顧客満足度(CS)は、企業の価値や収益を最大化させるために意識したい指標のひとつで、近年さまざまな業界で注目されています。実際に、顧客の80%はサービスに一度でも不満を感じると利用をやめてしまうというデータがあります(Hubspot(英語))。
顧客満足度(CS)を向上させるためには、自社のサービスや顧客への正しい理解に加え、適切なコミュニケーションをとることが重要です。本記事では、顧客満足度(CS)の定義や重要性、高めるためのステップを詳しく解説します。
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顧客満足度(CS)とは
顧客満足度(CS)は、自社の商品や待遇などに対する顧客の満足度を測るための指標で、英語では「Customer Satisfaction」とも呼ばれています。顧客満足度が向上する仕組みや、重要なポイントを理解しておきましょう。
顧客満足度の定義
顧客満足度は、自社商品や待遇を通じて顧客の期待にどれほど応えられているかを表します。商品やサービスで得た体験が顧客の期待を上回った、もしくは同等だった際に顧客満足度は高くなるため、「顧客満足度=商品の質の高さ」ではありません。
顧客が求めているものは商品やサービスを通した体験です。たとえ高性能な商品であっても、望む体験を得られてはじめて顧客は満足します。
顧客満足度を維持・向上させるには、次の対策が必要です。
- 自社サービスと顧客を正しく理解し、最適なコミュニケーションによって顧客に適切な期待をもたせる
- 顧客が期待した価値を感じられるようフォローする
営業・マーケティング部門が顧客期待度のコントロールを行い、現場・CS部門が顧客体験のサポートをすることが重要です。
顧客満足度とNPSの違い
顧客満足度が、商品やサービスに対して「満足しているかどうか」を問うのに対して、「他者に薦める可能性」を問うのがNPSです。顧客満足度とNPSの大きな違いは、「収益性と相関があるかないか」という点です。
顧客満足度は、多数が「満足している」と評価したとしても、今後の売り上げに繋がらないケースもあります。
顧客満足度の調査では、満足度を数値化して評価はするものの、あくまで現時点での評価にすぎません。また「満足」という指標は曖昧で、今後も「継続購入するかしないか」や、他者に「推奨するかしないか」までは分からないためです。
一方、NPSは「この商品を推奨するかしないか」という質問に対する回答から、スコアを算出するため、長期的なロイヤルティも測れます。「他者に薦める」という問いは、今後の行動を数値化して、長期的な収益性と相関があることが分かっています。
NPSについては以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
顧客満足度を意識すべき理由
マーケティングにおいて、アメリカのコンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーの名誉ディレクターであるフレデリック・F・ライクヘルドが提唱した「1:5の法則」があります。
新規顧客創出にかかる販売コストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかるという意味をもつ法則です。この法則によると、たとえ新規顧客創出のためのコストをおさえたとしても、既存顧客の満足度を高めてリピート率を上げることができれば従来の売上を保つことが可能になります。
近年では、企業からのメッセージよりも友人や家族からの意見を信頼する人が多いこともわかっています(HubSpot )。自社に愛着を持った既存顧客が口コミや投稿を行うことで広告塔となれば、さらに新規顧客を創出するためのコストが下がるでしょう。
顧客満足度は、営業部門、CS部門など部門ごとに取り組む問題ではなく、全社的に追うべき指標といえます。
顧客満足度を向上させるための4つのステップ
顧客満足度は顧客の期待を上回ったとき、もしくは同等だったときに向上します。そのため、自社の商品・サービスや顧客のニーズを深く理解したうえで、適切な施策を実施・検証するためのステップが必要です。
1. 顧客満足度に対して仮説を立てる
顧客満足度を向上させるためには、測定による現状把握と問題点の確認が不可欠です。測定前には仮説を立て、検証の焦点や方向性を定めておくことが重要です。仮説がないと、広く浅い測定で終わってしまうため注意しましょう。
2. 仮説に基づいた検証・測定
顧客満足度の検証を行う前に、調査対象者と調査方法を設定します。「属性」や「自社商品の購買履歴」などを組み合わせて調査対象者を絞り込むことで、仮説に沿った検証が可能になります。
