、話を遮ることで、顧客が伝えたいポイントが十分に伝わらない可能性もあります。必要な質問や確認は、顧客が話し終えた後で行いましょう。
顧客の話を否定する
クレーム対応では、顧客の言葉を否定するようなことは言わないようにします。否定されると、顧客は「話を聞いてもらえていない」「共感してもらえていない」と感じて、さらに不満を募らせてしまい、問題が大きくなる可能性があるためです。
例えば、顧客の話に反論したくなっても、「そんなはずはないのですが」といった言い方は避けます。否定的な言葉を使う代わりに、「承知いたしました」や「ご不便をおかけして申し訳ありません」といった表現を使って、顧客に対して誠意を示すことが大切です。それにより、顧客も徐々に冷静に話をしてくれるようになるでしょう。
安易に特別対応を約束してしまう
クレーム対応では顧客が感情的にヒートアップしている場合があり、勢いに押されてしまうこともあるかもしれません。しかし、仮に自社に過失のあるクレーム内容だったとしても、安易に特別対応を約束してしまうことは避けなければなりません。
迷惑をかけたことに対するお詫びは、必ず規定の範囲内で行います。よほど考慮するべきケースの場合でも、経営的な判断ができる層までエスカレーションし、慎重に顧客と交渉することが重要です。
勢いに押されて安易に特別対応をしてしまうと、他の顧客との対応の差が生まれてしまうため問題となります。現在はSNSで簡単に拡散されてしまうリスクもあり、慎重になるべきポイントです。
同じ説明を何度もさせる
クレーム対応の過程で、担当者が何度も変わって、顧客に繰り返し同じ説明をさせてしまうことがあります。しかし、顧客はすでに不満を抱えているため、何度も同じ説明を求められることで、さらにストレスを感じます。
顧客の信頼を失うことにもつながるので、顧客の話を聞いてから別の担当者に回す場合は、クレーム内容を次の担当者にきちんと伝えるようにしましょう。
次の担当者にもクレームの内容が伝わっていれば、ストレスなくスムーズに回答まで進むので、顧客満足度が上がります。
どの顧客からどのようなクレームが入り、どこまで対応しているのかなど、クレーム内容を記録できるような仕組み作りも大切です。
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コールセンターのクレーム対応ポイント【センター管理者向け】
ここからはまず、コールセンター管理者がクレーム対応のためにできることについて解説します。
マニュアルを整備する
コールセンターにおける問い合わせ対応において、ケースごとに対応内容や指示を記したマニュアルを整備することは非常に重要です。
口頭で伝えるだけではオペレーター全員にマニュアル内容を周知することは難しく、対応にバラつきが生まれてしまいます。マニュアルを整備して誰でも把握できる状態にしておけば、クレームの生まれる土壌を減らし、オペレーター一人ひとりがクレームに対応しやすくなります。
また、実際にクレーム対応を行う際にオペレーターが迷わないよう、わかりやすいフローチャートを作成しておくことも有効です。
問題を適切に切り分けることで、ケースに合わせた対応を取りやすくなります。
エスカレーションのルールを明確にする
上記のマニュアルに特に明記しておきたい内容として、上長へ対応を引き継ぐエスカレーションの明確化があります。オペレーターでは対応が難しい場合、どのような対応が適切かの判断ができない場合はエスカレーションをする必要がありますが、特にクレーム対応においては冷静な対応が難しく、エスカレーションが難しいケースもあります。
そのため、エスカレーションのルールはマニュアルで明確にしておきつつ、その意図もふくめオペレーター全員へよく周知しておくことが重要です。
システムを整備しオペレーターを支援する
クレーム対応においては、システムによってある程度対応できる場合があります。
例えば、コールセンター向けのシステムではクレーム対応があったときにすぐにチームへ知らせる機能がある場合があり、オペレーターが活用できます。ケースごとの対応を簡単に呼び出す機能はコールセンター向けシステムにおいて一般的に搭載されているので、確実に整備しておきましょう。
また、クレーム対応に特化した専用のツールも存在します。こうしたツールを使用すればオペレーターの感情労働を軽減できるため、クレーム発生の多い現場では導入を検討するといいでしょう。
コールセンターのクレーム対応ポイント【オペレーター向け】
次に、オペレーター一人ひとりがクレーム対応のためにできること、実際の対応時のコツについて解説します。オペレーター一人ひとりが気をつけることはもちろん、コールセンターのトレーニングにて全担当者がスキルとして身につけられるようにします。
顧客の話をよく聞く
クレーム対応において最も重要なのは、顧客の話をしっかり聞くことです。ほとんどの顧客は、自分の意見や不満を理解してもらいたいと思っています。そのため、傾聴の姿勢を示し、適度な相槌を打つことで共感できれば、顧客に安心感を与えられるでしょう。
また、顧客の話が終わったら、内容を要約して復唱し、双方の認識のズレを防ぐことも大切です。「商品が破損していたということですね」という具合に相手の発言を繰り返し、話の要点をまとめると良いでしょう。
要求を的確に把握する
顧客が何を求めているのかを正確に把握することも重要なポイントです。顧客の要求が不明確な場合は、ヒアリングして確認します。
例えば、届いた商品が壊れていたケースなら、「商品の交換または返金も可能ですが、どちらを希望されますでしょうか」など具体的に尋ねると良いでしょう。
また、顧客の要求を把握したら、その後の流れを伝えます。「返金の手続きについてご案内いたします」など、具体的に顧客が何をすれば良いのか明確に伝えると、顧客を迷わせることがありません。要求を的確に把握し、スムーズに問題が解決されたら、顧客の満足度も上がるでしょう。
よく使う言い回しをメモしておく
コールセンターのクレーム対応では、よく使われる言い回しがあるので、それをメモしておくと便利です。顧客が怒っている場合などは、慌ててしまって適切な言い回しが出てこないこともあります。相手を不快にさせてしまう原因となるおそれもあるので、いつでも冷静に対応できるよう、準備しておくと良いでしょう。
例えば、次のような謝罪の言葉やクッション言葉が役に立ちます。
- この度はご迷惑をおかけして申し訳ございません
- ご不便をおかけして、大変申し訳ございません
- 大変恐れ入りますが、お調べいたしますので少々お待ちください
よく使うフレーズを付せんにメモして見やすい場所に貼っておくと、クレーム対応時にすぐに使えます。繰り返し使っているうちに、自然と言葉が出てくるようになるでしょう。
「3つのカエル」を意識する
感情的になっている顧客に対応するには、「3つのカエル」が有効だとされています。3つのカエルとは、「時間を変える」「人を変える」「場所を変える」を指します。
時間、人、あるいは場所を変更することで、冷静に考える余地が生まれ、態度が軟化するという人の心理を表しているのが3つのカエルです。
電話対応を行うコールセンターにおいて最も重要となるのは、「人を変える」です。対応する人を変えるエスカレーションのタイミングは、マニュアルにて策定されていたとしても、オペレーター本人が適切なタイミングを見極めることが難しい場合もあります。エスカレーションは逃げではなく、顧客に冷静になってもらうためのタイミング作りであることを理解することで、エスカレーションを能動的に行いやすくなるでしょう。
「時間を変える」も場合によっては有効です。例えば、こちらで対応内容を協議した上で再度連絡する段取りにすることで、怒りを抑えられる場合があります。「場所を変える」についてはコールセンターだとあまり考えにくいですが、実店舗においては話す場所を移すといった対応が考えられます。
クレーム対応のストレスを軽減する方法
クレーム対応により、コールセンターで働くオペレーターがストレスを強く感じてしまうケースもあります。必要以上にストレスを感じることを避けるため、次の3つのポイントをオペレーターに伝えるようにしましょう。
- 自分が責められていると思わない
- 自分で対応が難しいときは上司に相談する
- カスタマーハラスメントについて理解を深める
自分が責められていると思わない
コールセンターでのクレーム対応をしていると、顧客からの不満や苦情が自分自身への攻撃と感じることがあります。しかし、クレームは個人へ向けられたものではなく、企業や提供された商品・サービスに対するものです。
クレームは、コールセンターの担当者個人に対する意見ではないことを認識し、冷静に対応しましょう。
自分で対応が難しいときは上司に相談する
クレーム対応では、自分だけでは解決が難しい問題もあります。判断に迷う場合は、無理をせずに上司に相談することが大切です。
自分だけで判断し、誤った情報を顧客に伝えることで事態が悪化することもあります。上司にしっかりと確認を取ることは、顧客からの信頼にもつながります。
カスタマーハラスメントについて理解を深める
かつては顧客の問い合わせに対しては納得を得られるまで対応しなければならないとされており、オペレーター側が不当な感情労働を強いられるケースも少なくありませんでした。しかし近年は、顧客からの過度な要求や暴言などの攻撃的な態度を「カスタマーハラスメント」と呼び、これらを許さないという姿勢が求められてきています。