データを効率的に集めるためには、アンケートやインタビューなどさまざまなヒアリング方法を選定し、調査対象者の特性にあう媒体を利用することが重要です。
検証後は、仮説と「CSAT(顧客満足度)」や「リテンションレート(既存顧客維持率)」などの指標にもとづいて、顧客満足度を算出します。顧客の期待値と現状の顧客満足度の差分を確認し、具体的な問題点を洗い出しましょう。
3. 問題点を解消する施策策定
問題点の解消に向けて、顧客の期待を上回るための施策を立案します。問題の内容とあわせて顧客情報も確認し、顧客の視点から施策を考えることが重要です。
例えば、「商品の使用方法がわかりにくい」という不満には、解説動画をインターネット配信するなどの施策が挙げられます。
しかし、不満を抱えている顧客がインターネットに馴染みのない世代の場合は、他の方法をとる必要があるでしょう。顧客満足度を向上させるには、顧客に寄り添った施策を策定することが重要です。
立案が難しい場合は競合他社の分析も有効です。他社の購買プロセスやアフターサービスなどから、顧客満足度の向上につながるヒントや差異化を図るポイントを見つけられることもあります。
施策の決定後は他部署とも連携をとり、具体的な実施期間を定めましょう。
4. 施策の実施・効果検証
社内で議論した施策を実施し、中長期的に再度調査・測定をして効果検証をします。問題点が解消できていない場合には、新たな施策が必要になるためです。
顧客の考え方は、企業の状況や情勢とともに変化します。顧客満足度を向上させるためには、上記4つのステップを継続的に行いましょう。
顧客満足度を測定する指標の種類
- CSAT(顧客満足度)
CSATは、満足度を3~5段階で表してもらうような手法で、視覚的に評価しやすいのが特徴です。比較的簡単に調査可能なため、顧客からデータを集めやすいメリットもあります。 - NPS(推奨者の正味比率)
NPSは、「この商品(サービス)を他の人に推奨するかどうか」を調査した数値です。業績や収益と高い相関を示します。 - LTV(顧客生涯価値)
LTVは、顧客ライフサイクルの間に得られる収益を表し、さまざまな計算手法があります。 - CES(顧客努力指標)
CESは、顧客の不満要素を数値化した指標です。消費者が感じたネガティブな側面を測ります。 - CRR(顧客維持率)
CRRは、任意期間中における新規顧客の維持率を指す数値です。 - リテンションレート(既存顧客維持率)
リテンションレートは、新規顧客の数を既存顧客数で割った数値で、定着率を示す指標です。 - CSI(顧客満足度指数)
CSIは、約30か国で採用されている代表的な顧客満足度指標です。大手企業間では競合他社との比較にも使用されています。 - JCSI(日本版顧客満足度指数)
日本で広く使用されている顧客満足度調査で、上記のCSIを日本版にローカライズした指標がJCSIです。
指標の種類について詳しくは以下の記事をご覧ください。
顧客満足度の調査方法・分析方法
活用したい指標の検討を始めたら、目的に即した調査方法・分析方法も考えていきましょう。
顧客満足度の調査方法には、以下の4つの代表的な手法があります。
- アンケート調査
- 対面型インタビュー調査
- 電話調査
- モニタリング調査
顧客満足度の分析方法には、以下の3つの代表的な手法があります。
- 単純集計
- クロス集計
- ポートフォリオ分析
また、顧客満足度の向上に繋がるツールとして、以下の2つがあります。
- アンケート作成ツール
- NPS計測ツール
アンケート作成ツールは、簡単に作成可能な上、集計や分析も効率的に実施できます。NPS計測ツールは、シンプルなアンケートでは計測が難しい、他者への推奨度を測れます。
顧客満足度調査向けのアンケート作成&実施後のポイントについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
顧客満足度を上げる施策の具体例
以下に3つの代表的な施策をご紹介します。
- ダイナミックプライシング
ダイナミックプライシングとは、商品やサービスの価格を固定するのではなく、経済状況に応じて変動させることです。この手法を取り入れているのが、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)です。長期休みには需要が高まるため、チケットを通常の価格より上げます。一方、需要の低い平日には、チケットの価格を下げ、利用者の増加をはかる施策をとりました。 - ホスピタリティ
ホスピタリティとは、顧客を心から大切にすることを指します。この手法を取り入れているのが、帝国ホテルです。帝国ホテルでは、顧客に対する研究を常に行い、空調管理や椅子の角度など、隅々まで調整し「顧客がくつろげる環境」を提供しています。 - シンプル化