高圧的で精神的な負担を強いる相手に対しては、正当なクレームを伝えてくれる顧客と明確に区別し、「取り合わない」ことが重要です。オペレーター一人ひとりがカスタマーハラスメントについても理解を深めることで、働きやすいコールセンター作りにつながり、離職率や応対品質の改善につながるでしょう。
コールセンターへのクレームの数を減らす方法
ここでは、コールセンターに寄せられるクレームを根本的に減らす方法を3つ紹介します。
- よくある問い合わせのページを充実させる
- チャットボットを導入する
- AIを活用したカスタマーサポートでクレームの生まれにくい仕組みを作る
よくある問い合わせのページを充実させる
よくある問い合わせのページを充実させると、クレーム件数の削減が期待できます。電話をかけずに解決できる方法があれば、顧客はそちらを選択する可能性があるためです。
例えば、よくある問い合わせのページで、キーワード検索できるようにしておけば、手軽に調べられるので、顧客は電話より先に質問と回答のページを参照してくれるでしょう。この方法は、特に勘違いでクレームの電話をする人を減らす効果が期待できます。顧客自身が回答を読んで自分の勘違いだったと気づくケースがあるためです。電話以外で顧客の問題を解決できるコンテンツを用意しておくと良いでしょう。
メインの顧客が高齢層である場合は、インターネットに不慣れな人もいるため、操作方法をできる限りわかりやすくするなどの工夫も大切です。
チャットボットを導入する
AIが質問に答えてくれるチャットボットは、コールセンターのクレーム数を減らすのに効果的です。オペレーターの役割の一部をチャットボットが担ってくれるためです。
また、コールセンターの営業時間内に電話をすることが難しい顧客もいます。チャットボットであれば、顧客が都合の良い時間帯にいつでも質問ができ、すぐに回答を得られるため、スムーズな問題解決に役立つでしょう。
チャットボットの導入によってクレームの件数が減ることで、オペレーターが人のサポートを必要とする顧客からの電話対応に集中できるというメリットもあります。
HubSpotのService Hubには、チャットボットを作成する機能があります。プログラミング不要なので専門知識を持った担当者が社内にいなくても活用可能です。チャットボットの情報源には、自社サイトなどを設定でき、回答の際に活用できます。
また、チャットボットで対応できない質問には、担当者に自動で転送してくれる機能もあります。チャットボットが一次対応の役割を担うことで、コールセンターへのクレーム件数減少の効果が期待できるでしょう。
AIを活用したカスタマーサポートでクレームの生まれにくい仕組みを作る
上記のAIチャットボット導入は、カスタマーサポートにおけるAI導入の代表的な例です。
HubSpotのカスタマーサポートチームでは、AIチャットボットを始めとしたAI技術を段階的に導入し、増加する問い合わせに対して線上に人員増加を行わずに対応品質を向上させていくという取り組みを行っています。
AIを現場に導入する際は、AIと人の得意分野を効果的に切り分けること、顧客体験を損なわないこと、分析のためのデータ収集は形式をできるだけ揃えることなどのポイントがあります。
AIによる大規模データの分析を行えれば、商品・サービスへ問い合わせ内容をフィードバックし、クレームの生まれにくいブランド作りにつながります。また、定型的な問い合わせはAIが解決できるようになり、クレームの件数減少も期待できるでしょう。
オペレーターが複雑かつ重要な案件に集中できるようになれば、コールセンターに舞い込んできたクレームの対応品質も向上します。
コールセンターのクレーム対応を向上させてカスタマーサクセスを実現しよう
コールセンターでのクレーム対応は、企業にとって顧客満足度を左右する重要な要素のひとつです。適切な対応を行うことで、クレームを顧客との信頼関係を強化するチャンスにも変えられます。
また、クレーム対応には「よい顧客体験を提供する」という役割もあります。クレームを伝えてくる顧客は、その時点では企業に期待しておらず、自身の問題がいったん解決すればよいと考えています。
クレーム対応にてその期待を超える体験を得られれば、顧客は自社商品・サービスを通して期待以上の成功体験を得られることになります。こうした考え方を「カスタマーサクセス」といい、カスタマーサポートにおいて目指していくべきものの一つです。
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