シンプル化とは、煩雑なシステムをよりシンプルにし、初心者でも触れやすくする施策です。特に、新しいITツールは一部の上級者にしか使えないケースも多々ありますが、初心者でもわかりやすい仕様にすると、多くの人の満足度が向上します。
顧客満足度を上げるためには、CRM(顧客管理ツール)も有用です。以下の章から詳しくご紹介します。
顧客満足度の向上にはCRMを活用した顧客理解が不可欠
顧客に関する情報が、集計・分析しやすい方法で整理されていない場合は、前章のステップ1.の仮説が主観的になってしまいます。
データとして活用できる状態で顧客満足度を調査する、または、CRMを適切に導入してデータが蓄積できていれば、ヒアリングを実施せずとも顧客の傾向が見えてくるでしょう。
CRMは「顧客との関係を維持・向上させるために、顧客情報を一元管理するツール」です。主に次のような顧客情報を蓄積します。
- 顧客の基本情報(企業名・担当者名・住所などの属性)
- 顧客の購買履歴
- 電話やメールでのやり取りの情報
CRMには自社とのやり取りの情報も記録できるため、顧客の詳細な情報やニーズの把握に役立ちます。全部門で同じ顧客情報を共有することで、一貫性のある顧客対応ができるようになり、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
また、CRMには特定の顧客に絞ってアプローチする機能や、営業活動をサポートする機能も備わっています。顧客満足度を向上させるための施策の策定を効率的・効果的に行えることもCRMの特徴です。CRMについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
CRM活用で顧客満足度の向上を実現した企業事例
顧客満足度を上げるためにCRMを導入する企業も数多く存在します。本章ではCRMの活用により顧客満足度の向上を実現した「BtoB」と「BtoC」の成功事例をご紹介します。
顧客満足度を向上させるための目標設定や、施策の具体例を確認しましょう。
1. プル型営業の提供で新規取引の顧客単価が2倍に
中小・ベンチャー企業に向けて、ネットビジネス支援事業を行う「ソウルドアウト株式会社」の事例です。創業当時から面識のない新規顧客に向けた「プッシュ型」営業で事業を展開してきましたが、徐々に営業活動の効率性の低さや営業担当者の精神的な疲弊などの問題があらわれてきました。
「プル型の営業スタイルで、新規顧客に効率的にアプローチする」ことを目的にMarketing Hubを導入し、見込み客にとって有益なブログやダウンロードコンテンツを作成。訪れた見込み客の情報を管理し、一人ひとりの状態にあわせてメルマガを配信するなどの施策も行っています。
自社に興味のある見込み客へ効率的な営業ができるようになり、ツール導入前と比べて新規取引の顧客単価が2倍に、訪問可能な見込み客数も3件から152件に増加(2015年8月のツール導入時点の情報)しました。顧客から感謝の気持ちを伝えられる機会も増え、CRMによる顧客満足度の向上を実現しています。
参照:ソウルドアウト株式会社
2. 過去のやりとりを参照したより深いコミュニケーションが可能に
人材系サービスを含めて30以上のサービスを展開している「レバレジーズ株式会社(以下、レバレジーズ)」の事例です。
レバレジーズでは、事業部ごとに顧客情報や営業進捗をGoogle スプレットシートで管理していたため、各事業部からバラバラにアプローチしてしまうコミュニケーションミスが発生していました。また、事業拡大につれて管理工数が増え、Google スプレッドシートでは対応が難しくなっていました。
そこで、顧客情報の一元管理と営業進捗状況の一気通貫管理を目的に、HubSpot CRMとSales Hubを導入したのです。ツール導入により顧客情報を統合したことで全営業メンバーが営業状況を把握できるようになり、コミュニケーションミスを減らすことに成功しています。
その後、Marketing Hubも導入し、「より良い顧客関係を築ける環境が整えられた」と、喜びの声をいただいています。
顧客満足度を向上させるためにCRMを活用しよう
顧客満足度を向上させるためには、自社サービスや顧客について正しく理解したうえで、顧客の期待度を上回るコミュニケーションをとる必要があります。そのためには、仮説にもとづく検証・測定によって問題点を把握し、最適な施策を実施、効果検証する流れを継続的に行うことが重要です。
より深く顧客を理解するには、顧客との関係性を管理できるツールであるCRMを活用すると良いでしょう。顧客の購買履歴や自社とのコミュニケーションの情報を一元化することにより、分析や施策立案に役立てられます。
本記事でご紹介した成功事例も参考に、自社の顧客満足度向上につながるCRMの導入をご検討ください。